• 不動産投資
  • 2021/9/28

不動産におけるDCF法の基礎知識と計算方法、計算ツール3選

DCF法」という、不動産の世界にたびたび登場する言葉をご存知でしょうか。

DCF法ってそもそも何?
DCF法ってどういう考え方なの?
DCF法はどう計算するのか、その結果をどう活かせば良い?

DCF法は、不動産において、収益物件の評価をするために用いられていることは多くの方がご存知だと思います。
しかし、上記のような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

不動産投資をしている方や、不動産投資を始めようと思っている方にとっては、「DCF法」は非常に重要で、しっかり理解しておく必要があります。

そこで今回は、

  • DCF法とは?
  • DCF法の考え方
  • DCF法の計算方法
  • DCF法による物件評価の実例
  • DCF法の計算を簡単にしてくれるツール

などについて、不動産投資についての情報を発信しているメディア「不動産投資の教科書」が詳しく解説します。

この記事1本でDCF法の概要が分かるよう構成しましたので、ぜひ最後までお読みください。

※こちらの記事は2017年9月20日に公開したものを、2021年9月6日に加筆・修正しました。

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1、DCF法の概要|DCF法は不動産の価値を正確に算出する

本章では、DCF法の基礎知識を紹介するため、DCF法の概要を解説します。
本章で紹介するDCF法の概要は、以下のとおりです。

  • DCF法とは?
  • 3つの主な不動産の評価方法
  • 「DCF法」の価値

(1)DCF法とは?

不動産におけるDCF法とは、所有している不動産から得られる収益や、売却益を考慮して将来に得られる収益を、現在価値に換算して算出する方法です。
DCF法は、物件が持つ価値を将来のリスクも考慮に入れて算出することができます。
将来も考慮に入れた価値算出ができるDCF法は、不動産投資において非常に重要な判断材料になるのです。

DCF法という言葉にあるDCFとは、「Discounted Cash Flow(ディスカウント・キャッシュ・フロー)」の略です。
直訳すると、「値引きされたキャッシュフロー」という意味合いになりますが、「値引き」が大きな意味を持っています。

DCF法は、不動産だけでなく、証券投資や企業価値の算定などの評価方法としても広く用いられています。
不動産の価格を査定・評価するには、大きく分けて次のような3つの方法があります。

  • 収益還元法
  • 原価法
  • 取引事例比較法

「DCF法は含まれないの?」と疑問に思われた方もいらっしゃると思いますが、DCF法は「収益還元法」という価値算定方法のひとつです。
収益還元法には2つの方法があり、「DCF法」の他に、「直接還元法」と呼ばれるものがあります。

上記の3つの方法について、詳しくは次項で解説します。

(2)3つの主な不動産の評価方法

前述の通り、不動産の評価方法として知られている3つの方法には、以下のものがあります。

  • 収益還元法
  • 原価法
  • 取引事例評価方法

それぞれの評価方法について、簡単に解説します。

①収益還元法

収益還元法」の最大の特徴は、物件の将来における収益力から算出することです。
前項で説明したように、収益還元法の中には、以下の2つの種類があります。

  • 直接還元法
  • DCF法

「直接還元法」は、所有している不動産から得る年間利益を、一定の還元利回りで割って算出する手法です。

どちらを用いるかは、対象の不動産の性格や算出の目的に応じて決定します。
ただし、不動産を証券する際などにおける収益見込みの算出には、原則として直接還元法を用いず、DCF法を用いることとされています。

直接還元法は、DCF法に比べて簡単で便利な方法です。
しかし、DCF法は直接還元法で想定されていない空室リスクや家賃の下落率も考慮して算出するため、直接還元法はDCF法に比べると精度は劣ります。

どちらの方法も、将来の収益力に着目している点では共通しているので、収益物件の評価方法として広く用いられています。

「収益還元法」について、詳しくは「収益還元法とは?投資物件の適正価格を算出する2つの方法」で解説しておりますので、あわせてご参考ください。

②原価法

原価法は、「その物件と全く同じものを建てるとどれだけの費用なるか?」という「再調達原価」に着目した評価方法です。

原価法のメリットとしては、コストを元にしたシンプルな考え方なので、分かりやすいという点です。
一方で、原価法のデメリットは、不動産投資の対象となりやすい市街地では新規に建てる物件の事例が少なく、再調達価格を知る手段がない場合に使えないことがあります。

③取引事例比較法

取引事例比較法は、近隣にある類似物件の取引価格を参考に、評価したい物件の特徴などを考慮して算出する方法です。

②で紹介した原価法では、市街地に使いづらいという特徴があります。
一方、取引事例比較法は、むしろ市街地のほうが取引事例が多く、適用しやすいというメリットがあります。
一般的に、住居物件の評価をする際によく用いられる方法です。

(3)「DCF法」の価値

DCF法に限らず、不動産を査定・評価する方法が確立されていることには、大きな理由があります。

投資家が、物件価格の相場を正しく知り、「高値掴み」をしてしまわないようにする物差しとしての役割も重要です。

特に、DCF法の場合は、金融機関が融資審査の際に使用することに存在意義があります。
金融機関が融資の審査をするにあたって、一番知りたいのは「収益不動産が将来にわたって期待通りの収益をもたらすか」どうかです。

DCF法で算出された数値が良ければ、金融機関の融資審査に通る可能性が高まります。

DCF法は、将来における収益予測を織り込んだ物件評価が可能です。
金融機関の融資が付いたということは、DCF法による不動産評価によって、「将来の期待収益も含めて妥当な価格」であると見て良いでしょう。

2、DCF法で不動産の価格を算出する方法

前章で、DCF法は、不動産の価値を正確に算出する方法であると紹介しました。
具体的に、DCF法で不動産価値を算出する計算方法を知りたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本章では、DCF法の計算方法を簡単に紹介します。

(1)DCF法の考え方

DCF法が重視しているのは、時間価値です。

同額の資産があっても、今あるのと未来にあるのとでは、実質的な価値が異なる点に着目しているのがDCF法です。

例えば、100万円の現金があるとします。
100万円の現金を、今持っているのと1年後に持っているのとでは、「1年分の利息」分だけ現在の100万円のほうが高い価値を持っています。

1年後に同額の100万円を得たとしても、その100万円には、1年間の運用で得られるリターンという時間価値がないからです。

不動産投資は、物件を複数年で所有するケースが大半なので、1年ごとに時間価値を計算して、積算する必要があります。
以上の流れをイメージ図にすると、以下のようになります。

緑色の部分が、不動産の実質的な価値です。
1年目より2年目、2年目よりも3年目という具合に、実質的な価値が下がっていくのは、時間が進むほど現在価値との差が広がるからです。
最終的な売却時(この場合だと5年後)には、5年分の時間価値が考慮されるので、その分の割引をする必要があります。

(2)DCF法の計算式

前項で解説したDCF法の考え方を計算式にすると、以下のようになります。

不動産の収益価格=年間の収益 ÷ (1+割引率)のn乗 ・・・ + 売却価格 ÷ (1+割引率)の5乗

次に、前項のイメージ図を計算式にすると、以下のようになります。

(1年目)年間の収益 ÷ (1+割引率)の1乗
(2年目)年間の収益 ÷ (1+割引率)の2乗
(3年目)年間の収益 ÷ (1+割引率)の3乗
(4年目)年間の収益 ÷ (1+割引率)の4乗
(5年目)年間の収益 ÷ (1+割引率)の5乗
上記をすべて足したものに、
売却価格 ÷ (1+割引率)の5乗 を足すことで、5年後の収益を求めることができます。

この金額と収益物件の価格に大きな差異がなければ、期待収益と比べて妥当な価格設定であると判断できます。

(3)割引率を設定する方法

DCF法では、時間価値の分だけ将来に受け取る収入の価値を割り引いて計算します。

この割引の根拠になるのが、割引率です。
割引率は、同じ金額を他の投資をしたら得られていたであろう期待収益率と、同じにする設定が望ましいでしょう。
いわゆる安全資産として、定期預金や国債などで比較すると、1%を大幅に下回る数値になるため、空室など一定のリスクテイクをしている不動産投資との比較には不適格です。

不動産投資と同程度のリスク&リターンである投資商品を比較するのが妥当なので、投資信託や優良株の配当利回りなどが、比較対象として妥当でしょう。
上記のような投資商品の金利水準は、3~5%であると仮定して、数%規模で設定するのが良いでしょう。

3、DCF法で不動産の価格を計算してみよう

前章では、DCF法を使用して不動産の価格を算出する方法を紹介しました。
では、実際に不動産の価格をDCF法を用いて計算してみましょう。

(1)一棟アパート投資を5年間行った場合

DCF法を使って、一棟アパート物件の実質的な収益額を計算してみたいと思います。
想定条件は、以下の通りです。

アパートの戸数6戸
年間の家賃収入5万円×6戸×12ヶ月=360万円
空室率15%
投資期間5年間
割引率3%
物件売却価格3,000万円

管理コストなどを考慮していませんが、この一棟アパートに対する5年間の家賃収入は、空室率も考慮して、

360万円 × 5年 × 85% = 1,530万円

という計算結果になりました。
しかし、この金額は時間価値が考慮されていないので、DCF法に基づいて、5年間の収入をそれぞれ割り引きます。
毎年の家賃収入は、空室率15%を差し引いて、306万円とします。
2年目以降の割引率は前年の割引結果から3%割り引くことによって割引率を算出しています。

1年目306万円 × 97% = 296万8,200円
2年目306万円 × 94.09% = 287万9,154円
3年目306万円 × 91.26% = 279万2,556円
4年目306万円 × 88.52% = 270万8,712円
5年目306万円 × 85.86% = 262万7,316円
売却時3.000万円 × 85.86% = 2,575万8,000円

以上をすべて合計すると、「3,973万3,938円」という結果になりました。

これが、DCF法によって、時間価値も考慮された当該一棟アパートの5年間投資の収益総額です。

(2)区分マンション投資を5年間行った場合

先ほどの一棟アパートに続いて、区分マンションでもDCF法による収益総額の計算をしてみましょう。
この区分マンションの想定条件は、以下の通りとしました。

年間の家賃収入10万円 ×12ヶ月=120万円
空室率15%
投資期間5年間
割引率3%
物件売却価格2,000万円

この区分マンション物件の5年間の家賃収入総額は、

120万円 × 5年 × 85% = 510万円

という計算結果になります。

それでは、この区分マンションが持つ価値を、5年間の収益総額からDCF法で算出してみましょう。
1年間の家賃収入は、空室率15%を考慮して102万円とします。

1年目102万円 × 97% = 98万9,400円
2年目102万円 × 94.09% = 95万9,718円
3年目102万円 × 91.26% = 93万852円
4年目102万円 × 88.52% = 90万2,904円
5年目102万円 × 85.86% = 87万5,772円
売却時2,000万円 × 85.86% = 1,717万2,000円

1年目から5年目までの家賃収入と、売却価格の2,000万円にそれぞれ時間価値を考慮すると、合計は「2,183万8,314円」という結果になりました。

DCF法を用いた計算により、この区分マンション物件を購入して、5年間の投資をした時の期待収益が判明しました。

4、複雑なDCF法の計算を楽にしてくれるツール3選

DCF法の計算方法や実例を紹介しましたが、DCF法の計算についてかなり複雑だと感じた方も多いかと思います。
そこで、本章では、複雑なDCF法の計算を楽にしてくれるツールを3つ紹介します。

紹介するツールは、以下の通りです。

  • DCF法の計算式
  • 不動産投資DCF法レバレッジ方程式(無料版)
  • REIFA

それぞれのツールについて簡単に紹介します。

(1)DCF法の計算式

DCF法の計算式は、とてもシンプルな収益シミュレーションツールです。

以下の数値を入力することによって、一発でDCF法によるシミュレーション結果を見ることができます。

  • 収益見込み(年間収入・年間支出)
  • 投資額の見込み(投資額・残存価値)
  • 投資内容(投資期間・投資収益率・投資変動率)

最速資産運用「DCF法の計算式」


http://ma-bank.net/tool/dcf/

(2)不動産投資DCF法レバレッジ方程式(無料版)

不動産投資DCF法レバレッジ方程式は、エクセルを使ってDCF法による不動産物件の評価ができるツールです。
無料版ですが、かなり細かい分析が可能です。

不動産投資DCF法レバレッジ方程式(無料版)


http://www.vector.co.jp/soft/dl/winnt/business/se464389.html

(3)REIFA

REIFAは、前項でご紹介したエクセルを使ったDCF法計算ツールの無料版の有料版です。
家賃収入と売却時の価格を高精度に予測できる定番のソフトです。
14日間の無料試用版もあるので、まずはそちらから試してみてください。

REIFA


http://www.reifa.jp/

5、不動産初心者がDCF法をマスターする必要があるのか

ここまで、DCF法の概要や計算方法について解説しました。

しかし、個人の不動産投資家、とりわけ不動産投資の初心者の方がDCF法による不動産評価方法をマスターしておく必要はありません。
DCF法による評価は不動産鑑定士などの専門家が用いる手法であり、一般の不動産投資家が知らなくても不利になることはないからです。

仮に、DCF法をマスターして、不動産の評価ができるようになったとしても、その物差しだけで優良物件に出会えるとは限らないのが不動産投資の世界です。

DCF法という不動産評価方法が存在していて、DCF法がどんな考え方に基づいて計算されているか、それに加えて計算方法を理解しておくだけで充分だと思います。
もっとも、「より精緻な収益計算をしたい」という方もいらっしゃるでしょう。
そうであれば、以下のの書籍を読むことをオススメします。

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まとめ

いかがでしたでしょうか?

より正確な不動産物件の評価が可能になるDCF法ですが、案外簡単に算出できると思った方も、複雑で難しいと感じた方もいらっしゃると思います。

自分で算出できると思った方は、本記事で紹介した計算方法と計算事例を参考にしてみてください。
一方で、DCF法を用いた算出が難しいと感じた方は、本記事で紹介したように便利なツールがあるので、ぜひ使ってみてください。

実際にDCF法を使って不動産価値を算出するという機会はそれほどないと思いますが、金融機関で用いられている評価方法を知っておくことは、非常に有益です。

本記事が、不動産におけるDCF法についての疑問や、悩みを解決できる手助けとなれば幸いです。

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