不動産の売却をスムーズに進めるには、事前に必要な書類を用意しておくことが重要です。
スムーズな不動産の売却は機会損失を防ぎ、少しでも高く売りたいという願いもかなえてくれます。
必要書類を事前にちゃんと揃えておくだけで売却が有利になるのであれば、ぜひともやっておきたいことのひとつではないでしょうか。
今回は、不動産を売却する際に、「どのタイミングでどの書類が必要になるか」や「必要書類の取得方法」などをご説明します。
当記事を読んだ多くの方が不動産売却を成功させています。不動産売却の事前準備をする際のご参考になれば幸いです。
目次
1、不動産売却をする際には多くの必要書類がある
不動産売却を行う際には、不動産を売る前、そして不動産売買契約時の2つのタイミングで、さまざまな書類が必要です。
比較的簡単に準備できるものから、専門家の手を借りる必要のあるものまで、その書類の数は最低でも26種類にも及び、人や状況によってはそれ以上になることもあります。
そのため、いかに効率よく書類をそろえるかが、スムーズな売却交渉の重要なポイントです。
不動産売却で必要となる書類は、次の2つのタイミングに分けてそれぞれ準備しておきましょう。
- 本格査定(訪問査定)時に必要な書類
- 不動産売買契約時に必要な書類
このうち、まずは(1)の「本格査定(訪問査定)時に必要な書類」について準備していきましょう。この査定に関する主な方法は以下の2つです。
- 簡易査定
- 訪問査定
必要書類をスムーズに理解するためには、この2つの査定方法の仕組みを押さえておく必要があるので、次から説明していきます。
2、簡易査定と訪問査定の違いやメリットは?
不動産査定には主に簡易的なものと本格的な訪問査定の2つの方法があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを説明します。
(1)簡易査定とは
簡易査定とは、不動産会社が売却対象となっている現地の物件を実際には確認していない段階で、送られてきた書類や資料などを元に査定を行う方法です。机上査定と呼ぶこともあります。
この査定では、同種類の物件がどのような価額で売れているのかといった市場の動向、さらには売却物件の周辺地域における売り出し価額の相場といったデータをもとに、簡易的に売却価額を算出します。
店舗に出向かなくても査定可能なオンライン上での簡易査定サービスなども広がっているので、検討段階であっても気軽に申し込むことが可能です。
(2)訪問査定とは
訪問査定とは、依頼を受けた不動産会社が売却物件を実際に現地で確認して査定額を算出する方法で、「本格査定」とも呼ばれています。
簡易査定と比べて、より多くの正確な情報を確認することができるため、精度の高い売却価額を算出することが可能です。
訪問査定では、不動産会社側の担当者が現地周辺の地域状況や立地条件、物件内部の状況などを実際に確認していきます。また、売却交渉が本格化することを想定して、官公庁へ提出するために必要な専門書類などを同時にチェックすることもあります。
したがって、査定完了は即日終了ということは少なく、1週間前後の期間がかかることが通例です。物件の状況によっては数回に分けて査定が行われることもあります。
(3)それぞれのメリット・デメリット
簡易査定と訪問査定には、それぞれメリットとデメリットがあります。
簡易査定のメリット
まず、簡易査定のメリットは時間が早く終わること、そして不動産会社に出向く必要がなく、最小限の情報の提供で済むので、手続きに煩わしさがないこと、などです。
まだ売却するかどうかわからない段階で、重要な個人情報を提供することには抵抗感もあるでしょう。そのため、本格的な売却に入る前に大まかな相場を知りたいという方にとっては、メリットの大きい査定方法です。
簡易査定のデメリット
では、簡易査定のデメリットはというと、物件に関する細かな情報、現地で見ないと確認できない事情などが査定に反映されない、という点です。
不動産は同じ立地や間取りの条件下でも、個別の物件によって価額の差が大きく出ることがあります。そのため、簡易査定と実際の売却価額を比較すると、結果的に大きな差が出るということも少なくはありません。
訪問査定のメリット
訪問査定(本格査定)のメリットは、より正確に、売却価額と近い査定額を算出してもらえるという点です。プロが現況を実際に確認しますので、簡易査定と比べてもかなり正確な査定額が出ます。
訪問査定のデメリット
反対に、訪問査定のデメリットはというと、査定そのものに一定の期間がかかってしまうことです。
不動産会社の担当者が実際に現地にやってきて、周辺環境などを含めて確認作業をするので、周囲の人に売却を検討することが知られる可能性もあります(ただし、不動産会社もプロですから、この辺りについてはかなり気を配るように教育されています)。
また、簡易査定に比べると費用がかかるのもデメリットの1つといえるでしょう。
このように、簡易査定と訪問査定にはそれぞれメリット・デメリットがありますので、最初に大まかな相場を知るために簡易査定をし、そのあと本格的に売却を検討するのであれば本格査定を依頼しましょう。
簡易査定はオンライン上で複数の会社に依頼できますので、そこから希望の会社を絞り込み、本格査定を依頼するという流れが理想的です。
3、簡易査定(不動産売却査定サイトの利用)に必要な書類は?
(1)必要な書類と取得方法
簡易査定では、基本的に不動産売却査定サイトを利用して依頼します。そのため、必要書類はありません。以下の情報さえ把握しておけば大丈夫です。
- 住所
- 間取り
- 築年数
- 占有面積
- (戸建ての場合)延床面積、(マンションの場合)占有面積
実店舗へ簡易査定を申し込む場合には、訪問査定時に必要となる書類のうち、不動産の現況がわかるものはいくつか準備しておいた方がいいでしょう。
(2)オススメの売却査定サイト
より高く売るために、当メディアとしては簡易査定として不動産を売るなら売却査定サイトの活用をオススメしています。
売却査定サイトとは、複数の不動産会社から一括して売却価格の見積り等をもらえるサービスです。
画像にすると以下の通りです。
メリットとしては、一度に見積りをもらえるので早く売却することが可能な点です。また、複数の不動産会社から見積りをもらえるので、以下の画像の通りすぐに高額で買取、もしくは仲介してくれる不動産会社が分かります。
なお、オススメの不動産査定サイトについて詳しくは「【2019年最新版】プロが選んだ「不動産売却一括査定サイト」ランキング」の記事をご参照下さい。
4、本格査定(訪問査定)に必要な書類は?
次は本格査定(訪問査定)時に必要な書類を紹介していきます。
まず表にすると以下の通りです。
売却する不動産が、
- マンション
- 戸建て
- 土地
それぞれである場合に、必要な書類は○、「あればベター」という書類は△でまとめています。
| 必要な書類 | 取得方法(場所、手続きなど) | マンション | 一戸建て | 土地 |
1 | 登記簿謄本 | 法務局で取得可能です | ○ | ○ | ○ |
2 | 土地測量図・境界確認書 | 土地取得時に受け取っているはずです。もしなければ法務局で取得しましょう。そもそも作成していなければ土地家屋調査士に依頼しましょう |
| ○ | ○ |
3 | 物件間取り図 | 購入時に受け取っているはずです。手元になければ不動産会社が作成してくれます | ○ | ○ |
|
4 | マンションの管理規約 | もしお持ちでなければマンションの管理組合に再発行してもらいましょう | ○ |
|
|
5 | (マンションの場合)維持費等の書類 | 一度配られているはずです。もしお持ちでなければマンションの管理組合に再発行してもらいましょう | ○ |
|
|
6 | 管理委託契約書 | もしお持ちでなければマンションの管理組合に再発行してもらいましょう | ○ |
|
|
7 | 購入時の売買契約書 | もしお持ちでなければ購入時の不動産会社から控えをもらいましょう | ○ | ○ | ○ |
8 | 購入時の重要事項説明書 | もしお持ちでなければ購入時の不動産会社から控えをもらいましょう | ○ | ○ | ○ |
9 | 地盤調査報告書 | もしお持ちでなければ購入時の建築会社に問い合わせましょう |
| △ | △ |
10 | 住宅性能評価書 | もしお持ちでなければ購入時の建築会社に問い合わせましょう |
| △ |
|
11 | 耐震診断報告書 | もしお持ちでなければ購入時の建築会社に問い合わせましょう |
| △ | △ |
12 | アスベスト使用調査報告書等 | もしお持ちでなければ購入時の建築会社に問い合わせましょう |
| △ | △ |
では、以上のうち重要なものをリストアップしたのでみていきましょう。
(1)登記簿謄本
登記簿謄本とは、「登記事項証明書」とも呼ばれ、不動産に関連する情報を記載されており、法務局にて誰でも取得する事ができます。
ご自身で用意する時間がない場合、仲介業者の担当者に依頼することも可能です。
(2)土地測量図・境界確認書
一戸建てや土地などを売却する際に、土地の面積や境界線を明確に知るために必要な書類です。
万が一、境界線が未確認である場合、トラブルを防止するため隣接地の土地所有者と協議し、作成しておいたほうが無難です。
(3)物件間取り図など
物件の間取りや設備に関する情報を確認することができます。
人気のある設備が設置されている場合、販売図面に記載することによって、物件の売りポイントにもなりますので、必ず提示するようにしましょう。手元に間取り図がない場合は、不動産会社に作成を依頼してみましょう。
(4)(マンションの場合)維持費等の書類
マンションの管理費、修繕積立金などの維持費を確認することができます。
また、固定資産税と同じように、マンションの管理費や修繕積立金も決済日を基準に精算することになります。
(5)(マンションの場合)マンションの管理規約
「ペットの飼育ができるか」「管理会社にどの部分まで委託しているか」といったマンション管理の詳細な情報を確認するために必要な書類となります。
5、不動産売買契約するために必要な書類
次は不動産売買契約するために必要な書類を、
- (1)売主ご自身に関連する書類
- (2)不動産に関連する書類
に分けて紹介していきます。
表にまとめると以下の通りです。
|
| 必要な書類 | 取得方法(場所、手続きなど) | マンション | 一戸建て | 土地 |
(1)売主本人関連書類 | 13 | 身分証明書 | 運転免許証、パスポート、保険証などです | ○ | ○ | ○ |
14 | 実印 |
| ○ | ○ | ○ | |
15 | 印鑑証明書(3ヶ月以内発行のもの) | 役所で取得することができます | ○ | ○ | ○ | |
16 | (売却不動産の住所と違う場合)住民票 | 役所で取得することができます | ○ | ○ | ○ | |
17 | (住宅ローン利用の場合)ローン残高証明書 | お持ちでなければ借入した金融機関に発行してもらいましょう | ○ | ○ | ○ | |
18 | 銀行口座の通帳 |
| ○ | ○ | ○ | |
(2)不動産関連書類 | 19 | 登記済権利証(または登記識別情報) | 法務局で取得可能です。条件を満たせばオンライン申請も可能です | ○ | ○ | ○ |
20 | 売買契約書 | 不動産会社が作成してくれます | ○ | ○ | ○ | |
21 | 重要事項説明書 | 不動産会社が作成してくれます | ○ | ○ | ○ | |
22 | 建築確認済証 | 原則再発行はされません。万が一紛失してしまった場合は「建築台帳記載事項証明書」という書類で代用します |
| ○ |
| |
23 | 建築検査済証 | 原則再発行はされません。万が一紛失してしまった場合は「建築台帳記載事項証明書」という書類で代用します |
| ○ |
| |
24 | 建築設計図書 | もしお持ちでなければ建築した施工会社から取り寄せましょう |
| ○ |
| |
25 | 固定資産税納税通知書 | 毎年4月頃に送られてきます。もしお持ちでなければ役所で発行してもらいましょう | ○ | ○ | ○ | |
26 | 物件のパンフレットなど | 物件購入時に取得しているはずです。残っていれば用意しましょう。契約にあたりマストなものではないのでなくても大丈夫です | △ | △ |
(1)売主ご自身が用意する書類
不動産の売買契約書を締結するには、売主は以下の書類を用意する必要があります。
- ①身分証明書
- ②実印
- ③印鑑証明書(3ヶ月以内発行のもの)
- ④(売却不動産の住所と違う場合)住民票(3ヶ月以内発行のもの)
- ⑤(住宅ローンを利用の場合)ローン残高証明書
- ⑥銀行口座の通帳
(2)不動産に関連する書類
続いて、不動産を引渡す際に、買主に渡す不動産に関連する書類になります。
- ①売買契約書
- ②重要事項説明書
- ③登記済権利証
- ④建築確認済証及び検査済証、建築設計図書など
- ⑤固定資産税納税通知書
では、それぞれについてみてみましょう。
①売買契約書
不動産会社が作成してくれます。
物件の範囲、売買代金、手付金額、特約などの記載内容に漏れや誤りがないか、きちんとチェックしましょう。
②重要事項説明書
不動産会社が作成してくれます。
物件の重要な事項を説明する書類ですので、売主としてもきちんとチェックしましょう。
③登記済権利証
売主がその物件の真の所有者であることを証明する書類です。
物件を購入された際に法務局から取得したはずの書類であり、移転登記をすることで、その権利が買主に移ったことが証明されます。
④建築確認済証及び検査済証、建築設計図書など
建築確認済証や検査済証は、売却する不動産が建築基準法を満たした物件であることを証明する書類で、一戸建ての売却に必要な書類となります。
その他建築設計図書などの書類は、将来物件をリフォームする際にも必要になることがあるので、できるだけ提出するようにしましょう。
⑤固定資産税納税通知書
物件に関する固定資産税の費用を知るために必要な書類となります。移転登記に必要となる登録免許税を算出する際にも必要です。
また、固定資産税は毎年の1月1日の所有者に課税されるため、不動産を売却する際に、買主と決済日を基準に精算する事になり、その費用を算出するための根拠となる資料でもあります。
⑥その他の書類
上記にて記載した書類の他にも、物件に関連する書類があれば、用意するようにしましょう。
物件の設備に関する説明書、購入時のパンフレットなどの資料もあれば、買主に渡すようにしましょう。
6、不動産売却必要書類チェックリストをダウンロード!
まずはチェックリストをダウンロードしましょう。
以下の内容で、Excel版とPDF版をご用意しました。是非ダウンロードいただき、必要書類の抜けや漏れがないようご活用下さい。
7、入手方法が分かりにくい書類の入手方法、紛失時の対応
不動産売却に関連する書類の中には、普段あまり見慣れないような書類も含まれています。見慣れないだけに入手方法が分からなかったり、紛失したりしている書類もあるかも知れないので、それぞれの書類の入手方法と紛失時の対応を解説します。
(1)不動産の権利証が見当たらない場合は?
不動産の権利証は、法務局において発行された不動産の所有者を証明する書類です。厳密には「登記済権利証」と呼ばれていますが、紙でできた書類なので長期間保管していると、紛失することもあるでしょう。
この権利証は、平成17年の法改正によって「登記識別情報」という取り扱いに変わっています。この法改正以降、現在に至るまで不動産の権利を証明する方法として登録識別情報と呼ばれる12ケタの文字列(パスワードのようなもの)で管理されています。この登記識別情報を知っているのは不動産の所有者だけであり、これが交付されている人が不動産の所有者であると証明されます。
法改正が行われたのは平成17年ですが、実際には平成18年から平成20年にかけて段階的に変更していったのが実情です。そのため、平成17年以降に取得した不動産の場合は、権利証という形ではなく登記識別情報という形になっている可能性があります。「権利証がない!」と大騒ぎになったものの、実は登記識別情報ならあったという事例も実際にあるので注意しましょう。
(2)では登記識別情報も見当たらない場合は?
権利証が見当たらない、しかも登記識別情報も見当たらないという場合は、紛失したという取り扱いになります。そのままでは不動産売却ができないので、2通りの方法から解決策を選択することになります。
1つ目は本人確認情報といって、登記を代行する司法書士が「紛失したものの正規の所有者である」ことを確認し、それを司法書士の名前で証明する方法です。これにより、不動産の移転登記が可能になるため、売却も可能になります。
もう1つの方法は事前通知制度といって、法務局を使った確認方法です。こちらは、法務局から届いた事前通知に返送をすることで登記申請が本人からのものであることを確認する方法です。司法書士の手を煩わせることがないため費用はかかりませんが、事前通知に返送をしなかったら登記申請が却下となってしまい売却そのものができなくなるため、高リスクです。
一般的には権利証および登記識別情報を紛失した場合、司法書士による本人確認情報を用いるのが大半です。
(3)固定資産税納税通知書の入手方法
毎年4?5月頃に市区町村から届きます。郵便で届くので、届いたら売却時のために保管しておきましょう。
(4)建築確認済証及び検査済証
売却しようとしている不動産を購入した時に受け取っているはずの書類です。もし紛失していて見当たらない場合は、最寄りの役所に行って建築課もしくは同様の業務を行っている窓口に行くと「建築台帳記載事項証明書」という同じ効力を持った書類を発行してくれます。
(5)マンションの管理規約、長期修繕計画書
マンションを購入した時に売主または管理会社から受け取っているはずの書類です。長期修繕計画書については、管理会社から後日郵送されているはずです。これらが見当たらない場合は、マンションの管理会社、もしくは管理組合に依頼すると再発行してくれます。
まとめ
今回は不動産売却時に必要な書類について書きましたが、いかがでしたでしょうか。
不動産の売却にはたくさんの書類が必要になり、しかも長期保管していなければならない書類も多いので、簡単に揃えられないかも知れません。
この記事では、それぞれの書類の入手方法や紛失した場合の対応についても解説しましたので、慌てることなくひとつずつ書類を揃えていってください。