「民泊とは、どのようなものだろう……?」
「民泊が注目されているらしいけれど、民泊は儲かるの?」
と、民泊について知りたいという方は少なくないのではないでしょうか。
毎年のように訪日外国人数が過去最高を記録し続ける中、ホテル不足を補うような形で海外ではすでに一般的な宿泊スタイルとなっている「民泊」が日本でも広がりを見せるようになってきました。
しかし、そもそも日本の法体系ではビジネスとしての民泊を認めていません。特区条例や法整備などによって民泊の合法化がされつつありますが、まだ本格的なものではない段階です。
それでもここまで民泊が注目されるのは、ビジネスとしての旨みがあるからに他なりません。空き家の有効利用など不動産の活用という観点からも知っておくべき動きなので、毎月不動産に興味ある方が数万人訪問する『不動産投資の教科書』としても民泊の現状を解説することにいたしました。
この記事では、
- 民泊ビジネスとは?基本的な知識
- 民泊のホスト、ゲストそれぞれにとってのメリットとデメリット
- 民泊と法律との関係(特に重要な情報です)
などについて可能な限り実践的な内容で解説していきます。
何となく民泊が気になるという方から、民泊ビジネスへの参入を本格的に検討されている方まで満足していただける内容です。
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1、民泊とは?
(1)そもそも、民泊とは?
民泊という言葉は以前からありましたが、その意味合いは時代に応じて変化し続けてきました。かつての民泊とは民家に泊まることを意味するもので、家人の善意で旅人を泊めてあげる、食事を提供するといったものでした。昔話では時折、疲れた人や空腹の人が民家のお世話になるという場面が登場しますが、これが民泊の原型です。
現在「民泊」と呼ばれているのは、これと意味が異なるものです。あくまでもビジネスとして有償のもので、ネット上にある民泊情報サイトを通じてホスト(宿泊スペースを提供する人)とゲスト(宿泊客)がマッチングをして、宿泊というサービスを提供する対価として金銭を得るという仕組みのものを指します。
これを整理すると、「訪日外国人などに自分の家や管理しているスペースを貸して対価を得る宿泊ビジネス」というのが現在の民泊に対する認識です。
(2)民泊が注目されている背景
ここ最近になって民泊が急に注目を集めるようになった背景には、訪日外国人の急増にホテルの宿泊キャパシティが追い付ていない需給バランスが大きく関わっています。
ホテル業界はこれまで日本人の旅行客や出張客をメインの顧客としてビジネスホテルなどを供給してきましたが、こうしたホテルに訪日外国人が殺到、日本人ですらホテルの予約が取れないといった事態が大都市圏で急増しました。
民泊はこうした需要を容易に取り込むことができる上に、これまで使い道のなかった空き家や空きスペースで利益を生むことができるということで、民泊のスペースを提供しているホストだけでなく官民どちらからも有望な成長分野として見なされるようになったのです。
(3)「民泊は儲かる」と言われているワケ
ここまで民泊が注目され、現実に多くのホストが誕生している状況には、「民泊は儲かる」という認識があるからです。使い道のなかった空き家が「宿泊施設」となって利益を生んでくれるとなると、「少しでも儲かれば御の字」と考える人が出てきても不思議ではありません。
後述しますが、民泊の隆盛を語るうえで世界的な民泊サイトであるAirbnbの存在を抜きにはできません。Airbnbを使えば容易に世界中のゲストに対して民泊スペースの宣伝・紹介ができて、そこから予約を得ることができます。しかも、今ではAirbnbなど民泊サイトの代行業者も続々と登場し、ホストや空き家のオーナーが何もしなくても代行業者が民泊運営をしてくれるというのですから、このビジネスモデルに魅力を感じる人は今も増加中です。
(4)民泊をビジネスにしたAirbnb
現在のように民泊がビジネスとして確立していることには、世界的な民泊サイトであるAirbnbの存在を無視することはできません。今もなお日本国内で訪日外国人を受け入れる民泊において最大の橋渡し役を担っており、民泊を運営しているホストの中でAirbnbを利用していないという人はおそらくほとんどいないでしょう。
2016年11月にAirbnbの日本法人が発表したプレスリリース「Airbnb利用のインバウンドゲストが300万人を突破」では、そのタイトルの通り2016年の時点でAirbnbを利用した訪日外国人が300万人を突破したことが詳しいデータとともに公開されています。
Airbnbの仕組みについて詳しくは「新しい不動産投資の手法?Airbnbで物件を運用する前に知っておきたい6つのこと」を参考にしてみて下さい。
その後、Airbnbと同様のサービスを提供する民泊サイトが続々と登場しました。特に訪日外国人の中でもゲスト人口の多い中国にも有力な民泊サイトが誕生しており、そうしたサイトを通じて日本の民泊を利用するゲストが多くなっています。
つまり、Airbnbだけでも民泊利用者が300万人を超えているのですから、他の民泊サイト利用者を合計すると倍、もしくは倍以上の人が日本国内で民泊を利用している可能性があります。
(5)訪日外国人以外の「民泊」について
民泊というと訪日外国人を受け入れる宿泊所というイメージが強くなっていますが、民泊には国内需要もあります。
古くからある仕組みとしては、夏休みに子供が農業や漁業を体験するために現地の民家に宿泊をするといったものや、地方で普段はあまり宿泊客がいないところで大きなイベントがあるといった時、一時的な宿泊需要に対応するために民家での宿泊を利用するといった場合などです。
象徴的な事例としては、2019年のラグビーワールドカップが開催される岩手県釜石市では数万人と言われる一時的な宿泊需要に応えるためにAirbnbと提携をしました。今後もこうした動きは全国的に広がりを見せると思われます。
【参考】
Airbnb社との観光促進に関する覚書の締結について(岩手県釜石市)
2、民泊のメリットとは?
民泊がもたらすメリットについて、民泊を利用するゲストとスペースを提供するホストの両方の視点で挙げてみました。
(1)ゲストにとってのメリット
ゲストにとってのメリットは格安で宿泊できるという一点に尽きると思われがちですが、実は他にも外国人が重視しているメリットがあります。
①既存のホテルよりも格安で宿泊できる
民泊が持つ本来のメリットです。空き家や空きスペースの有効活用からスタートしているので、ホテルよりも格安で利用できることは旅行の費用にシビアな外国人にとって大きなメリットとなります。
特に家族やグループなどで利用する際、民泊だと部屋単位で価格設定をしていることが多いので人数が多くなるほどホテルより割安になる傾向が見られます。
②日本家屋に泊まりたいという異文化体験が実現する
私たち日本人が意外に見落としがちなメリットですが、訪日外国人の中には日本文化と深く関わりたいと思っている人が相当数います。そんな人にとって宿泊料金に関係なく日本式の家屋で寝泊まりすることは大きな意味があります。
そのため、畳敷きの和室や床の間のあるような部屋が人気になることがあります。
③ホストとの関わりによって旅の思い出が増える
Airbnb社が訴求しているイメージによる登場するものが、ホストとゲストの国際交流です。他にも「カウチサーフィン」のように民家に泊まるコミュニティがあるように、日本人が思っている以上に外国人は国際交流を気軽に考えている傾向があります。
ただし、現在日本国内で民泊運営されている施設の大半はアパートなどのスペースを民泊専用に提供しているため、こうした施設の場合はホストとの関わりがあまりありません。多くの人が民泊に持っているイメージとして「ホストとゲストが一つ屋根の下で交流する」という光景がありますが、こうした光景はホスト同居型と呼ばれる民泊でないとなかなか見られないかも知れません。
なお、ホスト同居型の民泊はトラブルの原因にもなりやすいため特区として民泊営業が条例によって許されている大田区などでも禁止されています。
(2)ホストにとってのメリット
ホストのとってのメリットは、やはり空き家など使い道に困っていたスペースの有効利用に尽きるでしょう。
①自宅の余ったスペースを有効利用できる
Airbnbなどの民泊サイトを利用して民泊を運営しているホストの多くは、民泊をビジネスとして捉えています。単純計算としてマンションの一室で1日あたり1万円の売り上げが見込めるとしたら、その部屋が30日稼働すると月間30万円のキャッシュとなります。
不動産投資では家賃収入を見込むことになりますが、毎月30万円の家賃収入を得ようとするとかなりの高額物件でなければなりません。
この圧倒的な利回りの良さが、ホストにとって最大のメリットとなります。しかもその物件が空き家など使い道に困っているものであれば、なおさらです。
ただし、現在民泊ビジネスを展開している事業者の多くは、既存の空き家を活用するよりも民泊向きの不動産物件を探して、そこで営業するというスタイルです。
②外国人との関わりを望む人にとって接する機会が増える
手軽に始められる宿泊施設を通じて外国人との接点を持ちたいと思う人が民泊を始めるという事例もあります。もっとも、この場合はゲストハウスという形で宿泊施設を運営する人もいるので、必ずしも民泊でなくてはならないというわけではありません。
3、民泊のデメリットとは?
メリットにばかり注目が集まりがちな民泊ですが、民泊を本質的に理解するためにはデメリットの部分をしっかりと知っておく必要があります。特にホストにとってのデメリットは宿泊文化の違いに起因するものもあるので、十分な理解が必要です。
(1)ゲストにとってのデメリット
ゲストにとって民泊のデメリットは、ホテルのようにホスピタリティが確立されておらず、当たり外れが大きいという点に集約されます。
①消防法違反など危険な状態の宿泊所がある
法的にグレーな存在の民泊もあるため、消防法違反や違法建築など、法的に問題のある施設も実際にあります。万が一、火災など不測の事態が発生した時などを考えると、ホテルよりもリスクの高い施設に泊まってしまう可能性があります。
こうした事態が起きた場合、民泊が法律に違反していたり、建物そのものが違法建築だと火災保険が出ないケースもあります。
②明確な基準がないため粗悪な宿泊所に当たることも
前項と同様にグレーな存在ということもあって宿泊施設としての基準が曖昧です。そのため利潤を最優先してしまっている粗悪な民泊に当たってしまう可能性もあります。Airbnbなどの民泊サイトでは口コミや評価の仕組みがあるので、他のゲストの評価である程度の事前判断はできますが、新しい施設だとそういった情報も少なめです。
(2)ホストにとってのデメリット
不動産投資家など民泊ビジネスを検討している方に最も知っておいていただきたいのが、ホストにとってのデメリットです。
①違法またはグレーな民泊が多い
2016年現在、民泊を合法的に営業するには2つの方法があります。1つは旅館業法の規定に則った民泊で、もう1つは特区民泊と呼ばれる特定の地域で条例に則ったものです。
これにもう1つ、民泊新法とも呼ばれる住宅宿泊事業法が施行されると、この新法を根拠とした民泊も合法化されます。しかし、2016年現在は施行されていないので新法に準拠していたとしても違法(またはグレー)です。
条例によって民泊営業が可能な特区は東京都大田区と大阪府大阪市だけ(福岡県北九州市に条例整備の動きがあります)だけなので、これらの地域以外で営業している民泊は旅館業法に則っていなければ違法ということになります。
現実問題として合法的に営業している民泊ばかりではなく、違法性がつきまとうのは新規参入を考えている投資家にとっても躊躇してしまう部分です。
②近隣トラブル
民泊は民家として使用することを前提とした建物が使われるので、戸建て住宅であってもマンションやアパートであっても、近隣との関わりがあります。これまで静かだった住宅街にスーツケースをゴロゴロと引いた人が頻繁に出入りをしたり、夜中まで騒いでいるゲストの騒音などが苦情の原因になります。
他人に自分の家を貸すという習慣があまりない日本文化との乖離もあって、民泊が文化的に受け入れられにくく、近隣トラブルを招きやすいという指摘があります。
現実問題として各地で民泊による近隣トラブルは多発しており、これから投資をする場合には周辺環境を十分に検討する必要があります。
③衛生上、防犯上の問題
ホテルでは宿泊者の本人確認が徹底されていますが、そもそもグレーな存在でもある民泊だと本人確認が徹底されないことによって犯罪の温床になったり、外国から感染症を持ち込むルートになってしまうなどのリスクが指摘されています。
これらの問題は運用上の改善で解決しうるものですが、不特定多数の外国人を相手にビジネスをする際に、本質的に付きまとうリスクでもあります。
4、民泊と旅館業法の関係とは?
(1)よく言われている民泊の違法性について実際は?
前述しましたが、民泊については違法性が常に付きまとっており、実際に摘発事例もあります。特区に指定されている地域で条例に則った民泊営業をしている場合を除くと、2016年現在で合法的に民泊営業をする方法は旅館業法に則った方法しかありません。
旅館業法の基準をクリアするには「もはや民泊というよりカプセルホテル」と言われるほどの要件があるため、それをクリアすることなく、そして都道府県知事の許可を得ることもなく営業している民泊が多いのが実情です。
誰かを傷つけたり金品を奪うといった犯罪行為ではないことや、合法化が目前に迫っていることもあって積極的な摘発は行われていませんが、何か大きな事件が起きた時には運営者が多大な責任を負うリスクがあります。
(2)宿泊業は許認可ビジネス
そもそも宿泊業は、許認可ビジネスです。火災や食中毒などを予防し、ゲストが安心して滞在できるだけの品質を確保するために旅館業法という法律があります。大きなホテルから旅館、民宿、カプセルホテル、ゲストハウスにいたるまであらゆる宿泊施設はこの旅館業法に則って営業しており、旅館業法が求めている都道府県知事の許可も取得しています。
民泊はこの旅館業法が想定している宿泊施設ではないため、法整備が追い付いていないというのが実際のところです。国や地方自治体は法整備を急いでおり、2018年には民泊新法が施行される見込みです。
次項から、法律の根拠から3通りある民泊営業の方法について解説します。
(3)民泊新法(住宅宿泊事業法)とは?
2016年3月に閣議決定し、2018年からの施行を予定しているのが民泊新法(住宅宿泊事業法)です。すでに普及している民泊に対して明確なガイドラインを設けて適正化を図る目的があるため、これによって全国どこでも一定の基準を満たせば合法的に民泊営業ができるようになります。この新法による民泊には、いくつかのポイントがあります。
- 都道府県知事への届出を義務化(従来は許可が必要だった)
- 民泊として提供できるのは年間180日まで
- 衛生管理や施設管理の措置を義務化
- 家主不在型の民泊では業者に管理の委託を義務化
- 住宅宿泊管理業の登録制度を創設
- 住宅宿泊仲介業の登録制度を創設
4つ目にある「業者」とは、5つ目にある住宅宿泊管理業の業者という意味です。家主不在型(投資によって民泊をする場合の営業形態)の民泊をする場合は、5つ目にあるような制度下で登録されている管理業者に施設の管理を委託しなさい、ということです。
6つ目にある仲介業というのは、Airbnbのような民泊サイト事業者などのことです。民泊の仲介業務をする際には、観光庁長官への登録が義務付けられます。
こうした民泊新法のポイントを見ていると、国が民泊そのものを成長分野として認めた上で、それが健全に発展するようにコントロールしていきたいという意図が見られます。
(4)特区民泊とは?
民泊新法が施行される前から東京都大田区と大阪府大阪市では民泊に関する条例に則った形での民泊営業が可能です。ただし民泊新法に先行して運用されている条例なので、民泊新法よりも基準は厳格です。
最大のネックとなっていたのは「6泊7日以上」という滞在日数の長さでしたが、これについては要件が2泊3日以上に緩和されています。
その他にも、マンションの管理規約などに民泊が禁止されていないこと、床面積や設備、建築基準法の検査済証、宿泊者名簿の作成などさまざまなルールがあります。
当初は6泊以上というハードルの高さから認定施設がとても少なかったのですが、要件緩和によって認定民泊施設は増えると見られています。
各自治体の特区民泊に関する公式情報は、以下の通りです。
(5)旅館業民泊とは?
旅館業法には、宿泊施設の分類で「簡易宿所」というカテゴリーがあります。実在している宿泊施設の中ではカプセルホテルやゲストハウスなどがこれに該当し、複数の人が相部屋で寝泊まりする点が特徴です。
民泊でも同様の形態をとっているところがあるので、旅館業法の基準をクリアして許可を取得すれば合法的に民泊営業が可能になります。2016年現在、特区以外の地域ではこれ以外に合法的な民泊営業をする方法はありません。
旅館業法という名称の通り、この法律では宿泊施設にさまざまな義務を課しています。主なものとして、以下のようなものがあります。
- 火災報知器の設置
- 床面積の下限
- フロントの設置、スタッフの常駐
- 換気、採光、照明、入浴、排水などの設備
- 履物を保管する設備
民泊はもともと住宅として用意された建物を使用する場合が多く、これらの設備がないことも多いと思います。その場合、設備を整えるための費用を考えると旅館業許可を取得した上での民泊は、「すでに民泊とは呼べない」と言われるのも分からないでもありません。
(6)「民泊禁止」の壁
上記に解説した3つの民泊は、すべて国や自治体の規制をクリアするという観点での分類です。民泊にはもうひとつ、もしかすると最大のハードルかも知れないとも言える関門があります。それは、対象の不動産が民泊を禁止している場合があるという事情です。
すでに解説してきたように、住宅で民泊ビジネスを始めると周辺の人に対して必ず何らかの影響が生じます。これまで静かな環境だったマンションに、ある日突然大勢のスーツケースを引いた外国人が押し寄せたら、それを快く思わない人の方が多いでしょう。
すでに民泊が盛んな地域では、分譲マンションの全戸が民泊に供されているというケースもあります。こうしたマンションでは問題が起きにくいかも知れませんが、それでも隣接するマンションや住宅から苦情が出る可能性も否定できません。
民泊ビジネスを始める際には、法的な問題をクリアするのと同じくらい、その不動産で民泊が可能なのかどうかを検討した上で、エリアや物件を入念に絞り込む必要があります。
5、民泊ビジネスを始めるまでの流れ
民泊を始めるにあたって、大まかな流れは「物件探し→営業形態を決める→法的問題のクリア→民泊サイトへの登録→営業開始」という感じになります。すでに民泊に適した物件を所有しているのであれば物件探しは必要ありませんが、ここではビジネスとして物件探しから始めるという想定で解説します。
(1)民泊に供する物件を探す
民泊に適した物件を営業面から見ると、都心部や有名な観光地が多い地域などから近い立地条件が理想的です。実際に民泊営業が活発な地域を見ても、こうした条件が合致しているところが多くなっています。
しかし、民泊には法的な問題との兼ね合いがあるので、営業面だけで選ぶわけにはいきません。すでに不動産物件をお持ちの場合は該当しませんが、物件探しにおいてはその物件で民泊営業が可能かどうかを調べる必要があります。
(2)民泊営業ができる物件かどうかを調べる
民泊営業を始めるにあたって、最も重要な関門が「ここで民泊ができるか」という問題です。法的な問題はもちろん、マンションで開業する場合は管理規約に民泊禁止が謳われていないかが営業許可に直接関わります。
まず物件所在地の用途地域によって民泊はおろか旅館業ができないことがあります。住居専用地域など旅館業を開業できない地域では民泊向きの物件が多いかも知れませんが、営業行為ができないので民泊も禁止です。逆に旅館業が可能な地域であれば旅館業法による簡易宿所もしくは民泊新法による許可の取得が可能であると考えられます。
次に建物の形態別に、民泊の営業ができるかどうかの可能性をまとめました。
①戸建住宅
戸建住宅を丸ごと民泊向けの宿泊施設にするという考え方です。マンションのように管理規約との兼ね合いがないので法的な問題さえクリアすれば民泊営業を始めることができます。
戸建住宅なので設備を整える工事もしやすく、旅館業が可能な地域であれば簡易宿所としての営業許可を取りやすいでしょう。もし旅館業を開業できない地域であっても民泊新法の適用で年間180日までの営業となりますが、民泊を開業できる可能性が残ります。
②一棟マンション
一棟マンションを使って民泊をする場合、当初は住宅用として建築されたマンションの用途変更をする必要があります。宿泊施設にするには容積率の基準が厳しくなるため、容積率の問題で難しい面もあったのですが規制緩和によってクリアできる物件も多くなっています(ただし自治体によって見解がまちまちなので要事前相談)。
③区分マンション
一棟マンションと同じく建物の用途変更が必要である上に、区分所有の場合は管理規約によって民泊が禁止されていないことが絶対条件です。
とてもハードルが高く感じられますが、この形態で民泊営業をしているケースはとても多く、「民泊しかないマンション」が続々と誕生しているという現場の事情もあるので、決して不可能ではありません。
これらの見解は全国共通のものですが、旅館業に関する取り扱いは地域によって考え方に差異があるため、許可申請で多くの自治体が求めている事前相談によって条例や用途地域、建物の要件などにおいて民泊営業が可能かどうかの相談をしておくことを強くオススメします。
(3)民泊の営業許可を取る
合法的に民泊営業をするには、3つの選択肢があります。旅館業法の簡易宿所許可を取る、もしくは特区に指定されている地域であれば条例を根拠に許可を取る、そしてもう1つは施行後の話になりますが民泊新法(住宅宿泊事業法)の基準を満たして営業許可を取るという方法です。
①旅館業法の簡易宿所許可を取得する
旅館業法が求めている基準を満たした状態で許可申請をして、それが認められると都道府県知事から簡易宿所としての営業許可が出ます。簡易宿所の営業許可を取得するための手続き方法や大まかな流れについては、厚生労働省が「民泊サービスを始める皆様へ」というマニュアルを公開していますので、これが最も分かりやすい公式情報となります。
■旅館業法のメリット
旅館業法の営業許可を取った上での民泊は営業日数に制限がないのが最大のメリットです。可能であれば365日営業をしても問題はありません。
また、国の法律なので日本全国どこであっても旅館業の営業ができない地域(住居専用など)でなければ民泊営業が可能です。
■旅館業法のデメリット
旅館業法の中で簡易宿所として規定しているのはカプセルホテルなどの宿泊施設なので、これに近い設備を整える必要があります。改正によって10人以下という小規模な民泊施設であればフロントの設置義務がなくなり、床面積についても要件が緩和されましたが、それでもなおハードルが高いことは否めません。
②特区条例の要件を満たして営業許可を取得する
東京都大田区、大阪府大阪市など戦略特区に指定されているところで民泊条例がある場合は、旅館業ともう1つ条例の許可を根拠に合法的な民泊営業が可能です。「4ー(4)特区民泊とは?」では民泊条例が制定されている自治体ごとの情報をご紹介していますので、詳細は各自治体の公式情報をご覧ください。
特区民泊の場合は最低滞在日数が6泊7日というハードルが新規参入を阻んできましたが、これは緩和が進んでおり現在は2泊3日からでもOKであると考えていただいて良いと思います。
【参考】
■特区民泊のメリット
特区条例は「特区」というだけあって旅館業法よりも要件のハードルが低く、新規参入しやすくなっていることがメリットです。また、建築基準法上の用途が住宅である建物についても用途変更手続きが不要です。
■特区民泊のデメリット
魅力的な特区条例ですが、特区に該当しない地域には条例が存在せず、この制度を利用することができません。かつては6泊7日という最低滞在日数がネックになっていましたが、これが緩和されたことによって特区民泊の魅力はさらに高まりました。
③民泊新法(住宅宿泊事業法)の許可を取得する
2018年に施行が予定されている民泊新法が施行されると、以後は民泊特区に該当しない地域であっても旅館業法以外の法的根拠で民泊営業が可能になります。
比較的参入のハードルも低く、新法施行後は民泊の標準モデルになっていくでしょう。
2017年現在はまだ施行されておらず申請方法など運用面で決まってないことが多いため、申請方法や審査基準などの詳細はこれからということになります。
■新法民泊のメリット
参入のハードルが比較的低い(と思われます)ので、民泊条例のない地域にも同様の参入機会が生まれます。また旅館業を営むことができない地域であっても民泊開業が可能なので、開業することに限れば最もハードルが低くなると見られています。
■新法民泊のデメリット
参入しやすいことがメリットである一方で、新法民泊は年間の営業日数が180日までと上限が設定されており、1年の半分しか営業できないことが最大のネックです。旅館業を開業できない地域での営業が可能であることもあって周辺環境への影響を考慮した措置が、営業面では最大のデメリットになりかねません。
(4)民泊サイトでアカウントを作成する
営業許可を取得したら、次にやるのはPR活動です。民泊の集客はすべてネット上の民泊サイトで行われるため、主要な民泊サイトにおいてアカウントを作成します。
①Airbnb
※最大の民泊サイトなのでアカウント必須
②STAY JAPAN
※日本発の民泊サイト
③TRIPBIZ
※出張ビジネスマンに顧客を限定しており運用の安心感が大きいサイト
これらのサイトに登録することでも十分民泊の集客は可能ですが、より多くのサイトを使った国際的な集客を考える場合は「民泊代行サービス」を利用する手もあります。
④AKIZERO
⑤Zens
⑥Minpak
⑦TOKYO B&B
まとめ
何かと話題になることが多い民泊について、基本から現状、そしてとても重要な法律や規約との関係について解説してきました。「儲かるのなら今すぐ民泊を始めたい」とお考えの方にとっては少々ハードルの高さを感じられる内容だったかも知れませんが、いかがですか?
法律のハードルが高いのは事実ですが、国は民泊をインバウンド向けビジネスの成長分野として位置付けており、規制緩和や合法化に積極的です。民泊新法の施行も含めて加速度的に投資参入の現実味は増してきているので、この記事の情報を「安全に儲かる民泊ビジネス」の構築にお役立ていただければと思います。