土地を売却する場合、税金に関する知識は非常に重要です。
土地を売却する際には、税金の理解が不可欠です。土地売却時に考慮すべき主要な税金は、譲渡所得税、住民税、登録免許税、そして印紙税の4つです。これら各税金の負担を正確に理解し、適切な対策を講じることで売却後の財政的なプランを立てることができます。この他に、固定資産税は、売却年度においては売主と買主の間で按分されるため、契約時にこの点を明確にしておくことも重要です。
土地売却にかかる税金は、売却益に対して課される譲渡所得税(所得税・住民税)と、売買契約書に貼付するための印紙税、登記申請にあたって必要になる登録免許税です。
目次
1、土地を売却したときの税金の種類
土地を売却した際には、以下の4つの税金がかかります。
- 所得税
- 住民税
- 印紙税
- 登録免許税
本章では上記の税金について、詳しく解説します。
(1)所得税
所得税は、個人が1年間に得た所得に対して課税される税金です。土地売却においても、売却益が出れば所得税がかかります。
所得税は10種類に分類されており、土地売却にかかる税金は、その中の「譲渡所得税」にあたります。
土地売却で得た所得から、控除分を差し引いた分を「譲渡所得」といい、譲渡所得税は、譲渡所得に応じて課税額が決まる税金です。土地の譲渡所得は、他の所得と分けて計算しなければなりません。
所得税は土地売却でかかる税金の中で、最も高額になります。
(2)住民税
土地売却によって発生した譲渡所得には、住民税もかかります。
住民税は売却した土地の保有年数によって税率が異なる点に注意しましょう。保有年数が、
- 5年以下の場合「短期譲渡所得」となり9%
- 5年超の場合「長期譲渡所得」となり5%
の税率がかけられます。
(3)印紙税
多額の金銭が動く契約では、書面のやりとりが生まれます。印紙税は、このような場合に交わす契約書や領収書などにかかる税金です。
土地売却では、売買契約成立時に交わす契約書に、収入印紙を貼付して納税します。記載額によって税額が変動する税目で、主な納税額は以下の通りです。
なお、書面に記載された契約金額が10万円を越える場合、令和6年3月31日まで軽減措置が適用されます。
書面に記載された契約金額 | 本則税率(2024年4月~) | 軽減税率(~2024年3月) |
500万~1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万~5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万~1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円~5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
(4)登録免許税
登録免許税は、売却する土地に抵当権が設定されている場合に必要になる税金です。
売主が売却しようとする不動産を担保にローンを組んでいる場合、その不動産に設定されている抵当権の抹消登記が必要になります。
抵当権抹消登記を行う不動産1つにつき1,000円になるので、売却する土地が1つの場合、かかる登録免許税は1,000円となります。
2、土地売却時の「譲渡所得」計算式と税率
前章では、土地売却によって「譲渡所得」が発生すれば、所得税・住民税がかかることをお伝えしました。所得税と住民税は
- 譲渡所得額
- 土地の保有期間
によって大きく変わります。
本章では、
- 譲渡所得の算出方法
- 土地の保有期間による税率の違い
について詳しく解説します。
(1)譲渡所得の算出方法
譲渡所得の算出方法は以下の通りです。
譲渡所得の算出方法
譲渡所得 = 収入金額 – 購入価格 -(取得費用 + 譲渡費用)
取得費用は、土地購入時にかかった費用のことを指し、以下のものが該当します。
取得費用の例:
- 土地の購入代金
- 購入手数料
- 土地購入の際の登録免許税、印紙税、不動産取得税
- 土地の取得に際して支払った土地の測量費用
- 土地の埋立て、地ならしをするために支払った造成費用
なお、大まかに「売却価格 × 5% = 概算取得費用」で概算することもできます。
次に譲渡費用ですが、土地売却時にかかった費用のことで、該当する項目は以下の通りです。
譲渡費用の例:
- 土地を売るために支払った仲介手数料
- 売主が負担した印紙税
- 売却予定の土地に建っている建物の取り壊し費や建物の損失額
- 既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金
- 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料
収入金額、購入価格、取得費用、譲渡費用の4つを用いることで、譲渡所得を求められます。
(2)譲渡所得の税率は保有期間によって異なる
所得税・住民税の税率は、「土地の所有期間が5年以下 or 5年超」で大きく異なります。
所有期間が5年以下は短期譲渡所得、5年超は長期譲渡所得に分けられます。それぞれの所得税率と住民税率は以下の表の通りです。
短期譲渡所得(5年以下) | 長期譲渡所得(5年超) | |
所得税率 | 30% | 15% |
住民税率 | 9% | 5% |
合計 | 39% | 20% |
※短期・長期ともに2037年までは所得税に対して2.1%の復興特別所得税が加わります。
この表で注目して頂きたいのが、所得税率と住民税率の合計です。短期譲渡所得だと税率は約40%となり、長期譲渡所得のおよそ2倍になってしまいます。
土地売却で得た譲渡所得を仮に1,000万円としましょう。長期譲渡所得だと約200万円の納税で良いところを、短期譲渡所得だと約400万円もの税金がかかってしまうのです。
土地を取得してから5年以内に売却すると、納税額は上記で示したように非常に高くなってしまいます。税金をなるべく抑えたい場合は、5年以上所有してから売却するとよいでしょう。
所有期間に関して注意点が1点あります。長期譲渡所得、あるいは短期譲渡所得のどちらに該当するかの基準は、「土地の所有期間が5年以下 or 5年超」であると先述しました。
譲渡所得の計算のための不動産の所有期間は、
- 土地取得日から譲渡した年の1月1日までの年数
でカウントされます。譲渡した日までの期間ではないことに注意してください。
3、土地の売却にかかる税金のシミュレーション
前章で、土地売却にかかる税金は、
- 譲渡所得額
- 土地の保有期間
の違いで大きく変わることを説明しました。
実際の課税にあたって、上記2点をもとに、どのくらいの税金が課されるかシミュレーションできるようになると、資金計画を立てやすくなるでしょう。
本章では、土地売却の税金シミュレーションを3つ解説します。
(1)所有期間2年、購入価格3,000万円の土地を3,500万円で売却した場合
- 所有期間:2年
- 売却価格:3,500万円
- 購入価格:3,000万円
- 取得時諸費用:100万円
- 譲渡時諸費用:150万円
譲渡所得の算出方法は
譲渡所得 = 収入金額 – 購入価格 -(取得費用 + 譲渡費用)
となるため、上記条件で土地売却をした場合の譲渡所得は、以下の通りです。
【計算方法】
3,500万円 - 3,000万円 -(100万円 + 150万円)= 譲渡所得 250万円
土地の所有期間は5年以下なので、短期譲渡所得に該当します。
譲渡所得250万円に対して所得税30%、復興特別所得税2.1%、住民税9%の税率が課されるため、各税金とその合計は次のようになります。
- 所得税:750,000円
- 復興特別所得税:15,750円
- 住民税:225,000円
- 合計:990,750円
上記金額に加え、
- 登録免許税:1,000円(抵当権抹消登記を行う場合)
- 印紙税:20,000円(本則税率適用、契約書を売主分・買主分の2通作成し、双方が負担する場合)
がかかるので、これらを合わせると税金は1,011,750円です。
(2)所有期間9年、購入価格5,000万円の土地を7,000万円で売却した場合
- 所有期間:9年
- 売却価格:7,000万円
- 購入価格:5,000万円
- 取得時諸費用:200万円
- 譲渡時諸費用:300万円
【計算方法】
7,000万円 - 5,000万円 -(200万円 + 300万円)= 譲渡所得 1,500万円
土地の所有期間は5年超なので、長期譲渡所得に該当します。
譲渡所得1,500万円に対して所得税15%、復興特別所得税2.1%、住民税5%の税率が課されるため、各税金とその合計は次のようになります。
- 所得税:2,250,000円
- 復興特別所得税:47,250円
- 住民税:750,000円
- 合計:3,047,250円
(1)のケースと同様、上記金額に加えて、
- 登録免許税:1,000円(抵当権抹消登記を行う場合)
- 印紙税:60,000円(本則税率適用、契約書を売主分・買主分の2通作成し、双方が負担する場合)
がかかるので、これらを合わせると税金は3,108,250円です。
(3)所有期間6年、購入価格4,000万円の土地を3,000万円で売却した場合
- 所有期間:6年
- 売却価格:3,000万円
- 購入価格:4,000万円
- 取得時諸費用:100万円
- 譲渡時諸費用:200万円
【計算方法】
3,000万円 - 4,000万円 -(100万円 + 200万円)= 譲渡所得 – 1,300万円
このケースでは、譲渡所得がマイナスになるため、所得税や住民税はかかりません。
しかし、譲渡所得がマイナスの場合でも、
- 登録免許税:1,000円(抵当権抹消登記を行う場合)
- 印紙税:20,000円(本則税率適用、契約書を売主分・買主分の2通作成し、双方が負担する場合)
がかかることに注意しましょう。
4、土地の売却で発生する税金の納税スケジュール
土地売却で発生する税金には
- 所得税
- 住民税
- 印紙税
- 登録免許税
の4種類ありますが、それぞれ納めるタイミングが異なります。
土地の売却で発生する税金の納税スケジュールは以下の表・図のとおりです。
税金の種類 | 納税するタイミング |
印紙税 | 売買契約時 |
登録免許税 | 引き渡し時 |
所得税 | 原則、売却した翌年の2月16日~3月15日 |
住民税 | 売却した翌年の6月以降 |
上記4つの税金のうち、金額が大きくなる可能性があるのが所得税・住民税です。
所得税・住民税の納税は売却の翌年となるので、売却によって得た利益は全て使わずに残しておくことをおすすめします。
5、土地売却の際の税金、節税対策に利用できる3つの特例
土地を売却すると高額の税金が発生します。少しでも納税額を抑えたいと考える方もいるのではないでしょうか。
本章では、支払う税金の額を抑えることが可能な3つの特例について、解説します。
(1)居住用不動産としての土地を売却したときの特例
自分が住んでいた土地の売却であれば、譲渡所得から3,000万円を控除できます。
この特例は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といい、名の通り、居住用財産の売却益にかかる税金を控除できるというものです。
この特例が適用されれば、3,000万円以下の譲渡所得には税金がかかりません。
(2)公共事業目的で土地を売却したときの特例
保有する土地を公共事業のために売却した際には、5,000万円の特別控除を受けられます。
この特別控除を受けるには、
- 売った土地が固定資産であること(不動産業者などが販売目的で所有している土地建物は、固定資産ではない)
- 原則として、売った資産と同じ種類の資産を買い換えること(土地を売却したのであれば、他の土地を購入する)
- 原則として、土地建物の収用等のあった日から2年以内に代わりの資産を取得すること
などの要件すべてを満たさなければなりません。
(3)平成21年〜22年に取得した土地を売却したときの特例
売却する土地を平成21年もしくは平成22年に取得している場合、1,000万円の特別控除を受けられます。
この特例は、「リーマンショック後、低迷する不動産市場を活性化すること」を目的として作られたものです。
平成21年または22年に土地を取得して、5年超所有することで控除を受けることができます。
手間なく高く不動産を売却したいのであれば一括査定サイトの活用がオススメです。
多くの査定サイトがありますが、「すまいValue」は以下の大手6社が参画する一括査定サイトです。
- 東急リバブル
- 住友不動産販売
- 野村の仲介
- 三井のリハウス
- 三菱地所の住まいリレー
- 小田急不動産
土地売却でかかる税金についてよくある質問
Q1.土地売却でかかる税金の種類は?
- 売却することで得た利益(譲渡所得)に対してかかる所得税・住民税
- 売買契約書に貼付する印紙税
- 登記申請時にかかる登録免許税
Q2.譲渡所得の計算方法は?
譲渡所得 = 売却金額 - 購入価格 -(取得費用 + 譲渡費用)
※取得費用とは
- 土地の購入代金
- 購入手数料
- 土地購入の際の登録免許税、印紙税、不動産取得税
- 土地の取得に際して支払った土地の測量費用
- 土地の埋立て、地ならしをするために支払った造成費用
「売却価格 × 5% = 概算取得費用」で概算することもできます。
※譲渡費用とは
- 土地を売るために支払った仲介手数料
- 売主が負担した印紙税
- 売却予定の土地に建っている建物の取り壊し費や建物の損失額
- 既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金
- 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料
Q3.譲渡所得に対してかかる所得税・住民税の税率は?
- 所有期間が5年以下の短期譲渡所得は所得税30%、復興特別所得税2.1%、住民税9%
- 所有期間が5年超の長期譲渡所得は所得税15%、復興特別所得税2.1%、住民税5%
Q4.土地売却の際、税金がかからないこともある?
- 利益が出ていない場合
- 特別控除が適用でき、譲渡所得金額がゼロになる場合
上記の場合は、所得税・住民税はかかりません。
ただし、所得税・住民税がかからない場合でも、登録免許税と印紙税がかかる可能性があることに注意しましょう。
まとめ
本記事では、以下の4つのポイントを解説しました。
- 土地の売却で発生する税金の種類
- 土地売却にかかる税金の計算をするうえで重要な「譲渡所得」や税率
- 土地売却にかかる税金のシミュレーションと納税スケジュール
- 土地売却にかかる税金の節税対策に利用できる特例
土地売却によって発生する税金は4つがあります。特に所得税と住民税に関しては、「土地の保有期間が5年以下か、5年超か」という基準によって、税率が大きく異なる点に注意してください。