インサイダー取引って何…?
インサイダー取引ってどんな犯罪…?
インサイダー取引という言葉は知っているものの、いったいどういう取引がインサイダー取引に該当するのかを正確に説明できる方は少ないのではないでしょうか。
もしかして、これってインサイダー取引?と思えるような株取引を予定されている方にとって、その線引きを正確に知っておくことはとても重要です。
なぜなら、不正行為が発覚すると刑事責任を問われたり多額の課徴金の支払いを命じられたり、そうでなくても会社をクビになるなど思わぬ重大な事態を招く恐れがあるからです。
また、インサイダー取引というだけあって内輪の取引なので、まずバレないと思われている方も多いかも知れませんが、実際のところはそうも言っていられない現実があることも知っておいていただきたいと思います。
そこで、この記事では、
- インサイダー取引とは、どんな取引のことなのか
- インサイダー取引が発覚するとどうなるのか
- 自分がやろうとしている株取引がインサイダー取引に該当するのか
- インサイダー取引を追及されないようにするためにはどうすれば良いか
といったカテゴリーに分類をしてインサイダー取引を理解していただける情報を網羅しています。
「知らなかった」では済まされないのがインサイダー取引の怖いところです。
もしかすると該当するかも知れないという株取引を予定されている方は特に、この記事の情報をチェックしてから取引をするようにしてください。
目次
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1、インサイダー取引の怖さ
インサイダー取引が発覚して処分を受けた人の多くが、「知らなった」と述べています。しかし実際の影響を考えると、「知らなかった」では済まされない現実があります。
(1)たまたま知っていたから買ったら犯罪行為だった?
インサイダー取引の多くは最初から犯罪行為の意図があったというより、「たまたま知ったから株を買った」といった類の事例が多いことをご存知でしょうか。つまり、処分を受けた人の多くが最初から悪意を持っていたわけではなかったのです。
これがインサイダー取引の厄介で恐ろしいところだと思います。「え?こんなことが犯罪になるの?」というように、軽い気持ちで行ったことが重大な結果を招くような事例がこれまでにも多々起きています。
(2)違反すると思わぬ重罪が?
あまり知られていませんが、インサイダー取引はれっきとした犯罪行為です。金融商品取引法という法律には、罰則規定あります。第197条に規定されている罰則には、「5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金またはその両方」とあります。
経済的な利益を目論む犯罪行為なので罰金については理解できる部分があるとしても、「え?!インサイダー取引くらいのことで5年以下の懲役??」とお感じの方は多いのではないでしょうか。
さすがに懲役刑はよほど悪質で金額が大きくなければ適用されることはないと思いますが、「村上ファンド」で知られる村上世彰氏の逮捕劇は世間を大いに騒がせたので覚えている方も多いと思います。この村上ファンド事件の罪状は、インサイダー取引です。
その他にも「犯罪によって得た財産の没収」「法人に対しては5億円以下の罰金」という規定もあるので、インサイダー取引が想像以上に厳罰であることを改めて実感できると思います。
(3)インサイダー取引で得た利益は没収される?
前項でも述べましたが、インサイダー取引が発覚して処分の対象となると、その取引によって得た利益は没収されてしまいます。このことは金融商品取引法第198条に規定されており、バレてしまうと犯罪として処罰されるだけでなく「儲け」も失ってしまいます。
(4)会社をクビになる?
インサイダー取引の監視は、証券取引等監視委員会(SESC)という組織が担当しています。とても調査能力に長けていることで知られており、些細な株取引であっても不自然さを察知する能力があるとされています。
この証券取引等監視委員会の調査対象になるとインサイダー取引に関わった疑いがあることが、勤務先にバレることになります。勤務先がその当事者であったり取引先であったりすると、「会社で知り得た情報でインサイダー取引を行った」という疑いを勤務先からも持たれてしまうことになり、信用失墜は免れないでしょう。最悪の場合は会社の規定によってクビになるという事態もあり得ます。
2、インサイダー取引の基礎知識
インサイダー取引とは、どんな取引のことなのでしょうか。まずはインサイダー取引の概要を押さえておきましょう。
(1)そもそも、インサイダー取引とは?
インサイダー取引の意味については、ほとんどの方がすでにご存知だと思います。株取引において事前に関係者しか知り得ない情報を使い、それによって利益を得るような行為を指します。
その会社の社員が自社内で知り得た情報をもとに株取引をすることは典型的なインサイダー取引ですが、それ以外にも派生する行為がインサイダー取引に引っかかることがあるため、その線引きがとても重要になります。
(2)なぜインサイダー取引が規制されているのか
インサイダー取引は、いわば「ズル」です。一部の関係者しか知り得ない情報を使って株取引をすれば大儲けできる可能性が高いのは当然のことで、その情報を知らなかった人はその機会を持てないため、とても不公平です。
公平性や透明性が確保されていることが証券取引の大前提なので、このような「ズル」がまかり通ってしまうと市場そのものの信頼を損ねてしまいます。ついにはインサイダー取引以外の株取引に魅力を感じなくなってしまったら、投資家は株式投資をしなくなるでしょう。
そうなると株式会社という仕組みそのものの存在を危うくしてしまうので、インサイダー取引が厳しく規制されているのです。
(3)過去にあった有名な事例
過去にあったインサイダー取引の有名な事例としては、やはり村上ファンド事件を抜きには語れないでしょう。2006年に起きたこの事件はホリエモンこと堀江貴文氏のライブドアがフジテレビの親会社であったニッポン放送の買収を目論んでいることを聞き、その翌日からニッポン放送株を大量に買い集めたとされており、これがインサイダー情報であったと認定されたことから、村上世彰氏が逮捕されることとなりました。
刑事罰としては執行猶予がついたので村上氏が刑務所に行くことはありませんでしたが、罰金300万円と課徴金が11億円以上という巨額に上ったことも、インサイダー取引の処分の重さを物語っています。
(4)インサイダー取引の罰則
冒頭でも述べましたが、インサイダー取引には大きく分けて3つの罰則があります。
①刑事罰
金融商品取引法第197条の規定により、インサイダー取引には「5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金またはその両方」が科せられるとあります。前項の村上ファンド事件では「懲役2年執行猶予3年、罰金300万円」という判決が確定したので、この条項による刑事罰の範囲で判決が出されていることが分かります。
②利得の没収
インサイダー取引で仮に逮捕されるようなことがあったとしても、あまりにも大きな利益を出せるのであれば逮捕覚悟で手を染める人が出てきてもおかしくありません。
それを防ぐため、金融商品取引法大198条には「犯罪によって得た財産の没収」が規定されています。逮捕覚悟でインサイダー取引を行い、莫大な利益を得たとしても、発覚すればそれは丸ごと没収されてしまいます。
③課徴金
先ほど罰金刑について触れましたが、それとは別に課徴金という金銭的ペナルティもあります。これはインサイダー取引によって得た利益の規模・・・つまりインサイダー取引がどれだけ悪質だったかによって金額が決まります。
村上ファンド事件では11億円を超える巨額の課徴金が科されたので、インサイダー取引による利益の大きさと相まって、とても悪質だと当局が見なしていたことがうかがえます。
(5)インサイダー取引はバレるか
ここまでインサイダー取引についてリスクの高さや処罰の重さを解説してきましたが、ここで多くの方が気にされていると思われることがあります。それは、「実際のところ、インサイダー取引はバレるか」という疑問です。
決して感心はできませんが、どれだけ処分が重いといってもバレなければ処分を科されることはないので、「バレなければ大丈夫」と考える人がいても不思議ではありません。
しかし、実際のところを見るとインサイダー取引は多くの方が想像されている以上にバレています。重大な発表があった直前に大きな取引があった場合など、当局もかなりのノウハウを駆使して監視をしています。
それともうひとつは、内部告発や通報による発覚です。インサイダー取引という「ズル」で大儲けしている人を快く思わないのは人間心理なので、その腹いせに通報をされてしまい、そこから発覚するということも意外に多いそうです。
こちらは、証券取引等監視委員会が発表している、インサイダー取引を含む不正取引の摘発数推移です。
出典:https://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/torichou/20180628/01.pdf
インサイダー取引の項目を見ると、毎年のように数十件の課徴金勧告(つまり摘発)があることが分かります。
なお、この資料では具体的な事例も紹介されているので、どんな事例を当局がインサイダー取引と見なしているかという参考にもなります。
【参考】金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~
https://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/torichou/20180628/01.pdf
3、インサイダー取引が成立してしまう6つの要件
インサイダー取引を犯罪行為として取り締まる以上、そこには厳格な成立要件があります。誰が何に対して、いつ、何をするとインサイダー取引になるのか、その定義を解説します。
(1)会社関係者、内部者であること
1つ目の要件は、「誰が」。インサイダー取引を疑われる株取引をした人が誰なのかというところで、該当する上場企業の役員や社員が対象となりますが、ここで注意したいのはアルバイトやパートの人たち、さらには派遣社員も範囲に含まれるということです。
さらに後述しますが、こうした内部者の家族など近い立場にいる人も含まれると見なされた事例があります。
(2)株式の発行元であること
株取引を行った「誰か」が、その株式の発行元に関わりを持っていることも、インサイダー取引の成立要件となります。前項のようにアルバイトやパート、派遣社員であっても取引をした株の発行元に関わりを持っていれば該当してしまいます。
また、これも漏れやすいのですが上場会社の本体だけでなく、その子会社やグループ会社なども対象となります。
(3)重要な事実を知っていること
重要な事実を知っているか否かが、3つ目の要件です。ここでいう「重要な事実」とはもちろん、インサイダー取引に役立つような内部情報です。業務提携や新製品情報、配当の積み増しなどは株価上昇要因なので、こういった情報を知った上で株を買えば儲かることでしょう。しかし、これらはすべてインサイダー取引です。
逆に業績の下方修正や不祥事、関連会社の破綻、訴訟の敗訴などの情報を知った上で手持ちの株を売ったり、信用売りを仕掛けたりすると、こちらもインサイダー取引となります。
(4)故意であること
内部的な情報を事前に知った上で株取引をすることが、インサイダー取引です。この「知った上で」というのがポイントで、故意であるかどうかもインサイダー取引の成立要件です。
ここまでの解説でご紹介した事例はすべてが故意なのでアウトですが、ここで注意したいのはインサイダー取引だという認識がないままに行ったことが実はインサイダー取引に該当してしまうケースです。この場合は故意ではないと言いたくなるところですが、「インサイダー取引に該当するかどうか分からないが、実行した」ということで半ば故意だったのではないかと見なされるケースが多々あります。
これはとても微妙なところですが、実際に行った株取引が「重要な事実」を「知る前」だったのであれば、インサイダー取引にはなりません。結果としてその重要な情報を知り得ただけで、その前から予定していた株取引を予定通り行っただけだからです。
ただし、これは本人の意識の中にしか答えがない場合も多く、当局がそう解釈してくれるとは限りません。
(5)公表前であること
インサイダー取引に役立つような重要な事実を知り得た人が、その情報が万人の目に触れる前に株取引をすると、インサイダー取引となります。
逆に、その重要な事実が公表された後であればインサイダー取引にはなりません。ここでいう公表には、2社以上の報道機関が一般の人たちの目に触れる方法で報道してから12時間後という定義があります。
もしくは、東京証券取引所が運営しているTDnet(適時開示情報伝達システム)に掲載されていれば、その重要な事実は公表されたことになります。
(6)株式の取引を行うこと
内部関係者が重要な事実を知っただけであれば、単にインサイダー情報を知っているだけでインサイダー取引ではありません。その情報を知りながら株取引を行えば、その時点でインサイダー取引の事実が成立してしまいます。
ここでいう株取引には、現物株だけでなく信用取引も含まれます。
4、これはシロ?クロ?インサイダー取引の境界線
ここまでの解説をお読みになった方は、インサイダー取引に該当するかの線引きがとても微妙であるとお感じだと思います。実際の事例においても微妙なところで判断が分かれており、ここでは事例に基づいてシロなのかクロなのかを解説したいと思います。
(1)勤めている会社の内部情報で家族が株取引を行った
内部関係者には社員や役員だけでなくアルバイトやパートも含まれると述べましたが、社員の家族はどうなのでしょうか。
実際にあった事例では、社員の家族が内部情報をもとに株取引を行ったことが課徴金命令の対象になっており、インサイダー取引であると認定されました。
社員が自分の名義でなければシロ、もしくはバレないと思ったのかも知れませんが、単に家族名義で株取引を行っているだけであるとも解釈できるため、これはクロです。
(2)内部情報で株を買ったが、売っていないので利益は出ていない
持っている株の価格が上昇したとしてもそれは含み益であり、まだ利益は確定していません。内部情報をもとに株を買い、それが値上がりしたとしても売って利益を確定させなければいいと思いたくなりますが、これもクロです。
なぜなら、公表前の段階で重要な事実を知りながら株取引をしたという事実に変わりはなく、利益確定をしていなくてもすでにインサイダー取引が成立しているからです。
(3)内部情報を用いて海外に住む知人が株取引を行った
インサイダー取引を禁止する法律は日本の法律なので、海外に住んでいる人が行う取引であればシロなのではないかと考えた人が実際にいました。イスラエル在住の人が日本企業の株を内部情報をもとに売った事件があったのですが、この場合も判定はクロ、2,000万円近くの課徴金命令が出されました。
海外に住む人、外国人であっても日本の株式市場を舞台にインサイダー取引をすればクロであるということを押さえておいてください。
(4)勤務先の業績が悪いので株価が下がる前に持株会に預けている株を売った
自社の業績が良いか悪いかは、社員であれば十分知り得る立場にあります。内部関係者が重要な事実を知りながら株取引を行うというインサイダー取引の要件を満たしてしまうので、これまたクロです。
自社株の取引はインサイダー取引を疑われやすいため、多くの企業では不正を疑われるような行為を慎むようにアナウンスされています。
5、インサイダー取引の責任を追及されないために
少しでも怪しいことがあると、インサイダー取引を疑われる可能性が思ったより高いとお感じの方は多いと思いますが、それは正解です。以前よりもインサイダー取引に対する監視の目は厳しくなっており、「バレなければ大丈夫」という甘い考えが通用しなくなってきています。そこで、これからの株取引でインサイダー取引との疑いをかけられないようにするための3ヶ条をお伝えします。
(1)グレーゾーンは危険であると認識する
ここ最近の事例を見ていると、判断が分かれるような事例、グレーゾーンだと思われるような事例であっても課徴金命令が発せられています。
曖昧さはどんどん排除されており、グレーゾーンがクロとなるケースが増えているので、紛らわしい場合や判断が分かれるような場合であっても、疑いをもたれるような行為は慎みましょう。
(2)インサイダー取引が規制されている理由を認識する
そもそもなぜインサイダー取引がここまで厳しく監視されているのか、その理由を考えてみてください。日本の株式市場は不公平で不透明だと思われてしまったら、世界の投資家からそっぽを向かれてしまいます。
インサイダー取引をして一時的に儲けることができたとしても、信用失墜の代償はその人を含む投資家全体に及ぶでしょう。今回は良くても、長い目で見るとその代償を支払うことになり、結果として「悪銭身に付かず」になるのです。
(3)インサイダー取引はバレると認識する
インサイダー取引が発覚する精度は、以前より高くなっています。インターネットでの取引が主流になり個人投資家の動向を把握しやすくなったことや、証券取引等監視委員会の監視システムの性能が向上していることなど、さまざまな理由がありますが、いずれにしてもインサイダー取引はかなりの確率でバレると思っておいたほうが良いでしょう。
今回だけだからという理由で誘惑に負けてしまう人も多いのですが、その1回だけで重大な結果を招いてしまったのでは割に合いません。
まとめ
この記事をお読みになる前には、インサイダー取引は、どこか遠い世界の出来事のようなイメージもあったのではないでしょうか。しかし最後までお読みになった上でお感じなのは、決して他人事ではないというリアル感だと思います。
実際に課徴金命令を食らってしまった人の多くは、「まさかバレるとは思わなかった」、もしくは「インサイダー取引に該当するとは思わなかった」と感じており、正しい認識がいかに重要かを物語っています。
少しでも「これってインサイダー取引?」と思えるような株取引を予定されている方は、必ず一度はこの記事の情報を照らしてみてリスクがないかを考えてみてください。