住宅ローンの返済が完済したら、必ず抵当権抹消の手続きを行う必要があるのでしょうか。
結論から申し上げますと、住宅ローンを完済すれば抵当権は事実上消滅します。しかし、抵当権は自動的に抹消されるわけではないので、不動産の売却などの場合、抵当権抹消の手続きを行う必要があります。
そこで今回は、自分でも抵当権抹消の手続きができるために知っておくべき知識を下記にて分かりやすくまとめました。
- 住宅ローンを完済したら抵当権の抹消が必須?
- 自分で抵当権抹消登記を手続きする時の流れ
- 自分で抵当権抹消登記を手続きする時の費用
- 事前通知制度とは?
抵当権抹消の手続きで悩まれている方のご参考になれば幸いです。
1、住宅ローンを完済したら抵当権の抹消が必須?
抵当権とは、不動産を担保に住宅ローンを受ける時に設定される担保権のことを言います。
住宅ローンを完済したら、この抵当権を抹消する手続きは必須でしょうか?
(1)そもそも抵当権抹消とは?
抵当権抹消とは、住宅ローンを受ける時に設定した抵当権を抹消登記して、不動産の担保を外す手続きのことを言います。
住宅ローンが完済されたら、抵当権は事実上消滅しますが、登記されている抵当権は自動的には抹消されるわけではないので、所有者が申請人となり「抵当権の抹消登記」手続きを行う必要があります。
(2)抵当権抹消登記を放置したらどうなる?
抵当権抹消登記をしなくても、法律的に問題はありません。
しかし、不動産の売却などをする場合、抵当権抹消する必要があります。
また、ローン完済に関する金融機関が発行する「代表者事項証明書または登記事項証明書」の
- 有効期限は発行日から3ヶ月
となっているため、有効期限が切れてしまうと使えなくなりますので、従って、書類を届く次第に抵当権抹消登記の手続きをするようにしましょう。
(3)抵当権抹消登記の手続きは自分でもできる?
抵当権の抹消登記手続きには、聞きなれない書類や手続きの流れがあるので、初めての方には少し煩雑に感じるかもしれませんが、自分でもできる手続きです。
以下にてご自身で手続きする場合に必要な書類や手続きの流れなどについて書いていきますので、参考にしてみて下さい。
2、自分で抵当権抹消登記を手続きする時の流れ
まず、自分で抵当権抹消登記をする場合の流れをみてみましょう。
- 債権者となる金融機関から手続きに必要な書類が届く
- その他書類を準備する
- 申請先となる法務局を調べる
- 法務局にて手続きを行う
- 登記が完了後法務局にて書類を受取る
では、それぞれについてみてみましょう。
(1)債権者となる金融機関から手続きに必要な書類が届く
住宅ローンを完済したら、債権者となる金融機関から以下の書類が届きます。
- 登記済と捺印されている「抵当権設定契約証書」
- 抵当権が解除したことを証明してくれる「抵当権解除証書または弁済証書」
- 金融機関の「代表者事項証明書または登記事項証明書」
- 金融機関の「委任状」
なお、金融機関から預かった書類の中に下記2つの書類の空欄を記載する必要があります。
- 抵当権が解除したことを証明してくれる「抵当権解除証書または弁済証書」
項目 | 記載内容 |
抵当権抹消の日付け | 返済の最終引き落としの日にちを記載する ※分からない場合、金融機関に問い合わせて下さい。 |
物件(不動産) | 登記済証の不動産情報を記載する ※行政区画の変更により登記簿の表示が変更になる場合は、登記簿を取り寄せする必要がある。 |
登記簿にて確認をする必要がある場合、パソコンから簡単に取得することができますので、必要な方は活用してみて下さい。
- 金融機関の「委任状」
項目 | 記載内容 |
受任者 | 登記簿上にある物件所有者の住所氏名を記入する |
抵当権抹消の日付け | 返済の最終引き落としの日にちを記載する ※分からない場合、金融機関に問い合わせて下さい。 |
委任日 | 返済日以後であれば問題ない ※念のため、抵当権の解除と弁済日を同じ日付の方がいい |
(2)その他書類を準備する
上記金融機関から届いた書類の他に、以下の書類も準備しておきましょう。
「抵当権抹消登記申請書」の記載方法は以下の一覧表を参考にしてみて下さい。
項目 | 記載方法 |
目的 | 「抵当権抹消」と記載する |
原因とその日付 | 原因:債務を完済して抵当権が消滅した |
抹消すべき登記 | 登記簿の「受付年月日、受付番号」にて確認することができる ※登記簿がない場合、抵当権設定契約書の登記済の印鑑の漢数字から確認ができる |
権利者 | 登記簿上と同じ住所氏名を記入する |
義務者 | 金融機関の本店・商号・会社法人などの番号、代表取締役を記入する ※借入時と商号など変更になった場合、現在の情報を記載する |
申請年月日と申請する法務局 | 登記申請書を提出する日付と提出する法務局を記載する |
申請人兼義務者代理人 | 登記簿上にある所有者の住所氏名を記載する |
不動産の表示 | 不動産を記載する |
なお、具体的な記載内容は「抵当権抹消登記申請書(記入例)」を参考にしてみて下さい。
もし、分からないところがありましたら、法務局の相談コーナーで確認してから記入するようにしましょう。
(3)申請先となる法務局を調べる
抵当権抹消登記の手続きは、その不動産の所在地を管轄する法務局になります。
管轄法務局が分からない方は、こちらのページから確認してみて下さい。
(4)法務局にて手続きを行う
手続きに必要な書類が整いましたら、法務局にて手続きを行いましょう。
書類の準備漏れにならないよう、「チェックリスト」を活用してみて下さい。
法務局の営業時間は
- 月曜日〜金曜日 8:30〜17:15
となっています。
なお、法務局によって相談は予約制となっているところもありますので、相談したい方は事前に確認されるといいでしょう。
特に不明点がない場合、郵送にて書類を送付することも可能です。
(5)登記が完了後法務局にて書類を受取る
申請手続きの時に、「登記完了日」も忘れずに確認するようにしましょう。
書類の受取を代理してもらう場合、
- 登記申請書に使われた印鑑
- 委任状
- 代理人の身分証明書
を用意するようにしましょう。
なお、申請書類に不備があって再度手続きを行う必要がある場合は、「登記申請書に使われた印鑑」が必要になりますので、忘れずに持っていきましょう。
(6)オンラインにて申請することもできる
抵当権抹消登記は、法務局に出向くのと郵送の他に、オンラインにて手続きをすることもできます。
オンラインにて申請する場合、大きく以下の流れになります。
- 申請用総合ソフトをダウンロードする
- ソフトを起動し、ログインする
- 申請情報を作成する
- 添付情報を添付する
- 電子署名をする
- 申請情報を送信する
- 受付された通知を確認し、ネットバンキングにて登録免許税を納付する
- 添付情報を管轄登記所に提出する
- 登記が完了次第に管轄登記所から電子公文書が届く
なお、オンラインにて申請する場合詳しくは「登記・供託オンライン申請システム」をご参照下さい。
3、自分で抵当権抹消登記を手続きする時の費用
では、自分で抵当権抹消登記を手続きする場合の費用はいくらでしょう。
大きく以下の3つの費用がかかります。
- 登録免許税
- 登記事項証明書
- 交通費などの実費
では、それぞれについてみてみましょう。
(1)登録免許税
登録免許税は、不動産1件につき「1,000円」になります。
例えば、一戸建ての場合、「土地+建物」になりますので、登録免許税は「2,000円」になります。
なお、ここで注意して頂きたいのは、「土地が複数」に分かれている場合、件数ごとにカウントされますので、抵当権設定契約書の「物件の表示」にて確認するようにしましょう。
不動産の件数をきちんと確認し、法務局で収入印紙を購入する形で支払います。
(2)登記事項証明書
抵当権抹消されていることを証明してくれるのが「登記事項証明書」となります。
不動産1件につき「600円」になります。
(3)交通費などの実費
最後に実際に法務局に行った時の交通費や郵送費などの実費がかかります。
(4)シミュレーション
例えば、戸建て(土地+建物)を自分で抵当権抹消登記をした場合、
- 登録免許税:2,000円
- 登記事項証明書:1,200円
- 郵送費などの実費:1,000円
合計して「4,200円」で手続きができてしまいます。
(5)司法書士に依頼するメリット・デメリット
仕事が忙しい方や、慣れない書類を作成するのに手間を感じる方もいらっしゃるでしょう。その場合、専門家である司法書士に手続きを依頼することを検討してみてもいいでしょう。
司法書士に手続きを依頼するメリットとしては、自分で書類を用意する手間を省くことができ、効率よく抵当権抹消することができます。
一方、デメリットとしては、司法書士の報酬がかかることです。
一般的には抵当権抹消登記の報酬は「1万円」前後が相場のようです。日本司法書士会連合会が会員向けに実施した地域別の報酬費平均アンケートの結果がありましたので、対象となる不動産エリアの司法書士報酬を参考にしてみて下さい。
4、事前通知制度とは?
抵当権抹消登記に伴って金融機関から受け取る3種類の書類のうち、
- 抵当権設定証書又は登記識別情報
は再発行されない書類です。
万が一上記の書類を紛失した場合、法務局のほうから金融機関に「抵当権の消滅に間違いがないか」の確認を行ってくれます。それを「事前通知制度」と言います。
その確認のやり取りは郵送で行われるため、一定の期間を要することを覚えておきましょう。
まとめ
今回は抵当権抹消登記の手続きを自分でする時の流れや費用について書きましたが、いかがでしたでしょうか。
抵当権抹消登記の手続きは難しそうなイメージがありますが、実際に準備する書類も少なく、初めての方でも簡単にできてしまいます。
この記事が抵当権抹消登記の手続きを自分で行うことを検討されている方のご参考になれば幸いです。