区分所有オフィスという不動産投資をご存じですか?
オフィス物件投資というと数億円から数十億円という高額な投資になるので一般の投資家に無関係と思われてきましたが、区分所有オフィスの登場でその常識が過去のものとなっています。
今回は、不動産投資の初心者の方が区分所有オフィス投資を検討する際に知っておきたいことを『不動産投資の教科書』が詳しく解説していきます。
- 区分所有オフィスの基本
- 区分所有オフィス投資のメリット7つ
- 区分所有オフィス投資のデメリット5つ
- 区分所有オフィス物件の探し方
- 区分所有オフィス物件の選び方ポイント3つ
リスク回避のためにもぜひ目を通してください。
この記事を通じて区分所有オフィスに関心をさらに持っていただき、安定的な不動産経営のきっかけになるよう祈っています。
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区分所有オフィスのデメリットは、「オフィス需要の変動とテナントの信用リスクが高いこと」及び「建物メンテナンスと管理責任」です。
目次
1、区分所有オフィス投資の基本
(1)区分所有オフィスとは?
一棟もの物件に対して、その建物の一部を小分けにして取引する物件のことを区分物件といいます。一棟マンションに対して1戸単位で売買される物件のことを区分マンションというように、一棟オフィスビルに対してフロア単位、部屋単位で売買される物件のことを区分所有オフィス(※)といいます。
※「区分所有オフィス」は株式会社ボルテックスの商標となります。
(2)区分所有オフィスと区分マンションの違い
区分所有物件と言えば、一棟マンションに対して区分マンションがすでに投資物件として広く浸透しています。特に一棟マンションを購入するだけのリスクを取りたくない不動産投資初心者の方にとって区分マンションは極めて現実味ある投資対象です。
区分所有オフィスと区分マンションはどちらも建物の中にある部屋やフロアといった一部分を投資対象とすることは同じですが、区分所有オフィスはオフィスビルを投資対象としているため、想定される入居者は会社や団体などの事業者です。それに対して区分マンションは家族や単身者など、その物件を住まいとする目的で物件を探している人が想定入居者となります。
想定される入居者が異なるため、物件選びの考え方がまるで違います。区分所有オフィスは事業をする上でのメリットや通勤の利便性などによって集客力が変動しますが、区分マンションの場合は最寄駅からの距離や周辺環境などが集客力に影響を及ぼします。
2、区分所有オフィス投資のメリット7つ
(1)大きな資金がなくても魅力的なオフィスビルに投資できる
一棟オフィスビルを購入するのと違って、区分所有オフィスであればそれを小分けした価格帯で購入することができます。一棟ビルを購入するだけの自己資金やローン与信が無いという場合であっても、区分所有オフィスであれば手が届くという方も出てくると思います。
一棟単位での取引が普通だったオフィスビル投資にこれまで参入できなかった人が、区分所有オフィスの恩恵で参入できるようになります。
(2)質の高い物件が多く安定的な収入が見込める
会社法人などの事業者はイメージも大切なので、利便性だけでなく見栄えの良さや設備が充実したオフィスビルを好む傾向があります。そうした質の高いオフィスビルを一棟で買うとなると数億円から数十億円という金額になってしまいますが、区分所有オフィスであればこうした物件であっても1億円前後から購入可能です。
これでも高い買い物であることに変わりはありませんが、ローンを利用してレバレッジ効果を効かせれば少ない自己資金で魅力的なインテリジェントビルでの安定的な不動産投資も可能になります。
優良物件に手が届くということは、テナント探しに困らない物件への投資が可能になり、不動産収入の安定化につながります。
(3)物件の価値が下がりにくく、売却時に利益が生まれることも
東京や大阪など大都市圏の都心にあるオフィスビルは需要も高く、立地条件の良い物件は今後も価値が下がりにくく、なかなか売り物件が出ないようなエリアであれば購入時よりも高い価格で売却できることもあります。
すでに大都市圏の都心部は空き地が少なく、これから大規模なオフィス供給がある可能性は高くありません。そのため物件価値が希薄化しにくいのは、区分所有オフィス物件が集中する都心部の特徴です。
区分所有オフィスであっても出口戦略は重要ですが、物件選びを間違えなければ好条件で売却できる可能性が高いので、都心の物件が多い区分所有オフィスならではのメリットです。
(4)流通量が少なく現金化しやすい
投資を終了する時など何らかの理由で不動産を現金化する際に重要なのが、流動性です。不動産市場には無数の売り物件が流通していますが、その中で区分所有オフィスはまだまだ少数派です。流通量が少ない一方で区分所有オフィスに対する注目度は高くなってきているので、現金化しやすい(=売却しやすい)メリットがあります。
また、都心物件が多い区分所有オフィスは知名度の高いビルが取引されていることも多く、その知名度の高さゆえに売却しやすいのもメリットでしょう。
(5)オフィスビルは災害に強く事業の安全性が高い
区分所有オフィスとして流通している物件は中規模またはそれ以上のビルが多く、こうしたビルは耐震性能など災害に強い設計になっており、建物自体の安全性が高いのが特徴です。
不動産オーナーになることは地震や火事などのリスクを考慮する必要がありますが、頑丈で火事にも強いオフィスビル投資はアパートや戸建住宅と比べると安全性はかなり高いと言えます。
(6)管理体制が確立しており手間いらず
オフィスビルには必ず専門の管理業者が入っており、区分所有でオーナーになった場合もビル全体の管理に任せることができます。この点は区分マンション投資と事情は同じで、管理費を支払うことで管理全般を任せることができるので管理の手間があまり掛かりません。
(7)都心物件が多いので人口減の影響を受けにくい
これは区分所有オフィスだけでなくオフィス物件全体に言えることですが、人口の減少が続いている日本社会では、不動産の需要が地域によって著しく低くなっていることがあります。
しかし、オフィス物件の中でも区分所有オフィス投資の対象となるような物件は都心の物件が多く、人口が減少しても自然に人が集まるエリアに所在している場合がほとんどです。人口が減少しても勤務先がある以上そこに人は集まるので、賃料低下や資産価値の低下が起きにくいのは大きなメリットです。
3、区分所有オフィス投資のデメリット5つ
区分所有オフィス投資にはメリットだけでなく、デメリットもあります。主に考えられる5つのデメリットについても解説します。特に後半のデメリットについては初心者の方にとって留意しておくべき点だと思います。
(1)市場の流通量が少ない
オフィスビルというと一棟単位で取引されるものということが長らく常識になってきたため、区分所有オフィスという取引の歴史はそれほど長くありません。そのため流通量がまだまだ少なく、せっかくの購買意欲もなかなか実際の購入に結びつかないのは歴史の浅さゆえのデメリットです。
(2)同じビルの中に異なるオーナーのテナント物件がある
区分所有オフィスとして購入可能なビルには、当然ながら他にも区分所有オーナーがいます。入居者にとっては「どのオーナーから借りるか」というのはあまり関心のないことですが、もし複数の階にまたがって入居したいという意向を持っている場合、階が異なることで区分所有オーナーが違うとなると契約関係が複雑になります。
このことが入居者から敬遠されてしまい、集客力を削いでしまう可能性があります。もっとも、こうした事態が考えられるのは複数階を希望するような与信の高い入居者なので、ウェイトとしてはそれほど高くないかも知れません。
(3)老朽化した時の建て替えなどが難しい
一棟ビルの所有者が1人であれば建て替えなど大きな決断を要する時の意思決定も簡単ですが、これが区分所有オフィスとなるとオーナーが複数存在するため、意思決定が容易ではありません。
区分所有オフィスとして購入対象にする物件は築年数の浅いものが多いので、建て替えなどの問題は先のことです。しかし長期的に所有する戦略を描いている場合は大規模修繕なども含めた中長期的な見通しを立てておく必要があります。
(4)個人への融資が付きにくい
オフィスビルに個人が投資するという形になると、オペレーションの難しさから金融機関の融資が付きにくい傾向があります。区分所有とは言え安価な買い物ではないので、融資が付かないと現実問題として投資が難しくなります。
(5)単一テナントが相手なので稼働率ゼロのリスクがある
オフィスビスを区分所有する場合、フロアの面積にもよりますが大半は単一のテナントが入居します。そのテナントが入居している時は稼働率が100%ですが、退去すると0%です。つまり、稼働率がゼロというリスクがあることは念頭に置いておく必要があります。
4、区分所有オフィス物件の探し方
(1)区分所有オフィス物件をネットで探す
ネット上にある主な不動産ポータルサイトには、区分所有オフィス物件を検索できる機能があります。「店舗」「事務所」などの名称で売りに出されている物件が区分所有オフィスに該当するので、こうしたサイトを使って売りに出ている実物の物件情報を探すことができます。
①LIFULL HOME’S 不動産投資(店舗・事務所・その他)
②三井不動産リアルティ(店舗・事務所)
http://www.rehouse.co.jp/investBukkenList/
(2)区分所有オフィス物件に強い不動産業者で探す
区分所有オフィスは投資不動産の中のジャンルとして確立していますが、まだまだ他のジャンルと比べると流通量が少なく、メジャーな存在ではありません。そこで頼りになるのが、区分所有オフィスの取り扱い実績を豊富に持っていて、このジャンルに強みを持っている不動産業者です。
「不動産投資の教科書」としては、以下の2社をピックアップしてみました。
①ボルテックス
https://www.vortex-net.com/
※ 株式会社ボルテックスは、「区分所有オフィス」の商標登録をしております。
②三井住友トラスト不動産(検索条件:店舗・事務所(区分所有))
5、選び方のポイント3つ
区分所有オフィス選びのポイントは大きく分けて3つあります。
それは、以下の3つのポイントです。
- 物件が所在するエリア
- オフィスビルの設備、外観
- ビルの規模
それでは、それぞれのポイントについて詳しい解説をしていきましょう。
(1)エリア選びの考え方
区分所有オフィス投資の成否を分ける最大の要素は、何と言ってもエリア選びです。極端に言ってしまえば、エリア選びさえ間違えなければ他の要素を少々間違えたとしても区分所有オフィス投資は失敗しないかも知れません。
それほどまでにエリア選びが重要である根拠は、入居者側のニーズにあります。入居者は事業を営むためにオフィスを借りるので、事業に適している立地条件なのかはとても重要なのです。
例えば、以下のようなケースではエリアありきで入居者はオフィス物件を探すはずです。
- 弁護士、司法書士などの法曹関係(→裁判所の近く)
- 東京、大阪間で出張など人の移動が多い会社(→東京、品川、新大阪各駅の近く)
- トヨタの協力会社(→愛知県豊田市、名古屋市周辺)
- ITベンチャー企業(→渋谷区周辺)
3つ目と4つ目については若干極端な例かも知れませんが、これ以外にもエリアありきでオフィスを探す企業や団体はとても多いはずです。それを踏まえた上で「需要が安定しているエリア」に絞って物件探しをするのは基本中の基本です。
東京の中心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)や大阪の都心部(北区、中央区)などが有力なエリアとなり、今後の発展余地考えると大規模な再開発が進む名古屋の名駅エリアも有望でしょう。
(2)オフィスビルで好まれる設備と外観
オフィスビルは住居ではないので、設備と言ってもキッチンや浴室、床暖房など住み心地に関する設備は無関係です。入居テナントに好まれるオフィスビルの設備としては、以下のものが考えられます。
- オートロック、警備員の常駐などセキュリティ
- BCP設備(注)
- 個別空調
- OAフロア
- 大容量電源
いずれも近年のオフィス事情を考えると人気の理由に納得できるものばかりです。特にOAフロアや電源については仕事のIT化が進めば進むほど投資物件選びの重要なポイントになるでしょう。
(注)BCP設備…地震やパンデミックなど事業継続の大きな障害が発生した時に事業継続を支援する設備のこと。耐震性能や非常用電源、通信インフラなどが挙げられます。
もうひとつ重要なのが、外観です。会社としての事業にはイメージも大切なので、見た目へのこだわりは住居よりも高くなります。外観が古ぼけた印象のビルや、今どきのデザインとかけ離れているようなビルは投資対象として不向きです。
(3)規模によって対象テナントが変わる
オフィスビルには、さまざまな規模があります。東京の丸ノ内に林立しているような大規模なオフィスビルから、ペンシルビルとも呼ばれる小さなビルまで、どれもオフィステナントの入居を前提にしているビルであれば、「オフィスビル」です。
こうしたビルの規模の違いは、そのまま入居テナントの違いにも表れます。小規模なビルは賃料が安いので個人経営の小さな会社などが主な想定入居者になりますが、大規模オフィスビルとなると一部上場企業を中心とした大手企業が中心になります。
もちろん与信の高さもあって大手企業を相手にするような不動産投資が最も安全で確実ですが、こうしたビルは区分所有オフィスであってもかなりの高額になります。高額であることは賃料にも言えるので、入居テナントのボリュームが絞られてしまい、集客に苦労することも考えられます。
そこでおすすめは、中規模オフィスビルです。具体的には敷地面積が130坪前後で、階数は10階前後というのが中規模オフィスビルとして定義できる物件です。入居テナント候補のボリュームゾーンでもあるので、こうしたビルの区分所有オフィスが有望な投資対象となりそうです。
(4)築年数の優先順位が意外に低いワケ
ここで挙げた3つのポイントの中に「築年数」が入っていないことにお気づきの方もおられるのではないでしょうか。住居用の不動産であればとても重視される部分ですが、オフィス物件の場合は少々事情が異なります。
以下が、考えられる理由です。
- オフィスビルは耐久性が高く築年数が古くても十分機能する
- 築年数の古いビルは好立地にあることが多く立地条件の魅力が勝る
- 企業イメージの関係から敢えて古いビルを好むテナントも存在する
- 浴室やキッチンなどがないため設備面の古さをあまり感じない
これらの理由はやはり、住居用不動産とオフィス用不動産の違いを如実に示していると言えるでしょう。
まとめ
オフィス物件投資と言えば一棟ものというイメージが強かったため、機関投資家など大口の投資家だけのものと思われがちでした。
しかし、区分所有オフィスの登場で一般の不動産投資家にも現実味が出てきたことは、不動産投資の可能性が広がったと考えて良いと思います。
初心者の方には絶対に無理というわけではありませんが、こうしたリスクを念頭に置いた上で気になる物件があったら投資を検討するというスタンスで良いと思います。
不動産投資の選択肢は多いので、その中のひとつとして区分所有オフィスの知識を持っておいて損はありませんので、今後の検討材料としてお役立てください。