家の売却価格の相場は、どれくらいなのだろう……。
家の売却価格を設定する方法とは、どのようなものなのだろう……。
初めて家を売却する方の中には、売却価格の決め方に悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
家を少しでも高額で売却するには、売却価格の決め方が重要です。
しかし、自分の希望どおりの価格で売却するためには、物件の売却価格相場より高すぎても安すぎてもよくありません。
今回は、
- 家の売却価格の相場について
- 家の売却価格の決め方の流れ
などについて、不動産投資をはじめとしたコンテンツを発信している当メディア「不動産投資の教科書」が解説します。
あわせて、家の売却における値下げのタイミングなどについても紹介します。
この記事が、家の売却価格の設定で悩まれている方のご参考になれば幸いです。
1、家の売却価格の相場はどれくらい?
家の売却価格を決める際、まずは売却を検討している家と同様の条件の家が、どれくらいの売却価格相場か確認しましょう。
家の売却価格の相場を知るためには、次の条件との関係に注目するとよいでしょう。
- 最新版の家の売却価格指数
- 築年数
- 立地
(1)家の売却価格指数【最新版】
家の売却価格相場の最新の推移については、国土交通省が発表している不動産価格の推移を指数化した統計データ「不動産価格指数」をご参考ください。
家の売却価格の相場推移について、最新の傾向を知っておくことで家の売却価格を具体的にイメージしやすくなるでしょう。
下図は令和2年10月の不動産価格指数です。
2010年の価格を100とした家の売却価格相場推移は、マンションについては右肩上がりです。
戸建てについては2010年より10ほど上がっているものの、マンションと比べるとほぼ横ばい状態といえるでしょう。
しかし、不動産価格指数は「平均の数値」ですので、戸建ては高額で売却できないのか……と落胆する必要はありません。
家の相場は、次に紹介するように築年数や立地によっても変化が大きいことが特徴です。
(2)築年数と家の売却価格の関係
家の価値は、家の広さや間取り、設備の状態などのさまざまな要素によって変わります。
なかでも、特に家の価値を決定するうえで大きな影響を与えるのが「築年数」です。
築年数が新しければ新しいほど家の価値は高く、一方で築年数が古ければ古いほど家の価値は低くなってしまうことが一般的です。
具体的に、築年数によってどれくらい価値が下がっていくのか、以下のそれぞれにわけて説明します。
- 「築10年まで」
- 「築20年まで」
- 「築20年以上」
①築10年まで
家が経ってから10年までは、家の価値が急速に下落します。
築10年の場合の家の価値は、新築の場合と比べると約半分にまで下がってしまうのです。
つまり、築年数が1年違うだけでも、家の価値は大きく落ちてしまいます。
②築20年まで
①で説明したように、築10年までに家の価値は急速に下がってしまいます。
しかし、築10年を超えて築20年までの家の価値は、築10年までに比べるとゆるやかに下がることが一般的です。
具体的には、次の数値まで下がることになります。
- 築15年:新築価格の約3割
- 築20年:新築価格の約2割
いかがでしょうか。
築20年となると、新築価格の約2割と大幅に下がってしまうことがわかりますね。
③築20年以上
築20年を超えた家の価値はほとんどなくなり、売却活動が難航してしまう可能性が高いでしょう。
リフォームやリノベーションなどを検討した方がよいかもしれません。
以上より、家の売却価格を決めるにあたっては、家の築年数を考慮することが重要といえます。
家を売却してより多くの利益を得るためには、築年数によって家の価値が下がっていくことを視野に入れて、売却のタイミングを見計らいましょう。
(3)立地と家の売却価格の関係
(2)では、家の価値が築年数と大きく関わることについて説明しましたが、家の立地についても、家の価値に大きく関係してきます。
長年、東京をはじめとした首都圏や、大阪や福岡などの大都市を中心に人口が多く、それ以外の地域は人口が少ない傾向にあります。
人口が多い地域の地価は上がり、人口が少ない地域の地価は下がることが一般的です。
公益財団法人不動産流通推進センターが公開している家の平均価格を紹介します(2020不動産業統計集(9月期改訂))。
①首都圏における家の平均価格
2020年8月時点で、東京をはじめとした1都3県の地域における中古マンションの平均価格は以下のとおりです。
地域 | 首都圏 | 東京都 | 埼玉県 | 千葉県 | 神奈川県 |
平均価格(万円) | 3,644 | 4,551 | 2,225 | 2,171 | 3,113 |
また、上記と同時期時点で、1都3県の地域における戸建ての平均価格は以下のとおりです。
地域 | 首都圏 | 東京都 | 埼玉県 | 千葉県 | 神奈川県 |
平均価格(万円) | 3,482 | 4,750 | 2,756 | 2,208 | 3,497 |
②関西圏
2020年8月時点で、大阪府や兵庫県など2府4県の地域における中古マンションの平均価格は以下のとおりです。
地域 | 関西圏 | 大阪府 | 兵庫県 | 京都府 | 奈良県 | 滋賀県 | 和歌山県 |
平均価格 (万円) | 2,387 | 2,499 | 2,375 | 2,291 | 1,595 | 2,151 | 1,514 |
また、上記と同時期時点で、2府4県の地域における戸建ての平均価格は以下のとおりです。
地域 | 関西圏 | 大阪府 | 兵庫県 | 京都府 | 奈良県 | 滋賀県 | 和歌山県 |
平均価格 (万円) | 2,272 | 2,257 | 2,530 | 2,523 | 1,655 | 1,796 | 1,254 |
2、家の売却価格を設定する方法~価格の賢い決め方とは?
家の売却価格を決めるためには、不動産会社の査定価格を基準に、「取引事例修正」と「事情修正」を行うことが一般的です。
大まかな流れは、以下のとおりです。
- (1)相場を確認する
- (2)実際に簡易査定してみる
- (3)取引事例修正
- (4)事情修正
本項では、家の売却価格を設定する流れについて説明します。
(1)家の売却価格の相場を調べる
「1、家の売却価格の相場はどれくらい?」でも解説しましたが、家の売却を考えたら家の売却価格の相場を調べましょう。
ここでは、家の売却価格の相場を調べる方法について具体的に紹介します。
現在は、インターネット上で気軽に売却価格の相場を調べることが可能です。
以下、4つのお役立ちツールを紹介します。
①不動産取引価格情報検索(国土交通省)
「不動産取引価格情報検索」は、全国各地で実際に行われた不動産取引について国土交通省が調査を行い、その結果が反映されたデータベースです。
物件の種類別および物件の地域別に検索が可能なので、売却したい不動産の最寄りで取引された実績を見て、実勢価格を窺い知ることができます。
②REINS Market Information(不動産流通機構)
http://www.contract.reins.or.jp/
「レインズ(REINS)」は、不動産業者同士が使用するために不動産流通機構が設けた物件情報のデータベースです。
そのレインズが提供している「REINS Market Information」では、実際に成約した取引情報が登録されており、地域別に取引実績からの価格相場を知ることができます。
ただし、一般の人は閲覧できず、不動産業者経由で提示してもらわなければならないため注意が必要です。
レインズについて詳しくは「レインズの不動産情報は一般公開されている? 個人が閲覧・検索する方法」をご確認ください。
③おうちダイレクト(SRE不動産)
https://realestate.yahoo.co.jp/direct
ヤフーとSRE不動産が共同で提供している「おうちダイレクト」。
同サイト内の約233,000棟のマンションが登録されている「おうちデータベース」というサービスにて、地域などから家の売却価格を確認できます。
マンションを売りたいと考えている方は、ぜひお使いください。
④プライスマップ(LIFULL HOME’S)
https://www.homes.co.jp/price-map
大手不動産ポータルサイト「LIFULL HOME’S」が運営するマンション専門の不動産査定サービス「プライスマップ」。
マンション名からの検索や、地図上の物件をクリックするだけで参考価格が分かるというシンプルな使い勝手がユニークです。
(2)一括査定サイトを利用して所有している家の売却査定価格を把握する
家の売却価格相場を確認したら、次は一括査定サイトを利用して、実際に所有している家の売却価格がどれくらいになるかを簡易査定しましょう。
一括査定サイトは、入力時間わずか1分前後で、簡単に物件の相場を把握できるサイトです。
不動産会社が一括査定サイトに登録するには、厳しい審査をクリアする必要があります。
一括査定サイトに登録されている不動産会社は、信頼できるといえるでしょう。代表的な一括査定サイトは、次のとおりです。
①すまいValue
一括査定サイトで絶対に外せないのが、「すまいValue」。不動産会社大手6社が共同で立ち上げた、一括査定サイトです。
すまいValueに登録されている不動産会社6社のうち3社は、業界における仲介件数がトップ3の次の会社です。
- 三井不動産リアルティネットワーク
- 住友不動産
- 東急リバブル
一括査定サイトのなかでも、すまいValueは流通件数自体が最も多いといえるでしょう。
なお、上記3社は、「すまいValue」でしか査定依頼ができないため、最大のメリットといえます。
大手不動産は広告料が安く、SUUMOやat homeなど認知度の高いポータルサイトに物件を掲載してくれる可能性もあり、早めに売れる可能性も上がるでしょう。
すまいValueに登録されている6社とも、全国的なネームバリューを誇る大手なので、不安や心配を感じることは少ないといえます。
すまいValue利用者の約97%が、「トラブルなく安心安全に取引できた」と回答しているのが事実です。
安心感を最優先させたい人には、おすすめの一括査定サイトです。
しかし、大手のため仲介手数料は安くなりにくいでしょう。
地方郊外の物件はエリア外となり、査定ができない場合がある点にも注意が必要です。
②HOME 4U
NTTのグループ会社「NTTデータ・スマートソーシング」が運営する「HOME 4U」。
他社の一括査定サイトと比べると立ち上げがかなり早く、2001年にサービスが開始されました。
20年近い歴史があり、安心感が違うのではないでしょうか。
唯一無二の特徴としては、電話相談ができるということです。他に電話相談が可能な一括査定サイトはありません。
NTTグループが経営しているだけに、フリーダイヤルで無料というところもポイントでしょう。
プライバシーマークを取得しているので、個人情報を手厚く保護する体制も整っています。
HOME 4Uでは独自の審査基準を設けており、ユーザーにマッチした不動産会社を吟味・厳選した上で掲載しているのが特徴です。
悪徳不動産パトロールを常に行っているため、信頼性はかなり高いといえるでしょう。
デメリットとしては、大手不動産会社には査定の依頼ができない点です。
③SRE不動産
「SRE不動産」は、ソニーグループの不動産会社です。
注目すべき特徴として、「売却エージェント制」を採っていることが挙げられます。
不動産会社では、自社で売り手と買い手両方の仲介を担当することを目標とするのが一般的です。
このような仲介方法を「両手仲介」といい、双方から仲介手数料を受け取れるというメリットがあります。
しかし、「成功報酬」という仲介手数料の性質上、成約しなければ仲介手数料を受け取ることができません。
成約につなげるためには、売り手・買い手どちらかに肩入れするのではなく、双方の妥協点をすり合わせていくというスタイルになります。
会社利益を考えればやむを得ないことですが、売る側と買う側双方が必ずしも100%満足となるわけではありません。
SRE不動産では、両手仲介を原則禁止し、売却専門・購買専門に組織を分けたエージェント制度を導入しています。
仮に自社で買い手が見つかったとしても、業務や担当が完全に独立しているため、売却エージェント(担当)は100%売り手の要望に沿って交渉にあたることが可能です。
売却を依頼した物件情報は日本最大級のポータルサイト「Yahoo!不動産」に掲載されるため、より多くの購入検討者からのアクセスが期待できるという強みもあります。
サービスエリア(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)が限られていますが、該当する場合はぜひおすすめしたいサイトです。
④イエカレ
イクス株式会社が運営する日本最大級の一括査定サービス「イエカレ」。
イエカレは、小規模から大手まで幅広い多くの不動産会社と提携しているのが特徴です。
⑤イエウール
株式会社Speeeが運営している不動産売却査定サイト「イエウール」。
1,900社の不動産会社と提携し、最大6社同時に査定を依頼できるところが強みです。
複数の査定額を比較でき、より高い査定額をつけた業者を簡単に見つけられます。
査定依頼画面はLINE画面のようにわかりやすく、入力しやすいこともあり、利用者数1,000万人以上と他のサイトと比較して段違いに多いようです。
ただ、すべての査定サイトにいえることですが、あくまでも簡易的な査定であり、実際にその売り出し価格になるとは限りません。
売却依頼を受けるために意図的に高い査定額を出す業者も少なくないので、机上査定よりも金額が下がる可能性があることは覚えておきましょう。
イエウールは、クレームの多い不動産会社との提携を解除する動きを強化しています。
その点で比較的安心して利用できるため、査定依頼の初心者にもおすすめです。
不動産の売却価格の相場を調べる方法の詳細については、「中古マンション価格の相場を調べる2+1の方法」をご参考ください。
(3)取引事例修正
「取引事例修正」とは、以前同じエリアもしくは近隣エリアで同じような条件の家が実際取引された事例を参考に、売却価格を修正することです。
取引事例のデータを調べる際に最も使われているのは、「(1)家の売却価格の相場を調べる」でも紹介した「レインズ」です。
例えば、査定価格が「3,000万円」であったとしても、取引事例のデータでは「3,200万円」で売却されていた場合、実際の売却価格は査定価格よりもう少し高く設定してもいいと判断すべきです。
しかし、不動産市場の価格は常に推移しているので、同じマンションの過去のデータや近い条件の物件の最新データを参考するようにしましょう。
レインズシステムについて、詳しくは「レインズの情報を個人で利用するために知りたい3つのこと」をご参考にしてください。
(4)事情補正
事情補正とは、売主の事情を加味して売却価格を補正することをいいます。
具体的には以下のような事情が挙げられます。
- 短期間にて売却したいから相場より少し安く設定する
- 残債を完済したいから相場より高くても残債の金額で設定する
- 引越しなどの諸経費を捻出したいから、相場にプラスして設定する
- 値下げ対応ができるよう最初は売りたい価格より少し高めに設定する
売却価格を相場より低く設定する分は問題ありません。
一方、相場より高く売却価格を設定したい場合、売却期間に影響がでる可能性がありますので、担当者と相談しながら売却価格を決めるようにしましょう。
3、家の売却価格を決めるときの注意点
前項まで、家の売却価格の相場はさまざまな条件によって決まることを解説しました。
しかし、いざ不動産会社へ家の売却価格を査定してもらうと、査定価格は一致しません。
(1)家の売却査定価格は不動産会社によって違う
たとえば、以下のように、不動産会社によって、家の売却査定価格が異なることが一般的です。
- A社:3,000万円
- B社:2,900万円
- C社:2,800万円
査定対象となる家は同じなのに、不動産会社によって査定価格が違うことに対して、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
なぜこのような事態が発生するのかというと、不動産会社によって次のような事項について違いがあるからです。
- 査定方法
- 参考する取引データ
- 売却に対する考え方
売却価格を査定してもらっただけで、売却活動を依頼する不動産会社を選ぶことは難しいといえます。
「2、家の売却価格を設定する方法~価格の賢い決め方とは?」で紹介した「一括査定サイト」は、インターネット上で簡単に家の売却価格を査定できる優れもの。
しかし、ネットでの一括査定はあくまで「簡易査定」です。
一括査定サイトなどで簡易査定をしたうえで、対応が良かった会社を数社選び、実際に現地査定に来てもらいましょう。
その後、査定価格を出した根拠などの説明をそれぞれの不動産会社から確認し、最終的に査定価格が納得できる不動産会社へ実際に売却を依頼します。
(2)成約価格は「参考価格」としてとらえる
「2、(1)家の売却価格の相場を調べる」で紹介したような、インターネット上で確認できるサイトは、実際の家の売買取引における売却価格を知ることができ非常に便利です。
しかし、あくまでもインターネット上で確認できる家の成約価格は、「参考価格」としてとらえることが重要です。
他の物件の成約価格を鵜呑みにしても、同じような価格で売却できるとは限りません。
物件によって、種類や地域、設備などで価格が異なるからです。
(3)不動産会社との契約ではまず「一般媒介契約」から始めよう
家の売却価格を決定することに直接関係ないことですが、不動産会社との媒介契約においては1つ注意しなければならない点があります。
晴れて不動産会社との媒介契約を締結しても、実際に家の売却活動を始めてみないと、担当営業マンのスキルは分かりません。
不動産売却の媒介契約を締結してから、「不動産会社選びに失敗した!」と後悔しないために、最初は「専任媒介契約」ではなく、「一般媒介契約」を締結しましょう。
一般媒介契約の活用方法について、詳しくは「一般媒介契約|不動産を高く売却したい方が知っておくべき3つのこと」をご参考ください。
4、家の売却価格の値下げタイミング~高額で家を売却するために
家の売却価格が無事に決まり、いざ売却活動を開始したものの、場合によっては売却価格を値下げしなければならないケースもあります。
それでは、家の売却において、値下げのに最適なタイミングとはいつなのでしょうか。
一般的に、不動産売却における値下げのタイミングの目安は、次のとおりです。
(1)家を売り出してから3ヶ月後
家を売り出した直後の値下げは、あまりおすすめしません。
まずは、家を売り出してから3ヶ月待ちましょう。
家などの不動産売却の一般的な期間が「3ヶ月」ということから、家を売り出してから「3ヶ月後」は、値下げのタイミングの1つです。
(2)家を売り出してから半年後
家の売却において、売却期間が長期化してしまうことは避けなければなりません。
長く売れない状況が続いてしまうと、「売れ残り」という印象を与えてしまうからです。
家を売り出してから3ヶ月後のタイミングで値下げをしても売却できなければ、次は売り出してから半年後を目安に値下げを検討しましょう。
(3)購入希望者から値引き交渉があったとき
購入希望者から値引き交渉があったときも、家の売却における値下げのタイミングとなります。
家や土地などの不動産売却における値下げのタイミングについて、詳しくは「不動産売却で値下げするタイミング~損しないために知りたい4つのこと」をご参考ください。
まとめ
今回は、家の売却価格について詳しく解説しました。
最初に設定した売却価格通りに成約ができるのが理想でしょう。
しかし、家の売却がうまく進まないときは、価格を値下げすることを最終手段にして、焦らずにきちんと売却計画を立てることが大切です。
しっかりと家の売却価格を設定して、より多くの利益を獲得しましょう。