• 不動産売却
  • 2024/4/8

売主の契約不適合責任とは?不動産を売却時に気をつけるポイント3つ

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契約不適合責任は、不動産の売買に大きく関わる規定です。

以前の民法であった「瑕疵担保責任」は、2020年4月の民法改正により「契約不適合責任」に変更なりました。

今回は、「契約不適合責任」に焦点を当て、不動産売却時に売主が損しないために知っておきたい内容をまとめました。

不動産売却については、以下の記事もご覧ください。
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1、契約不適合責任とは

契約不適合責任は、民法562条以降で規定されている責任のことです。

本章では、

  • 契約不適合責任の概要
  • 改正前民法570条「瑕疵担保責任」との違い
  • 契約不適合責任で買主が持つ4つの権利

について解説します。

(1)契約不適合責任と改正前民法「瑕疵担保責任」との違い

契約不適合責任は、売主が種類、品質又は数量に関して、契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合の売主の責任のことです。

改正前民法で規定されていた「瑕疵担保責任」と、改正民法で新たに追加された「契約不適合責任」の違いについて、下記表にまとめました。

瑕疵担保責任

契約不適合責任

欠陥の種類

隠れた瑕疵

種類・品質・数量が
契約の内容に適合しないもの

追完請求権

×

代金減額請求権

×

損害賠償請求権


(契約解除できない場合のみ)

法定解除権


(買主が瑕疵を知らず、瑕疵を知らないために目的達成できない場合のみ)

請求期限

買主が瑕疵を知った時から1年以内に契約解除または損害賠償請求の必要あり

種類・品質についての契約不適合の場合は、買主が不適合を知った時から1年以内に不適合を売主に通知する必要あり

数量についての契約不適合に対する請求は、消滅時効にかかるまでならいつでも請求可能

(2)契約不適合責任で買主が認められている4つの権利

改正民法では、売主の契約不適合責任において、買主に認められる4つの権利が規定されています。

  • 追完請求権(民法562条)
  • 代金減額請求権(民法563条)
  • 損害賠償請求権(民法564条)
  • 法定解除権(民法564条)

それぞれの権利について詳しくみていきましょう。

①履行の追完請求権(改正民法562条)

(買主の追完請求権)
第562条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
出典:民法

売主から不完全な物を引き渡された場合に、買主が「完全な物を渡してほしい」と請求できる権利のことを「追完請求権」といいます。

例えば、購入した新品のゲーム機の電源が付かない場合、買主は売主に対して、

  • ゲーム機の修理
  • バッテリー等の交換
  • ゲーム機自体の交換

などの契約不適合部分の追完請求が可能です(民法562条1項)。
ただし、ここで注意したいのは買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法以外の方法でも、追完が可能です(同条但書)。
また、例えば「ゲーム機をわざと落として落とした結果電源が付かなくなった」というように、買主の帰責事由による不適合の場合には、追完請求権は認められないとに注意が必要です(同条2項)。

②代金減額請求権(改正民法563条)

(買主の代金減額請求権)
第563条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
出典:民法

買主が売主に対して、前項で解説した「追完請求」を行ったものの、売主がそれを実行しないケースも考えられます。
以上の場合の次の手段として、買主は売主に対して「売買価格を減額してほしい」といった「代金減額請求」をすることが可能です。

代金減額請求は、買主が相当の期間を定めて履行の追完を催告し、その期間内に履行の追完がないときに認められるのです(民法563条1項)。原則として、先に追完請求をしたものの売主が実行しなかった場合に請求できる権利です。

一方で、そもそも履行の追完ができない(不能)状況であったり、売主が履行の追完を拒絶している場合などにおいては、最初から代金減額請求が可能となります(同条2項)。
追完請求と同様に、買主の帰責事由による不適合の場合には、代金減額請求も認められないので注意が必要です(同条3項)。

③損害賠償請求権(改正民法564条)

(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第564条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
出典:民法

買主は、追完請求や代金減額請求と併せて、売主に対して契約不適合責任に基づく損害賠償請求をすることが可能です(改正民法564条)。
なお、改正前民法の瑕疵担保責任でも損害賠償請求が認められていたものの、契約不適合責任とは内容が異なります。
瑕疵担保責任の損害賠償請求は、売主の「無過失責任」でしたが、契約不適合責任では売主の「過失責任」になります。

無過失責任と過失責任

  • 無過失責任・・・損害の発生について故意や過失がなくても、損害賠償責任がある
  • 過失責任・・・損害の発生について故意や過失がなければ、損害賠償の責任を負わない

以上のことから、契約不適合責任では、過失責任が問われるため、売主が不具合を故意に隠したり、売主の過失で生じた損害でない限り、買主は損害賠償請求をすることができません。

また、瑕疵担保責任の損害賠償請求可能範囲は、「信頼利益」に限られていました。
一方で、契約不適合責任の損害賠償請求可能範囲は、信頼利益だけでなく「履行利益」も含まれます。

信頼利益と履行利益

  • 信頼利益:契約が不成立や無効となった場合に、契約が有効であると信じたことで被った損害(契約締結のために準備した費用など)
  • 履行利益:契約が履行された場合に債権者が得られる利益を失ったことで被った損害(転売利益や営業利益など)

④法定解除権

(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第564条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
出典:民法

法定解除権は、損害賠償請求権と同様の改正民法564条に規定されています。売主に対して追完請求をしたにもかかわらず、売主が追完を行わない場合には、買主は契約を解除することが可能です。
ただし、不適合の程度が社会通念軽微である場合は、契約解除まで認められず、その代わりとなる救済を受けることになります。
そもそも履行不能である場合には、「無催告解除」が認められています(民法542条1項)。

(3)契約不適合責任に基づく買主の権利行使期限

契約不適合責任に基づく権利には、権利行使ができる期限が決められています。
具体的には、以下の2つのケースによって期限が異なります。

  • 目的物の種類・品質が契約の内容に適合しない場合
  • 数量・権利が契約の内容に適合しない場合

①目的物の種類・品質が契約の内容に適合しない場合の期限

買主が種類や品質に関する不適合を知った時から1年以内に、売主に対して不適合について通知をする必要があります。
権利行使できる期限は、通知をしてから消滅時効にかかるまでとなっています。

②目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合

数量や権利に関する不適合については、買主の売主に対する通知期限はありません。
消滅時効にかかるまでの期間で、不適合について権利行使することが可能です。

2、不動産の売主が気をつけたい契約不適合責任のポイント3つ

不動産を売りたいと考えている方は、契約不適合責任において以下の3つのことを認識するようにしましょう。

  • 免責特約を締結する
  • 通知期間を決める
  • 売却する不動産の調査をする

(1)免責特約をつける

後述しますが、売主の契約不適合責任を免責する特約は有効です。
不動産の売買契約を締結するときに免責特約をつけることで、不要なトラブルを避けることができます。

特に、中古物件を売却する場合、物件の経年劣化により、売主側でも把握できない契約不適合が存在する可能性があります。
売買契約締結前に、考えられる契約不適合についての責任は売主側では負わない旨を予め特約として売買契約書に明記しましょう。

その際には、買主と話し合う必要がありますが、全ての契約不適合責任を負うことで売主の責任負担を増やさないためにも、特約が有効です。

(2)通知期間を決める

すでに解説したとおり、改正民法における契約不適合責任は、買主が契約不適合を知った時から1年以内に売主へ通知すれば、時効消滅まで権利行使ができます。

ちなみに消滅時効は、「権利の行使が可能となったことを知った時点から5年」「権利の行使が可能となったときから10年」です。

上記のままでは、買主が契約不適合責任を知らない限り、売買契約締結後いつまでも契約不適合責任を問われることになりますこのような事態にならないためにも、予め買主からの通知期間を決めておくことが得策です。

なお、買主が事業者である場合は、個人間の売買とは異なります。買主は目的物を受領後にただちに検査をおこない、契約不適合があれば売主に対してすぐに通知しなければなりません。

もしすぐに通知がなかった場合は、契約不適合責任の追及する権利がなくなることに注意しましょう。

(3)売却する不動産の調査をする

売主は、売却する不動産について事前にしっかり調査しましょう。事前に不動産の不適合を把握できていれば、売買契約締結の際に、買主に対して不動産の状態を伝えることが可能です。

例えば、事前に雨漏りがすることを伝えたうえで、それについて買主が合意して不動産売買契約が締結された場合について考えてみましょう。買主は、事前に「雨漏りがすること」を知っているため、そもそも売主は売買契約締結後の契約不適合責任を負いません。

不動産の調査については、ホームインスペクター等に依頼すると良いでしょう。

すまいValue(すまいバリュー)の評判や口コミは?大手6社直営のメリット・デメリットを解説

3、契約不適合責任は特約で免責される?

前章で、契約不適合責任について詳しく解説しましたが、契約不適合責任は契約時に絶対必要となるものではありません。
当事者間で、契約不適合責任を免責する特約を結んだとしても、その特約は有効となります。

しかし、売主の契約不適合責任を免責する特約は、買主にとっては不利な特約です。そのため、契約不適合責任の免責特約は常に有効となるわけではありません。

以下にあてはまる場合には、免責特約が無効となるため、注意が必要です。

(1)【民法】信義則違反の場合

当事者間で契約不適合責任の免責特約が締結された場合、民法で規定されている“契約自由の原則”によって、特約を尊重すべきといえるでしょう。
しかし、例えば売主が契約不適合を知っていながら買主に告げずに売買契約を締結した場合、信義則違反といえるため、契約不適合責任の免責特約を締結しても無効となります。

(2)【宅地建物取引業法】売主が宅建業者の場合

宅地建物取引業者が自ら売主となる場合は、宅地建物取引業法が適用されます。

民法の規定よりも買主に不利な瑕疵担保責任の免責特約は、原則として無効となります。

(3)【消費者契約法】売主が宅建業以外の事業者の場合

消費者契約は、事業者と消費者の間で締結される契約です。消費者契約において、事業者の瑕疵担保責任を全部免除する特約は無効となります。

4、不動産売買における契約不適合責任に関連する法律

不動産売買における契約不適合責任については、以下の法律でも規定されています。

  • 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)
  • 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保法)

(1)住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)

品確法では、改正前民法と同様に「瑕疵」という用語が現在でも使用されています。
同法2条5号において、瑕疵の定義を「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態をいう」と示しています。

また、品確法においては、新築住宅の売主に関する瑕疵担保責任(契約不適合責任)が規定されています。

(新築住宅の売主の瑕疵担保責任)
第95条 新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から十年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕か疵しについて、民法第四百十五条、第五百四十一条、第五百四十二条、第五百六十二条及び第五百六十三条に規定する担保の責任を負う。
2 前項の規定に反する特約で買主に不利なものは、無効とする。
3 第一項の場合における民法第五百六十六条の規定の適用については、同条中「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない」とあるのは「住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第九十五条第一項に規定する瑕疵がある」と、「不適合」とあるのは「瑕疵」とする。
出典:住宅の品質確保の促進等に関する法律

(2)特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保法)

住宅瑕疵担保法は、2008年4月に施行された住宅に関する法律です。
品確法と同様に、改正前民法と同様に「瑕疵」という用語が現在でも使用されています。

住宅瑕疵担保法では、新築住宅の施工業者や売主が、住宅の基本構造に欠陥が見つかった場合は10年間瑕疵担保責任(契約不適合責任)を果たすために、予め下記の方法で担保することが義務付けられています。

  • 保証金を供託する
  • 保険に加入する

契約不適合責任についてのQ&A

瑕疵担保責任との違いは?

隠れた瑕疵ではなく「種類、品質又は数量に関して、契約の内容に適合しない目的物を引き渡したこと」についての売主の責任です。瑕疵担保責任において条件付きで買主に認められていた「損害賠償請求権」「法定解除権」だけではなく、「追完請求権」「代金減額請求権」の4つの権利が買主に認められています。

契約不適合責任に期限はある?

契約不適合責任は、買主が権利行使ができる期限が決められています。

  • 目的物の種類・品質が契約の内容に適合しない場合・・・買主が不適合を知った時から1年以内に売主に対して通知が必要。
  • 目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合・・・買主の売主に対する通知期限はない。消滅時効にかかるまで権利行使が可能。

※消滅時効:「権利の行使が可能となったことを知った時点から5年」または「権利の行使が可能となったときから10年」

契約不適合責任を免責する特約は有効?

契約不適合責任を免責する特約は有効です。しかし、買主にとっては不利な特約であるため常に有効ではなく無効になることもあります。

  • 個人間の売買である場合・・・民法上の信義則違反であれば無効
  • 売主が宅建業者の場合・宅地建物取引業者が自ら売主となる場合は宅地建物取引業法が適用されるため、民法の規定よりも買主に不利な瑕疵担保責任の免責特約は無効
  • 売主が宅建業以外の事業者の場合・事業者と消費者の間で締結される消費者契約に該当。消費者契約法が適用され、事業者の責任をすべて免責する特約は無効

まとめ

今回は、不動産を売却するときに気をつけたい売主の「契約不適合責任」について解説しました。
契約不適合責任をしっかり理解したうえで、売主が認識すべきポイントについても参考に、損のない不動産売却を行いましょう。


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