「民泊新法ってどんな法律……?」
「民泊新法で民泊ビジネスはどう変わるの…?」
民泊新法が施行されて、いよいよ民泊が合法化されるということで「民泊で儲けたい」とお考えではありませんか?
現在はグレーな存在である民泊が合法化されるとなると、不動産投資家にとって有望な選択肢が増えるのは間違いありません。
民泊がグレーな存在である今ですら、「京都で1億5,000万円稼いだ」という民泊事業者の摘発例などを見ると、やはり民泊は儲かると思わざるを得ません。こんな魅力的なビジネスが合法化されるのであれば、投資家として指をくわえて見ているわけにはいかないとお感じではないでしょうか。
この記事では、
- 民泊が儲かる仕組み
- 民泊新法のポイントや知っておくべきこと
- 民泊新法で合法的に民泊を始める方法
- 民泊新法施行後に問題になりそうなことと対策
について、毎月不動産に興味ある方が数万人訪問する『不動産投資の教科書』が詳しく解説します。
「不動産投資の教科書」読者の皆さんにとって気になって仕方がない民泊について、そして合法的に始められる民泊について必要な情報がすべて揃っていますので、ぜひ最後までお読みください。
民泊について詳しく知りたい方は以下の記事も併せてご参照ください。
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目次
1、民泊新法で民泊が合法化|流れに乗って民泊事業で儲けるには?
(1)渋谷で月収84万円!民泊が儲かる仕組み
毎年のように訪日外国人の数が過去最高を記録する中、ホテル不足も相まってその帳尻を合わせるように民泊ビジネスが大きく注目を集めています。「かなり儲かっているらしい」という噂が先行していることもあって不動産投資家の間でも関心は高く、「どれくらい儲かるのか」というイメージを持っておきたい方も多いと思います。
単純な計算として、ある民泊施設の皮算用をしてみましょう。こちらは世界最大の民泊仲介サイト、Airbnbに掲載されている東京・渋谷の「宿」です。
1泊一人9,407円からとあります。説明書きを見ると泊まれるゲストは3人まで1部屋単位の料金設定です。3人まで泊まれるということで、もし3人で利用したら料金は3倍です。
仮にこの部屋に毎日予約が入って3人が利用したとしたら、
9,407円 × 3人 × 30日 = 84万6,630円
写真からは既存のアパート室内を小綺麗に手直しした部屋と見受けられますが、その部屋が月間最大で84万円ものキャッシュを生み出すのですから、家賃収入とは桁が違います。
これが民泊のビジネスモデルです。築古の建物であってもそれがむしろ観光客に受けることも多く、それも「民泊は儲かる」という噂に拍車を掛けています。
(2)民泊新法なら参入しやすくなる?
前項のようにとても魅力的なビジネスモデルの民泊ですが、2017年現在、法的にはグレーな存在であるのが現実です。
合法的に民泊営業をするには旅館業法の簡易宿所という営業許可を取得するか、東京都大田区と大阪府、大阪市で限定的に運用されている民泊条例の許可を取るかしかありません。いずれもハードルが低いとは言えず、新たに住宅用物件を購入して民泊営業をするとなると採算が合いにくいと言われてきました。
そこで、民泊新法(住宅宿泊事業法)が2017年に制定され、2018年に施行される運びとなりました。全国的に適用される民泊合法化の法律として大いに注目され、先ほどのような魅力的なビジネスに不動産投資家が参入できる可能性がぐっと広がったのです。
2、民泊新法(住宅宿泊事業法)とは?
(1)そもそも、民泊新法とは?
2017年に制定され、2018年から施行が予定されている民泊新法は、正式名称を住宅宿泊事業法といいます。この住宅宿泊事業法は、増え続ける訪日外国人客の受け皿となる宿泊施設がひっ迫していることを背景に、海外ではすでに普及している民泊を日本でも法的に整備する目的で制定された法律です。
かなり条文が長いのでそのまま読んでもすぐに意味を理解するのは難しいですが、衆議院のホームページに「住宅宿泊事業法案」として全文が公開されています。
(2)民泊新法で知っておくべきポイント3つ
まだ正式に施行されていないので確定的なことは言えないのですが、2017年8月時点で民泊新法のポイントになりそうな点は以下の3つです。
- 年間で人を宿泊させられるのは180日まで
- 宿泊施設の管理会社が登録制に(国土交通大臣)
- 民泊の仲介業が登録制に(観光庁長官)
1つ目の「年間180日しばり」については民泊新法制定の際にもかなりモメたのですが、最終的には本来住宅のために提供されている施設で宿泊業をするのだから周辺への影響も考慮して1年のほぼ半分までというところで落ち着いた模様です。
2つ目と3つ目については、これまで明確なガイドラインもない状態で実態が先行してしまっている民泊施設の管理や宿泊客とのあっせん業などについても明確なガイドラインを設けて登録制にすることで実態を把握しようとする国の意図が感じられます。
(3)民泊新法が定める住宅宿泊事業者について
民泊には「ホスト不在型」と「ホスト同居型(ホームステイ型)」があります。後者の同居型は私たちが民泊という言葉に持つイメージに近いもので、ホスト家族と旅行者が交流をしたりすることを目的とした施設です。前者の不在型は最初から民泊営業をするためにスペースを確保して、そこでビジネスとして民泊を行うスタイルです。
実態では前者の不在型が大半で、すでに民泊がビジネスとして確立していることが分かります。
ビジネスとして不在型の民泊を行うためには、都道府県知事への届出が義務付けられます。その際、次項で解説する「登録済みの管理業者」に管理を委託することも必須となります。
(4)住宅宿泊管理業者および住宅宿泊仲介業者について
前項で述べた不在型の民泊営業を行うには施設内の衛生や安全を管理する必要があり、それを代行する管理会社も続々と登場しています。
民泊新法ではこうした管理を行う業者についても届出を義務化して、一定の能力を備えた業者でなければならないと定められました。
現状では特に届出や登録の必要がないためサービスの品質にばらつきがあり、トラブルの原因にもなっています。民泊新法には、そういった不明瞭な部分を健全化する目的があります。
また、Airbnbに代表されるような、ホストとゲストのマッチングを行う民泊仲介業についても登録制となります。施行前は特に登録制度がなかったので誰でも好きな時に民泊仲介をすることができましたが、これについても事業者の質やサービスの質を安定化させるために、登録が必要となります。
(5)民泊新法以前の合法的な民泊事情
民泊新法は2018年の施行が見込まれていますが、すでに実態を見るとたくさんの民泊事業者が存在し、多くの訪日外国人客が実際に宿泊をしています。つまり、現場ではすでにビジネスとして成立しています。民泊新法が施行される前の段階で合法的に民泊営業をするには、以下の2通りの方法しかありません。
- 旅館業法の許可を取得する
- 民泊特区で条例に基づく許可を取得する
旅館業法の許可を取得して民泊営業をするには、簡易宿所というカテゴリーの許可を取得するのが一般的ですが、これは「簡易」と言いながら住宅を宿泊施設にするにはハードルが高く、今すぐ取得をして営業というのはあまり現実的ではありません。旅館業法の許可を取得して民泊営業をする可能性については、「旅館業法に違反しない民泊とは何かを知ってビジネスを拡大させるための7つの知識」で詳しく解説していますので、民泊新法以外での民泊営業の可能性を模索されている方は併せてそちらもお読みください。
もうひとつの民泊特区というのは、2017年時点で東京都大田区と大阪府、大阪市だけが対象なのでそれ以外の地域では無関係です。それぞれの特区で条例が制定されており、その規制内容は旅館業法に似ているのでこれについても依然としてハードルが高い部分は否めません。
(6)今の民泊はほとんどが違法状態?
前項で旅館業法や特区条例のクリアした合法的な民泊についてハードルが高い部分があると述べました。流れとしては民泊合法化に向かっているので規制は緩和されつつあるので、今後は参入のハードルが低くなっていくと思われますが、それに至る前の段階での民泊営業は大半が違法状態にあると見られています。
ただ、現在は違法状態でも民泊新法などの法整備でいずれ追認する形で合法化する可能性もあるため積極的な摘発などは行われておらず、仮に摘発があったとしても書類送検レベルというのが現状です。
まさに民泊は過渡期にあり、大きな転機を迎えつつある状況だと言えるでしょう。
3、民泊新法の営業許可を取得して民泊を始めるまでの流れ
民泊新法の施行後を見据えて、実際に民泊を始めるまでの大まかな流れを時系列でまとめました。施行後に運用面での修正などが入り、この内容とは異なる部分が出てくるかも知れませんがご容赦ください。
(1)民泊営業を考えている物件の用途地域をチェック
土地にはさまざまな用途地域があります。住居専用や商業地域、工業地域などといった具合に土地の用途が法律で定められているのですが、民泊新法では「工業専用地域」以外であればどこでも民泊営業ができるようになる見通しです。
旅館業法や特区条例ではさらに制約が多いのですが、そういった制約が大幅に緩和されているのは民泊新法の特徴でもあります。
(2)マンションの場合は管理規約をチェック
都市部ではマンションの一室で民泊営業を行うというスタイルが目立ちますが、このようにマンションの一室で民泊営業をするにはマンションの管理規約という関門があります。
というのも、先行して運用されている特区条例でも管理規約で民泊を禁じている場合は許可が出ていません。民泊新法でもこれと同様に運用されると見られており、管理規約に「専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」という文言があるマンションでは民泊新法が施行された後でも営業はできません。
都市部のマンションでは一棟のほとんどが民泊になっていて事実上の「民泊マンション」となっているところでは、管理規約を変更して新法民泊の営業環境を整える動きも見られます。
なお、戸建て住宅で民泊営業をする場合は
集合住宅ではなく管理規約がないので、こうした関門はありません。
(3)民泊営業の届出
民泊営業を考えている物件所在地の都道府県知事に対して届出を行う必要があるので、所定の方法で手続きをします。この「所定の方法」についてはまだ施行前で方法について決まっていないことが多く、国からもアナウンスされていません。
すでに先行して運用されている特区条例では自治体の窓口に事前相談を行い、法的に問題がないかの確認をした上で申請書が手渡され、それを提出するという流れになっています。特区条例による申請については「民泊とは|全国の不動産投資家必見!注目の『民泊』の全情報」の「5、民泊ビジネスを始めるまでの流れ」でも解説していますので、参考にしてください。
(4)民泊仲介サイトに登録、もしくは代行業者に依頼
営業開始となったら、次に行うのは集客です。自分で民泊仲介サイトに登録をして集客をするのであればAirbnbへの物件掲載は必須ですし、それ以外にも任意で掲載をすると集客力が高くなります。
以下が主な民泊仲介サイトです。
Airbnb
STAY JAPAN
民泊営業を始めるにはもうひとつ、集客から物件の管理までを代行業者に任せる方法があります。すでに不動産投資家の間では一般的になっている方法である上に、民泊新法ではホスト不在型民泊だと「登録された管理業者への委託」が義務づけられているため、むしろ登録された管理業者の代行サービスを依頼してしまうのが現実的かも知れません。
民泊代行サービス業者には、以下のような会社があります。現時点では民泊新法の登録を行っていませんが、いずれも民泊代行を本業としているのでいち早く届出を行うと思われます。
AKIZERO
Zens
4、民泊新法施行後に起こりそうな問題と対策
(1)「180日しばり」がビジネス上の障害となる
民泊新法の施行において最も問題になりそうなのが、年間の営業日数が180日までに規制されることです。1年の半分は誰も泊まることなく眠っているわけで、考えただけでももったいない状況が生まれそうです。
営業日数を180日までにするという実際の運用について「それをどうやって管理するの?」という声も上がっていますが、これについては民泊仲介サイトで「この民泊施設は現在何日営業している」といったデータが把握できるため、こうした業者の情報で管理されると見られています。
現在とは違って民泊仲介サイトも届出制になり行政が関与しやすくなるため、日数をごまかして営業するということにも目を光らせることになりそうです。
考えられる対策としては複数の民泊スペースを確保して、例えば2つの部屋を交互に利用することで実質上年間を通じて営業ができるようにするなどが考えられます。これについても片方の部屋が余っている状況に変わりはないのでもったいないことに変わりはありませんが、全くの休業になることは避けられます。
もうひとつの抜本的な対策として、民泊新法ではなく旅館業法の許可を取ってしまう方法も考えられます。本格的に「民泊以上、ホテル未満」の施設を設けてビジネス化するのであれば年間営業日の制約がない旅館業法許可のほうがはるかにビジネスとしては有利です。
(2)条例による上乗せ規制
民泊新法では年間180日までとなる見通しの上限日数ですが、これに上乗せをして年間100日まで、年間90日までといった具合に自治体が条例を制定すればそちらが適用されます。東京や大阪などはすでにビジネス化されていることもあってあまり考えられないかも知れませんが、地域によっては民泊に対しての視線が厳しく、上乗せ規制の条例が設けられる可能性があります。
「民泊新法さえ押さえておけば大丈夫」ということだと物件を確保した後で上乗せ規制の壁に跳ね返される可能性すらあるので、物件確保の前に自治体に事前相談をしておくことが一層重要になります。
(3)無許可の民泊営業に対する風当たりが強くなる
民泊新法が施行される前は、民泊全体がグレーな存在として扱われています。法整備されていないので仕方ないというムードもあって取り締まりもそれほど大々的には行われていませんが、民泊新法が施行された後は「法整備がされたのに無許可で営業するとはけしからん」となります。
民泊新法では民泊仲介業者も登録制になるため、例えばAirbnbに今は掲載されている無許可民泊も、施行後は掲載できなくなります。
既存の法律や条例の罰則強化や取り締まり強化も相まって、現在はグレーな存在でいられたものが、施行後は法律の適用を受けなければ事実上営業できないことになりそうです。
まとめ
すでに不動産投資家の間では民泊という言葉を知らない人はいないほど、不動産投資の選択肢として民泊は十分な存在感を持っています。これをいかにして自分の投資に役立てるか、このブームにうまく乗って利益を上げられるかということも、施行される民泊新法が大きなカギを握っていると思います。
施行されたからではなく今のうちから民泊新法をしっかりと理解して、来るべきチャンスをしっかりモノにできるようにしてください。
収益物件の選び方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。