株式投資を和るにあたって、企業の格付けが注目されるようになってきました。
なぜ、投資家は株を買おうと思っている企業の格付けが気になるのでしょうか。
それは、企業の格付けと株価には深い相関関係があるからです。
単純に、
- 「格付けアップ=株価上昇」
- 「格付けダウン=株価下落」
と考えて良いような関係性があるので、格付けに注目しておけば株価の動きを察知することができるというわけです。
企業の格付けというと
- 「ムーディーズ」や
- 「スタンダード&プアーズ(S&P)」
などが有名ですが、これらはアメリカやイギリスといった欧米の格付け機関です。
これらだけでなく、日本国内には日本資本の格付け機関もあります。
格付けは「AAA」や「AA」といったように記号で示されますが、これらの情報を知る方法をご存知でしょうか?
いざ考えてみると、どうやって調べるのかよく分からないという方が多いのではないでしょうか。株価との相関関係がある以上、投資家としては企業の格付け情報を調べる方法を知っておきたいところです。
そこでこの記事では、
- 企業の格付けと株価の相関関係
- 企業の格付けの基本
- 主な格付け会社
- 実際に企業の格付け情報を調べる手順
などの情報を順に解説していきます。
「企業の格付け情報を株取引に役立てたい」という方にはきっと満足していただける内容なので、ぜひ最後までお付き合いください。
株式投資について詳しく理解したいとお考えの方は、下記記事もぜひ併せてご参照ください。
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1、企業の格付けを知ると投資成績が向上する?
企業の格付け情報と株価には、相関関係があります。その典型例をご紹介するとともに、買った株が無価値になってしまうリスクを察知できるメリットなどをご紹介しましょう。
(1)格付けが引き下げられた企業の株価は下落する
後述しますが、企業の格付けとは「債務の返済能力」を評価するものです。債務の返済能力が落ちるということは経営状態が思わしくないことの表れなので、格付けが引き下げられると、それが株価への下落圧力になります。その典型的な例が、2018年2月に格付けが引き下げられた東芝(6502)の株価です。
以下は、東芝株の株価推移です。
赤い色をつけたところが、格付け引き下げの影響を受けたと思われる時期です。2018年2月からジリジリと値を下げ、一度は上げたもののさらに下落をした上で底値をつけました。
これだけの大型株で底値をつけるほどの下落が起きたということは、かなりの株主が東芝株を手放し、さらに多くの投資家が信用売りを仕掛けたことが窺えます。
(2)格付け情報から「株が紙切れになるリスク」を察知できる
本来、企業の格付け情報は債務の返済能力に対する評価です。債務不履行のリスクが高まると格付けが引き下げられるため、格付けが低くなるほど債務の不履行=倒産のリスクが高まっていることを示しています。
後述しますが、ムーディーズの評価で「CCC」以下は債務不履行の可能性が示唆されるため、一般的に投資には不適格だとされています。
いくら株価が安いと言っても、ボロ株の中には倒産リスクが高まっている銘柄もあるでしょう。そんなリスキーな銘柄を避けるためには、格付け情報が役立ちます。
(3)長期投資に格付けチェックは欠かせない
長期間にわたって株を保有するということは、その企業と長らく運命を共にするということでもあります。その際にも企業の格付け情報は倒産リスクを察知するのに役立つので、短期売買よりも長期保有を目的とした株式投資をするのであれば、格付け情報はより重要になります。
2、企業の格付けに関する基礎知識
それではまず、企業の格付けとは何なのかという基本から解説していきましょう。株式投資家が知っておくべき情報だけに絞ってまとめました。
(1)企業の格付けとは?
すでに触れてきていますが、企業の格付けとは「債務の返済能力に対する第三者機関の評価」です。つまり、その企業と取引をしても安全か、その企業の債券を持っても大丈夫か、さらにはその企業の株を買っても大丈夫かという判断材料になります。
このような情報を得るには財務の知識を必要としますが、格付け情報は誰が見てもすぐに分かるように記号化されているところが大きな特徴です。
(2)格付け会社とは?
専門の知識を駆使して企業の債務返済能力を評価する機関のことを、格付け会社といいます。アメリカの「ムーディーズ(Moody’s)」やイギリスの「スタンダード&プアーズ(S&P)」がとても有名ですが、日本国内にも「日本格付研究所(JCR)」や「格付投資情報センター(R&I)」といった格付け会社があります。
いずれも第三者の立場として公平な視点で格付けをしています。そうでないと格付け会社同士の競争に勝ち残れないので、原則としてどの格付け会社も全力で企業の実力を評価していると考えて良いでしょう。
(3)格付け記号の見方
格付け会社によって若干の違いはありますが、おおむねアルファベットのAからDまでの記号を使って格付けが表現されています。最も良い評価から順に並べると、以下のようになります。
- AAA、AA、A 無事に支払われる可能性が高い
- BBB、BB、B 現在は問題ないが将来は分からない
- CCC、CC、C 債務不履行の可能性があり
- D すでに債務不履行をしている
Dはすでに債務不履行になっているので投資対象として論外ですが、Cランクも基本的には危険であるという判断が妥当です。
格付け会社によっては「AAA」を「Aaa」と表現したり(ムーディーズ)、それぞれの格付けの中に「+」や「-」を加えることで細かく格付けが分類されています。
株式投資家はあまり細かい分類まで知っておく必要はないと思いますので、「Aに近いほどランクが高く、-より+の方が評価が上」と理解しておけば問題ないでしょう。
(4)格付け情報を株式投資に役立てるには
株式投資家にとって、企業の格付けは株価に直結する情報という認識です。格付けが高ければリスクが低く株を買いやすい、低ければリスクが高いものの株価は安くなるという相関関係が成り立ちます。
冒頭の東芝株の事例では、格付けが引き下げられたことが売買のチャンスとなりました。すでに出ている格付け情報よりも、むしろ格付けが引き上げられたり引き下げられたりと変動があった時に材料視されやすい傾向があります。
格付けが変動した時にはニュース報道があったり、格付け会社のサイトで告知されたりするので、こうした情報をチェックしていると売買チャンスが多くなります。
3、国内の企業の格付けを知るには?
日本国内で利用しやすい主な格付け会社を、4社ご紹介します。
(1)ムーディーズ・ジャパン(Moody’s)
日本でもおなじみの、とても有名な格付け会社です。本社はアメリカで米国企業などの格付けを行っており、こちらはその日本法人です。有名な格付け会社であり投資家も使いやすいので、「4、格付け会社の情報から投資の安全性を調べる方法」でその使い方を解説します。
- ムーディーズジャパン
HP:https://www.moodys.com/pages/default_ja.aspx
(2)スタンダード&プアーズ日本(S&P)
前項のムーディーズと並び、世界的に有名な格付け会社です。本社はアメリカで、規模的に見ると世界最大手です。
- スタンダード&プアーズ日本
HP:https://www.standardandpoors.com//ja_JP/web/guest/home
(3)日本格付研究所(JCR)
上記2社とは違い、日本国内資本の格付け会社です。公式サイトでは無料でもかなりの情報を見ることができます。
- 日本格付研究所
(4)格付投資情報センター(R&I)
前項と同じく、日本国内資本の格付け会社です。同社の特徴は日本経済新聞社の子会社であることです。それゆえにニュース配信も頻度が高く、情報収集源の一環としてチェックする価値があります。
- 格付投資情報センター
HP:https://www.r-i.co.jp/index.html
4、企業の格付け情報から投資の安全性を調べる方法
実際にムーディーズと格付投資情報センターの2社を使って、格付け情報を調べてみましょう。いずれも無料で調べることができるので、方法を覚えておいて損はないと思います。
(1)格付け情報収集の準備
最初に、ムーディーズと格付投資情報センターのそれぞれで情報収集の準備をしましょう。ムーディーズジャパンでは会員登録が必要なので、会員登録をします。この会員登録は無料です。
- ムーディーズジャパン 会員登録ページ
必要事項を入力して送信すると入力したメールアドレスに登録用のURLが届くので、そこにアクセスして登録完了となります。
格付投資情報センターは会員登録など不要なので、そのままトップページにアクセスします。
- 格付投資情報センター
HP:https://www.r-i.co.jp/rating/index.html
(2)調べたい企業を検索する
それぞれの格付け会社で東芝の格付けを調べてみることにしましょう。以下はそれぞれの手順です。
①ムーディーズジャパン
会員ログインの上、トップページ左上にある検索窓から調べたい企業名を入力します。
出典:https://www.moodys.com/pages/default_ja.aspx
「東芝」と検索した結果、以下の結果が表示されました。ここで「株式会社東芝」をクリックすると格付け情報が表示されます。
なお、上のタブにある「レポート」をクリックすると、東芝の格付けに関する詳細のレポートを見ることができます。
長期格付けの欄を見ると、「B1」とあります。これがこの調査時点の東芝の格付けです。
②格付投資情報センター
格付投資情報センターは特に会員登録などが必要ないので、そのままトップページの検索窓に調べたい企業名を入力します。
出典:https://www.r-i.co.jp/rating/index.html
ここでも東芝を検索してみたいと思いますので、検索窓に「東芝」と入力して検索ボタンをクリックします。
すると、以下の格付け情報が表示されます。
こちらでは東芝の格付けが「BB+」と表示されました。ムーディーズと表記のされ方は違いますが、Bランクの上の方に格付けされているということでおおむね共通しています。
(3)表示された格付情報から信用度を読み解く
「2、(4)格付け情報を株式投資に役立てるには」のところでは格付け情報を株式投資に役立てる方法として、格付けが上がったり下がったりと変動した時に注目するべきと述べました。
上記2社の格付け情報ページでは格付けがどのように変化したのかを知ることもできるので、特に低い格付けから上がってきた点に注目したいところです。なぜなら、格付けが引き上げられたという情報は株価上昇の材料となるからです。
まとめ
本来は債務の返済能力を評価する企業の格付けを、株式投資に役立てるという視点で解説をしてきました。企業の格付けについては何となく知っていたという方の中には、点と点がつながったという方も多いのではないでしょうか。
ここで解説したムーディーズや格付投資情報センターの情報を使えば無料で格付けを知ることができるので、今後の株式投資にぜひ役立ててください。