不動産投資を個人で行う際、多くの投資家が法人化を選ばない理由には様々な要因が存在します。税務のシンプルさ、低コストでの運営、柔軟な投資戦略の実施、そして財務透明性とプライバシーの維持など、個人としての投資がもたらすメリットは決して少なくありません。
この記事では、法人化しない選択をする具体的な理由と、それが投資成果にどのように影響を与えるかを詳細に解説します。
不動産投資のバイブル
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法人化は、費用負担と手続きに手間がかかります。その他に法人住民税の支払義務と税率がUPします。
1、不動産投資で法人化しない理由
(1)会社設立には、費用と手続きの手間がかかる
個人事業主の場合と違い、法人設立には、費用と書類作成の手間がかかります。
- 会社の概要を決める(基本情報)
- 実印の作成:数万円
- 定款の作成(公証役場)3万~5万
- 資本金の払い込み
- 会社設立に必要な書類を準備し登記申請(法務局):印紙代4万 登録免許税(株式会社)15万
株式会社を設立する場合、手続きに実費だけでも約22~24万円の費用がかかります。
金額の内訳は、収入印紙代(4万円)、定款の認証手数料(3~5万円)、謄本の発行手数料(約2千円)、登録免許税(一般的には15万円)です。ちなみに、合同会社は株式会社よりも手続きが簡素であるため、10万円ほどで設立できます。
会社の概要を決めたり、書類の作成、印鑑作成、公証役場提出、法務局への提出など最短でも1週間はかかりそうです。
書類作成は、専門的な言い回しもあり、はじめての方はさらに複雑で面倒に感じると思います。
(2)法人住民税の支払いと維持費が必要になる
法人化すると、赤字経営になったとしても一定の税金を納める必要があります。個人事業主は、赤字によって無税になることもありますが、法人住民税は必ず支払わなければなりません。
また、税理士、士業に対する顧問報酬、事務所を借りるなら賃借料等の経費も必要になります。
(3)長期保有後(5年以上)の売却時の税率がUPする
個人の不動産売却にかかる税金は、所有期間によって違います。
5年以下は短期譲渡所得、5年を超える場合長期譲渡所得となり、税率は以下のとおりです。
※復興特別所得税(2.1%)が含まれています
法人が不動産の売却時にかかる税率は、所有期間にかかわらず、実効税率33.58%のため、個人のほうが
それに対し、法人が不動産を売却する際にかかる税率は所有期間に関わらず、法人の実効税率が適用されます。先ほどご紹介した通り、法人税の実効税率は33.58%であるため、5年を超えて不動産を売却する際には個人の方が税金を抑えられます。
日本の不動産投資は長期保有により家賃収入を得る方法がメインとなっていますので、見逃してはならないデメリットといえるでしょう。
(4)法人化に途中で切り換えると余計な費用がかかる
そろそろ法人化に切り替えようと思ったとき、気になるのやはり手間と費用についてです。個人で取得した不動産を法人化するためには、名義変更の登記費用、さらに登録免許税、不動産取得税も納税しなくてはなりません。
はじめから法人化しておくことをおすすめします。
2、不動産投資で「法人化」のベストなタイミングは?
(1)個人と法人の税率を比較して法人化メリットが生じたとき
不動産投資家の「法人化」は、すべての人にメリットがあるとは限りません。さまざまな条件を比較してベストなタイミングで選択をできるようにしましょう。費用も手間もかかりますので慎重な判断をお願いします。
法人税の実効税率は33.58%です。税率だけをみると個人課税所得が900万円を超えるあたりから節税メリットのタイミングが見られます。ただし、費用負担もありますので、他の要素も確認していきましょう。
個人税率/所得税・住民税(東京都)
(2)不動産投資を本業としていくと決断したタイミング
不動産投資を本業としてやっていく決断をされたのであれば、法人化のタイミングです。個人より法人のほうが、金融機関からの信頼度もあがり、融資も受けやすくなります。
さらに、入居者、管理会社の信用度も向上し、不動産投資規模を拡大していくことも可能になります。
法人化すると今までより時間や会社運営の費用負担が増えます。
そのこともしっかり理解し、決断してください。
個人投資家必見!不動産投資で法人化についてのQ&A
Q1: 不動産投資を個人で行うのと法人で行うのでは、どのような違いがありますか?
個人投資では、所得が累進課税制度によって税率が上昇する一方、法人では法人税が適用されます。
一般的に、所得が高くなるにつれて法人化のメリットが強くなりますが、少額の投資では個人投資のほうが税務上のメリットが多いこともあります。
Q2: なぜ法人化を避けるべきという意見があるのでしょうか?
小規模な不動産投資の場合、法人設立に伴うコストや手続きの負担が大きく、利益を圧迫する可能性があります。特に不動産収益が安定しない段階では、法人化による節税効果が薄く、経営上の負担が先行することもあります。
Q3: 法人化によるデメリットにはどのようなものがありますか?
法人設立費用や維持費、決算や税務申告の手間が増える点が挙げられます。また、法人化することで金融機関からの融資が厳しくなる場合もあり、個人に比べて借入がしにくくなることがあります。
Q4: 法人化しないことのメリットは何ですか?
法人化しないことで、設立や運営のコストがかからず、個人の所得税控除が適用されるため、特に初期投資や小規模な投資では個人投資の方が有利になることがあります。
また、法人の場合と異なり、利益を自由に個人的に使用することができます。
Q5: どのような場合に法人化を考えるべきですか?
不動産投資の規模が大きくなり、年間の収益が高額になる場合は、法人化を検討することが有利になる可能性があります。
法人化することで税率が低く抑えられるほか、経費として計上できる項目が増えるため、長期的には節税効果が見込めます。
3、相続税時「法人化」のタイミング
個人事業主の場合は、個人名義の不動産に相続税、贈与税が課せられます。
法人化しておくと、代表者が亡くなった場合でも相続税や贈与税は発生しません。
節税対策になるので、早目に決断するのが良いと思います。
以下の記事で詳しく解説しています。
4、まとめ
不動産投資経営を「法人化」するタイミングをご紹介しました。
最後に法人化しない理由をまとめました。
- 税金面のメリットが少ない – 法人化しても個人投資家に比べて税金の節約が少ないケースがある
- 設立・運営コスト – 法人設立には初期費用や継続的な管理費用が必要
- 資本金の要件 – 法人化する際には一定の資本金が必要で、これが初期投資を増加させる
- 手続きの複雑さ – 法人の設立や運営には多くの手続きや法的要件が伴う
- 柔軟性の欠如 – 個人投資と比べて法人では資産管理や投資判断が制約されることがある
- 財務透明性の要求 – 法人は会計記録を公にする必要があり、プライバシーが減少する
- リスク管理 – 法人は個人よりも債務の責任が大きく、リスクが増大する可能性がある
本業にする決意ができたかたや相続など人生の節目に良いタイミングで決断できることが一番です。