今年に入って特に、相続税対策や土地活用をセールストークに全国で事業を拡大し、高齢者を中心とした多くの顧客を持つ大手ハウスメーカーやアパートメーカーの商品において次々と建築違反が発覚するというトラブルが起きてます。
もともと建物の設計や構造に不具合が噂されて「危ない」アパートメーカーとして有名だったところでの問題がやっと顕在化したものもあれば、全くそのようなクレームは聞いたことがない業界では最大手の物件にまで広がっています。
その共通点は、各社とも「型式適合認定制度」によって作られたものであることが指摘されています。
今回はこの制度とアパートメーカーの事情、それを踏まえた投資家としての対応策について考えて行きましょう。(田井能久・不動産鑑定士、ロングステイアドバイザー、タイ・バリュエーション・サービシーズ代表取締役)
アパート経営全般については、以下の記事をご覧ください。
アパート経営するには?成功させるために知りたい11のこと
フドウくん
・不動産メーカーのビジネスモデル
アパートメーカーは自社のブランドイメージに合ったデザインや規格で個人住宅や共同住宅の商品を開発します。
この開発した商品を自社の営業活動によって販売し、実際に建ててもらうのは提携先の工務店さんや大工さんにお願いしています。
もちろんフルオーダーの完全注文住宅もありますが、その多くはオプションで対応し、ほとんどが規格内で納め、単一な仕様の商品を多く作成することでコストを削減し利益を多く生み出すことができているのです。
ほとんどのアパートメーカーは戸建住宅も販売しているので、ハウスメーカーと同じ意味ととらえても問題ないでしょう。
つまり家やアパートも洋服や車のように、同じ商品をたくさん作ることでビジネスが成り立つので、ハウスメーカーがハウスビルダーと言われないのは、大きな意味で製造業であるからなのかも知れません。
このように単一のものをたくさん作る場合、ある一定の型で作り、その型に遵法性があるのなら、そこから作られるものはすべて遵法性があると推定されます。
その考えに基づいてできたのが「型式適合認定制度」です。
それは、包括的に建築材料や主要構造部や設備などについて建築基準法に基づく関係法規等に適合する旨の認定を受ける制度です。
メリットとしては何よりも一つ一つの建物の建築確認申請時の書類作成や審査を簡素化でき、時間とコストが削減できることでしょう。
そしてその認定は屋根材や壁材など「建築物の部分の設計仕様」や防火設備、換気設備、合併処理浄化槽、給水タンク、エレベーターなどの「建築設備、防火設備等」の各設備などに対象が分類されています。
・不動産での「型式適合認定制度」2つの問題点
コストや時間が短縮できるというメリットが大きい反面、下記のような問題点が指摘されています。
(1)安全性がブラックボックス化しやすい
メーカーは自社独自の実験や検証によってこの制度による商品を開発して世に出します。
その結果安全性を第三者がチェックしようと思っても会社独自の構造になっているので、例え図面を入手したとしてもできないと言われているのをご存じでしょうか。
まして一般の消費者となったら、その会社のイメージやブランド力を信じるしかありません。
そして問題が起こった時も、その原因は設計士の認識不足という形で説明されることが多く、根本的な対策方法が提示されるわけでもありません。
(2)現場の認識のズレや増改築等の困難性
この制度でアパートを建てている場合、現場での判断はほとんどありません。
経験上おかしいなと感じても、それを否定できる材料がないからです。
そこで間違いに気づかず遵法性に欠けた状態で次々に同じものを作り、気が付いたときには一気に被害の範囲が拡大することになります。
本来なら土地は場所によってその状態は違うので、現地の状況に応じた設計をし、さらに現場に応じて大工さんが工夫するのが望ましいでしょう。
しかしこの制度は現場に応じて臨機応変に対応することが非常に難しく、結果的に一度建ててしまうと法律的にも建築申請を通すことができず増築が困難であると言われています。
・投資家としての対応策はどうするか
本来なら自分の土地に合ったオーダーメイドが望ましいのですがコスト面から見てもほとんどの人は現実的に不可能になってくるため、現状ではより良いアパートメーカーを選択するしか方法は無いでしょう。
そしてその賢い選択をするためには単なるイメージや営業トークでなく、このような制度の存在自体を認識し、その問題点を把握することが大切なのではないでしょうか。
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