所有されている土地について、「どうせ田舎だし、土地活用といっても大したものはない」と考えてしまっていませんか?
または、「田舎の土地だけど何かいい活用法はないか」とお考えかも知れませんね。
田舎だからといって土地活用ができないわけではありませんし、むしろ田舎ならではの土地活用法があります。
そこで「不動産投資の教科書」では、田舎の土地活用法にフォーカスして以下の4つの選択肢をピックアップしました。
- トランクルーム、資材置き場
- 商業施設
- アパート経営
そして実際に土地活用をしていくための情報をご紹介していきます。
- 田舎の土地活用で知っておくべき基本
- 有望な土地活用法4選
- 4つの土地活用法それぞれの詳しい解説と始め方
「どうせ田舎の土地だし」と諦めかけている方は、きっと最後に笑顔になれることと思います。
大事な資産を有効に活用しましょう。
目次
1、田舎だからといって土地活用をあきらめたくない
所有されている土地が田舎の土地だからといって、土地活用を諦めたくないという方は多いと思います。田舎の土地にも活用するだけの価値はちゃんとあるので、まずはその事実をお伝えします。
(1)田舎の土地にも活用法はあります
都会と田舎を比べると、広々とした風景を見ただけでも土地が有り余っている印象を受けると思います。
しかし、そこには家が建ち道沿いには商業施設があり、畑や田んぼの中に太陽光パネルが並んでいるといった風景を見ることも多いと思います。これらはすべて誰かが何らかの形で土地活用をしている証拠であり、田舎だからといって土地が全く活用されていないわけではないのです。
人が住んでいる限り、土地の需要はあるということです。
(2)田舎だからできる土地活用法もある
畑や田んぼは田舎の典型的な風景ですが、それと同じようによく見かける太陽光パネルや倉庫、トランクルームといった施設はいずれも田舎ならではのものです。これらは田舎だからこそできる土地活用であり、その土地を所有している人にとっては立派な収入源となっているはずです。
この記事では「田舎でもできる土地活用」だけでなく「田舎だからこそできる土地活用」にも着目して解説していきたいと思います。
(3)田舎の土地活用に特有の事情も考慮する必要あり
商業的な意味合いだけでなく、田舎で土地活用をする場合には田舎特有の事情も考慮する必要があります。規制によって何をやっても良いというわけではないため、そういった田舎特有の事情についても解説していきます。
2、田舎の土地活用が難しい理由
田舎では土地活用が難しいと言われていますが、それにはそれなりの理由があります。
その大きな理由は2つあります。詳しく見ていきましょう。
- 田舎では集客力が低い
- ビジネス利用が難し
(1)集客力が低い
土地活用で収益を得るためにはそれなりの集客力がなければなりません。もちろん土地活用の方法にもよりますが、人がいなくては機能しないものとそうではない土地活用があります。
集客力が低いということは、土地活用の方法が限られるということでもあります。
一般的に商業施設などの集客を必要とする経済活用が難しいため、土地そのものの価値が低いとも言えます。
しかし、商業施設でも場合によっては利用できることもあるので、是非8章の 田舎でも条件によっては勝算がある土地活用:商業施設 をご覧ください。
(2)ビジネス利用が難しい
これも前節の「集客力が低い」と関係していますが、田舎の土地は比較的ビジネスとしての利用は難しいです。
これは4章の3節でも紹介していますが、田舎の土地には市街化調整区域の規制がされている場合もあります。
詳しい説明は後述していますが、このような規制がされていると、まずビジネスとしての利用が困難であるため敬遠されやすいです。
3、田舎でも土地活用をした方が良い理由
それでは、このように活用しづらい田舎の土地でも土地活用をした方が良い理由とはなんなのでしょうか。
土地を所有している方であればお分かりかと思いますが、その理由の一つは税金です。たとえ田舎であろうと、土地は所有しているだけで固定資産税などの税金を納めなければなりません。
固定資産税とは、所有している固定資産に対して課せられる税金で、所有する固定資産の評価額に標準税率1.4%を欠けたものであり、以下の式で表されます。
固定資産税=課税標準額×標準税率(1.4%)
さらに、土地の評価額は
土地の評価額=土地の面積(地積)×路線価
で表されます。
また、固定資産税路線価は市町村のサイトから閲覧が可能です。
全国地価マップを開き、「固定資産税路線価等」を選択した後、確認したい住所の全面道路の矢印を選択してください。その後、表示された路線価×土地面積(㎡)で概算計算をすれば固定資産税路線かが求められます。
複数路線に面している場合など、計算方法が変わってきます。
活用していなくても所有しているだけで税金が取られるのであれば、活用して少しでも収入を得ることを考えても良いのではないでしょうか。
4、田舎の土地活用で押さえておきたい基本
最初に田舎の土地活用について押さえておかなくてはならない基本的な知識を5つのポイントで解説します。
(1)田舎の土地は利用価値が低い?
田舎の土地は利用価値が低いのか?という根本的な問題があります。都会のように家やビルが建て込んでいるわけではなく、土地が有り余っているところで何か始めたとしても集客できないと考えている所有者の方は多いと思います。
しかし、田舎だからといって人が住んでないわけではないですし、人の流れがないわけではありません。
よく地方都市の中心部が寂れているという話を聞きます。
例えば2018年9月に新潟の中心繁華街である古町にある三越百貨店が閉店するという報道がありました。これによって古町はもっと寂れてしまうという声が上がっていますが、新潟から人がいなくなったわけではなく、郊外の大型商業施設は盛況です。また、新潟中心部の中でも万代と呼ばれる地区には伊勢丹があり、こちらは高い集客力を維持しています。
新潟という都市が寂れてしまったというより、人の流れが変わったと見るべきでしょう。このことが示しているのは、新潟県内のさらに郊外で利用価値が低いと思われていた土地が高い価値を持って活用されているという事実です。
(2)現地の需要だけでなく都会からの需要を掘り起こす
言うまでもなく、田舎は都会と比べて人口が少ないため、地価も都会より安くなります。
そのため、田舎での土地活用は田舎の細い需要を当て込むよりも都会からの需要を引き込む発想が有効です。
先ほどの新潟の例でもそうですが、郊外にある国道沿いの大型商業施設は高い集客力を誇っています。新潟だけでなく周辺都市からの需要も取り込んで、商圏を広くしていることが成功のカギです。
この記事でご紹介するトランクルームや商業施設などの土地活用は、地元の人だけでなく都会の人が利用することを想定しています。都会の需要を取り込むことによって田舎の土地が「単なる田舎の土地」以上の価値を持つのです。
(3)市街化調整区域の規制に注意
都市部での土地活用ではほとんど考慮しなくても良いことですが、田舎の土地には市街化調整区域の規制という考慮すべき事実があります。市街化調整区域を簡単に言うと、「都会にさせない区域」のことです。
農地を守るために設けられた規制なので、市街化調整区域では土地活用の目的で建物を建てることもできません。土地活用の選択肢がとても狭くなるため、市街化調整区域に指定されていないかどうかのチェックはとても重要です。
今は市街化調整区域であっても、その地域を再開発する都市計画があると規制が外れることもあります。
(4)農地の規制に注意
市街化調整区域ともうひとつ、田舎の土地活用でチェックしておくべき規制があります。それは農地法という法律による規制で、農地として利用されている土地を他の用途に転用できないというものです。
田んぼを埋めてマンションを建てたりといったことができない規制なので、所有されている土地が農地の規制を受けていないかどうかの確認も重要です。
農地の場合、売却の相手も農家でなくてはならないという規制もあるため、土地活用という意味ではかなり選択肢が狭くなってしまいます。
事実上、農地は農地としてしか使い道がないということです。
(5)現在だけでなく将来の需要も考えてみる
日本の人口はすでに減少に転じており、この傾向は今後も続きます。特に田舎では都会への人口移動によって人口減少のスピードが速く、土地活用の需要もそれに比例して減ってしまいます。
人口減少がどの程度進むかという将来的なイメージを持っておかないと、せっかくの土地活用が5年後、10年後に頓挫してしまう恐れがあります。
将来における人口の変動シミュレーションを見ることができるサイトがあります。
この「RESAS」というサイトの「人口マップ」を見ると、人口の変動予測が色分けされて表示されるので、参考になると思います。
人口マップ(RESAS)
出典:人口増減|マップ – RESAS 地域経済分析システム
上の写真は2025年における日本全国の人口減少割合を色で示したものです。
2025年においては、首都である東京こそかろうじて人口増減率はプラスとなっていますが、大阪・愛知・福岡などではすでに人口が減少しています。
濃い青になっているところは人を相手にする土地活用の妙味が薄れていくことが考えられるので、集客を必要としない土地活用を視野に入れるべきでしょう。
5、田舎だと難しいと思われる土地活用:アパート経営
賃貸需要が都会と比べて少ない田舎でアパート経営となると、果たして勝算があるのかとお感じの方は多いと思います。
確かに難しい面はあるのですが、ここでは田舎でのアパート経営の戦略について述べたいと思います。
(1)田舎のアパート経営事情
田舎だからといって、アパート需要が全くないわけではありません。特に大都市圏の郊外だと都会に通勤をする人の住居としての需要があります。そうでなくても大学の郊外移転が進んでいることから大学の近くや大企業の工場や拠点が近くに立地している場合は、十分なアパート需要があります。
しかし、やはり入居者側も田舎のアパートであることは理解しており、都会と同じ戦略で入居者を集めるのは難しいでしょう。安い田舎の土地だからこそできる価格競争力は必須です。
(2)田舎でアパート経営を成功させる戦略
田舎の土地である強みをいかすポイントは、ずばり2つです。
1つは、価格競争力。
地価が安いことをいかして家賃をできるだけ安く設定し、敷金・礼金などをゼロにすることでかなりの集客力になります。というのも、最近はアパート物件を探す人はネットを利用しており、家賃や初期費用が安い物件は検索結果の上位に表示されやすく、人気を得やすいのです。
田舎であったり交通便が良くないようなアパートであっても、コストが安ければ住みたいと思う人は必ずいます。
もう1つは、広さです。
土地の広さにゆとりがあるのであれば、それも大いに活用しましょう。同じ家賃であっても田舎なら広々としたアパートに住めるとなると、それも大きな集客力になります。1階の部屋であればちょっとした庭がついているといった付加価値も魅力的に映るでしょう。
(3)融資の際には土地の担保価値に注意
アパート経営を始めるとなると金融機関の融資が前提になると思いますが、田舎の土地は資産価値が高くないため担保価値が低く見られる可能性があります。
田舎だからと言ってアパートの建築費が安くなるわけではないので、自己資金が十分にないと資金計画の段階で頓挫してしまいます。
スルガ銀行やTATERUによる融資書類改ざん問題の影響は大きく出ているので、できるだけ地元に密着している金融機関を利用するのが良いと思います。
(4)田舎の土地を活用したアパート経営の始め方
いなかの土地だけにアパートとして土地活用をするには、入念な計画が必要です。
集客力アップも含めてプロの関与が欠かせないので、大手不動産会社やハウスメーカーなどにプランを一括請求できる以下のようなサイトを利用してみてはいかがでしょうか。
NTTデータスマートソーシングの土地活用、不動産投資プラン一括請求サイト【HOME4U 土地活用】
このようなサイトを活用するメリットとしては、なんと言っても一度に複数社からプランをもらうことができるので、手間がかからないことです。
6、田舎の強みをいかせる土地活用:トランクルーム、資材置き場
トランクルームや資材置き場といった、物を置くスペースを確保しやすいのも田舎の優位性です。トランクルームおよび資材置き場としての土地活用について解説します。
(1)トランクルームや資材置き場は立地条件をあまり選ばない
田舎の風景を見ていると、道路沿いなどに貨物列車のコンテナを並べたようなトランクルームを見かけることがあります。ロードサイドであれば都会からの集客も期待できるため、都会からクルマで1時間ほどの距離であれば十分勝算があります。
また、資材置き場についてはトラックの出入りが可能な道路幅があれば特に何も整備しなくても始められるため、とても手軽です。
なお、トランクルームは建物を要するため市街化調整区域での営業はできませんが、資材置き場は建物がないため市街化調整区域でも可能です。
(2)トランクルーム、資材置き場による土地活用のメリット
トランクルーム、資材置き場で土地活用をするメリットを見てみましょう。
- 少額で始められる(資材置き場の場合はほぼコストゼロ)
- 立地条件によっては収益性が高い
- 日当たりが悪い、騒音などの悪条件があっても不利にならない
人が住んだり滞在するわけではないので、他の土地活用では不利になるような条件があっても関係がないところが強みです。
(3)トランクルーム、資材置き場による土地活用のデメリット
それではトランクルーム、資材置き場としての土地活用に付きまとうデメリットについても見てみましょう。
- 市街化調整区域ではトランクルーム不可(資材置き場はOK)
- 節税効果が薄い
- 需要が低下すると利回りに大きく影響する
特にトランクルームの場合、一般消費者が相手になるので需要が低下したり近隣に同様のトランクルームが開業したりすると一気に収益性が悪くなってしまうことがあります。
(4)トランクルーム、資材置き場に適した土地の条件
トランクルームや資材置き場として土地活用をするのにあたって、土地の条件はほとんどありません。
むしろ他の土地活用法が難しい場合にこそ真価を発揮する土地活用法だと言えるでしょう。
ただし、先述のようにトランクルームは建物を建てることになるため、市街化調整区域では開業できません。
(5)トランクルーム、資材置き場による土地活用の始め方
トランクルームによる土地活用を始めるには、トランクルーム事業者に依頼をすることになります。全国展開をしているトランクルーム業者であればノウハウも豊富で、最適な運営方法を提案してくれるでしょう。
エリアリンク
ライゼボックス
ユースペース
複数の業者に問い合わせをして、相見積もりを取りながら比較検討することをオススメします。
資材置き場については地元の不動産業者に客付けを依頼するか、敷地に「資材置き場利用可能」などの立て看板を立てておくといったアナログな集客方法となります。
7、田舎でも条件によっては勝算がある土地活用:商業施設
ロードサイドという条件はあるものの、条件に合致していれば収益性の高さが魅力の商業施設について、土地活用の方法を解説します。
(1)田舎のロードサイドに注目してみよう
田舎の幹線道路をクルマで走っていると、まるでクルマ版の商店街のように見える風景に出くわします。
コンビニエンスストアやスーパー、コインランドリー、精米所、レンタルビデオ店、飲食店などです。都市部と違って田舎はつくづくクルマ社会であることを実感させられます。
つまり、こうしたロードサイドの土地であれば商業施設としての土地活用に活路を見出すことができます。
(2)商業施設での土地活用では周辺環境や人の流れを精査する
では、田舎の土地であってもどんな土地が商業施設での土地活用に適しているのでしょうか。
- 大型商業施設や観光地などが近い、通り道に面している
- 季節によって人の流れがある場所(スキー場、ビーチ近くなど)
- 地元の人が使う幹線道路沿い
いずれもロードサイドであることは絶対条件で、クルマの出し入れが簡単で駐車スペースも十分確保できる広さであるという条件もつきます。
(3)商業施設による土地活用のメリット
商業施設として土地活用をすると、3つのメリットがあります。
- 他の土地活用と比べて収益性が高い
- 土地を貸す際に保証金が手に入る
- 土地を手放さずに済む
- 業態によっては狭小地でも高い収益性を狙える(精米所、コインランドリーなど)
田舎の土地は収益性が大きなネックになると思いますが、ロードサイドの土地であればその部分での魅力がとても大きくなります。
(4)商業施設による土地活用のデメリット
それではメリットの逆に、商業施設として土地活用をするデメリットも見てみましょう。
- 郊外の商業施設は大型化しており十分な広さがないと競争力が低くなる
- コンビニなど運営業者は業績が苦しくなるとすぐに撤退してしまう
- 商業施設として失敗した土地は以後の土地活用がしづらくなり、資産価値が下がってしまう
「イオンモール」や「ららぽーと」といった大型商業施設が全国各地に開発されています。
利便性が高いため集客力がとても高く、地元の商店などがそのあおりを受けて閉店してしまうといったことが全国各地で起きています。
個人レベルの土地活用で商業施設を考える場合、こうした「巨人」の影響を考えないわけにはいきません。大型商業施設が近隣にある、通り道沿いの土地であれば同じ業態で勝負をしないことは基本ですし、将来において大型商業施設の開発話があるのであれば、それも十分考慮するべきです。
また、特にコンビニエンスストアで言えることなのですが、コンビニエンスストアの運営会社は業績でシビアに店舗を審査しているため、業績が悪ければすぐに撤退してしまいます。
一旦商業施設として活用していた土地が廃墟になってしまうと、「価値の低い土地」であるというレッテルを貼られてしまい、資産価値がさらに下がってしまう恐れがあります。
よく田舎の国道沿いなどでかつてコンビニエンスストアだった建物を見ることがありますが、あのような風景になってしまうことが最も危惧すべきことです。
(5)商業施設による土地活用の始め方
商業施設として土地活用をする場合、個人商店として始める場合を除いてそれぞれの運営会社に依頼することになります。
①コンビニエンスストア
- セブン・イレブン・ジャパン
- ファミリーマート
②精米所、コインランドリー
- 奉徳はないけ(精米機、コインランドリー)
- ライフネットワーク(精米機、コインランドリー)
- 京都ランドリーサービス(コインランドリー)
まとめ
この記事をお読みになったのは、田舎の土地だけに土地活用をしても大して儲からない・・・
とお感じの方だと思います。半ば諦めかけていた状態でこの記事をお読みになり、その認識が若干変わったのではないでしょうか。
田舎の土地だからといって所有しているだけだと税金が発生しますし、荒れ放題にしていると資産価値も下がってしまいます。
まずはお持ちの土地にどんなポテンシャルがあるかを一度お考えになり、規制との関わりはどうか、といった情報収集から始めてみてください。