不動産投資の利回りとは、どのようなものなのでしょうか。
不動産投資の利回りについて理解しておくことは、収益性の高い不動産投資につながります。
さらに、いま不動産投資を始めるのが賢い選択なのかどうかも気になるところでしょう。
不動産投資の利回りを簡単に計算できる簡易収支シミュレーションをご利用ください。
不動産投資のバイブル
- 不動産投資に興味があるけど何から始めていいか分からない…
- 営業マンのいうことを鵜呑みにして失敗したくない…
- しっかりと基礎から学び、できる限りリスクを避けたい…
- 今は不動産投資の始めどきなのか?
- 安定収益を得るための不動産投資物件の選び方
- 不動産投資の失敗例から学ぼう
目次
1、不動産投資の利回りとは
「利回り」とは、投資額に対する収益の割合のことです。利回りを見ることで、投資物件の比較が容易になるため、収益性を測る指標として利用されています。
不動産投資における利回りは、
- 表面利回り
- 実質利回り
の2種類があります。
(1)表面利回り
表面利回りの計算式は、以下の通りです。
表面利回り = 年間の家賃収入 ÷ 物件購入価格
表面利回りは、年間の家賃収入を物件購入価格で割って出した単純な利回りで、「グロス利回り」とも呼ばれます。
たとえば、収益物件の掲載サイトなどで、物件価格と一緒に掲載されている利回りの数字は、表面利回りであることがほとんどです。
満室状態を想定した数字であり、管理費・修繕費をはじめとする出費については考慮されない数字であるため、表面利回りだけでは本当に収益性が高いかは判断できません。
表面利回りの数字につられて、物件を衝動買いしないよう注意しましょう。
(2)実質利回り
実質利回りの計算式は、以下の通りです。
実質利回り = (年間の家賃収入-年間の支出) ÷ 物件購入価格
実質利回りとは、年間の家賃収入から年間の支出を差し引きしたうえで、物件購入価格で割った利回りで、「ネット利回り」とも呼ばれます。
年間の支出とは、賃貸経営をする上で必要な諸経費の合計のことです。
具体的には、
- 建物管理費・修繕積立金
- 固定資産税・都市計画税
- 管理委託費
- 火災保険料
などが挙げられます。
出費を考慮した分、年間の手取り収入に近い利回りを出すことができます。
不動産投資において、より正確な収益性を知ることができるので、不動産投資をする際は実質利回りを重視するのがよいでしょう。
2、不動産投資が注目されている理由
近年、不動産投資は注目されている投資方法の1つになっています。本章では、ハードルが高いと思われがちな不動産投資が、なぜ注目されているのか紹介します。
(1)社会保障への不安
不動産投資が注目されている背景には、日本の少子高齢化社会の進行により、将来の社会保障や年金制度が、全国民に行き届かないという不安があります。
不動産投資のメリットは、ローンの返済が終われば、安定した家賃収入が手に入るという点です。
以上のように、不動産投資は老後の収入を確保するための資産形成として注目されています。
(2)比較的利回りが高い
利回りが高いことも、不動産投資が注目されている理由の1つとして挙げられます。
不動産投資の利回りと、株式投資や債券投資の利回りとを比較してみましょう。
①不動産投資
日本不動産研究所が2022年10月に発表した「不動産投資家調査」によると、ワンルームマンションの表面利回りは、東京の城南地区で3.9%、城東地区で4.1%となっています。
出典:不動産投資家調査
②株式投資
投資の中で最もメジャーである株式投資の東証上場企業での平均利回りをみてみましょう。
日本取引所グループの統計データでは、2024年10月の時点での単純平均利回りは、プライム市場は、2.27%となっています。
出典:「日本取引所グループ その他統計資料」
③債券投資
債券投資とは、資金を必要とする国や地方公共団体、会社などが資金を調達するときに発行される債券を、買い取る投資方法です。
今回は、国が発行している国債の利回りを紹介します。
退職給付金会計情報ポータルの国債利回り情報を参考にすると、2024年の年平均の利回りは0.865%という状況です。(2024年11月15日現在)
上記2つの投資方法の利回りと比較すると、不動産投資の利回りが高いことがわかります。
3、不動産投資の利回りの約30年間の推移
不動産投資の利回りは、時代背景に左右されてきました。
1987年に、マンション投資などの不動産投資市場がスタートしてから現在に至るまでの約35年間、利回りはどのように推移してきたのでしょうか。
本章では、不動産投資の利回りの推移について、解説します。
(1)~バブル時代(80年代末~90年代初頭)
いわゆる「バブル時代(80年代末~90年代初頭)」では、土地さえ持っていれば、資産価値は絶対的なものと考えられていました。
今でこそ、地方の土地は下落傾向にありますが、バブル時代は田舎でも年に数%は地価が上がるものだったのです。
当時の投資の目安となる利回りは、最低2%と言われていました。今の感覚からすると低い数値ですが、当時は賃貸収入を目的とした投資ではなく、売却益を目的とした投資が中心だったのです。
不動産価格がどんどん上昇する時代だったからこそ、低い利回りでも、投資する価値がありました。
売買を繰り返し、不動産価格の上昇はエスカレートしていきます。
(2)バブル崩壊後(1990年~)
バブル時代における異常な不動産の値上がりから、日本政府は1990年3月に土地関連融資の抑制を通達し、金融の引き締めを行います。
結果として、不動産価格は急激に値下がりし、不動産は資産から負債へと逆転しました。いわゆる「バブル崩壊」です。
バブル崩壊により、投資家の動きは慎重になり、利回り10%以上が目安になるなど、高利回りかどうかを重視するようになりました。収益も、売却益目的から賃貸収入目的へと変化していきます。
日本政府も、不動産投資家の保護や土地の有効活用に関して、政策として力を入れ始めました。
1998年には、金融機関の不良債権となっていた、不動産の売却促進のための法律(SPC法)を制定し、現在の不動産投資の土台が出来上がっていきます。
(3)2000年以降
2000年以降、不動産投資はいよいよメジャーなものになります。
2000年前半には、丸ビルをはじめ大型ビルの建て替えや、賃貸マンションの着工件数増加など、ふたたび不動産市況はミニバブルと言える状況になりました。
2023年2月現在、不動産価格は首都圏を中心に上昇を続けており、利回りは低下傾向にあります。
4、最新の不動産投資の利回り動向を知る方法
不動産投資では、状況が刻一刻と変化しているため、最新情報を入手して市況感を確認することが大切です。
利回りや価格動向をはじめ、不動産マーケットの最新情報を知ることができるサイトを3つ紹介します。
(1)見える!賃貸経営
「見える!賃貸経営」は、不動産仲介サイトでおなじみのLIFULL HOME’Sが提供する不動産投資情報サイトです。
都道府県や市区町村ごとの、空室率や想定利回り、人口増減を見ることができます。どのエリアで不動産投資をするか検討している方が特に活用できるサイトといえます。
(2)日経不動産マーケット情報 市場分析レポート・ディレクトリ
出典:日経不動産マーケット情報
「日経不動産マーケット情報 市場分析レポート・ディレクトリ」は、テーマや発行元、発表日から、不動産調査レポートを絞り込んで検索できるデータベースです。
東京証券取引所や日本不動産研究所など、幅広い情報源のレポートから、知りたいテーマで探すことができます。不動産マーケット全体の動向を知るのに便利でしょう。
(3)ノムコム・プロ 不動産投資の最新動向
出典:ノムコム・プロ
「ノムコム・プロ 不動産投資の最新動向」は野村不動産ソリューションズが運営している不動産投資サイトです。
最新の価格動向や利回りの状況について、資産コンサルティング部の方が解説しています。2014年以降の記事が残っていますので、一通り確認しておくと、理解が深まるでしょう。
同サイトでは、収益物件の情報も多数掲載しているため、物件価格の相場を体得する際にも有益といえます。
5、不動産投資の利回りで注意すること
利回りは、不動産投資の収益性を測る上で重要な指標ですが、利回りだけで収益性を測るとリスクが大きくなります。
この章では、不動産投資物件の利回りを見る際の注意点について解説します。
(1)収益性の高い物件は、利回りだけでは判断できない
物件の利回りが高い = 収益性が高いというわけではありません。
利回りが高い物件は、家賃が相場よりも高く設定されている可能性があります。
物件資料に記載されている家賃を鵜呑みにするのではなく、条件が似ている物件の家賃相場を確認しましょう。想定していた家賃が得られないと、結果として利回りが低くなってしまいます。
また、建物の管理費や修繕積立金が安いという理由で高利回りになっていることも考えられます。一見、経費を抑えられるため収益性の高い物件に見えますが、管理がきちんとなされていなかったり修繕積立金が十分に貯まっていない可能性があるので注意が必要です。
利回りの高さは、リスクの高さと比例します。高利回りで低価格の物件には、賃貸需要が低かったり、十分なメンテナンスがされていなかったりと、リスクも高い物件である可能性が高くなります。
一方、低利回りの物件でも、賃貸需要が下がりにくいエリアで、建物の造りが精巧であるなど、資産価値が高く長期的に見た場合に収益性の高い物件であることも多いものです。
(2)実質利回りを見る
不動産投資では、年間の家賃収入がそのまま手元に残るわけでは無いため、表面利回りではなく実質利回りを基に、採算が合うか見極めるようにしましょう。
ローン返済については、利回りの計算に含まれていないことに気づいた方もいらっしゃるかもしれません。
実際に毎月の手取り収入を左右する要素となるローンの有無や、金利を考慮したシミュレーションをすることが必要になります。
実質利回りが一番高くなるのは、年間の出費がそれほどない「新築物件」です。
ただし、購入当初は表面利回りと実質利回りに乖離が無かったとしても、築年数が経つと、家賃を下げたり建物の修繕コストがかかり、実際の利回りが下がるため留意が必要です。
以下のような流動的な経費や出費を見込んだうえで、利益計算のシミュレーションをすることが大切です。
- 金利の上昇
- 空室リスクに備える費用(部屋設備の買い替え費用)
- 修繕費(退去時のクリーニング費用)
(3)必要経費が記載されているか確認する
不動産投資会社の中には、必要経費を記載しないでシミュレーションを見せ、あたかも利回りの高い物件であるかのように販売する会社があります。
不動産投資会社が提示するシミュレーションを鵜呑みにするのではなく、さまざまな経費を考慮したシミュレーションになっているか確認しましょう。疑問点は全て質問し、解消してから物件購入に進むことが大切です。
(4)セカンド・オピニオンサービスを活用する
「不動産投資の教科書」では、不動産投資会社から提案された物件について相談ができる「セカンド・オピニオンサービス」を提供しています。
セカンド・オピニオンで多い相談は、
- 物件の見方がわからない
- 提案された物件を不動産投資経験者に見てもらって不安を解消したい
といった相談です。
セカンド・オピニオンを担当するのは編集部に在籍する現役の不動産投資家なので、不動産会社で聞きにくいことも聞けますし、営業されることもありません。
多くの投資家に知ってもらいたく、現在無料で相談できます。ぜひご利用ください。
不動産投資の利回りに関するよくあるQ&A
Q1: 不動産会社でシミュレーションを出してもらったけど、自分でもシミュレーションをした方がいいの?
不動産会社が提示するシミュレーションを鵜呑みにするのではなく、自分で数字を入力してシミュレーションをしてみましょう。不動産投資は、大きな金額の投資になりますので、十分納得してから始めることが重要です。
シミュレーションを第三者に見てもらいたい、相談したい場合はセカンド・オピニオンサービスをご利用ください。
Q2: ローンの金利について詳しく知りたいのですが…
不動産投資では、一般的な住宅ローンを利用できません。融資審査が厳しく、金利も高い傾向にある不動産投資ローンを利用することになります。
不動産投資ローンについて詳しくは、不動産投資ローンの金利について解説|「金利が低い」金融機関はどこ?で解説しています。ぜひご覧ください。
(3)シミュレーションをする時のツールはありますか?
不動産投資の教科書では、物件のシミュレーションをする際に便利な簡易収支シミュレーションをご用意しています。
また、不動産投資連合隊の収支シミュレーションも使いやすいツールです。
まとめ
不動産投資における利回りについて詳しく解説してきました。
利回りに関する知識を身につけ、自分自身でもシミュレーションができるようにしておくことは、不動産投資を成功させるために欠かせないスキルと言えます。
この記事が、不動産投資の指標となる情報になりましたら幸いです。