土地の転売で簡単に利益を出したいけれど、実のところ土地の転売って儲かるのだろうか……。
お笑いタレント・松本人志さんが、土地の転売で8億円を荒稼ぎしたというニュースによって、「土地の転売は儲かる」というイメージを持つようになった方は少なくないのではないでしょうか。
土地の転売で成功させるためには、いくつかポイントを押さえる必要があります。
今回は、土地の転売の仕組みについて解説したうえで、
- 土地の転売と法律や税制との関係
- 土地の転売で利益を上げられる可能性はあるか
- 土地の転売で利益を上げたい場合に具体的にどうすればよいか
などについて、不動産投資をはじめさまざまな資産運用に関するコンテンツを発信している当メディア「不動産投資の教科書」が解説します。
「土地の転売で儲けたい!」と考えている方々へ、参考になれば幸いです。
※この記事は2017年8月30日に公開したものを2021年3月24日に更新しました。
今回の記事をご覧の方は以下の記事も併せて読んでみてください。
土地売却の流れを解説します|高値で土地を売却するためには
目次
1、土地の転売の仕組み
土地の転売は、最近話題となったチケットやゲーム機の転売のように、差額分で儲ける方法です。
土地の転売というと、一般的には、投資のために行われます。
しかし、投資以外の目的で土地を手放すこともあります。
本項では、投資目的で土地を手放すこと(転売)とそれ以外の目的での土地を手放すことが、それぞれ具体的にどのような仕組みなのかについて、解説します。
(1)土地の転売を投資目的で行う場合
「土地の売買を利用して投資を行うこと」を目的とした土地の転売の流れは、次のとおりです。
- ①土地を購入する
- ②土地を保有する
- ③購入時よりも高額で売却できるタイミングを見極める
- ④土地を売却して利益を得る
土地の価格は、常に一定ではありません。
常に価格が変動するため、購入時より売却時の方が高額となるときもあります。
土地の転売においては、転売する人の多くが、「土地を売ること」を目的として土地を購入します。
売買取引としての目的が異なるだけで、土地の転売は通常の土地売買と同じ流れで行われるのです。
なお、土地の転売は、購入から売却までの期間が短い傾向にあります。
(2)土地の転売を投資以外の目的で行う場合
(1)では、土地の転売をする人のほとんどが「投資」目的で行っていると説明しました。
しかし、土地の売却をするすべての人が「投資」目的で行っているわけではありません。
例えば、現在住んでいる戸建てから引越すために戸建てと土地を売ることが挙げられます。
このようなケースでは、土地を売却する目的は、「引越し」です。
そもそも、投資のために土地を購入していませんので、土地の転売とはいえません。
2、土地の転売は違法?|法律や税制との関係
「転売は違法ではないのか?」と考える方も多くいらっしゃるかもしれません。
本項では、土地の転売が違法かどうかについて、法律や税制との関係を解説します。
(1)「土地の転売」自体は違法ではない
土地の転売においては、「土地を買って売却する」だけの行為であり、通常の不動産売買取引であるため、何ら違法ではありません。
「投資目的で土地を売却している人」と「すぐに土地を手放すことになった人」は両者とも、最終的に「土地を売る」という結果となり、区別がつかないでしょう。
しかし、土地の転売を行う場合には、税制などをしっかり理解したうえで取引をしなければなりません。税金の未払いなど、さまざまな問題が発生する可能性があります。
土地の転売を行う場合には、正確な知識を知ってから取引を行いましょう。
(2)土地の転売では税金がかかる
土地の転売では、非常に高額な税金が発生します。
なぜ土地の転売で税金がかかるようになってしまったのかについては、バブル時代の風潮が大きくかかわっているといわれています。
バブル時代においては、「土地ころがし」が非常に多く取引きされていました。
「土地ころがし」とは、土地を購入して、土地の価格が高騰したら転売することを繰り返すことです。
以上のような「土地ころがし」によって、膨大な利益を得る人々を抑制するために、土地の転売において高額の税金制度が制定されました。
現在もこの税金制度が残っているため、土地の転売では非常に高額な税金が発生するのです。
(3)土地の所有期間が短期間だと税金が高くなる
しかし、土地の転売では、必ずしも高額な税金が発生するわけではありません。
土地の転売における税金の金額は、転売前の土地の所有期間によって変動します。
バブル時代に制定された税金制度は、短期間に土地の転売を繰り返す人に対してするために作られたものです。
この性質を引き継いで、土地の所有期間が短いほど、税金が高くなります。
土地の所有期間による税金は、次の表のとおりです。
所有期間 | 5年以内(短期譲渡所得) | 5年超え(長期譲渡所得) |
所得税 | 30% | 15% |
住民税 | 9% | 5% |
参照:土地や建物を売ったとき―国税庁
以上の表からもわかるとおり、土地の所有期間が5年以内で売却する場合には、5年を超えて売却する場合よりも非常に高額な税金を支払わなければなりません。
所有期間の基準は、土地を売却した年の1月1日です。
なお、所有期間がいずれであっても、2021年に発生から10年を迎える東日本大震災の復興支援のための「復興特別所得税」2.1%が別途加算されます。
復興特別所得税は、2037年(令和19年)まで加算されます。
土地の売却においては、5年を超えるか超えないかによって税率が大きく変化するのです。
したがって、所有期間4年で売却する……というのは非常にもったいないと考えられます。
①所有期間5年以内で土地を売却したときの税金計算
所有期間5年以内の土地を売却して、1,000万円の利益が出た場合の税額はいくらでしょうか。実際に計算をしてみましょう。
最初に、所得税を計算します。
- 1,000万円×30%=300万円(①)
2037年(令和19年)までは、復興特別所得税として、さらに所得税に2.1%をかけます。
- 300万円×2.1%=6万3,000円(②)
最後に、住民税を計算します。
- 1,000万円×9%=90万円(③)
以上①~③の合計が、税金の総額です。
- ①+②+③=396万3,000円
②所有期間5年を超えて土地を売却したときの税額計算
所有期間5年を超えたケースでの税額を計算してみましょう。
まずは、所得税の計算です。
- 1,000万円×15%=150万円
復興特別所得税として、所得税150万円に2.1%をかけます。
- 150万円×2.1%=3万1,500円
最後に、住民税の計算です。
- 1,000万円×5%=50万円
以上①~③の合計が、税金の総額です。
- ①+②+③=203万1,500円
土地の所有期間が5年を超えた場合、税率と同じように、税額についても5年以内と比較して半分程度になります。
(4)所有期間5年以内でも特別控除がある!
土地の所有期間が5年以内(短期譲渡所得)での売却は、税率が非常に高いことはすでに説明しました。
しかし、転売目的で土地を売却したわけではないのに、高額な税金が徴収されてしまうのは不公平ですよね。
土地の所有期間が5年以内で売却しても、売却の目的が「転売」ではない人に向けて、特別控除があります(No.3223 譲渡所得の特別控除の種類―国税庁)。
例えば、次のような目的での土地の売却が、特別控除の対象となります。
- 公共事業を目的とした売却 → 控除額5,000万円
- マイホームの売却 → 控除額3,000万円
- 特定土地区画整理事業を目的とした売却 → 控除額2,000万円
以上のような特別控除の対象であれば、転売と見なされず、高額の控除が受けられます。
土地の転売における税制は、単純に利益を目的とした土地の転売のみ厳しくなる仕組みになっているのです。
不動産売却における税金について、詳しくは「不動産売却は5年以内だと税金で大損?真実と特例措置を解説」をご確認ください。
また、不動産売却における税金に関しては、「【税理士監修】不動産売却時にかかる「消費税」注意ポイントは?」をご確認ください。
3、土地の転売で利益を上げられる可能性はある?~松本人志さんの事例から分かること
前項までに、土地の転売においては、売却時点の土地の所有期間に応じて税額が変動するものの、売却の目的が転売でなければ特別控除を受けられるということを説明しました。
しかし、この記事をお読みの方のなかには、「投資目的で土地を転売して利益を上げたい!」という方も多いかと思います。
現代において、土地の転売で利益を上げられる可能性はあるのでしょうか。
(1)松本人志さんの「土地転売」事例の概要
2016年頃、お笑いタレントの松本人志さんが、「東京・新橋の土地で8億円儲けた」というニュースが駆け巡りました。
これはフェイクニュースではなく事実であり、計算上ではあるものの、松本さんが8億円の利益を手にしたことも本当です。
松本さんがJR新橋駅近くにあるL型の土地を購入したのは2010年とのこと。
L字型になっているのは、L字型の角のタバコ屋が売却に応じなかったためです。
L字型であるがゆえに、ビルを建てることもできず売却先を探していたところに、松本さんが購入したという経緯です。
土地購入後、松本さんは6年近く土地を所有。
土地の所有中、松本さんは駐車場経営で固定資産税の支払いに充当するという土地活用をしていました。
もしかすると、角のタバコ屋が売却に応じることを期待しての投資だったのかも知れません。
最終的には、L字型のままでも土地の価値が高くなったということで売却しました。
その時の売却益が、8億円というわけです。
かつての地上げ屋であれば、角のタバコ屋を力づくでも立ち退かせたかも知れません。
しかし、今はそんな時代ではないので、松本さんが売却した時にもL字型のままでした。
(2)松本人志さんが「土地転売」で成功した具体的なポイント
(1)で説明した松本さんの土地取引が成功したといえる具体的なポイントは、次のとおりです。
- L字型の土地に値頃感があり、資金力のある松本さんが興味を持った
- 駐車場経営で所有コストをまかない、保有し続けることができた
- 所有期間5年経過後に売却したので、転売とは見なされず税金が安くなった
- 売却時に角の土地も取得できていればさらに高値での売却も期待できた
以上からもわかるように、土地の転売においては、単に「値上がりしそうな土地」を購入して転売するだけは成功できません。
土地が持つ特性や、見通しなどがなければ、転売ビジネスは成り立たないのです。
4、土地の転売で利益を上げたい!具体的にどうすればよい?
(1)自分で不動産会社を立ち上げる
土地をはじめとした不動産の情報が最も入ってくるのは、不動産業者です。
「レインズ」のような、不動産業者しかアクセスできない情報ネットワークがあることや、不動産業者同士の情報網があるからです。
投資家として土地の転売で利益を目指すのであれば、自分が不動産会社を立ち上げて、不動産業界の情報ネットワークの輪に入るのもひとつの方法といえるでしょう。
しかし、不動産業者が共有している情報があるからといって、転売で利益を上げられるような物件情報に簡単に出会えるかというと、そんなことはありません。
一般の投資家が見ている情報と比べると、はるかに質の高い情報に触れる確率が高くなるのは間違いありません。
さらに、法人として不動産会社を立ち上げたうえでの不動産取引であれば、「短期譲渡所得税」の対象にもならず、「5年しばり」の心配もなくなるというメリットがあります。
宅建の資格を取得するのはハードルが高いかもしれませんが、今後も不動産投資で利益を目指していくのであれば、決して無駄ではありません。
(2)土地付きの格安物件を探す
不動産投資初心者の方には難易度が高い方法ではありますが、大きな利益を得られる土地の転売方法があります。
厳密には、土地の転売とはいえませんが、土地付きの格安戸建て物件を購入して、ある程度の手直しをしてから転売する方法です。
具体的には、郊外などにある数百万円レベルの築古物件を購入し、重要個所や見た目などを手直しして売りに出すと、利ザヤを稼げる可能性があります。
格安物件を仕入れるためには、目利きが必要になりますが、建物の状態が悪い場合や土地そのものに一定の価値が見込まれる場合は土地として売りに出す方法もあります。
(3)転売ありきではなく経営ありきで土地を購入する
不動産投資で利益を上げる方法は、大きく次の2つに分けられます。
- インカムゲイン(賃料収入)
- キャピタルゲイン(売買差益)
土地の転売では、キャピタルゲインを大きく狙うものです。
しかし、キャピタルゲインを狙うには、「安く仕入れられるかどうか」だけで勝負が決してしまう部分もあるため、一般の投資家向きではないとも考えられます。
そこで提案したいのが、購入した土地をちゃんと経営しながら「高く売れるチャンスを待つ」という投資方法です。
更地のままの土地であれば、駐車場などを経営をすることで、「持っているだけで損」という状況を回避できるため、転売の時期を焦らずに済みます。
あくまでも、損得勘定がプラスになっていることが前提ですが、場合によってはアパートやビルなどを建てて賃貸経営をしても良いでしょう。
最初から「転売だけ」で儲けるという発想よりも、あらゆる方法で利益を狙うのが、当メディア「不動産投資の教科書」がおすすめする土地転売の考え方です。
(4)ネットで売りに出されている土地を買っても利益は出ない
「3、」で説明した松本さんの例にも当てはまることですが、土地の転売で利益を上げるには、いかに土地を安く購入できるかという点が重要です。
安く仕入れさえできれば、相場どおりの価格で転売しただけでも十分利益を出すことができるでしょう。
以上のことより、土地の転売において勝負を分けるのは次の3つの力といえます。
- 情報力
- 仕入れ力
- 土地の価値が大きく変わる要素を予測できる力
①情報力
土地の転売において、勝負を分けるのは「情報力」といえます。
しかし、ネット上に流れている売却物件をただ探すだけでは難しいでしょう。
ネット上以外で相場より安く仕入れられる物件があれば、すぐに売れてしまいます。
ネット上で売れ残っている物件は、仕入れて転売をしても、利益が見込めないと考えるべきです。
このような物件は、不動産業界では出回り物件と呼ばれ、プロの不動産業者もあまり手を出しません。
②仕入れ力
ネット上のように誰でも知り得るところで売られている土地の転売では、儲けが出ないということはすでに説明したとおりです。
重要なのは、「売りに出される前の売却情報」をいかにキャッチできるかです。
特に、相続や離婚など「家庭の事情で土地を売却したい!」という人たちは、「相場より少々安くても早く現金化したい」という思いを持っていることが多いでしょう。
このような土地を仕入れることができれば、転売で利益を出すのは十分可能です。
相続に備えて、「財産を子供に分配しやすいように土地を現金化したい」と考えていた所有者が、税理士に相談したところ、税理士と繋がりのあった不動産業者が買い取ったというケースがあります。
以上のようなケースでは、土地の売却情報が市場に出回ることはなく、人の繋がりによって成立しています。
転売で利益を出すための、理想的な仕入れ事例だといえるでしょう。
内密な情報をいかにキャッチするかについては、不動産投資家としての知識だけでなく、人脈などネットワーク力や情報力がものをいう部分も大きいでしょう。
不動産投資家として、人同士のネットワークを広げる努力をするのも有効だと考えられます。
③土地の価値が大きく変わる要素を予測できる力
購入した土地が値上がりする可能性として考えられるものに、周辺環境の変化があります。
例えば、
- 新しく駅ができる
- 集客力のある施設ができる
- 企業や工場が進出する
などのように、土地の利用価値が高まるような変化があれば、土地の価格は上昇します。
利用価値のある土地を転売すれば、大きな利益を出すことができるでしょう。
将来的に見て、周辺の地域の再開発があるなどが予測できれば、土地の転売は成功するに違いありません。
しかし、こうした情報が特定の人に流れた時点で、不動産取引が行われる可能性は非常に高く、一般の投資家が参入できる余地はないでしょう。
実際のところ、「購入した土地が値上がりして転売利益が出た」というケースは、結果オーライで利益が出たということがほとんどではないでしょうか。
まとめ
今回は、土地の転売における法律や税制との関係性や、土地の転売において利益を上げられる可能性などについて解説しました。
「土地の転売で利益を上げるのは、一般の投資家には難しいのでは……」と感じている方も多そうですが、その感覚は正しいと思います。
右から左に土地を転がすだけで利益が出ることは、地に足のついた投資ではありません。
長い目で見ると、膨大な損失のリスクも高いといえるでしょう。
安全性をしっかりと確保しながら、時間をかけて資産形成と収入のアップを図ることが、当メディア「不動産投資の教科書」が提案する投資のスタイルです。
土地の転売で利益を上げたいとお考えの方は、本記事で解説したことを踏まえたうえで投資をしましょう。
その他、土地を含めて不動産売却でかかる費用について詳しくは「不動産売却でかかる4つの費用|売却利益を最大化させる方法」をご確認ください。