不動産投資には想像していなかった事が起こります。筆者もこれまでもあの有名な上場企業の欠陥物件に当たったこともあります。
今回は地方の物件を売却したときに経験した「想像の斜め上をいく」お断りの理由をご紹介しましょう。(岩田亜希・宅地建物取引士、兼業不動産投資家)
沖縄のハイクラスで優秀な物件
数年前に沖縄の物件を売却したときの話です。
その物件は、那覇市内や東シナ海が見渡せる高台にあるちょっとした高級マンションの一部屋でした。ハイクラスな物件にはやはりハイクラスな賃貸人がついてくれます。
その部屋は10年ほど所有しておりましたが、その間の入居者というと、外国人の大学教授夫妻、外資系ホテルの支配人、都内にある外資系金融会社社長の別宅、と賃貸経営の手のかからない優秀な物件でした。
沖縄に物件を所有する大きなメリットの一つに、経費で沖縄に行けることがあったのですが、所有して10年が経ち残債が減ってきたこと、また、インバウンドの増加に伴い不動産市況も良く、キャピタルゲインが狙える売り時と判断し、売却することにしました。
売りに出したところ、反響も良く、すぐに数件の内見が入りました。そのうちの1件のエピソードは今でも忘れられません。
内見を申込みいただいた方は生粋の「ウチナーンチュ(沖縄県民)」。
おじい、おばあを含めた一族で見にきたそうで、ご家族皆さん物件自体はたいそう気に入った様子だったと仲介業者からの報告を受けました。その時は「この方で決まるかも」という好感触でした。
沖縄独自の伝統文化が家選びにも…
「ナイチャー(沖縄県民以外の人)」の筆者には理解が及びませんが、ウチナーンチュの方なので当然、沖縄独自の伝統や文化を大事にされています。
それは、家選びも例外ではありませんでした。
その伝統とは、別名「ユタ」とも呼ばれる民間霊媒師「シャーマン」に霊的に問題がないかどうか判断を仰ぐ、と言うものでした。
ん?シャーマン・・・?
仲介業者からの報告の聞きなれない単語に戸惑いましたが、シャーマンの意見を聞かなければ決められないのであれば仕方ありません。
次回、シャーマンを含めて、再度内見してもらうことになりました。
沖縄の「シャーマン」の困ったアドバイスとは?
最初の内見から1週間後、シャーマンと共に改めて内見に入ってもらいました。さて、結果は…。
「ここの土地の気が高すぎるのでやめたほうがいい」。
どうやら、購入者の気のレベルよりも土地の気のレベルが高いので、まだ買うには早い、ということらしいのです。
実はもともとその土地は琉球王族が住んでいた土地で、確かに風通しの良い高台にあり地名も良く、なんの霊感も持ち合わせていない筆者でもなんとなく居心地の良さを感じる場所でした。
しかし事故物件などのネガティブな理由ならまだしも、まさか土地の気がいいことが買われない理由になってしまうとは…。なんとも残念な結果となりました。
最終的に、その物件は航空会社にお勤めの若い機長さんファミリーが購入されました。
地方物件は「郷に入っては郷に従え」
この物件売却の経験で学んだことは、2つあります。
1つ目は、いい物件を選べば賃貸経営も出口戦略も苦労しないということ。
この物件を購入した10年ほど前は、沖縄の不動産なんて誰も注目していませんでした。しかし、ニーズのある物件を選んでおけば、賃貸の客付に苦労することもなく、また、売却時には物件価格も上昇し、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を得ることができるのです。
一方で、地方物件を選ぶときはその地域独自の文化に関しても忘れてはいけないでしょう。
今回のシャーマンはかなり特殊な例かもしれませんが、賃貸にしても東京ルール、大阪ルールと原状回復などの考え方に違いがあるように、地域が変われば慣習が違ってきます。そのため「郷に入っては郷に従え」の精神で柔軟に賃貸経営を行う必要があります。
このときの沖縄の物件売却はとてもいい経験となりました。
今は沖縄に物件がないので縁遠くなってしまいましたが、またいい物件を見つけて経費で沖縄に行きたいものです。
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