将来の生活設計のために、今のうちから資産運用を始めておこうとお考えの方も多いでしょう。「資産運用を初めてやってみよう」という投資初心者が検討する商品の1つが「投資信託」です。投資信託は賢く運用すればおいしいリターンの得られる投資ジャンルですが、なかには初心者にはおすすめできないものもあります。
そこで今回は、毎月資産運用に興味ある方が数万人訪問するメディアである不動産投資の教科書が、初心者があまり手を出すべきではない投資信託について、いくつか紹介していきましょう。
資産運用にご興味がある方は「資産運用とは?|金融商品の種類、メリットデメリット徹底解説」も併せてご参照ください。
不動産投資のバイブル
- 今は不動産投資の始めどきなのか?
- 安定収益を得るための不動産投資物件の選び方
- 不動産投資の失敗例から学ぼう
目次
1、おすすめしない投資信託その① コスト(手数料)が高い投資信託
(1)コストを甘く見てはいけない
初心者におすすめしない投資信託、まず1つめは「手数料などのコストが高い投資信託」です。投資信託とは、多くの投資家から集めた資金を「ファンドマネージャー」と呼ばれる資産運用の専門家がさまざまな金融商品へ投資運用し、そこから得られた利益を投資家に再分配する、という金融商品です。
実際に投資活動を行うのは専門家におまかせするため、投資家が得られる利益は「投資で得られた利益」から「手数料」や「税金」を引いた残り、ということになります。そのため、投資信託を選ぶ際には単に「利回りが何%か」という点だけでなく、手数料などの必要コストがどれくらいかかるかも計算しておかなければなりません。
例えば投資信託の利回りが年4%だったとして、専門家(信託会社)に支払う信託報酬が年3%だった場合、実際に投資家として得られる利益はたった1%になります。これでは投資家としてあまりうまみがありません。必要コストと利回りのバランスを考えることは、投資信託を運用するうえできわめて重要、ということです。
では、具体的にどんなコストがかかってくるのか、簡単に説明していきます。
(2)販売手数料
販売手数料(購入手数料と呼ぶこともあります)は、投資信託を購入するときに一度だけ支払う費用です。だいたいの相場は購入金額の3%前後までといったところ。とはいえ、投資信託は数百万単位となることが多いので、たった数%といっても大きな金額になります。なかには「ノーロード投信」といって、販売手数料が無料になる商品もありますが、全体的にネット証券系は購入手数料が安い傾向です。
(3)信託報酬
信託報酬とは、投資信託を保有している間、その保有額に応じて引かれる手数料のことです。この信託報酬は継続的に発生するため、投資信託は保有期間が長ければ長いほどコストがかかるということになります。
信託報酬のだいたいの目安は年0.1%から3%といったところです。比較的手堅く長期間にわたって投資する「インデックス型ファンド」の信託報酬は安め、リスクはあるもののファンドマネージャーの手腕次第で大きく利益の上がる「アクティブ型ファンド」では高め、というのが基本的な傾向です。
(4)監査報酬
投資信託は、各決算期ごとに監査法人から監査を受ける必要があります。この監査法人に支払う手数料が「監査報酬」です。運用期間中には継続的にかかる費用で、通常は信託会社を通じて間接的に負担します。投資先の商品状況によっては追加で費用がかかる場合もあり、例えば投資先の株式等が証券取引所に上場する際には追加費用が発生することもあります。
(5)信託財産留保額
信託財産留保額は、解約をするときにかかる「解約手数料」のことです。いわゆる出口にかかる手数料とイメージしてください。購入手数料や信託報酬とは別立てですが、ポイントは設定されている場合とそうでない場合があるという点です。設定されている場合の目安は解約時の投資信託の基準価格の0~0.5%といったところです。
(6)所得税・住民税
手数料とは違いますが、税金も無視できないコストです。投資信託による利益は収入の1つですから、利益が出た場合は分配益(配当所得)、解約時の解約益(譲渡所得)、満期を終えて償還されるときの償還益(譲渡所得)、それぞれに所得税と住民税が課されます。基本となる税率は所得税15%+復興特別所得税0.315%、これに加えて住民税約5%の合計20.315%が課税率です。
投資信託の分配益に関しては、「普通分配金」と「特別分配金」の2種類があります。このうち、投資による黒字の分配益である「普通分配金」は課税対象となり、信託会社等からの受取時に源泉徴収される仕組みです。したがって、確定申告は原則として必要ありません。
もう一方の「特別分配金」とは、分配金が出た後の基準価額が購入時の基準価額を下回っている際に支払われる分配金のこと。つまり、投資信託が赤字となっている場合に支払われる分配金を意味します。分配金が入ってくるとはいえ、投資家にとっては単に投資した元本の一部払い戻しをしたにすぎません。したがって「特別分配金」は収益が出たとはみなされないため、税金は課されないということになります。
2、おすすめしない投資信託その② 毎月分配型の投資信託
(1)毎月分配型とは?
初心者におすすめしない投資信託、2つめは「毎月分配型の投資信託」です。「毎月分配型の投資信託」とは、毎月の決まった日に決算を行い、一定額の分配金を毎月受け取ることができる投資信託のことです。毎月一定の現金が入ってくるので給料や年金収入と似たような感覚で運用できることから、高齢者を中心に人気を集めているタイプの投資信託となっています。
「毎月分配型」投資信託は、全投資信託商品のうちの約1割を占めているとされます。比較的少額から始めることができるのも、初心者にとっては取り組みやすい点です。しかし、投資信託として評価した場合、複利効果が低いことや、収益が出ない場合に元本を取り崩すことになる、通称「タコ足ファンド」状態になるリスクがあるなど、デメリットも多いタイプの商品です。
では、デメリット面について少し解説しておきましょう。
(2)複利効果がない
毎月分配型では1ヶ月ごとに分配金を支払うため、当然「複利効果」は見込めなくなります。例えば元本100万円の投資信託を想定しましょう。これを10年間、毎年出る利益分も元手に組み込む一般的な投資信託(年利10%と想定)で運用すると、1年後には110万円、これをそのまま運用すれば2年後には121万円ですね。このペース位で10年間運用すれば約260万円になります。これが利益分を再投資することで得られる複利効果です。
しかし、毎月分配型だと利益分はすぐに分配されてしまうので、上手に運用したとしても元手自体の上げ幅が限定的なものになります。同じく100万円を元手に年利10%を想定し、これを毎月分配型で運用した場合、利益分10万円を分配金として継続したとすると、上手に運用して10年間で200万円前後が限界、というところです。
(3)資産の取り崩しになっているファンドも
さらに問題となるのは、運用がうまくいっていない場合です。実は毎月分配型の投資信託の一部では、毎月分配金の配当があるといってもその実態は純資産、つまり元本を削りながらなんとか配当している場合が多いのです。
たとえば100万円の運用で月当たりの分配金が2万円とします。しかし、実際の運用益が1万円だった場合、残りの1万円は元本を払い戻しているだけ、ということ。投資信託では他にも手数料や税金などがかかるため、この状態では実質的に赤字となっている可能性があります。この状態をタコが空腹時に自分の足を食べてしまうことに例えて「タコ足ファンド」と呼びます。
自分の投資先がタコ足ファンド化していないかを判断するには、分配金が配当されたとき(決算日)に信託会社などから送られてくるお知らせの内容をしっかり精査し、運用益が出たうえでの分配なのかどうかを確認する必要があるでしょう。
3、おすすめしない投資信託その③ 流行のテーマ型投資信託
(1)テーマ型投資信託とは?
初心者におすすめできないファンド、3つめは「テーマ型投資信託」です。投資信託の世界で、大型のリターンが見込めるということでおすすめされることが多いのが「テーマ型投資信託」。特定のジャンルに関する業種の投資先に特化したタイプの投資信託です。例えば、最近では「AI技術」「環境関連分野」「バイオ関連分野」「ヘルスケア関連」などが人気の「テーマ」として注目されています。確かにこういった分野は成長を見込めるので、リターンが発生した場合、短期でも大きな利益を出す可能性があるでしょう。
しかし、そもそも投資信託の金融商品としての強みである「長期保有」「リスク分散」とは真逆の性質を持っているため、初心者が手を出すにはハードルが高い商品です。そのうえ、プロといえども短期間の運用で確実に売り時と買い時を見極めて利益を上げるのは至難の業ですから、投資信託としては非常にリスクが高いといえます。
では次に「テーマ型投資信託」がおすすめできない理由を2点ほど挙げてみましょう。
(2)高値掴みになりやすい
今はやりのテーマをさも将来性のあるように説得されると、なかなか反論できないうえに投資先として魅力を感じてしまうかもしれません。例えばAI分野。「AIはあらゆる産業分野で今後大いに使われることは確実」と言われると、ニュースでもよく耳にするのでなんとなく投資してしまいたくなります。しかし、当然、他の投資家やプロのファンドマネージャーはとうに気づいたうえで、すでに行動を起こしています。世間で話題になっているからと後から飛びついたところで、株価上昇した後のただの高値掴みになっている恐れがあるわけです。
(3)販売側の戦略であることも
さらにこうした行動を見越して投資家にテーマ型投資信託を買わせようと考えている業者も存在します。もともと「テーマ型投資信託」は短期運用が基本なうえに、確実に収益を上げるにはリスクが高いという特徴があります。そのため、最初から投資運用によって利益を出すのではなく、短期で乗り換えていく顧客をターゲットに、その手数料収入を狙っていることがあるのです。旬の時期が過ぎれば顧客も乗り換えることを逆手に取っているわけですね。
手数料収入狙いなのかを見抜くには、単純に手数料の設定が相場より高いかどうかを確認することがおすすめです。そして、テーマ型投資信託はそもそもリスクの高い商品だという認識を持って、投資会社からの勧誘や説明に対処しましょう。
4、おすすめしない投資信託その④ ファンドラップ
(1)ファンドラップとは?
投資信託は投資家自信が銘柄を選び、その運用をファンドマネージャーに任せる仕組みですが、銘柄選びの段階からすべてプロにおまかせする手法もあります。これを「ファンドラップ」あるいは「ラップ口座」といいます。ラップ口座では、投資家が証券会社などのサービス提供業者にある程度のまとまった資金を預け、投資一任契約を結ぶ、いわば「丸投げ」スタイルです。
あまり金融業界に詳しくない、あるいは運用するのが面倒くさいという人には便利というメリットがあり、実際の取引判断から調査まで、すべてプロにおまかせできます。また、投資先の商品のラインナップが多彩で、分散投資によるリスクヘッジという点では優れた手法です。しかし、この「ファンドラップ」にも初心者向けとはいえないいくつかのデメリットがあります。
(2)手数料が高い
投資活動を丸投げする分、当然手数料は割高です。運用報酬だけでなく、購入手数料、信託報酬のすべてにおいて、比較的高額となる場合が多いです。また、運用丸投げスタイルであるため、実際に運用するファンドマネージャーの腕次第というリスクも考えられるでしょう。
なかには手数料収入を目的に手数料のかかる金融商品ばかり選ぶところもあります。また、一部のラップ口座(楽天証券と大和証券)を除くと、最低投資金額が300万円からと、初期投資のハードルが高いのも特徴です。もともとラップ口座は富裕層向け、と言われており、元手の少ない初心者にとっては手を出しにくい分野といえます。
5、おすすめしない投資信託その⑤ アクティブファンド
(1)アクティブファンドとは?
投資信託初心者におすすめできないタイプの5つめは「アクティブファンド」です。投資信託には市場平均(インデックス)に沿った動きをするように、安全かつ確実な運用を目指す「インデックスファンド」と、市場平均以上に大きく利益を出すことを目指す「アクティブファンド」があります。
アクティブファンドはファンドマネージャーのリサーチ力や分析力次第、というところもあるので、リターンがあれば大きいもののリスクは高い商品です。手数料もインデックスと比べると割高で、投資信託協会の発表した2017年以降のデータでもインデックスファンドの手数料は年0.5%前後なのに対し、アクティブファンドは約1.5%前後となっています。
そしてアクティブファンドがおススメできない最大の理由が単純に利益が出にくいうえに、インデックスファンドにすら勝てないことがほとんどという実態があります。
(2)アクティブファンドはインデックスファンドに勝てない
アクティブファンドがインデックスファンドに勝てていないということの根拠になっているのが、アメリカのS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが2002年から公表しているSPIVA(S&P INDICES VERSUS ACTIVE)というリポートです。
これによると、2017年の時点でインデックスに負けている日本のアクティブファンドの割合は1年目で約68%、10年目のファンドではなんと79.6%と、ほぼ8割はインデックスの方が利益が出ているという結果です。特に米国株式やグローバル株式に関するファンドでは1年目でもおよそ7割、10年目ではほぼ9割がインデックスを下回るという状況でした。やはり日本のファンドマネージャーでは海外情報のリサーチや分析において不利な面が多いということでしょう。
では、日本のアクティブファンドが特別弱いのかというとそうではありません。2017年から10年間での各国のアクティブファンドを比べると、インデックスを下回る各国の本国投資向けファンドの割合は、アメリカが87.5%、欧州が87.4%、日本が67.1%。むしろ日本が一番マシな部類なのです。やはり平均を超えて勝つには相当な目利きと手腕が必要とされる上に、どこであろうと長期間勝ち続けることが極めて困難であることがわかります。
このような客観的なデータがあるため、あえて初心者がアクティブファンドに手を出すのはリスクが大きいといわざるを得ません。インデックスファンドを中心に、手数料や利回りのバランスを見て、長期戦略を考えていく方が無難でしょう。
6、おすすめしない投資信託はわかった!おすすめできる投資信託は?
前章までで、おすすめできない投資信託について紹介しました。それでは一体どのような投資信託、ないしは資産運用がおすすめなのか疑問に思ったかたもいらっしゃるのではないでしょうか。ましてや初心者の方では始め方についても不確実かと思います。
そこで、「おすすめの資産運用方法9選を徹底比較!具体的な始め方と内容」をご覧ください。
メディア不動産投資の教科書がおすすめしている資産運用について、メリットやデメリット、どのような方におすすめなのかについて詳細解説しています。ぜひ参考にしてください。
まとめ
今回は初心者の避けるべき投資信託について、5つほど説明してきました。投資信託は手数料がかかるため、利回りとのバランスを考えて商品を選ぶ必要があること、短期や利幅の大きな商品にはそれ相応のリスクがあることなどを、前提として理解しておきましょう。とはいえ、定期預金などよりははるかにパフォーマンスの良い商品が多いので、うまく選択をして投資を行うことで、資産活用につなげることができるでしょう。