総務省が発表した「住民基本台帳人口移動報告2022年」によれば、首都圏の人口は9万9519人の転入超過になっています。
住宅需要が高まる一方で、賃貸住宅の空室率も注目される課題となっています。
この記事では、
- 賃貸住宅の空室率の最新の状況について
- 空室率が上昇する原因とは?
- 空室を回避する方法とは?
を解説します。
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目次
1、空室率の最新データ
(1)空室率の計算方法
まずは賃貸住宅の空室率の計算方法を把握しておきましょう。
空室率 = 空室の賃貸住宅数 ÷(空室の住宅物件数 + 稼働している賃貸物件数)× 100
例えば、部屋数10戸のうち、3戸が空室である場合、空室率は「3 ÷ 10 × 100 = 30%」となります。
(2)1都3県の空室率の推移
株式会社タスが2022年12月に発表したデータでは、1都3県の賃貸住宅の空室率は以下の通りです。
下記のグラフの通り、全体的に減少傾向であることが分かります。
出典:株式会社タス「賃貸住宅市場レポート」(2022年12月版)
(3)構造別の空室率の推移
続いて、建物の構造別の空室率の推移をみてみましょう。
①RC造、SRC造などの「マンション系」の空室率推移
RC造、SRC造などの「マンション系」の賃貸物件の空室率は、2021年11月以降は下降傾向となっています。
出典:株式会社タス「賃貸住宅市場レポート」(2022年12月版)
②木造、軽量鉄骨造などの「アパート系」の空室率推移
「アパート系」の賃貸物件は2021年11月まで上昇していたものの、現在は下降傾向となっています。
出典:株式会社タス「賃貸住宅市場レポート」(2022年12月版)
2、空室率に影響を与える要因
(1)首都圏の空室率が下降した要因
首都圏の空室率は、東京都に限らず神奈川・千葉・埼玉のすべてで下降傾向です。これは、人口増で住宅需要が高まったというだけではなく、リモートワークの普及で「どうしても都内に住む必要がなくなった」「都心から多少離れてもいいから広めの部屋に住みたい」という需要の変化が原因であると考えられます。
このまま首都圏の空室率は下がり続けるのか?といえば、そういう訳には行かないようです。
2022年に発表された内閣府「貸家建設の動向について」によれば、
貸家着工は、2017 年以降のアパートローンに対する金融機関の融資態度の厳格化もあ り、減少が続いていたが、2021 年2月以降下げ止まり、年半ばにかけて大幅に増加し、 新設住宅着工戸数全体の押上げに大きく寄与した。
(中略)
会社建築主の着工を構造別に分析することはできないが、こうした属性 別の動向を踏まえれば、特に2021年前半における貸家着工の増加は企業による賃貸マン ション建設がけん引した可能性が考えられる。
新たな需要を満たす賃貸住宅を企業が供給していることがわかります。
(2)空室率が上昇する要因
では、賃貸住宅の空室率が上昇するのはどのようなときなのでしょうか。
大きく以下の3つの要因が挙げられます。
- 新築建設による賃貸住宅の供給過剰
- 人口減少による賃貸住宅の需要減少
- 空室回避措置を積極的に行わないなどの空室放置
では、それぞれについてみてみましょう。
①新築建設による賃貸住宅の供給過剰
賃貸物件の空室率が上昇する最も大きな原因は過剰な新築建設だと言われています。
日本には、世帯数に合わせた住宅供給計画、建設計画はありません。
下記国土交通省が令和4年7月に発表した住宅経済関連データでは、貸家の新設住宅着工戸数は平成22年以降は上昇傾向でしたが、新型コロナウイルスや世界情勢などの要因から、平成29年から令和2年にかけて減少しました。
出典:国土交通省「住宅着工統計」
日本全体を見れば、人口減少で家を借りるニーズが増えていないにも関わらず、新たに賃貸物件が建築されていることが分かります。
また、新築賃貸物件が増えている背景として、賃貸住宅に対する相続税が大きく下がることも考えられます。相続税の節税対策として不動産投資をする人がいるのです。
②人口減少による賃貸住宅の需要減少
国土交通省の「住宅経済関連データ」によると、日本の総人口は、2010年(平成22年)にピークとなり、以降減少と予想されています。
さらに高齢人口2020年以降は高齢者人口が増加するのに対し、生産年齢人口・年少人口は減少していく見通しとされ、少子高齢化が加速すると考えられます。
出典:国土交通省「人口の推移と将来推計(年齢層別)」(令和4年度)
人口が減少すれば、賃貸物件に対する需要が減り、空室率上昇の原因になります。
③空室回避措置を積極的に行わないなどの空室放置
空室にならないよういろいろと経営に工夫をしている大家が多い中で、空室改善の努力を積極的に行っていない大家もいらっしゃいます。
建築年数が古い建物で、老朽化により空室が増えても、物件のリフォームが面倒、リフォームする費用がないといった理由で空室対策をせず、そのまま空室にしている大家がいることが空室率の上昇要因として挙げられます。
3、 空室率を下げるために自分でできる対策は?
空室率が上がっていても、他の賃貸物件と比較して相対的に魅力的であれば空室を回避することができます。
ここでは大家さん自身でできる空室対策について紹介します。
(1)空室宅策の前に空室になっている要因を確認する
改善対策を的確に行うために、まずは空室が埋まらない要因について確認しましょう。
具体的に要因として考えられるものは以下の通りです。
- 築年数が古い(対策:リフォームなど)
- 設備が充実していない(対策:リフォームなど)
- 家賃設定が相場より高い(対策:家賃を下げるなど)
- 募集活動を積極的に行っていない(対策:入居募集の広告実施など)
- 管理の面が行き届いていない(対策:管理会社の変更など)
- 家賃が相場でも空室な場合(対策:家賃を下げずに敷金礼金を少なくする)
(2)具体的な空室対策は?
もし以上の中に該当する要因がありましたら、空室対策をしてはいかがでしょうか。
また、早めに入居を決断してもらうため以下のような対策も試してみるといいでしょう。
- 予定入居時期より早めに借りてもらうため「フリーレント期間」をつける
- すぐ入居ができるよう「家具」をつける
具体的な対策について詳しくは「不動産投資で成功を左右する空室対策とは?実践済み効果的な対策5つ」に記載しておりますので参考にしてみて下さい。
4、国が行う空室率を下げる対策とは?
社会問題である「空き家」に対して、国も改善対策に取り組み始めています。
大きく以下の2つの対策が検討・実施されています。
- 空き家の用途転換
- 新築賃貸物件建設の抑制
では、具体的にみてみましょう。
(1)空き家の用途転換
空き家対策として、自治体が補助金を出して支援する動きがあります。
例えば、世田谷区では行政がバックアップし、民間のNPOのような組織が空き家を借り上げて高齢者が集まる場や子供を預かる場所として活用する取り組みがあります。
参照:https://www.setagayatm.or.jp/trust/support/akiya/model.html
埼玉県秩父市では、町屋の母屋と蔵をコンサートや展示会のアートセンター施設として活用しています。
他には戸建てや納屋をカフェ、現代美術作家の居住などに活用した自治体もあります。
(2)新築賃貸物件建設規制の強化
空き家の用途移転などにより活用するのも有効な施策ですが、効果が高い施策はやはり根本的の原因である新築建設の増加を抑制することといえるでしょう。
ワンルームマンションを建築抑制するために、建築指導要綱などが2002年頃から強化され、東京都23区を皮切りに以下の点で物件の建築規制が行われています。
- 専有面積
- 管理形態
- 敷地内の環境
- プライバシー保護への配慮
東京都区部以外でも、何らかの規制をしている都市があります。
賃貸住宅の「空室率」についてよくある質問
空室率の計算方法は?
「空室率 = 空室の賃貸住宅数 ÷(空室の住宅物件数+稼働している賃貸物件数)× 100」で求められます。
空室率の反対語は?
「入居率」です。全部屋数(全戸数)のうち、入居者がいる部屋数(戸数)の割合のことです。
首都圏(1都3県)の空室率平均は?
首都圏全域の空室率平均は約10.5%です(2022年12月)。これは築年数及び建物の構造別でない全体の平均です。
まとめ
今回は空室率の推移から、空室率が上昇する原因やその対策についてまとめました。
空室になる原因は物件ごとに様々ですが、対策を行う前にきちんと空室になる原因を分析し、最適な空室対策を行うことが大切です。
「空室がなかなか埋まらない」というときは、賃貸管理会社の変更を検討してはいかがでしょうか。
(1)管理代行型の賃貸管理会社
入居率90%未満の場合は管理費0円になる賃貸管理会社です。入居率にコミットして管理費が発生するため、空室が長期化しているときには賃貸経営に関して最適な提案を受けることができます。
入居率が下がっているのに管理手数料が変わらないなど、「毎月の管理手数料が腑に落ちない」という方は現在の管理会社と比較してみてはいかがでしょうか。
(2)サブリース型の賃貸管理会社
築20年以上経過している中古物件でもサブリース契約が可能な賃貸管理会社です。築古、駅から距離あり、空室率が80%、など普通のサブリース会社との契約が難しい物件でも取り扱いしています。
空室が増えてサブリース契約を解除されてしまった、などお困りの方はお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。