アパート経営については、以下の記事もご参照ください。
アパート経営の基本|絶対に失敗しないために知っておくべきこと7つとは?
目次
1、アパート建築費用の概要
まずは、アパートの建築にかかる費用の概要についてみていきましょう。
(1)アパート建築費用に含まれるもの
一般的に、不動産業界で「賃貸アパート建築費用」と見なされているのは、“賃貸アパート”という建物を建築するための費用です。
賃貸アパートとして使用するための建物を建て、その中で生活に必要なトイレや浴室、台所といった住宅設備を用意するまでの工事に必要な費用だと考えて良いでしょう。
その内訳を大まかに分けると、以下の3つに分類することができます。
- 本体工事費
- 付帯工事費
- その他費用
アパートの建築費用は、以上のような分類をして見積もりを出していきます。
しかし、建築費用の定義は曖昧で、どこまでの工事が賃貸アパート建築費用に含まれるかは建築業者によって考え方が異なることがあるため、注意が必要です。
実際に見積もりなどを比較する際には、具体的にどこまで工事に含まれているのかというところまで注目しましょう。
それでは、アパート建築費の内訳項目について、それぞれ詳しくみていきましょう。
①本体工事費
本体工事費は、文字通り賃貸アパートの建造物本体を作るためにかかる費用です。
アパート建築費全体のおよそ70~80%を占めます。
基礎工事や塗装工事、内装工事など、アパート建築におけるさまざまな工事費用が本体工事費に含まれます。
本体工事費の構成は、具体的に以下の3つです。
- 躯体
- 仕上げ
- 設備
割合としては、躯体40%・仕上げ40%・設備20%とみておくとよいでしょう。
デザイナーマンションや防音設計などの特殊な建造物では、さらに本体工事費は高額となる傾向にあるでしょう。
②付帯工事費
付帯工事費とは、ガスや電気、水道などのライフラインを整備するために必要となる費用で、建築費として必須となるものです。アパート建築費全体のおよそ10~20%を占めます。
付帯工事費は、地域事情によってコストが大きく変わるものとなります。
例えば、郊外エリアでの建設であれば給排水の引き込みコストが高くなり、都市ガスエリア内であればガス管工事費用がかかるでしょう。
③その他費用
その他費用は、アパート建築の本体とは別途にかかる工事費で、アパート建築費全体の10%前後を占めます。
例えば、以下の費用が含まれます。
- 設計費(建築士に支払う費用)
- 駐車場
- 用地の更地化
- 古い建物の撤去費用
- 地盤改良工事 など
特に注意しておきたいのが、外壁工事です。
外壁工事の費用は、建築会社によって本体工事費に含めることもあれば、その他の費用として計上することもあります。
また、ブロック塀などがあれば、その取り壊し費用が大きくかかるので、工事費用を決める際にその内訳をよく確認しておきましょう。
(2)アパート建築の発注方式は2種類ある
アパートの建築費用に含まれるものとして、上記で説明した3つの他にも設計料というものがあります。
工事の発注方法には以下の2種類があり、それぞれにかかる設計料も異なります。
- 設計施工一貫方式
- 設計施工分離方式
①設計施工一貫方式
設計施工一貫方式とは、アパートの設計と施工を1つの建築会社が行うことです。
メリットとしては、設計施工分離方式よりも設計料が安いことで、本体工事費用に対して1~5%が目安となっています。
ハウスメーカーや工務店などでは、ほとんどが設計施工一貫方式をとっています。
②設計施工分離方式
設計施工分離方式は、アパートの設計と施工をそれぞれ別の建築会社が行う方式です。
設計と施工で別の2社に発注するため、設計施工一貫方式の2〜3倍の費用がかかることになります。
メリットとしては、設計会社と施工会社の間で監視があるため、より質の高い建築目指すことが可能です。
凝ったデザインのアパートを建築したい場合などに、設計に特化した建設会社に相談する必要があるため、設計施工分離方式をとることになるでしょう。
(3)構造別で異なる賃貸アパート建築費用の坪単価
賃貸アパートをはじめ、建物の建築費用を表示する単位は坪単価です。1坪あたりの建築費用を表示することで、比較しやすいように単位が統一されています。
建築する賃貸アパートの床面積が何坪になるかは設計段階で正確に知ることができるので、その坪数に坪単価を掛けると賃貸アパート建築費用の全体像が見えてきます。
建物を建築する際には、さまざまな構造があります。大きく分けると木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造(RC造)です。後者になるほど強度が高くなりますが、その分建築費用は大きくなるというトレードオフの関係にあります。
建物の構造別に、坪単価の相場は以下のようになっているので、1つの目安にしてください。
木造(2~3階建て) | 57万円/坪 |
鉄骨造(2~4階建て) | 83万円/坪 |
鉄筋コンクリート造(主にマンション) | 86万円/坪 |
参考:地域別・構造別の工事費用表(1m2当たり)【令和3年分用】|国税庁(全国平均をもとに算出)
鉄筋コンクリート造は、高層建築にも採用される強度の高い構造です。
4~6戸規模の標準的な賃貸アパートであれば木造または鉄骨造が多く、標準的なアパート建築費用は坪単価で57~83万円前後を目安にするのが良いでしょう。
2、アパート建築費用を安くするための3つの方法
アパートの建築費用は、マンションと比べると安いことは確かですが、それでも建築費用は数千万円規模になります。
決して簡単にできる投資ではないので、少しでも安くしたいという思いは誰にも共通するところでしょう。
そこで、本章では賃貸アパート建築費用を少しでも安くするための3つのポイントを解説します。
- 複数社に一括で“無料プラン請求”する
- 建築費用に余計な“マージン”が含まれていないか確認する
- “ありがちな形”で建築費用を抑える
(1)複数社に一括で「無料プラン請求」する
先述しているとおり、アパート経営は、事前にしっかりとプランを立てるか否かで収益に1000万円もの差がつくことがあります。
最適なプランを選択することは、収益の最大化の観点から非常に重要ですので、一括の無料プラン請求をぜひ活用しましょう。
(2)建築費用に余計な「マージン」が含まれていないか確認する
賃貸アパートの建築を依頼した場合、その工事を誰がやるのか注目しましょう。
大手ハウスメーカーに依頼をした場合、実際に工事を行うのは地元の工務店であるケースがあります。この時点で、工務店による工事費用に大手ハウスメーカーの中間マージンが発生してしまいます。
大手の建設会社などにも同様のことが言えるので、地元の工務店と直接やり取りをすることで中間マージンを抑えることでコストを大きく削減できるでしょう。
(3)「規格化」で建築費用を抑える
建物は、形が複雑であったり、使用する材料が多くなるほど建築費用がかさみます。
一方で、真四角に近い形の建物ほど設計や工事、材料がシンプルになるため建築費用を抑えることができます。
賃貸アパートは、複雑な形よりも、総二階になっているようなシンプルな形状のほうが、部屋数を多く設けることができるので好都合です。加えて、部屋数という観点だけでなく建築費用の観点からもコストパフォーマンスが良くなるのです。
建築業者によっては、デザインや構造などを規格化することで「大量生産」による低コストを実現しているところもあります。
「ありがちな形」には目新しさがないかもしれませんが、賃貸アパート経営においては十分価格的メリットがあります
3、構造別でみたアパート建築費用の目安
以下の2階建ての木造賃貸アパートを想定して、建築費用を計算してみましょう。
- 戸数:8戸
- 土地の広さ:62.5坪程度
- 建ぺい率:80%
建ぺい率とは、敷地面積に対しての建築可能な面積の割合のことです。
62.5坪の土地で建ぺい率が80%の場合、最大で50坪の面積の物件を建てることができます。
床面積は、以下のように計算できます。
62.5坪 × 80% × 2階 = 100坪
この100坪に対して坪単価が57万円とすると、
100坪 × 57万円 = 5,700万円
となり、アパート建築費用は概算で5,700万円です。
以下では、構造別に50坪・80坪・100坪の敷地面積の場合の坪数別賃貸アパート建築費用を一覧表にしてみましたので、ご参照ください。
(1)木造アパートの建築費用
前述のとおり、木造アパートの坪単価57万円前後として、以下の数式で求めています。
敷地面積 × 建ぺい率 × 階数 × 57万円 = 賃貸アパート建築費用
敷地面積 | 2階建て | 3階建て |
50坪 | 4,560万円 | 6,840万円 |
80坪 | 7,296万円 | 1億944万円 |
100坪 | 9,120万円 | 1億3,680万円 |
※建ぺい率80%として計算しています。
①木造のメリット
木造アパートのメリットは以下のとおりです。
- 初期コストや固定コストが安い
- 表面利回りが大きい
- 工期が短い
木造アパートは、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べると建設費や固定資産税などが低く、初期コストや固定コストが安いことがメリットです。
また、コストが安いことから表面利回りが大きくなり、利益が出やすいという点もメリットといえるでしょう。
修繕やリフォームなども安い費用で済むため、中古物件の運用であっても工夫次第で収益の出る物件を作りやすいのです。
施工業者にもよりますが、基本的に木造アパートは工期が短い(新築でも約3ヶ月~半年)ので、新築アパートを建設する場合でも収益化までの期間が短く済みます。
②木造のデメリット
- 天災に弱いイメージがある
- 老朽化のスピードが速い
- 騒音問題
木造アパートのデメリットは、火事や地震などの天災に弱いというイメージを持たれやすい点です。
また、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べると、木造は老朽化のスピードが速いので、築年数を重ねていくと空き家率が上昇する可能性が高くなります。
空き家率に関係する問題点として、騒音問題も挙げられるでしょう。
最新の木造建築で使う素材は、遮音性・防音性に優れたものが使われるようになっていますが、中古物件の場合は古い材料で作られていることがほとんどなので要注意です。
(2)鉄骨アパートの建築費用
鉄骨造の場合は、坪単価83万円前後として、以下の数式で求めます。
敷地面積 × 建ぺい率 × 階数 × 83万円 = 賃貸アパート建築費用
敷地面積 | 2階建て | 3階建て | 5階建て |
50坪 | 6,640万円 | 9,960万円 | 1億6,600万円 |
80坪 | 1億624万円 | 1億5,936万円 | 2億6,560万円 |
100坪 | 1億3,280万円 | 1億9,920万円 | 3億3,200万円 |
※建ぺい率を80%として計算しています。
①鉄骨造のメリット
アパートなどでの鉄骨造では、工場で生産された材料を現場で組み立てていきます。
鉄骨造は、木造と比べて頑丈であるだけでなく、比較的低コストで済むという点が大きなメリットです。
工期も短めで済むので、木造と比べてもあまり変わらないくらい収益化までのスピードが早く、多くのアパートで外断熱工法が採用されており、気密性や強度に関しては木材よりも格段に優れています。
木造の弱点を補いつつ、木造と比べても遜色のない低コストを実現しているのが、鉄骨造の大きな強みです。
②鉄骨造のデメリット
鉄骨造には、構造的な弱点がいくつかあります。
まずは断熱性です。断熱性に関しては木造と比べると少し悪く、通気性があまり良くないために冷暖房などの使用が必須となってきます。
防音性と耐火性に関しても、木造よりは少し優れているという程度なので、新築する場合は最新の優れた材料を使用した方が良いでしょう。
(3)鉄筋コンクリート(RC造)アパートの建築費用
鉄筋コンクリート造は坪単価86万円前後として、以下の数式で求めます。
敷地面積 × 建ぺい率 × 階数 × 86万円 = 賃貸アパート建築費用
敷地面積 | 2階建て | 3階建て | 5階建て |
50坪 | 6,880万円 | 1億320万円 | 1億7,200万円 |
80坪 | 1億1,008万円 | 1億6,512万円 | 2億7,520万円 |
100坪 | 1億3,760万円 | 2億640万円 | 3億4,400万円 |
※建ぺい率を80%として計算しています。
①鉄筋コンクリート造のメリット
アパートなどの建築工法で、耐火性・耐震性・遮音性・断熱性などの面において一番優れているのが鉄筋コンクリート造です。
鉄筋コンクリート造には、骨組み部分が鉄筋のRC造と、骨組みの周りにさらに鉄骨を組むSRC造があります。
ただ、いずれもマンションやビルの建築が主で、低層階のアパートなどでは採用されるケースは少ないです。
②鉄筋コンクリート造のデメリット
鉄筋コンクリート造はコスト面が高く、坪単価は86万円前後と木造や鉄骨造と比べて高くなります。
また、大規模な建造物になるので、地盤がしっかりしたところでないと建てられません。
4、アパートの建築費用は利回りに影響する!
次に、アパート経営をするうえで重要な利回りについて説明していきます。
(1)利回りの定義
「利回り」とは、投資した元金に対していくらお金が増えたかを示す割合のことです。
賃貸アパートの大家さんにとって、建築費用は仕入れ原価に相当します。
投資物件をいくらで仕入れるかが利回りを計算する際の分母になるので、最初の仕入れで以後の賃貸アパート経営の収益構造がほぼ決まります。
建築費用が利回りに影響を与えるため、できるだけ費用を抑えて物件を建築できれば高利回りになるということです。
(2)利回りの種類と計算方法
の建築費用を抑えるメリット・デメリット」にて後述しますが、ただひたすら建築費用を抑えれば高利回りになるというわけではありません。
利回りには、主に表面利回りと実質利回りと呼ばれる2種類があります。
①表面利回り
表面利回りとは、単純に投資した元金からどれだけ収益を得られたかで計算する利回りのことです。
計算式は、以下のとおりとなります。
表面利回り = (全室満室時年間収入 ÷ 建築費用) × 100
下記の例で考えてみましょう。
先ほどの建築費用の算出で想定した賃貸アパートの場合、8戸ある各部屋の家賃を6万円と想定すると、年間の家賃収入は以下のとおりです。
6万円 × 8戸 × 12ヶ月 = 576万円
この576万円を稼ぎ出すために、賃貸アパート建築費用として5,000万円を使った場合の表面利回りは、以下となります。
576万円 ÷ 5,000万円 × 100 = 11.52%
しかし、これはあくまでも常時満室での計算となっており、見積りを行う会社でも満室で利回りを計算する場合が多いので注意しましょう。
②実質利回り
実質利回りとは、表面利回りでは計算式に入っていない以下のような実際にかかる費用やアパートの建築の際に必要な諸経費を加えて計算する利回りのことです。
- 仲介手数料
- 不動産取得税や固定資産税などの税金
- 修繕費
- 火災保険 など
実質利回りの計算式は、以下のとおりとなります。
実質利回り = (年間収入 − 年間支出) ÷ 建築費用 × 100
年間収入から年間の支出を差し引いているため、実質利回りは表面利回りよりも低くなるのです。
単純に利回りといっても、実質利回りと表面利回りでは大きな差となりますので、どちらの利回りで見積もりをしているのかを意識しましょう。
また、上記で紹介した計算はすでに土地を所有している人に当てはまるものです。
賃貸アパートを新築するにあたって土地の購入を伴ったのであれば、5000万円+土地購入費用を分母にして、利回りを計算します。
アパート経営に関する利回りについて、詳しくは以下の記事もご覧ください。
アパート経営の利回りの相場・計算方法は?
(3)収支シミュレーションをする
収入と支出から実際にどれほどの利益を得ることができるのか、シミュレーションしてみることが大切です。
以下は、「収支シミュレーション|利回り計算|不動産投資連合体」で収支シミュレーションを行った結果です。
一目で収支や利回りがわかるため、一度試してみてはいかがでしょうか。
5、アパート建築費用を調べる2つの方法
アパートの建築費用を計算しようと思っても、自分ではなかなか難しいですよね。
アパートの建築費用を算出するためには、以下の2つの方法があります。
- アパート建築業者に依頼する
- 一括見積もりで比較検討する
それぞれの方法について、みていきましょう。
(1)アパート建築業者に依頼する
アパート建築の依頼先としてよくあるのが、工務店やハウスメーカーです。
大規模なマンション開発をするとなるとゼネコンなどが選択肢に入りますが、賃貸アパートの場合は戸建住宅の建築に近いので、多くの場合は工務店やハウスメーカーから建築業者を選ぶことになるでしょう。
安心して賃貸アパートの建築を任せられる建築業者とは、どのような業者でしょうか。
比較検討時のチェックポイントとして以下の3つを意識すると、答えを導きやすくなるでしょう。
- 収支シミュレーションの根拠が明確であるか
- 大家さん目線の提案ができているか
- 一緒に仕事をしたいと思えるか
①収支シミュレーションの根拠が明確であるか
「4、アパートの建築費用は利回りに影響する!」では、賃貸アパート建築費用が利回りに深く関わっていることを解説しました。
数字として表れる利回りが高いと、賃貸アパート経営への期待も膨らむので、建築業者は利回りの高さをアピールして自社への発注を促します。
第3章で述べたとおり、利回りを決めるのは家賃と賃貸アパート建築費用です。
家賃を高めに設定すれば、想定利回りが高くなるのでその業者に決めたくもなりますが、家賃設定に根拠があるのかが重要です。
同様に、見積もり結果として算出された賃貸アパート建築費用についても必要な工事を全て積算した数字なのかどうか、自分でも精査する必要があるでしょう。
業者が提示している数字に明確な根拠と、その説明があることは信頼に値する業者なのかどうかを知る1つ目のバロメーターです。
②大家さん目線の提案ができているか
賃貸アパート経営をするのは建築業者ではなく、賃貸アパートを所有する大家さんです。
所有している土地(購入した土地・購入予定の土地)の立地条件や形状、広さなどによって、最適な賃貸アパートのあり方は異なりますが、提案内容がそれに沿ったものであるかどうかは見極めのポイントとなります。
建築業者には、それぞれ得意分野があります。
木造アパートが適した条件でありながら、重量鉄骨を得意とする業者であれば、鉄骨造を提案するかもしれません。
2階建てで充分と考えられる立地条件でありながら、鉄骨造を得意とする業者だけに3階建てを提案されて、いざ賃貸アパート経営を始めてみたら空室率が高くなった……ということもあり得ます。
大切なのは、大家さん目線です。
賃貸アパート経営を成功させるためにどれだけ具体的な未来像が描けているか、それが提案に盛り込まれているかは2つ目のバロメーターです。
③一緒に仕事をしたいと思えるか
数字の根拠や提案の具体性など客観的な視点が必要な2つのポイントが続きましたが、最後は人間的な信頼感という極めて主観的な視点も大切にしたいところです。
不動産投資は、会社や担当者への親近感や信頼なども重要な鍵を握っているので、見積もりや提案などで接してみて「この人と一緒に仕事をしたい」と思えるかどうかという感覚的な部分にも注目してください。
主観に基づくもので曖昧さもありますが、最後の決め手は「人」です。
(2)一括見積もりで比較検討
賃貸アパートの建築費用は一体いくらになるのでしょうか。
まずはそのたたき台となる数字を得る必要があるので、無料の見積もりを取ってみましょう。
ここで意識したいのは、1社のみの見積もりではなく広い視野を持つために複数業者の見積もりを取ることです。
アパート建築を得意とする工務店やハウスメーカーなどが複数社登録されていて、各社に対して一斉に問い合わせや見積もりを依頼できるサービスがあります。
こうしたサービスを利用すると、一度の操作で複数業者からの見積もりを取れるため非常に効率的です。
本項では、一括見積りにオススメのサービスを紹介します。
HOME4U 土地活用|利用者最大10社に無料プラン請求可能
HOME4U土地活用は、大手NTTデータが運営しているサービスです。
HOME4U土地活用では、無料で複数社(最大10社)からプランをもらうことができるので、比較して最適なプランを選択することができるでしょう。
アパート経営は、事前にしっかりとプランを立てるか否かで収益に1000万円もの差がつくことがあります。
最適なプランを選択することは、収益の最大化の観点から非常に重要ですので、一括見積もりをぜひ活用しましょう。
6、アパート建築会社のそれぞれの特徴
本章では、ハウスメーカーや工務店、建設会社の特徴とメリット・デメリットについて解説します。
(1)ハウスメーカー
①特徴
ハウスメーカーは大企業が多く、アパート建築の事例や実績が豊富で安心感があります。
企画やプランが決まっているため、オーナー側はメーカーからの提案の中からプランを選ぶ流れです。
大企業ならではの知名度の高さや倒産リスクの低さといったメリットがあります。
②メリット
ハウスメーカー側から、実績や実例のあるモデルを提案されるので、建てるアパートは基本的に高品質で差はありません。
メーカーには専門デザイナーがいるので、デザイン性も高いことが魅力的です。
建築時のトラブルも少なく、アフターフォロー体制などが充実している点も魅力です。
③デメリット
プランやモデルが予め決まっているので、設計やデザインなどの点での自由度は低いといえます。土地の形状を活かした変更なども難しいため、柔軟なプランニングという点では難があるでしょう。
また、広告費用などを工事費に含めるため、他のパターンと比べると割高です。
(2)工務店
①特徴
工務店は、地域に根差した中小規模の会社が多いことが特徴です。経験や実績も豊富な会社が多くなっており、基本的に建売を得意としています。
会社によって質にばらつきはあるものの、地域で定評のある工務店だと大手以上の仕事をして、オーダーへの対応も柔軟でコストも抑えめです。
②メリット
建設プランの自由度が高く、特殊な土地の事情や形状に合わせたプランも考えてくれます。広告費用などを含まないため、コストが安めで済む点も大きなメリットです。
③デメリット
工務店によってやり方が違うため、担当者を含めた相性が合わない可能性があります。
また、規格化されたプランではないため、完成形が見えづらいのは難点です。完成後に改修が必要となるのはリスクといえるでしょう。
(3)建設会社
①特徴
建設会社は、いわゆる「ゼネコン」のことで、主に大型のマンションや公共施設などを建設している会社です。
ハウスメーカー以上の知名度と実績を誇りますが、小規模な建築工事などは扱っていないことが多いです。
②メリット
社内で設計や施工、建築計画まで一貫して行っていて、品質という点では最高レベルと言えます。
経験や実績も豊富で、アフターフォロー体制も万全で、高い知名度を生かした集客にもつながるでしょう。
③デメリット
小規模のアパート建築や戸建てなどは扱っていない会社が多くなっています。
また、建築規格にはない変更を加える場合は費用がかさむため、きめ細やかな対応には難があると言えるでしょう。
また、ハウスメーカー以上に広告費用などによる費用負担が割高になります。基本的に「高コスト・高品質」と考えておくと良いでしょう。
7、アパートの建築費用を抑えるメリット・デメリット
アパートを新設する際、建設費用は少しでも抑えたいと誰でも思いますよね。
しかし、費用を抑えすぎるのもよくありません。建築費用を抑えることのメリット・デメリットを見ていきましょう。
(1)アパートの建築費用を抑えるメリット
賃貸アパートの経営では、建築費用をどれだけ抑えられるかが重要になります。
理由は、利回りを大きくするためです。同じような立地条件でスペックも同等であれば、建築費用が低いアパートの方が利回りが良くなるのは当然です。
利回りを大きく左右する家賃設定に関しても、建築費用が低ければより安く設定できるというメリットがあります。
「3、(2)①表面利回り」で計算したように、建築費用見積りが5,000万円だった場合、表面利回りは11.52%でした。
仮に、不動産会社を変更して見積りを行い、建築費用が500万円安い4,500万円だったとします。
年間家賃収入は変わらないため、以下のとおり表面利回りは12.8%となり、高くなります。
- 建築費用5,000万円:表面利回り11.52%
- 建築費用4,500万円:表面利回り12.8%
あくまでも表面利回りでの計算になりますが、後者の方が利回りは1.28%高いことになります。
前者が約8年8ヶ月で建築費用分の家賃収入を得られるのに対し、後者は約7年10ヶ月で建築費用分の収入を得ることができます。
すなわち、480万円分のキャッシュフローを多く手にすることができるというわけです。
以上から、建築費用を抑えることで不動産投資によって得られる金額が多くなるということがお分かりいただけるのではないでしょうか。
(2)アパートの建築費用を抑えるデメリット
アパートの建築費用を抑えすぎることは、メリットばかりではありません。
過度に建築費用を減らしてしまうと、結果的に低クオリティの物件ができあがるおそれがあります。
建築費用が安ければ、その分表面利回りが高くなることはお分かりいただけたと思いますが、実質利回りを考えた場合ではどうでしょうか。
単純に建物自体のスペックが低いと入居率が低くなってしまうおそれがあり、たびたび修繕が必要な状態になると、結局オーナーが修繕費を負担しなければならないでしょう。
天災や事故などで、入居者の財産などに損害を与えてしまった場合は、損害賠償などのより深刻なトラブルへとつながることも懸念されます。
以上のことから、必要以上に建築費用を抑えると実質利回りが低くなってしまうということが考えられます。
利回りは、満室時の想定で算出されることが一般的ですが、低クオリティのアパートでは満室を維持するのは難しいでしょう。結果として空室が発生しやすくなり、これまた利回りが低下します。
したがって、入居率を下げない魅力的な物件であること、後々の余計なコスト(修繕費用など)がかからないようにすること、といった点を押えつつ、それ以外にかかる余計な費用をいかにカットするか、という観点が必要となるでしょう。
8、アパートの建築費用の調達について
少なくとも数千万円規模になる賃貸アパートの建築費用。
多くの場合は融資を利用することになると思いますが、その際の審査や金利が気になるところでしょう。
本章では、賃貸アパート建築費用に使えるローン商品の紹介と、具体的な利用方法を解説します。
(1)建築費用にも使える不動産投資ローン
多くの金融機関では、「不動産投資ローン」という事業性のローン商品を展開しており、ローン商品は賃貸アパート建築費用にも使うことができます。
不動産投資ローンなので、建築費用だけでなく土地の購入費用や既存の収益物件購入などにも利用可能です。
金利はおおむね1~4%台です。住宅ローンと比べると全体的に高めの金利ですが、自己居住用のローンではなく投資用不動産購入用のローンだからです。
また、金利に開きがあるのは、金利が安い金融機関ほど審査が厳しく、逆も然りだと考えて良いでしょう。
全体的に、大手メガバンクは金利が低い代わりに審査が厳しく、地方銀行やベンチャー系銀行などはその逆の傾向が見られます。
審査に通らなければ、賃貸アパート投資そのものが絵に描いた餅になってしまうので、不動産投資の教科書では地方銀行やベンチャー系銀行の利用をおすすめします。
オリックス銀行「不動産投資ローン」
審査の早さや使い勝手などにおいて、新規参入の強みが発揮されています。不動産投資への融資も積極的です。
(2)審査で見られている3つのポイント
不動産投資に対する融資審査において、金融機関では大きく分けて以下の3つのポイントを見ています。
- 属性
- 収益性
- 担保価値
①申込者本人の「属性」
不動産投資ローンはあくまでも借金なので、申込者本人の収入や過去の履歴、資産状況などが重視されます。
相談の段階から担当者とのやり取りが始まっているので、人となりも見られていると考えて良いでしょう。
②賃貸アパートの「収益性」
賃貸アパート経営という事業を始めるにあたって、その事業にどれだけの収益性があるかは返済能力にも関わる部分なので、審査で重視されます。
賃貸アパートの収益性を示す物差しとして「利回り」がありますが、金融機関側ではそれ以外にもマーケティング調査などを独自に行い、自らの物差しも使って賃貸アパートの収益性を審査しています。
逆に考えると、審査に落ちた理由が「収益性」だった場合、金融機関としては「この賃貸アパートは儲からない」と判断したということが考えられるでしょう。
審査結果の理由は明らかにされないので、申込者には分からないことですが、審査に落ちたということは採算性を一度疑ってみても良いと思います。
③収益還元法による「担保価値」
いわゆる「無担保ローン」だと申込者の属性だけで審査されますが、不動産投資ローンの場合は不動産という担保があります。賃貸アパートにどれだけの資産価値があるかによって、融資の可否や融資額が決まります。
賃貸アパートにどれだけの担保価値があるかを評価する方法は、主に以下の3つです。
- 原価法
- 取引事例比較法
- 収益還元法
賃貸アパートは収益物件ということもあって、主に収益還元法が用いられます。
収益還元法は、不動産がもたらす収益から不動産の価値を算出する手法です。
詳しくは、以下の記事で解説しておりますので、参考にしてみてください。
収益還元法とは?投資物件の適正価格を算出する2つの方法
(3)自己資金はどのくらい必要?
不動産投資を始める場合、融資を受けるために必要となる自己資金の最低ラインは1割とされています。
ただし、近年では融資審査そのものが厳しくなっているので、実績も資金力もない状態にもかかわらず、自己資金1割で融資を通すのは厳しくなるかもしれません。
全ての投資資金を融資でまかなう「フルローン」であれば、自己資金なしからでも始められるのですが、収入の安定性や他に収益不動産を持っているかなどの条件が付くことがほとんどです。
自己資金のない状態や、収入の少ない状態からでも不動産投資を始める方法はあります。
しかし、基本的にアパート経営の場合は3~5割程度の自己資金を準備しておいたほうが、借入先の選択肢も広がり、融資条件も有利になる可能性もあります。
自己資金があった方が、返済期間の短縮化や毎月の負担額の軽減につながり、修繕工事等の緊急の出費にも対応できるでしょう。
一度収益化に成功すれば、次の融資を勝ち取る難易度は下がっていくので、まずはある程度の自己資金を準備してスタートダッシュを成功させることが大切です。
9、アパート建築費用の支払いの流れ
本章では、アパート建築費用の支払いの流れを説明します。アパート建築のスケジュールをたて、計画的に行動するために建築に必要な期間と建築費用を支払うタイミングを把握しておきましょう。
- アパートの建築に必要な期間
- アパート建築費用を支払うタイミング
(1)アパートの建築に必要な期間
一般的なアパートの建築期間は、4~5ヶ月程度です。ハウスメーカーなどで建築する場合「階数プラス1ヶ月」といわれることもあります。土地活用プランの検討や契約締結、アパートの竣工、引き渡しまでを含めると8~10ヶ月程度でしょう。
なお、アパートのような賃貸物件は、賃貸需要が高まる2月末から3月中旬にかけて竣工するのが理想です。
(2)アパート建築費用を支払うタイミング
アパートの建築費用は、一度でまとめて支払うのではなく複数回に分けて支払います。一般的には、契約時・着工時・竣工時の3回に分けられます。
民法上では建築費用はすべて竣工時に支払えば良いということになっていますが、基本的に当事者間で支払い条件を決定するのが原則です。建設会社は、建築に必要な材料費や人件費を先払いしているため、ほとんどの場合、竣工までに2回支払う必要があります。
特にアパートの建築期間が短い場合、最初の契約時に一部の支払いが求められることもあるため、オーナーは早めに資金調達する必要があります。
アパート建築費に関するよくある質問
Q1.アパートの建築費の内訳は?
アパートの建築費の内訳としては、賃貸アパートとして使用するための建物から、生活に必要なトイレや浴室、台所といった住宅設備を用意するまでの工事に必要な費用となります。大きく、「本体工事費」「付帯工事費」「その他費用」に分類されます。
Q2.アパート建築費の坪単価はいくら?
4~6戸規模の標準的な賃貸アパートであれば木造が最も多く、標準的なアパート建築費用は坪単価で57万円を目安にするのが良いでしょう。
- 木造(2~3階建て)・・・57万円/坪
- 軽量鉄骨(2~4階建て)・・・83万円/坪
- 鉄筋コンクリート(主にマンション)・・・86万円/坪
Q3.アパートの建築費を抑えるポイントは?
アパートの建築費を抑えるポイントは、「複数社に一括で無料プラン請求する」「建築費用に余計なマージンが含まれていないか確認する」「“ありがちな形”で建築費用を抑える」の3つです。
まとめ
賃貸アパート経営を始めるためにも、まずは先立つものが必要です。
本記事では、そのために必要な建築費用の内訳や費用の計算方法から、見積もりの取り方や建築資金の調達方法まで解説してきました。
昨今は賃貸アパート経営がちょっとしたブームになっており、注目度も高くなっています。
始めなければ家賃収入も入ってこないので、まずは賃貸アパート経営に対する現実味を感じていただければ幸いです。