「銀行の家族信託ってどのようなサービスだろう……。」
「家族信託を銀行で利用するのと、専門家に依頼する家族信託って違うのかな……。」
銀行の家族信託サービスについて、上記のような悩みや不安を抱えている方はいらっしゃいませんか?
日頃から利用している銀行で、「家族信託」と書かれたチラシやホームページを拝見したことがある方もいらっしゃると思います。
家族信託は、主に認知症などの対策として利用されている財産管理制度の1つで、銀行でも家族信託のサービスを展開していることが多いです。
司法書士や弁護士など家族信託に精通した専門家に相談しにくいという方でも、銀行なら利用できそうと思う方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、
- 通常の家族信託と銀行の家族信託の違い
- 銀行が取り扱う家族信託サービスのメリット
- 銀行の家族信託の注意点
- 各銀行の家族信託サービス
銀行が取り扱う「家族信託」サービスは、どのようなものなのかがわかる内容となっております。
本記事が、銀行の家族信託サービスの利用を考えている方の参考となれば幸いです。
目次
1、銀行の家族信託は全く別物?
専門家に家族信託を依頼する方法と、銀行の家族信託サービスを利用する方法も、財産を管理するという点は同じです。
ただ、財産管理という点では同様ですが、銀行の家族信託のサービスの目的や内容は、異なってきます。
本章では、どのような点が専門家に依頼する家族信託と異なるのか解説します。
(1)そもそも家族信託とは?
そもそも家族信託について、詳しくわかっていないという方のために、本章では家族信託について簡単に解説します。
家族信託は、自分自身で財産管理できなくなってしまった場合に備えて、財産の管理や処分の権限を家族に与える方法です。
家族信託の特徴は、その家族に適切な財産管理の方法を柔軟に設計できることです。
家族信託について、詳しくは「家族信託とは?1分で分かる「仕組み・メリット・注意点・やり方」で詳しく解説しておりますので、合わせてご参考ください。
(2)銀行の家族信託
さて、銀行の家族信託のサービスとは、一体どのようなものでしょうか?
本章では、銀行の家族信託サービスについて詳しく解説します。
家族信託は、委託者・受託者・受益者の3者から成立し、財産の管理や処分の権限を与えられた受託者が、委託者の家族であることから「家族信託」と呼ばれています。
銀行が展開する「家族信託」サービスは、受託者が家族ではなく銀行となることが多いです。委託者が家族ではなく銀行になるため、「商事信託」や「民事信託」と呼ばれることもあります。
銀行の家族信託の特徴は、以下の通りです。
- 相談等の費用は発生しないことが多い
- 金銭に限定した信託
- 最低預入金額がある
- ある程度の信託設計が決まっている
簡単にいえば、銀行が受託者となって財産を預かる、預金に近いサービスとなっているのが特徴です。
銀行の家族信託を利用する目的としては、以下のようなことが挙げられます。
- 本人の生活費用
- 本人の葬儀費用
- 遺族の生活費用
(3)家族信託サービスの比較
前項で、銀行の家族信託サービスについて解説しました。
では実際に、銀行の家族信託サービスと、専門家に家族信託を依頼する方法では、どのような違いがあるのでしょうか。下表にて比較してみました。
専門家の家族信託 | 銀行の家族信託 | |
利用目的 | 1.認知症対策 2.本人の生活費用 3.本人の葬儀費用 4.遺族の生活費用 5.相続対策 6.遺言代用 | 1.本人の生活費用 2.本人の葬儀費用 3.遺族の生活費用 |
受託者 | 家族 | 銀行 |
信託内容の種類 | 金銭、不動産など制限なし | 金銭のみ |
信託内容の自由度 | 自由に設計が可能 | 自由度は低い (予め内容が決まっている) |
コスト | 初期コストが高額 専門家に報酬が必要 | 初期コストは低い |
最低預入金額 | 制限なし | 制限あり |
2、銀行の家族信託のメリット
前章「(3)家族信託サービスの比較」の表を見ると、「専門家に依頼して家族信託をする方が色々制限がなくて使いやすいじゃん…!」と思われた方もいらっしゃると思います。
ですが、銀行の家族信託サービスでしか得られないメリットがあることも事実です。
本章では、銀行の家族信託サービスのメリットをいくつか挙げて、解説いたします。
今回紹介されるメリットは、以下の通りです。
- 手間が省ける
- 初期コストが安い
(1)手間
銀行の家族信託のメリットとして挙げられるのが、手間の省略です。
通常の家族信託の場合、受託者が家族になることによって、財産の管理だけでなく内容の設計や手続き、その後の運用まで本人が関わる必要があります。
銀行の家族信託を利用すれば、ある程度信託内容が決まっているので、設計に関して悩む必要が少なくなりますし、手続きや運用も銀行に一任することができるのです。
また、委託者が亡くなって相続が発生した後、受取人が指定されているため、すぐに資金を引き出せるというメリットもあります。
(2)初期コスト
銀行の家族信託であれば、ある程度の信託の内容も決まっているので、専門家に家族信託を依頼する場合よりも初期コストを抑えることができます。
専門家に家族信託を依頼する場合、コンサルティングや手続きの代行に報酬が発生するので、初期コストが高額になります。
家族信託のコストに関し、詳しくは「家族信託に係る費用を徹底解説!手続きや相場を詳しく紹介」で詳しく解説しておりますので、合わせてご参考ください。
3、銀行の家族信託のデメリットと注意点
前章で、銀行の家族信託のメリットについて解説しました。
一方で、銀行の家族信託にはデメリットと注意点があります。
本章では、銀行の家族信託のデメリットと注意点について解説していきます。
今回紹介するデメリットと注意点は、以下の通りです。
- 信託できる財産が限られる
- 信託内容の自由度が低い
- 専門的知識が乏しいことがある
(1)信託できる財産
銀行の家族信託サービスは、原則、金銭(現金)のみしか取り扱っていません。
金銭以外にも、不動産や有価証券など、財産は人によってさまざまです。
特に、「不動産」は、家族信託を検討している方の多くが、財産として信託したいと思うでしょう。
通常の家族信託では、財産の対象とされる「不動産」を、信託内容に含むことができないのは、大きなデメリットとなるでしょう。
(2)信託内容の自由度が低い
銀行の家族信託は、サービスの内容がある程度決まっており、自分の要望通りの財産管理をすることはできません。
家族信託の最大の特徴とも言える、財産管理の自由な設計というメリットを享受できないことが、銀行の家族信託の大きなデメリットと言えるでしょう。
(3)専門的知識が乏しい場合がある
家族信託の注意点として、銀行で家族信託について相談する場合、家族信託についての知識が十分でないことがあります。
銀行では、家族信託をメインとしてサービスを提供していません。
家族信託は、手続きや契約も煩雑で、高度な知識や経験が必要です。
家族信託において、満足の高い結果を求めるならば、家族信託に精通した専門家に相談する方が良いでしょう。
4、各銀行の家族信託サービス
ここまで家族信託のメリットやデメリットを解説した上で、銀行の家族信託を利用しようと思った方もいらっしゃるかと思います。
本章では、実際に各銀行でどのようなサービスが提供されているのかについて解説します。
家族信託は、自分の財産の管理を依頼するので、信頼関係は必要不可欠です。
信頼関係が築ける銀行を選ぶようにしましょう。
今回紹介する銀行は、以下の銀行のサービスになります。
- みずほ信託銀行
- 三井住友信託銀行
- 三菱UFJ信託銀行
(1)みずほ信託銀行|「安心の贈りもの」
みずほ信託銀行の家族信託として、「安心の贈りもの」というサービスが展開されています。
「安心の贈りもの」は、みずほ信託銀行が受託者となって、委託者が亡くなった際に、生前に指定した受益者に信託財産を渡す信託商品です。
「安心の贈りもの」の特徴としては、以下のようなことが挙げられます。
- 元本保証
- 手数料無料
- 振込手数料無料
そのほかにも、相続発生時に所定の確認書類を提出する簡単な手続きで、受益人に金銭を渡すこともできます。
(2)三井住友信託銀行|「安心サポート信託」
三井住友信託銀行は、「安心サポート信託」という家族信託の商品を展開しています。
「安心サポート信託」では、三井住友信託銀行が受託者となって、委託者の財産を管理しています。
「安心サポート信託」の特徴は、「信託目的」と「特約」の内容に沿った「オーダーメイド」の財産管理を行ってくれる点です。
銀行の家族信託サービスながら、自由度が高い家族信託サービスを提供しています。
(3)三菱UFJ信託銀行|「家族安心信託」
三菱UFJ信託銀行では、「家族安心信託」という家族信託のサービスを展開しています。
「家族安心信託」も同様に、三菱UFJ信託銀行が受託者となり、委託者の財産を管理しています。
「家族安心信託」の特徴は、相続発生後の金銭受け取り方法が、定期的になる点です。
金銭の受け取りを定期的にすることで、受益者の財産の散逸や浪費を防ぐことができます。
まとめ
家族信託の銀行のサービスについて詳しく解説してきました。
通常の家族信託と、銀行の家族信託では、大きく異なることがお分かりいただけtでしょうか?
本記事のメリットやデメリットを参考にした上で、家族信託について検討していただければ幸いです。