将来のことを見据えて若いうちから資産運用を考えることは大切です。しかし、一口に資産運用といっても、さまざまな種類があるので、どれを選ぶか迷っている人もいるのではないでしょうか。
資産運用のなかでも比較的多くの人が取り組んでいるのが株式投資と不動産投資の2つです。そこで、この記事では資産運用について迷っている人に向けて、株式投資と不動産投資のどちらが始めやすいかを解説していきます。
目次
1、資産運用には多くの種類がある
資産運用方法はそれぞれリスクとリターンが異なります。たとえば、一般的に最もリスクの少ない資産運用といわれているのが定期預金です。
定期預金にはほとんどリスクを感じていない人も多いですが、銀行が倒産した場合1000万円以上の預金は保護されません。また、物価が上昇するインフレ局面においては相対的に現金の価値は下がるため、知らない間に損失を被っている可能性もあります。
一方、比較的ハイリスクなのが仮想通貨やFXなどの通貨取引です。これらの投資の特徴は自己資金以上の取引ができるレバレッジが活用できることです。不動産投資もアパートローンを利用すればレバレッジを活用できますが、銀行による審査が入ります。
それに対して、仮想通貨やFXは自分の裁量だけで上限までレバレッジを効かせられるので、人によってはかなりハイリスクな取引をしている場合もあります。
資産運用にはさまざまな種類がありますが、どの取引においてもリスクはあることは覚えておきましょう。大切なのは、リスクとリターンのバランスを考えることです。
2、株式投資のメリットとデメリット
それでは、株式投資のメリットとデメリットを解説していきます。よく理解したうえで、不動産投資と比較しましょう。
(1)株式投資のメリット
株式投資のメリットは主に「少額から始められる」「売買しやすい」の2つです。具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
①少額から始められる
株式投資は自己資金が数万円からでも始めることが可能です。各企業の時価総額は「株価×発行済株式数」で決まります。誰もが知っているような大企業であっても、発行済み株式数が多ければ株価は低いケースがあるのです。
たとえば、3大メガバンクのうち、みずほフィナンシャルグループや三菱UFJフィナンシャルグループは5万円以下(2020年5月18日時点)の資金があれば購入できます。
株式投資は怖いイメージがあるかもしれませんが、少額から始めれば損失を被ってもそれほど大きなダメージにはなりません。投資初心者ほど少額で始められる点は大きなメリットです。
②売買しやすい
株式投資はインターネットでボタンをクリックするだけで簡単に取引ができます。かつては対面式の証券会社を利用する必要があり、投資を始めるハードルも高かったのですが、インターネットが当たり前の現代では、無数にあるネット証券を活用すれば手軽に取引を始められます。
また、株式投資などの金融商品は現金化までの日数が短いのもメリットです。売買が成立すれば即座に口座へ反映されるケースも増えてきており、すぐに次の投資を始めることもできます。資金が必要になったら現金化してすぐに使えるという点では安心感も大きいでしょう。
(2)株式投資のデメリット
株式投資のデメリットには、「常に相場の動向を確認する必要がある」「変動幅が大きい」の2つがあります。それぞれのデメリットの詳細をよく理解しておきましょう。
①常に動向を確認しないといけない
株式市場は日々大きく変動しています。値幅制限はありますが、1日で20%程度も株価が下落するケースも珍しくありません。大切な資産を減らさないためには、ちょっとしたニュースから今後の株価を予測する必要があります。そのため、常に最新の情報を仕入れて株価の変動をチェックしなければいけません。
また、今後の株価を予測するためには、各種の指標や専門用語などを理解することも重要です。それらを理解したうえで判断していかなければ、大きなリターンを得ることは難しいでしょう。ある程度時間に余裕のある人でないと、利益を上げにくい点はデメリットです。
②変動があり、大きく損をする可能性がある
また、株式市場には運用のプロであるヘッジファンドも参戦しています。ヘッジファンドはとにかく大きな利益を上げることを顧客から求められており、株式を買うだけでなく、売りから入って値下がりした差額分を利益にする投資も行っているのが特徴です。
たとえ業績の良い一流企業であっても、ヘッジファンドの売り崩しによって株価が大きく値下がりしたケースも多くあります。株式投資は数ある投資のなかでも比較的ハイリスクハイリターンに分類されるので、大きく儲ける可能性もあれば大きな損失を出すリスクもあることは理解しておきましょう。
3、不動産投資のメリットとデメリット
次は不動産投資のメリットとデメリットを紹介していきます。それぞれの違いを考えながら参考にしてみてください。
(1)不動産投資のメリット
まずは不動産投資のメリットから紹介していきます。不動産投資の主なメリットは「節税対策になる」「安定収入を得られる」の2つです。
①節税対策ができる
不動産投資は事業の一種なので、売り上げを得るために支出した費用を経費にできる場合があります。不動産投資で経費計上できる支出の主な項目には「固定資産税」「火災保険料」「管理費」などが挙げられます。
また、「建物の価値は年数とともに徐々に減少していく」という考え方に基づく、「減価償却費」は、実際の支出の有無とは関係なく経費計上可能です。不動産投資ローンの元本部分はできませんが、利息部分は経費計上できることも覚えておくとよいでしょう。
そのほかにも、家賃収入が該当する不動産所得は給与所得と損益通算が可能です。仮に実際の支出の有無とは関係ない減価償却費によって不動産所得が赤字になった場合は、赤字分を給与所得から差し引けるので、所得税や住民税の節税につながります。
②安定した収入を得ることができる
不動産は金融資産に比べると、価格がすぐに変動する可能性は低いです。急激に資産価値が低下しにくいという点においては、株式投資に比べると安心感はあります。
また、不動産で得られる家賃収入は入居者がいれば毎月一定の収入が得られます。安定した収入を得られるというのは、心理面において大きなメリットでしょう。
不動産投資は実際には物件を管理する手間がかかるため、世間的によく言われるような完全な不労所得ではありません。しかし、管理会社に委託すればある程度の雑務を任せられるので、株式投資のように毎日状況をチェックしなくて済みます。仕事で忙しい人でも安定して副収入を得られる点はメリットでしょう。
(2)不動産投資のデメリット
不動産投資のデメリットは主に「初期費用がかかる」「流動性が低い」の2つです。株式投資のメリットと相反する部分も多いので、よく理解しておきましょう。
①初期投資が大きい
一般的に不動産投資で必要な初期投資額は数百万円~数千万円です。築古や立地の悪い物件ほど必要な初期費用は少なくなりますが、その分空室リスクは高くなります。せっかく物件を購入しても、入居者がなかなか見つからないと安定した家賃収入を得ることはできません。
また、投資においてはリスクを抑えるために分散投資が有効だといわれていますが、不動産投資では初期費用が高額であるがゆえに難しいでしょう。初期費用を抑えるためには、築年数が古い物件をリノベーションするなどの工夫が必要になります。
②流動性が低い
不動産は高額な取引になるうえ相場はあってないようなものなので、購入希望者と交渉しないと契約が進みません。
また、契約にあたっては瑕疵担保責任など、契約後に損害賠償が発生する事態も考えられるので、慎重に進められていきます。株式投資のようにスマホで簡単に売却することはできません。
特に賃貸用の収益不動産だと購入希望者は少しでも利回りを良くしようと考えるので、値切られるケースも多いです。こちらの希望価格との間に差があると、売るに売れない状況になることもよくあります。
一般的に不動産の売却にかかる期間は早くても2~3カ月、遅いと1年以上かかる場合もあり、急いで現金が必要な場合には、早めに売却の準備をしないと間に合わなくなる恐れもあります。
4、それぞれの投資の利益
株式投資と不動産投資はどちらも同じ資産運用の一種ですが、得られるリターンの種類は多少異なります。メリット・デメリットに加えて利益の種類も知っておきましょう。
(1)株式投資の利益
キャピタルゲインとは、売買によって得られる利益のことで、株式投資においては基本的に「株価が値上がりしたときの売却益」を意味します。
たとえば、1株500円の銘柄を100株購入し、その後550円に値上がりした時点で売却すれば5000円の儲けになります。
なかには「テンバガー」と呼ばれるように、株価が10倍になる銘柄もあるのです。しかし、テンバガーを達成するような銘柄は非常にレアケースなので、株式投資で大きなリターンを得るためには頻繁に売買を繰り返す形が一般的です。
株式投資ではキャピタルゲインのほかに、副次的な収入として配当金や株主優待を得ることもできます。配当金や株主優待のなかには年利3%を超える銘柄も多く、銀行預金するよりも資産運用としては魅力的でしょう。ただし、配当金や株主優待はいつまでも同じ内容が続くとは限りません。業績が悪化すると無くなる可能性もあるので、あくまでもキャピタルゲインを狙う取引が基本です。
(2)不動産投資の利益
不動産投資における収入の基本はインカムゲインです。インカムゲインとは資産そのものから生み出される利益のことで、不動産投資においては家賃収入が該当します。
インカムゲインの特徴は、資産を売却しなくても利益が得られる点です。資産を保有している間は安定した収入が期待できます。不動産投資においては空室リスクがありますが、「複数戸所有する」「リノベーションする」などの工夫次第でリスクの低減も可能です。
ただし、不動産投資においても所有する物件を売却すれば、キャピタルゲインを得られる場合もあります。不動産価格は需要と供給によって決まるため、たとえ築年数が古くなってもその地域の需要が高まれば、購入価格より高く売れるケースも珍しくありません。
物件は一般的に古くなると修繕費用が必要になったり、入居率も低くなりがちなので、利回りは低下します。できるだけ出口戦略を考えたうえで購入を検討しましょう。
5、株式投資と不動産投資どっちがいいの?
株式投資と不動産投資のメリット・デメリットは相反する部分が多く、どちらがいいかを一概に言うことはできません。大切なことは自分の性格や知識、投資の目的などを考慮して、合っているほうを選ぶことです。そこで、それぞれの投資に向いている人を紹介していきます。
(1)株式投資に向いている人
株式投資に向いている人は「少額から始めたい」「換金性の高い商品が良い」などと考えている人です。株式投資は自己資金が数万円程度から始められるうえ、売却すれば数日で資金を別口座へ移せます。止めたくなったらすぐに止められる点はメリットです。
また、信用取引などのレバレッジを効かせないかぎり、借金をすることはありません。一般的な現物取引であれば購入した銘柄の企業が倒産した場合でも、最悪0円になるだけです。最初からアパートローンを組まなければいけない不動産投資に比べると、気軽に始められるでしょう。
そのほかにも、ある程度投資に関して知識や経験が豊富な人も向いています。なぜなら、株式投資は変動が激しいため、チャートや政府の経済政策などから将来的な株価を予測すしないと、短期間に大きな損失を出すリスクがあるためです。
(2)不動産投資に向いている人
不動産投資で得られる家賃収入は数ある投資のなかでも、安定性が高いのが特徴です。たとえ、不景気であっても大きな影響は受けにくいので、入居率の高い物件であれば老後まで生活費の足しになってくれるでしょう。
また、不動産投資は自分で管理すると空室が出たときの客付けや、修繕があったときの業者対応などの手間がかかります。ただ、管理手数料がかかりますが、管理会社に委託すればそれらの手間はほとんどかかりません。
現役で働いているうちは忙しくて副業に割く労力や時間がない人でも、比較的始めやすい点はメリットです。最初のうちはとりあえず管理会社に委託してノウハウを蓄積し、退職して生活に余裕ができた段階で、自ら管理を始めるという選択もできます。
6、結局初心者に向いているのは?
株式投資はそれなりの知識が必要で、日々変化する相場の状況に敏感にならないと利益を出すことは難しいです。そのため、初心者や本業が忙しい人にはあまりオススメできません。
不動産投資も知識はもちろん必要ですが、管理会社に委託することである程度補えます。長期的に安定した副収入を得たいと考えているなら、不動産投資を選択したほうがよいでしょう。
資産運用で迷っている人は、専門家のアドバイスを聞いてみるのがオススメです。自分に合った資産運用を見つけていきましょう。