この記事をお読みの方の中には、現在所有している事業用不動産の売却を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その際にできるだけ高く売却するためのポイントを把握しておきたいのではないでしょうか。
また、スムーズに売却ができるよう事前に売却時に必要な費用、売却時の流れなどについて知っておくことも重要といえるでしょう。
そこで今回は、
- 事業用不動産とは?
- 事業用不動産の売却時にかかる費用
- 事業用不動産を高く売却するための4つのポイント
- オススメの売却価格見積もりサイト3選
- 事業用不動産を売却する流れ
- 「買取」という売却方法もある!
などについて書いていきますので、事業用不動産の売却を検討する際に参考にして頂けると幸いです。
※この記事は2015年7月31日に公開したものを2018年8月17日に加筆修正しました
目次
1、事業用不動産とは?
そもそも事業用不動産とは、店舗、事務所ビルなどから家賃収入等の収益を得ることを購入した不動産のことをいいます。
具体的には、
- 投資用マンションなどの「投資用不動産」
- 事務所ビルや店舗などの「事業継続にあたり利用される不動産」
などが事業用不動産にあたります。
2、事業用不動産の売却時にかかる費用
(1)事業用不動産の売却時にかかる費用
事業用不動産を売却する際にどのような費用がかかるでしょうか。
具体的には以下のような費用がかかります。
- 売買契約書に貼付する印紙代
- 不動産仲介業者に支払う仲介手数料
- (抵当権が設定された場合)抵当権抹消登記の免許税
- (売却利益が出た場合)譲渡所得税
- (融資を受けた場合)金融機関に支払う一括繰上げ返済手数料
など。
費用について詳しく「不動産売却時にかかる手数料と税金まとめ」にて参照にしてみてください。
(2)事業用不動産の買い換え特例
事業用不動産の買い換え特例とは、一定の事業用不動産に買い換えた場合に、譲渡利益の80%について課税の繰り延べが認められることを言います。
事業用不動産が売却時に売却利益が出た場合にメリットのある特例になり、所有者が法人でも個人でも同様に利用することができます。
利用条件や譲渡所得の金額の計算方法など詳しい内容については、国税庁の「事業用不動産の買い換えたときの特例」をご参照ください。
3、事業用不動産を高く売却するための4つのポイント
事業用不動産を短期間にて高額で売却するには、大きく以下の4つのポイントが挙げられます。
- (1)査定価格についてきちんと理解する
- (2)信頼ができる不動産会社とミカタになってくれる担当者を見極める
- (3)不動産会社が積極的に売却活動してくれているか確認する
- (4)失敗しない事業用不動産を選ぶ際のポイント
では、順番にみていきましょう。
(1)査定価格についてきちんと理解する
事業用不動産の売却を検討する際に、まず「今の自分の不動産はいくらか?」が気になり、査定を依頼される方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。事業用不動産を高く売却するには査定価格についてきちんと理解しておくことが重要です。
以下では査定価格について説明していきます。
① 査定価格とは?
そもそも査定価格とは、不動産会社が取引事例などの客観的なデータを基に算出し売り出し価格を設定する基準となる価格です。
実際に不動産はいくらで売却ができるかは売り手と買い手の合意があってこそ初めて決まりますので、査定価格は売却価格ではないことに注意しましょう。
② 査定依頼は2種類ある!
不動産の査定を依頼する際に、大きく以下の2種類があります。
- 不動産売却査定サイトから複数の会社に同時に簡易査定をしてもらう方法
- 不動産会社の担当者が直接訪問による訪問査定をしてもらう方法
まずは不動産売却査定サイトで価格を調べ、より正確な金額を知るには、訪問査定を利用しましょう。
なお、売却査定サイトを利用するメリットは高く売れるということも含めて以下のようなものがあります。
- 一度で複数社に査定してもらえるので楽
- より高い金額で売却できる
- 査定サイトには厳しい審査基準をクリアした信頼できる不動産会社のみ登録されている
具体的にイメージ画像にすると以下の通りです。
不動産投資の教科書オススメのサイトは「4、オススメの不動産売却査定サイト3選」の項目で紹介しています。
③ 不動産価格の3つの査定方法
不動産を査定する際に、大きく以下の3つの査定方法があります。
- 最も基本的な査定方法「取引事例比較法」
- 投資不動産の際に使われる「収益還元法」
- 主に建物や一戸建てに使われる「原価法」
不動産会社によって、利用する査定方法や不動産に対する考え方の違いによって、査定価格に差が出てしまいます。
従って、不動産会社からの査定金額が適正かどうかを判断するには、
- 査定価格算出の根拠をきちんと確認する
- 不動産の相場を知る
などをすることが大切と言えるでしょう。
査定方法の詳しい内容については、「不動産の売却前に!査定について知っておくべき4つのこと」にてご参照ください。
④ 高すぎる査定価格は注意すべき?
査定価格が高い不動産会社に売却依頼をすれば、高く売れるではないかと思っている方は少なくないようですが、実は、査定価格は売却価格設定時参考になる金額であるため、査定価格が高いからといって高く売れるわけではありません。
売却依頼を取るため、実査には売れる可能性が低いような高額の査定金額を提示する不動産会社も少なくありませんので、注意するようにしましょう。
査定価格について詳しくは、「不動産の価格査定とは?正しく理解するために知っておくべき5つのこと」にてご参照ください。
(2)信頼ができる不動産会社とミカタになってくれる担当者を見極める
事業用不動産を高く売却するには、信頼ができる不動産会社とミカタになってくれる担当者を見極めることがとても大切と言えます。
① 信頼できる不動産仲介業者の選び方
まず、信頼ができる不動産仲介業者を見極めましょう。
不動産仲介会社と選ぶ際に、大きく以下のようなポイントが挙げられます。
- 資本金が大きい
- 従業員数が多い
- 取り扱っている不動産の仲介件数が多い
上記の条件に踏まえて、「5、オススメの不動産仲介業者3社」の項目でオススメの不動産仲介業者を3社ピックアップしましたので、参考にしてみてください。
② ミカタになってくれる担当者の選び方
不動産の売却において、信頼ができる不動産仲介業者を選ぶのはもちろん重要ですが、あなたのニーズをきちんと理解した上で、ミカタになり責任を持って仕事をしてくれる担当者を選ぶことも大切と言えます。
そのような担当者を選ぶにあたっては、大きく以下の判断ポイントが挙げられます。
- 依頼主のニーズに合ったプランを提案してくれるか
- 査定金額を説明する際にきちんと根拠を明記したか
- 物件の現況など物件に関する細かい情報までヒアリングしてくれるか
- 確認事項を丁寧に対応してくれるか
- 依頼主の意見を聞かず、担当者自自身の意見を押し付けているか
また、業者との交渉、契約書など不動産売却時に関連する書類の作成など色々な手続きは全て担当者が行いますので、その意味でも信頼のできる担当者を選ぶことが非常に重要なポイントと言えるでしょう。
不動産仲介業者について詳しくは「【チェックリストつき】不動産仲介とは?不動産仲介業者の仕事の内容とオススメ仲介業者」にて書いておりますので、参考にしてみてください。
(3)不動産会社が積極的に売却活動してくれているか確認する
不動産仲介業者に売却依頼をした後に、具体的にはどのような売却活動をしているかをきちんと確認することも大切と言えます。
① 不動産会社と締結する媒介契約は3種類ある
不動産会社と締結する媒介契約には大きく以下の3種類があります。
- 売却依頼できる業者1社のみかつ自分で買主探すことができない「専任専属媒介契約」
- 売却依頼できる業者1社のみ「専任媒介契約」
- 売却依頼業者複数可能「一般媒介契約」
基本的に、どの契約形態にするかは売主の自由ですが、不動産会社からすれば自社だけ契約してくれた方が、確実に仲介手数料をもらうことができますので、専任専属媒介契約や専任媒介契約の方が短期間にて売却ができるように対応してくれる傾向があります。
媒介契約形態の内容について詳しくは、「不動産を売りたい方必見!高額で不動産を売却する方法」にてご参照ください。
② 積極的に売却活動してくれてるかをチェックする3つのポイント
不動産会社が積極的に売却活動してくれているかをチェックするには、大きく以下の3つのポイントが挙げられます。
- 販売用図面(マイソク)をチェックする
- REINS(レインズ)の登録をチェックする
- 広告活動をチェックする
では、順番にみていきましょう。
ー販売用図面(マイソク)をチェックするー
不動産の売却活動を始める前に、まず不動産会社が対象物件の販売用図面を作成します。
販売用図面は一番最初に購入希望者に物件の情報を伝わる情報であり、内覧に繋げるかどうかとても大切な情報と言えます。
従って、販売用図面をチェックする際に、物件の基本情報はもちろんのことですが、
- 物件写真を外観、室内など複数掲載したか
- 物件のセールスポイントを細かく記載したか
- 白黒ではなく、カラーで作成したか
などをチェックしましょう。
ーREINS(レインズ)の登録をチェックするー
不動産会社は、売却を預かった物件をレインズ(※1)に登録する義務があります。
専任専属媒介契約は、契約締結して5日間、専任媒介契約は7日間以内に登録する義務があります。なお、一般媒介契約は登録する義務がありません。
レインズに登録することにより、物件情報が公開され、他の不動産会社にも購入希望者に物件を紹介してもらうことができます。
しかし、中には買主と売主の両方から仲介手数料をもらうため、「販売用図面をレインズに公開しない業者」もいます。業界では、販売用図面を公開しないことは、他社へ情報を紹介しようとする意思がない証拠と言えるでしょう。レインズに登録されていないと積極的に売却活動が行われている、ということは難しいでしょう。
従って、レインズに登録がされたら、「登録証明書」を必ず受領し、「図面の登録有・無」を確認するようにしましょう。
不動産売買の仲介手数料の仕組みについては詳しく「不動産売買の仲介手数料は0円にできる?事前に知って得する11のこと」にてご参照ください。
※1、レインズとは、「Real Estate Information Network System」の略称で、不動産流通標準システムのことです。レインズについて詳しくは「レインズで不動産検索する方法は? レインズの仕組みについて」をご参照下さい。
ー広告活動をチェックするー
一般的には、物件の広告活動として、
- 新聞チラシ、郵便受けへのポスティングなど「紙媒体」
- 自社HPの掲載、不動産ポータルサイトに掲載するなど「インターネット」
- (空室な場合)オープンルーム開催
などがあります。
自分でインターネットで物件を検索してみたり、オープンルームの開催状況を現地にて足を運んだりして確認するといいでしょう。
また、売却活動が始まると、専任専属媒介契約では1週間に1回、専任媒介契約では2週間に1回、営業活動を報告する義務があります。
報告書のフォーマットは会社ごとに異なりますが、主に以下のような内容が記載されます。
- チラシ○部配布した
- 問合せが○件
- 内覧が○件
- お客さん案内のフィードバック
など。どのような広告活動を行っているかの詳細をきちんと確認するようにしましょう。
営業活動報告書のイメージを貼付しますので、参考にしてください。
出典:野村不動産アーバンネット
(4)失敗しない事業用不動産を選ぶ際のポイント
事業用不動産を高く売却するには、やはり毎月の家賃収入から収益を得ることから、そもそも空室になりにくい物件を選んで購入することが大切と言えるでしょう。
従って、失敗しない事業用不動産を選ぶ際に以下のようなポイントで物件を選ぶといいでしょう。
- ①最寄り駅から徒歩10分以内など「利便性がいい」
- ②共用部がキレイに保っているなど「管理・メンテナンスがきちんとされている」
- ③相場利回りより高く「高利回りが期待できそうな物件」
など。詳しい内容については「優良な収益物件を購入するために知っておくべき4つのこと」にて参考にしてみてください。
4、オススメの不動産売却査定サイト5選
事業用不動産も、住居不動産と同様に不動産売却査定サイトを利用することでお得に売却することができます。
今回は私ども「不動産投資の教科書」が独自の調査に基づきランキングを作成しました。それぞれのサイトについて詳しく説明していきます。
(1)すまいValue
東急リバブル、住友不動産販売、野村の仲介など、登録会社を大手不動産会社だけに絞った大手志向の一括見積サイトです。
大手の意見も聞いてみたいという場合に利用すると、一括で大手6社に見積依頼を出すことができます。
(2)HOME 4 U
登録不動産業者の審査が厳しく営業攻勢を掛けてくるような業者を排除していることや、NTTグループである安心感など、初めての方や投資家ではなく自己所有の家を売却したい方などにもオススメできるサイトです。
(3)SRE不動産(旧ソニー不動産)
SRE不動産(旧ソニー不動産)はソニーグループの不動産会社です。
一つの物件で売り手と買い手の双方を担当することを原則禁止し、100%売り手の要望にそった、納得度の高い売却活動ができる「売却エージェント制」を採用しています。
さらに、Yahoo!不動産と連携しているので、売却したい物件の情報に、より多くの購入検討者がアクセスすることができるという強みもあります。
(4)イエカレ
不動産を最高価格で売却するをうたっているサイト。土地活用にも強いので、土地だけを売りたい場合もシミュレーションしてみると良いかも知れません。

(5)イエウール
1700社以上の不動産会社と提携、最大6社同時に査定を依頼できるところが強みでしょう。複数の査定額を比較できるため、高値で売ってもらえる業者を見つけやすいとも言えます。
5、オススメの不動産仲介業者3社
オススメの不動産仲介業者を3社ご紹介していきます。
(1)住友不動産
(2)東急リバブル
(3)三井のリハウス
6、事業用不動産を売却する流れ
では、実際に事業用不動産を売却する際の流れについてみてみましょう。
大きく以下のような流れになります。
- (1)販売予定不動産の相場を知る
- (2)査定を依頼する
- (3)不動産仲介業者を選定し、媒介契約を締結する
- (4)売却担当者と相談の上、売却価格を決定し売却活動を開始する
- (5)購入希望者と売却条件を交渉する
- (6)売却条件交渉ができたら、売買契約を締結する
- (7)決済し、不動産の引渡しをする
詳しい内容については「不動産を売りたい方必見!高額で不動産売買する方法」をご参照下さい。
7、「買取」という売却方法もある!
不動産の売却は、上記にて紹介した仲介業者を通じて売却する方法の以外に、業者による「買取」という売却方法もあります。
「買取」とは、不動産買取り会社などの業者に直接売却する方法です。
売却に時間の余裕がない、他人に知られることなく売却をしたいなどの方は検討してみるのはいかがでしょう。
買取による売却の流れなどは仲介による売却とは異なりますので、詳しくは「知らないと損!不動産を「買取」で売却する際に得する方法」をご参照下さい。
まとめ
今回は事業用不動産をできるだけ高く売却するポイントなどについて書きましたが、いかがでしたでしょうか。参考にして頂けると幸いです。