不動産投資の成功には、キャッシュフローをしっかりと理解し、安定的にプラスを維持することが不可欠です。キャッシュフローが健全であれば、リスクを抑えつつ長期的な資産の拡大を目指すことが可能です。
この記事では、「キャッシュフロー」について詳しく説明し、計算方法や便利なツールの利用方法についても触れます。不動産投資についてより詳しくなりたい方のご参考になれば幸いです。
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目次
1、不動産投資で重要なキャッシュフロー
(1)不動産投資のキャッシュフローとは?
キャッシュフローとは、簡単に言うと、手元に残る「現金の流れ」です。不動産投資においては、物件から得られる家賃収入やその他の収入から、ローン返済や管理費、修繕費などの全ての支出を差し引いた後に残る現金のことを指します。
これがプラスであると資産が増えていく状況となり、マイナスであると資金が減少し、最悪の場合は赤字が続いてしまうリスクが高まります。
具体的に、不動産投資におけるキャッシュフローには以下の二つがあります。
- 営業キャッシュフロー(Operational Cash Flow)
投資物件の通常の運営によって得られる現金収入から、物件の運営費用やローン返済、税金などを差し引いた後に残る現金のことです。 - 投資キャッシュフロー(Investment Cash Flow)
新しい物件を購入したり、既存の物件に改修費をかけたりした際に発生するキャッシュフローです。これは通常、短期的にはマイナスになりますが、長期的な資産価値の向上を目指すためのものです。
(2)なぜキャッシュフローを重視すべきと言われるのか
不動産投資では、「利回りはどれくらいなのか」が投資の目安になります。しかし、利回りばかりを気にするのではなく、キャッシュフローを重視すべきです。それはなぜでしょうか?
キャッシュフローが重視される理由は、不動産投資における「現金の流れ」が投資の健全性を直接反映するためです。キャッシュフローが安定してプラスであれば、収益性が高く、さらに物件の資産価値を維持または向上させるための余裕も生まれます。以下の理由でキャッシュフローの健全性が求められます。
持続的な収益確保
不動産投資は基本的に長期的な運用が前提となります。そのため、継続的にプラスのキャッシュフローを生み出すことが、投資を持続させるために最も重要です。
リスク管理の要素
不動産投資には、空室リスクや修繕費の発生、金利変動などのリスクが常に付きまといます。健全なキャッシュフローがあれば、こうしたリスクに対処するための予備資金が確保でき、緊急事態でも安定して運用を続けられます。
資産拡大の基盤
プラスのキャッシュフローは、次の物件への再投資や資産価値を高めるためのリフォーム費用に充てることができます。これにより、さらなる収益の拡大が見込めます。
融資の信用向上
銀行や金融機関からの融資を受ける際に、健全なキャッシュフローがある物件を所有していると、次の融資審査が通りやすくなります。これは、安定した収益があることを証明するためです。
(3)キャッシュフローが少ないと何が危ないのか?
キャッシュフローが少ない、もしくはマイナスの場合、次のようなリスクが高まります。
ローン返済の困難
キャッシュフローがマイナスになると、毎月のローン返済を自己資金から補填しなければならなくなります。これが長期化すると、手元資金が枯渇し、最終的には物件の売却や返済不能に追い込まれる危険があります。
不測の事態への対応力不足
空室や家賃滞納、予期せぬ修繕などの不測の事態に直面した場合、キャッシュフローが少ないと迅速に対応することができません。これが悪化すると、さらに収益が減少するという悪循環に陥る可能性があります。
資産価値の低下
物件のメンテナンスやリフォームに資金を回せなくなると、建物の老朽化が進み、資産価値が下がる恐れがあります。資産価値の低下は、将来的な売却時の利益減少にも繋がります
同じ価格の収益物件を購入して不動産経営を始めたとしても、キャッシュフローが同じであるとは限りません。そこに大小の差が生じるのは、なぜでしょうか。
2、不動産投資のキャッシュフローを計算してみよう
不動産投資のキャッシュフローを計算してみましょう。そこから得られた計算結果が健全であるかどうかを判断する方法も、併せて解説します。
総収入の計算
総収入には、家賃収入をはじめ、駐車場収入や共益費など、物件から得られる全ての収入が含まれます。季節によって変動する収入もありますが、安定的な収入の平均値を使用することが一般的です。
総支出の計算
総支出には、次のような項目が含まれます:
- ローン返済
元本返済と利息を合わせたローンの支払額。 - 管理費
管理会社への手数料や清掃費、共用部分の維持管理費。 - 修繕費
物件の修繕にかかる費用。突発的な修繕に備えて予算を組んでおく必要があります。 - 固定資産税・都市計画税
毎年支払う税金。これも事前に考慮しておくべき重要な支出です。 - 保険料
火災保険や地震保険などの保険料。 - 空室率
実際に稼働していない期間の家賃損失を含めることで、より現実的な収支計算が可能です。
- ローン返済
例として、以下条件のアパート物件のキャッシュフローを計算しましょう。
- 物件価格:4,000万円
- 自己資金:500万円
- 借入金:3,500万円/20年返済/金利3%
- 部屋数:6部屋
- 家賃:6万円
- 空室率:20%
- 経費率:20%
(1)キャッシュフローの計算方法
不動産投資のキャッシュフローを計算する考え方は、とても簡単です。入居率を考慮した家賃収入から、必要経費とローン返済額を差し引くことで算出できます。
計算式は以下の通りです。
キャッシュフローの計算式
キャッシュフロー=家賃収入×入居率-経費-ローン返済額-税金
ここでいう経費というのは、管理会社への委託手数料や修繕費、修繕積立金などです。
満室時の家賃収入は、
36万円 × 12ヶ月 = 432万円
となります。
経費についてはとても計算が細かくなってしまうので、不動産投資のセオリーとして「20%」と概算します。すると経費は、
432万円 × 0.2 =86万4,000円
となりました。
(2)より現実に即したキャッシュフローを計算してみよう
前項の計算式は、少々机上の計算です。
アパートにある6戸すべてが満室状態で1年間を過ごしたことを前提としているため、言わばアパート経営における最良パターンだからです。
実際のアパート経営では、空室率を考慮する必要があるので(ずっと満室はありえないため)、ここでは空室率20%を織り込んでみましょう。また、ローン返済も考慮する必要があります。
先ほどの計算式から、空室率20%とローン返済額を引く計算が必要です。空室であっても経費と返済額は変わらないので、計算式は以下のようになります。
432万円 × 0.8-86万4,000円(経費)-234万円(ローン返済額)= 25万2,000円
6戸の部屋がある一棟アパート物件で得られる現実的なキャッシュフローは約25万円という結果になりました。
(3)キャッシュフローの健全性を判断する方法
キャッシュフローを使って、その収益物件が果たして健全な経営を可能にするのかどうかを判断する方法も、知っておく必要があります。なぜなら、せっかく利回りが高い物件を購入したとしても、資金ショートを起こしてしまっては意味がないからです。
キャッシュフローの健全性を判定する指標の一つとして、「債務返済倍率(DCR)」があります。
この債務返済倍率とは、家賃収入からローン返済額以外の経費・税金を引いた金額(営業純利益)をローン返済額で割った数値です。
年間の営業純利益÷年間のローン返済額=債務返済倍率(DCR)
それでは、先ほどの例で計算してみましょう。
年間営業純利益は259万2,000円でした。ローン返済額は234万円です。
259万2,000円÷234万円≒1.1
という結果になりました。
不動産投資の世界では、この債務返済倍率が1.3以上であることが望ましいとされており、この事例ではそれをわずかに下回っています。他に何か特段の魅力を感じることがないのであれば、見送りという判断が妥当でしょう。
(4)キャッシュフロー評価に活用したいCCR(自己資金回収率)
さらにキャッシュフローの計算について、深く掘り下げていきましょう。
不動産投資を始める際には、自己資金をある程度用意して、投資に臨むケースが多いと思います。
その時に用意する自己資金も現金なので、オーナー自身のキャッシュフローを不動産に投下したことになります。
この自己資金を不動産経営によって回収する必要があるので、回収に何年を要するのかを計算するのがCCRです。
CCRとはCash on Cash Returnの略で、自己資金という現金(=キャッシュ)の回収効率を知ることができます。
それでは、先ほどまでの例で計算してみましょう。4,000万円の収益物件購入のために500万円の自己資金を投じたとします。
計算式は以下の通りです。
CCRの計算式
CCR = 年間キャッシュフロー ÷ 自己資金
年間のキャッシュフローは空室率も考慮して25万2,000円と試算しましたので、それを自己資金である500万円で割ればOKです。
25万2,000円÷500万円=0.0504
この0.0505に100を掛けてパーセンテージ表示にすると、約5%となりました。
自己資金回収率は5%なので、このアパート物件は購入を見送ったほうが良いという判断もできます。
キャッシュフローの計算は、物件の収入と支出を明確に把握することが前提です。ここでは、不動産投資における基本的なキャッシュフローの計算方法を紹介します。
3、不動産投資のキャッシュフローを多くする3つの方法
不動産投資においてキャッシュフローを多くすることは、経営の健全化に直接関わりがあるので、多いに越したことはありません。
では、どうすればキャッシュフローが多くなるのでしょうか。その主な方法は、3つです。
(1)ローンの返済期間を長くする
同じローン借入額で毎回の返済額を減らすとなると、ローンの返済期間を長くする必要があります。
完済までの時間は長くなりますが毎月の手残りは多くなるので、次の物件への投資や現金を多めにプールしておきたい、という方には有効な選択肢です。
期間だけではなく、金融機関に金利を下げてもらうよう交渉する方法もあります。
例えば3,500万円を20年ローンで融資を受けたなら、金利1%下げただけでも年間の返済額を十数万下げることが可能です。
また、ローンの借り換えも検討しましょう。金利や借入期間など条件によって変動しますが、月々の返済額を数万円減らせるケースもあります。
いずれにしても、現在借入をしている金融機関側から提案されることはありませんので、専門知識のある不動産会社などに相談してみましょう。
不動産投資ローンにおいては、ご自身で交渉することを検討される方もいらっしゃいます。しかし、より有利な条件で返済期間を長く交渉するには、不動産投資会社の提携ローンを活用するといいでしょう。
不動産投資会社の提携ローンは、その会社と金融機関との付き合いがあり、個人で交渉するより有利な条件で融資ができるケースが多いからです。
ローンの返済期間を長くするには、不動産投資会社の担当と相談して、うまく交渉してもらうのが最も効率的な方法と言えるでしょう。
(2)家賃収入を増やす
家賃収入から必要コストを差し引いたものがキャッシュフローなので、差し引く前の家賃収入を増やす(または減らさない)ことも有効です。
「それができれば苦労はない」と思われるかも知れませんが、不動産投資の売り上げにあたる家賃収入を多くするための戦略を入念に立てる必要性は、言うまでもありません。
そのためのポイントは、たくさんあります。
安定した家賃収入を得るために必要な物件選びの秘訣は・・・
アパート経営の成功に向けての秘訣は・・・
「これが知りたかった⁉アパート経営で失敗しないための7つの極意」
マンション経営を成功させるための秘訣は・・・
「サラリーマンの副収入戦略!効果的なマンション経営テクニック」
賃貸経営全般における成功の秘訣は・・・
「失敗・成功事例で学ぶ!賃貸経営で不労所得生活を手にいれる方法」
「不動産投資の教科書」では、重要なポイントをそれぞれの記事で解説しています。ご興味のあるものから、順に併せてお読みいただければと思います。
(3)自己資金を多く用意する
毎月のローン返済額を減らすことで、キャッシュフローを多くすることができるのであれば、ローン借入額そのものを減らすために、自己資金を多く用意するという選択肢もあります。
株やFXよりも不動産投資は安定性の高い資産に対する投資なので、手持ちの現金を多めに投入したとしても現物資産が手元に残ります。
物件選びを間違えなければ、自己資金として多めに投資に回すことのリスクはそれほど高くはなりません。
「物件価格の1割」というのが自己資金の最低ラインとして目安となりますが、それより多い分には何の問題もありません。
むしろ融資の審査に通りやすくなるので、自己資金を多めに用意できる方はぜひ検討していただきたい選択肢です。
4、不動産投資のキャッシュフローお役立ちツール
不動産投資におけるキャッシュフロー(つまり手残り現金)をシミュレーションしておくことは、物件選びの段階から非常に重要です。
この記事では、そのシミュレーションに欠かせない計算方法を解説していますが、必要な数値を入力するだけで瞬時にキャッシュフローを計算できるツールがあります。
(1)賃貸用不動産の投資利回り(アットホーム)
大手不動産ポータルサイト、アットホームが提供している「投資利回り計算ツール」です。
厳密にはキャッシュフローを計算するものではありませんが、利回りを算出することで投資の有望性を判断したり、利回りからキャッシュフローを逆算することもできます。
(2)収益シミュレーター(三井不動産リアルティ)
「価格シュミレーション」を使用すると、検討段階で容易に取得できる数字だけで、収益のシュミレーションが可能です。
対象は東京都、横浜市、川崎市となっています。
物件選びの初期段階で利用すると、おおよその投資イメージが掴めると思います。
不動産投資におけるキャッシュフローに関するQ&A
まとめ
不動産投資を長期的に成功させるためには、キャッシュフローの管理が欠かせません。
安定したプラスのキャッシュフローを確保することで、リスクを最小限に抑え、資産を増やしていくことができます。計算方法やツールを活用して、正確なキャッシュフローの管理を行いましょう。