今、地方の不動産投資に注目が集まっています。都内の物件の高騰や地方都市の人口増加などにより地方都市の物件を購入して不動産投資をはじめる人が増えています。
今回は地方の物件購入の基礎知識と物件の探しかたを解説します。
- 地方物件投資の基礎知識
- 資金が少ない人でもできる投資術
- オイシイ物件を探すポイント
- 成功のコツ
『不動産投資の教科書』地方の不動産投資について理解していただける内容となっています。初めての方も必読です。
不動産投資のバイブル
- 不動産投資に興味があるけど何から始めていいか分からない…
- 営業マンのいうことを鵜呑みにして失敗したくない…
- しっかりと基礎から学び、できる限りリスクを避けたい…
- 今は不動産投資の始めどきなのか?
- 安定収益を得るための不動産投資物件の選び方
- 不動産投資の失敗例から学ぼう
目次
1、地方物件を活用する不動産投資
(1)そもそも「地方」ってどこのこと?
不動産価格は需要と供給のバランスで決まるので、地方のとりわけ人口の少ないところに行けば行くほど価格は安くなります。しかし、山間部や過疎地などでは仮にタダ同然で物件を購入できたとしても入居者がいないので、投資対象としては不向きです。
ここでいう「地方」とは、5大都市以外の県庁所在地や、その周辺です。近隣に中規模以上の都市があってベッドタウン化している地域なども適格です。こうした地域にはいくつかの特徴がありますので、以下のチェック項目も参考にしてください。
- 地方都市、その周辺のベッドタウン
- アパート物件や単身者物件などもある
- 市町村合併で県庁所在地の自治体などと合併した自治体
- 近隣に大企業の工場や大学など集客施設がある
- 銀行や信用金庫の支店などが複数ある
過疎地や限界集落と呼ばれるような地域の物件はほとんど空き家ということも珍しくなく、どれだけ安くても賃貸需要そのものがありません。「地方」といってもこうした地域と人口がある程度密集している地域とでは分けて考える必要があります。
(2)不動産投資を地方物件でするメリット
地方での不動産投資のメリットは何といっても地価が安いので物件価格が安いことです。そこから派生して以下のようなメリットもあります。
- 物件価格が安い
- 都市部のように外国人投資家から注目されにくく価格が高騰していない
- 物件価格の安さゆえに利回りが高い(都市部の2倍も)
- 物件価格が安いので参入しやすい
- 不動産投資がうまくいかなくてもダメージが少ない
いずれも不動産の相場が安いことによるメリットです。
注目したいのは4つ目と5つ目のメリットで、不動産投資を始めたいと思っている初心者の方や「失敗した時が怖い」と不安をお持ちの方などにとって、物件価格が安いことは参入のしやすさに加えて、仮にうまくいかなかったとしても致命的なダメージにならないのは魅力です。
(3)不動産投資を地方物件でするデメリット
不動産投資を地方の物件で始めることのデメリットとしては、やはり人口減少や空き家の増加といった問題と無縁ではいられません。それ以外にも考えられるデメリットを挙げてみました。
- 空室リスクが都市部よりも高い
- 遠隔地の物件を所有する場合、管理が難しくなる
- 地域柄やエリアによっては融資がつきにくい場合がある
- 出口戦略を描く際の条件が不利になることがある
やはり人口が少ない地域に敢えて投資をするということで、空室リスクや出口戦略など、貸す時と売る時の条件が不利になりやすいのはデメリットです。それを上回るメリットがなければ意味がないので、投資妙味のある物件はある程度絞り込まれると考えて良いでしょう。
遠隔地物件の管理や融資の問題については、どこの物件を購入するかによって大きく事情が変わります。
(4)人口減少は不動産投資の前提条件|空き家増加を追い風にする
前項のデメリットでも触れましたが、日本の人口はすでに減少に転じており、これがV字回復する見込みはありません。緩やかに人口が減っていくことはすでに不動産投資の前提条件になっています。
こちらは総務省がまとめた、平成25年現在の空き家率推移です。右肩上がりで日本全国に空き家が増えていることが分かります。
出典:総務省統計局
これだけを見ると地方で不動産投資をしても魅力がないように思われるかも知れませんが、同調査でさらに内訳を見ると、面白い傾向が読み取れます。
出典:国土交通省
東京や大阪をはじめとする大都市圏では空き家率が全国平均を下回っているのは想像の通りですが、地方都市と見なされているような都市であっても空き家率が低い地域があることが分かります。
宮城県、山形県、茨城県、静岡県、沖縄県については5大都市圏ではないにもかかわらず空き家率が全国平均を下回っています。このように「地方だからどこも空き家だらけ」ではないので、地方での不動産投資はエリア選びが非常に重要なのです。
2、地方戸建て物件のメリット・デメリット
地方戸建て物件を投資対象とする場合、メリットやデメリットを把握しておくことが重要です。
(1)地方戸建て物件のメリット
価格が安い
地方の戸建て物件は都市部と比べて価格が安く、比較的手頃な価格で購入することができます。また、土地代も都市部に比べて格段に安いため、土地を含めた総資産価値が低く抑えられます。
安定した家賃収入
地方の戸建て物件は、都市部に比べて家賃が安い傾向がありますが、空室リスクが低いため、比較的安定した家賃収入が期待できます。
自己利用の可能性
地方戸建て物件は、将来的に自己利用することもできます。都市部と比べると自然環境も良く、生活コストも低いため、将来的に移住することを考えている方にとっては魅力的な投資対象となります。
地方戸建て物件のデメリット
立地条件
地方の戸建て物件は都市部に比べて交通アクセスが悪かったり、周辺の施設が少なかったりすることがあります。
また、地方特有の気候や地形などの問題もあります。
管理の手間
地方の戸建て物件を購入する場合、管理上の問題があることがあります。地方によっては、管理会社が少ないため、物件管理や入居者募集に苦労することがあります。
価格の下落
地方の不動産市場は都市部に比べて価格の低迷が続くことが多いため、購入時のリスクもあります。また、将来的にも価格が上昇する可能性が低いため、投資としての魅力に欠けるという側面もあります。
投資対象として選ぶ際には、自身の目的や将来的な利用計画、市場動向などを総合的に判断することが大切です。
3、資金が少なくても「地方物件」なら不動産投資を始められる
(1)年収300万円サラリーマンも不動産投資を始められる
少額からでも不動産投資を始められるのが地方の不動産投資の大きな魅力であると述べてきましたが、それでは年収300万円の人が不動産投資を始める現実味について考えてみましょう。
少額投資を始める人の場合、自己資金もそれほど用意できないケースも多いと思います。
自己資金ゼロと50万円のケースで岡山県の区分マンションについてシミュレーションしてみます。
(2)自己資金ゼロでも年間約21万円のキャッシュフロー
自己資金ゼロで190万円の区分マンションを購入、諸経費などは物件価格の10%、ローン金利は3%、返済期間は15年と設定しました。
家賃は3万2,000円で管理費は6,000円のマンションなので、入居者から預かった6,000円はそのまま管理組合に支払うので差し引きゼロという計算です。
15年ローンの毎月返済額を計算すると、14,434円となりました。
よって、年間キャッシュフローは
(家賃32,000円-返済14,434円)×12ヶ月= 210,792円
となりました。
自己資金ゼロ、ローン返済をしても年間約21万円の収入となることが分かりました。
(3)自己資金50万円なら年間約20万円のキャッシュフロー
次に、自己資金を貯金から50万円捻出できた場合も計算してみましょう。その他の条件はすべて同じである想定でローン返済額を計算すると、毎月の返済額は10,981円という計算になりました。
これにより年間キャッシュフローは、
(家賃32,000円 - 返済10,981円) × 12ヶ月 = 252,228円
先ほどの自己資金ゼロと比べると年間で4万円ほどの違いが出ました。しかし、不動産投資全体で見るとそれほど大きな差ではないので、格安の地方物件であれば自己資金ゼロでも十分投資に値するだけのシミュレーションが成り立つことがお分かりいただけたと思います。
4、地方物件の探し方
(1)地方物件でする不動産投資の最大のポイントはエリア選定
地方での不動産投資ではエリア選定がすべてのカギを握っていると言っても過言ではありません。地方都市というだけでは日本全国に数え切れないほどあるので、その中からいかにお買い得物件のあるエリアを見つけ出すかが地方物件投資の成否を分けます。
先述したチェック項目について、個別に解説します。
①地方都市、その周辺のベッドタウン
5大都市圏以外の県庁所在地や有力な地方都市および、その周辺が有望です。地方でありながらある程度の人口流入が見込まれ、賃貸需要が大きく落ち込むリスクが低いからです。
地域によっては郷土愛がとても強いところがありますが、そんな県民性も地元在住志向につながるので、不動産投資にはプラス要因です。
②アパート物件や単身者物件などもある
地方の風景を思い浮かべると大きな戸建て住宅を連想しがちですが、戸建て住宅しかないような地域は賃貸需要が見込めないので不動産投資には不向きです。戸建て住宅がたくさん建っているように見えて実は空き家が多いということも考えられるからです。
アパートやマンションなどの集合住宅、また単身者向けの物件などがあるエリアだと賃貸需要があることを示しているので、こうした地域がオススメです。
なお、区分マンション1戸だけ投資される場合、万が一空室になると収入がゼロ円になりますので、出来る限りエリアを分散して複数を持たれるといいでしょう。
③市町村合併で県庁所在地の自治体などと合併した自治体
平成の大合併と呼ばれる市町村合併によって、県庁所在地などの地方都市と合併した周辺自治体があります。中には大阪府堺市や静岡県浜松市といったように政令指定都市に移行する要件を満たすために周辺自治体と合併をした例もあります。
こうした市町村合併は住所の名前が変わるだけでなく、不動産投資にも影響をもたらします。これまで「〇〇郡〇〇町」「〇〇村」だったような地域が地方の中核的な都市の一部になるのですから、それによって都市開発が進む例もあります。
④近隣に大企業の工場や大学など集客施設がある
大企業の大きな工場や大学などが郊外に進出する例は、バブル期に多く見られました。これから新たに工場が進出することは以前ほど多くはありませんが、製造業の国内回帰など一部では追い風も吹いているので、これまで何もなかったようなところに工場や大学などが進出してきたエリアは狙い目です。
⑤銀行や信用金庫の支店などが複数ある
都市部とは違って地方では金融機関の数も少なくなります。それぞれの地域には有力な地方銀行や信用金庫など地場の金融機関がありますが、こうした金融機関が「一党独裁」のように力を持っていることは、不動産投資においてリスク要因です。なぜなら、その金融機関の経営環境や方針次第で融資の審査が大きく影響を受けるからです。
都市銀行や他地域の有力な地方銀行の支店があるなど、「一党独裁」の勢力図になっていないことは、1社の思惑だけで融資審査が影響を受けにくいので投資環境が良いと判断できます。
主要駅の駅前にどんな金融機関の支店が軒を連ねているか、実際に歩いてみてチェックしてみましょう。
(2)「地方」と「田舎」は違う
地方という言葉のニュアンスから、田舎の田園風景や連なる山々を想像する方も多いと思います。しかし、不動産投資において「地方」と「田舎」は大きな意味の違いがあります。
田舎とは人口が極端に少ない過疎地も含まれる地域であり、過疎や空き家問題が顕在化しているところには不動産投資のマーケットが存在していません。地方という言葉には「首府以外の地域」という意味があるように、首都圏をはじめとする大都市圏ではないところと解釈するべきです。
大都市圏以外にも地方都市と呼ばれる都市部はあるので、そういった地域が地方物件投資の対象地域だとお考えください。
(3)土地勘があるエリアに限定する
地方の出身で今は大都市圏に住んでいるという人も多いですが、そんな人が地方で不動産投資を検討するのであれば、迷わず出身地の物件を検討するべきです。なぜならその地域に土地勘があり、家賃の相場観なども自然に備わっているという大きなアドバンテージがあるからです。
その他には転勤が多い方であれば赴任したことがある街、結婚相手の出身地など、何らかの形で土地勘や縁がある街のほうが情報の質が高いため、全く知らない土地で不動産投資をするより成功率がかなり高くなります。
(4)空室率が全国平均以上で、高すぎないエリア
「人口減、空き家増加を追い風にする」でも解説したように、空き家問題が全国的なものであるとはいえ、実は地域間の格差がかなり大きいのが現実です。そこで不動産投資の対象として考えたいのは、空室率が「平均以上で、高すぎないエリア」です。
もちろん空室率が低ければ低いに越したことはないのですが、全国の空室率データを見ていると大都市圏の空室率が低い特徴が浮き彫りになっています。つまり空室率があまり低いと物件価格もそれなりに高くなるので、お得感を狙うのであれば空室率が全国平均以上でありながら、高すぎないことがちょうど良いラインになるかと思います。
(5)おすすめは相続物件
地方で空き家問題が顕在化しているのは、不要になっている不動産が多くなっているからです。ではどんな不動産が不要になっているのかというと、そのトップは相続物件です。それを如実に示しているのが、平成26年の実態調査結果です。
出典:国土交通省
空き家のうち、実に半分以上が相続によって取得した物件です。高齢になった所有者が相続物件をそのままにしていて、都会に出ていった子供世代が住む予定も特にないというのが、よくあるパターンだと思います。
地方都市の賃貸需要が見込める地域でこうした相続物件が売りに出されたら安く購入できる可能性が高いので、それは投資対象として魅力的だと言えます。
5、地方物件での不動産投資を成功させる3つのコツ
(1)管理会社、管理者との関係を重視する
地方物件に投資する場合、それが遠隔地であったり、あまり土地勘のない場所であったりすることもあるでしょう。その場合に重要なのが、現地で管理をしてくれる業者など協力者との関係です。
マンションやアパートであれば管理会社が相手となるのである程度ビジネスライクな付き合いができるかも知れませんが、戸建て住宅の場合は近所の人たちとの関係性も重要になることもあります。
相手が管理会社であっても、担当をするのは人間です。自分の目が行き届きにくい分をしっかり補ってくれるパートナーとの関係は大切にしたいものです。
(2)地方の物件だからといっても費用にはシビアになる
地方の投資物件は格安のものが多いのでついつい金銭感覚が大ざっぱになりがちですが、大都市であっても地方であっても不動産投資に変わりはありません。
安いと感じている物件価格であっても、そこからさらに安く買うための交渉をするのも大切です。安く購入できればそれだけキャッシュフローが良くなり、出口戦略も描きやすくなるのですから。
将来さらに人口が減ることを想定して家賃を下げるための競争力も、どれだけ物件を安く買えたかが勝負です。
(3)地元に溶け込む努力を惜しまない
不動産投資とは、購入した物件を中心とするその街への投資です。管理会社との関係づくりにも同じことが言えますが、その物件がある地元へうまく溶け込むことは経営上とてもプラスになります。
何か困ったことがあった時に動いてもらえるだけでなく、その地域だけにある情報は今後の不動産投資にも役立つものがたくさんあります。
「オーナーは東京にいて全く顔を出さない」と思われているような物件に対して地元の人たちが温かい目線を送ってくれることはないので、購入当初以外も定期的に顔を出したり、関係先への挨拶を欠かさないようにしておくなど、大家さんとしてできることはたくさんあります。
不動産投資ではこうした地道な努力が積み重なると大きな力になるので、特に地方での不動産投資では人のつながりを大切にしましょう。
まとめ
物件価格が安いことによる高利回り、健全なキャッシュフローなど、地方物件への投資にはたくさんの魅力があります。しかし、良いことばかりではなくリスクとして考えておくべきこともあります。それらを含めて地方での不動産投資はこういうもの、という情報を余すところなく解説してきました。
これを踏まえて地方の不動産投資をやってみよう!と思った方、やっぱり難しそうだからやめておこうと思った方、それぞれにとってメリットのある情報だと思いますので、納得のいく不動産投資の判断にお役立てください。