物件の購入や売却に関わらず、不動産に携わっていると様々なトラブルはつきものです。
今回は知人から聞いた体験談の中でも最大級に近い衝撃を受けたAさんのとんでもないエピソードをもとに、不動産が売れない理由と対策を解説していきます。(岩田亜希・宅地建物取引士、兼業不動産投資家)
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・エリートサラリーマンを襲った悲劇とは
Aさんは都内の上場企業に勤務しているサラリーマン、家族構成は、専業主婦の奥さんと小学生になるお子さんの3人家族でした。
お子さんが小学校に上がる前に、家族で住むための家を35年ローンで購入し、絵に描いたような順風満帆の人生だとこの時は誰もがそう考えていました。
ところが結婚生活も10年経った頃から、夫婦の間に亀裂が入ってきます。ある時、Aさんは奥さんに離婚を切り出しました。
ところが、10年以上も専業主婦だった奥さんは子育てと両立できる仕事が見つかるかどうかの不安もあり、一切首を縦に振りません。
しかし結婚生活さえ続けていれば働かなくても夫であるAさんがローンを支払ってくれる家に住み、何不自由ない生活を送ることが可能です。離婚は奥さんにとっては全くメリットがありませんでした。
しかしAさんはAさんで、これ以上奥さんと同じ家に住むことは限界でした。そしてついにAさんは奥さんと子供を残し、必要最低限の荷物だけを持って単身で家を出てしまったのです。
衝動的な行動ですが、その時のAさんにはこれが最善の選択肢でした。
・売るに売れない泥沼物件
その時のAさんは、きっと話し合えば奥さんも納得して離婚に応じ家も売却できると考えていたようですが、これが一筋縄ではいきませんでした。
奥さんは一切離婚に応じず、そして引き続き働くこともせずに家に居座ってしまったのです。その間、Aさんは自分自身の生活費とは別に自分は住んでいない家のローンと奥さんと子供の生活費合わせて毎月50万円を支払っていました。
・破綻寸前にAさんが取った行動とは
そのような状況が数年続いたため、Aさんはもはや破綻寸前になってしまいました。そこでAさんは捨て身の行動に出ます。それは「住宅ローン滞納」です。
金融機関への返済が滞ると、個人信用情報に傷がつきいわゆる「ブラックリストに載る」状態となってしまいます。
しかし、支払えないものは仕方ありません。
返済が滞ると金融機関はその物件を競売にかけます。こうなると、どんな理由があるにしても、その物件に住んでいる奥さんと子供は強制退去させられます。
その後奥さんと子供は退去し、その物件も競売にかけられて売却が完了、無事にAさんの手から離れることができました。
・Aさんが受けた大きすぎるダメージ
この一連の件でAさんが受けたダメージは計り知れません。精神的な負担はもちろんのこと、経済的な不利益が多く、悔やんでも悔やみきれない結果となりました。
まず第一に、物件を適正価格で売却できず、本来得られるはずの売却益を失いました。
Aさんの物件は、駅近で子育て世代に人気のエリアだったため、奥さんがすんなり退去してくれて市場価格で売却できていれば1千万円ほどの売却益が見込めました。
ところが「ローンの滞納」と「競売」になってしまったことで遅延損害金の発生や競売による買い叩きのために、ほぼ利益はゼロとなってしまいました。
また、滞納による個人信用情報に傷がついたこともボディブローのように後々に地味にダメージが効いてきます。
滞納してからしばらくすると、それまで使用していたクレジットカードが軒並み使えなくなってしまったのです。
クレジットカード会社は定期的に個人信用情報をチェックし、事故情報が載っていると強制的に解約することができるのです。
もちろん、事故情報が載っているうちは、新規でクレジットカードを作成することもできず、新たにローンを組むこともできません。
Aさんは今、個人信用情報から滞納の履歴が消えるのをただ待ち続けるのみです。
・離婚や相続などの人生もついてくる不動産
「住居」という生活に密着したものだけに、離婚や相続など、人生を左右するようなイベントにも付いて回ってくるのが不動産です。
未来のことを予測するのは難しいですが、トラブルなく不動産と付き合っていくためには、やはり最初の決断や節目節目での選択が大切だと思い知った一件でした。