これをお読みの方の中には、住宅ローンや借金などの担保にしていた不動産が、返済滞納により競売にかけられそうな状況にあるために、任意売却を検討されている方も少なくないでしょう。
しかし、任意売却について実はよく知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。任意売却を成功させるには、任意売却のメリットや費用についてきちんと知っておくことが重要です。
そこで今回は、
- 任意売却とは?
- 競売と比較したメリットとデメリットについて
- 任意売却はどこに売却依頼をするのか?
- 任意売却の際にかかる費用は?
- 任意売却にて不動産を売却する流れ
- 任意売却をしても残債(借金)が残ったら?
などについて書いていきますので、参考にして頂けると幸いです。
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目次
1、任意売却とは?
まず初めに、任意売却とはどういうことなのかを説明します。
任意売却を簡単に説明すると、なんらかの理由から返済が難しくなった不動産の債権が、金融機関などの保証会社に移った後に売却する方法のことを言います。
そもそも任意売却とはどのようなものでしょうか。
不動産を担保に住宅ローンや借金等を借りた債務者(住宅ローンなどの借主)が何らかの理由により返済を滞納してしまったとしましょう。
この場合、基本的には金融機関などの債権者はその担保にした不動産を差押えして裁判所に”競売”という申立てをすることになります。
そのようにして裁判所に不動産を競売にかけられる前に、債権者と話し合いとして、不動産会社などの業者を通じて不動産を売却することで、その売却資金を借金の返済に充てることができます。
これを任意売却と言い、「任売」とも呼びます。
2、競売とは?任意売却との違い
(1)競売とは
それでは次に競売について説明します。
競売とは債権者が不動産を強制的に売却してしまうことです。ここで、金融機関などの債権者がそんな勝手なことができるのかと疑問に思った方もいるのではないでしょうか。
競売は、なんらかの理由で債務者からのローンの返済が滞った時に可能な手段です。基本的にマイホームや投資用不動産などを購入する場合、その物件を担保としてローンを組むのが一般的でしょう。
そのため債権者は担保となっている物件を、裁判所を通して差し押さえることができるということになります。
(2)任意売却と競売の違い
任意売却も競売もなんとなく理解できたけど、具体的にどのように違うのかいまいち理解が難しいでしょう。
基本的な部分は同じですが、任意売却と競売を分ける大きなものは、債務者の意思が通るかどうかです。任意売却は文字通り”任意”であるため、あくまでも債務者の意思で売却することになります。
それに対して競売は債権者の意思で売却するため、債務者の意思が基本的には通りません。具体的には、売却価格がかなり低めに設定されてしまうことや、売却後の返済方法に検定券がありません。
この任意売却と比べた競売のメリット・デメリットに関しては、次章以降で詳しく解説します。
3、競売と比較した任意売却のメリットとは
競売を待つか、それとも任意売却をするのかと悩まれている方も少なくないでしょう。本章ではまず、競売と比較した任意売却のメリットについて説明します。
(1)市場相場に近い価格での売却ができる
任意売却は、競売に比べて市場相場に近い価格での売却が可能です。
任意売却での売却方法は、基本的には一般的な不動産売却の方法と同じであるため、競売による強制的な売却よりも相場は高くなります。
基本的に競売での売却の場合、市場価格の6~7割の価格でしか売却されません。これは、競売にかけられた不動産の情報は一部しか公開されないことや、入札者が内見をすることができないことなどが挙げられます。
競売よりも高い金額で売却できる任意売却であれば、より売却後の残債を減らすことができるでしょう。
(2)不動産売却価格から諸経費の支払いができる
マイホームなどの不動産は、売却するにあたって仲介手数料や税金などの諸経費が必要になります。
任意売却であれば、売却にかかる諸経費を不動産売却によって発生した売却費から支払うことができます。
これに対して、競売であればこれらの諸経費は自己資金で負担しなければなりません。ただでさえローンの返済が滞っているのにもかかわらず売却の諸経費を払うとなるとさらに借金が増えることでしょう。
預貯金がない場合でも、売却によって得た資金から諸経費を支払うことができるのは大きなメリットではないでしょうか。
(3)残債が残った場合、分割返済することができる
一般的に、不動産を売却した場合は残債を一括返済しなければなりません。任意売却であれば、不動産の売却額からローンを完済できない場合、残債を分割返済にすることができます。
本来であれば一括返済しなければならない残債も、分割払いで無理のない範囲で返済が可能となるので自己破産をする必要は必ずしもありません。
(4)周囲に知られることなく売却することができる
先ほども述べたように、任意売却は一般的な不動産売却とほとんど変わりません。そのため、周囲にローンの返済が滞ったために売却を余儀なくされたなどとバレることは基本的にはないと思って良いでしょう。
競売の場合、不動産情報はインターネットや新聞などである程度の情報が公開されてしまうため、周囲の人に知られてしまう可能性があります。
もし任意売却をするか迷っている段階で競売が開始しても、任意売却に関する合意を得ることができれば競売は取り下げることができるので安心してください。
(5)家賃を支払うことで住み続けられる場合がある
任意売却にしろ競売にしろ、マイホームを売却するということは引越しをしなければならないということです。しかし、なんらかの理由で引越しはしたくないという方もいるでしょう。
任意売却であれば、身内や友人、はたまた投資家の方などに対象不動産を買い取ってもらい、毎月家賃として返済していく形をとって賃貸戸建てとしてそこに住み続けるという方法があります。
競売の場合は、裁判所から退去命令が下されるため、債務者の意思は関係なく退去させられてしまいます。
(6)債務者の意思で売却を決めることができる
任意売却であれば、自分の意思で売却に関することを決定することができます。
自分に売却の決定権があるということは、売却金額の交渉が行えたり、売却(引き渡し)時期を調整することも可能です。そのため引越し先の確保をするための時間を設けることができるようになります。
競売であれば、債務者には売却に関する決定権はありません。売却に関する全てのことを裁判所が決定します。そのため、引越し先が決まっていないからと対象不動産に住み続けていると、不法占拠と見做されてしまうので注意しましょう。
4、競売と比較した任意売却のデメリットとは
一方、競売と比較した任意売却のデメリットとはどのようなものがあるでしょう。
以下で詳しく説明します。
(1)債権者から任意売却の同意を得られない場合がある
残債と市場価格の差が大きく開いている場合で、債権者からの同意を得られない可能性があります。
任意売却は比較的に市場価格と近い価格で売却できるため、できるだけ任意売却の同意を得るために、なるべく早めの依頼をしましょう。
早めに依頼することによって、依頼主が債権者に交渉する時間や機会が多くなります。
(2)任意売却をするには連帯保証人などの同意が必要
任意売却をするには連帯保証人の同意が必要となります。
そのため連帯保証人と連絡が取れない場合や、同意が得られない場合は任意売却をすることはできません。
それに対して競売であれば、強制的に裁判所が不動産の売却を行うため、連帯保証人の同意は必要ありません。しかし、これはあくまでも連帯保証人の同意は必要ないというだけであり、連帯保証人の義務がなくなったわけではないので注意しましょう。
つまり、債務者が結局競売後の残債を払えなくなればその負担は連帯保証人が負うことになります。
(3)任意売却する場合の依頼先がわかりにくい
任意売却をする場合の依頼先が分かりにくいという点もデメリットでしょう。
これに関しては、次章の「5、任意売却とはどこに売却依頼をすればよいのか」をご覧ください。
(4)住宅ローン滞納3ヶ月以上なると、信用情報機関のブラックリストに載る可能性がある
住宅ローンの滞納が3ヶ月以上となると、信用情報機関のブラックリストに載る可能性があります。と言ってもこれは任意売却に限った話ではないのでそれほど驚くようなデメリットでもないでしょう。
もちろん任意売却をせず競売を選択した場合でも、その時が滞納から3ヶ月以上過ぎているのであれば、信用情報機関に載る可能性があります。
信用情報機関に登録されてしまうと、数年間は金融機関から借入ができなくなるためくれぐれも注意しましょう。
(5)競売にかけられる期間内で売却できない場合がある
これは、任意売却をしていたのに結果として競売による売却が成立してしまうということです。
任意売却中でもローンの滞納が続いてしまっており、その期間が長くなっているのであれば、競売を申し立てられてしまう場合があります。
競売が申し立てられ、落札者が出た場合はもう任意売却をすることはできません。任意売却を申請しているからと安心するのではなく、しっかりとこのことを頭に入れておきましょう。
5、任意売却とはどこに売却依頼をすればよいのか
競売の場合、金融機関などの債権者から裁判所に競売の依頼をしますので、債務者には何も手続きすることなく物件を売却することができます。
一方、任意売却で不動産を売却する場合、債権者ではなく債務者自身で売却の対応をしなければなりません。
そして一般的に、任意売却の依頼先には大きく以下の2つの選択肢があります。
- (1)任意売却の専門業者に依頼する
- (2)弁護士や司法書士などの専門家に依頼する
では、それぞれについて詳しくみていきましょう。
(1)任意売却の専門業者に依頼する
任意売却は、債務整理の一種であり、不動産の専門知識の他に、債務整理に関する法律の知識や経験が必要になります。従って、一般の不動産売却で依頼する不動産会社ではなく、
- 債務者との交渉や手続きに経験豊富
- 買主探しの情報量やネットワークが広い
という条件を満たした任意売却の専門業者に依頼する必要があります。
また、任意売却の専門業者を探される際に、以下のポイントから選ぶようにしましょう。
- 会社の顧問弁護士に債務整理に強い弁護士がいるか
- 任意売却の実績が豊富か
など。
(2)弁護士や司法書士などの専門家に依頼する
任意売却は、債務整理に関する法律の知識や経験が必要なことから、弁護士や司法書士などの専門家に依頼される方も多いでしょう。
しかし、任意売却は債務整理の専門家だけでなく不動産の専門家も必要です。従って、不動産取引の実務などに関しては付き合いのある不動産業者へ依頼することがほとんどです。
弁護士や司法書士などの専門家に依頼する際にこの点についても注意しましょう。
(3)任意売却は債務者本人でもできるの?
一方、任意売却の手続きは債務者本人でもできるでしょうか。
実は、一般の不動産取引と同じように、任意売却も専門家に依頼せず個人で行うことができます。
しかし、任意売却は一般の不動産取引で必要となる、
- 購入予定者との交渉
- 売買契約書などの書類作成
- 決済手続き
などの作業を行う他にも、
- 金融機関などの債権者との交渉
などの不慣れな作業を行わなければなりません。
任意売却を専門家に依頼するか否かは、このような個人で行った場合にかなりの労力と時間がかかることを踏まえて検討されるとよいでしょう。
実際に任意売却を依頼する前に、まず無料相談を24時間対応してもらえる「全国個人再生支援機構合同会社」に相談してみましょう。
6、任意売却の際にかかる費用とはどのくらいか
競売の場合、裁判所にて売却の手続きを全て進めてくれるので、債務者は特に費用も支払う必要はありません。
一方、任意売却で売却を依頼した場合はどうでしょう。
結論から申し上げますと、任意売却の場合も、不動産売却価格から諸経費の精算が認められていることから、債務者は支払う必要はありません。
本来、任意売却でも一般の不動産取引と同じように以下の諸経費が発生します。
- 売買契約書に貼付する印紙代
- 抵当権抹消費用
- 不動産会社に支払う仲介手数料
など。
しかし、債務者が支払える能力はほとんどないということで、上記のように本来売主が支払うべき諸経費は支払わなくて済むとされています。
7、任意売却にて不動産を売却する流れとは
任意売却にて不動産を売却する際の流れについてみてみましょう。
大きく以下のような流れになります。
- (1)住宅ローンなどの返済が滞納したら、任意売却の検討をする
- (2)任意売却の依頼先を選定する
- (3)不動産の調査・査定をしてもらう
- (4)売却依頼先が決まったら、専任媒介契約を締結する
- (5)債権者などに任意売却の報告をする
- (6)債権者などの同意があったら、正式に販売活動を開始する
- (7)購入申し込みがあったら債権者などと交渉する
- (8)売買契約を締結する
- (9)決済
では、順番にみていきましょう。
(1)住宅ローンなどの返済が滞納したら、任意売却の検討をする
住宅ローンなどの返済が滞納始まると、その融資を受けている債権者から支払督促状などが郵送で送られてきます。督促状には、
- 返済方法の見直し
- 返済しないと不動産が競売になる
など警告文も含む大切な書類です。
督促状が届きましたら、返済方法に対して見直しした上、それでも返済が厳しい場合、「2、競売より任意売却の方がいい?競売と比較した任意売却のメリットとデメリットについて」を参考に任意売却を検討しましょう。
(2)任意売却の依頼先を選定する
上記「3、任意売却はどこに売却依頼をするの?」で書きましたように、売却の依頼先を検討することが必要です。
①任意売却の専門業者に依頼する場合
任意売却の専門業者は債務整理などの専門知識が必要なことから、依頼できる会社はけして多くはありません。
以下3つの任意売却の専門業者をピックアップしましたので、参考にしてみてください。
■ 任売市場
■ NBC不動産情報センター
■ 東京情報センター(株)
②弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合
一方、弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合、インターネットにて「任意売却 弁護士」などのキーワードで検索することができます。
以下、無料相談できる弁護士事務所を3つピックアップしましたので、参考にしてみてください。
■ 弁護士法人 ベリーベスト法律事務所
■ 弁護士法人リーガル東京
■ 弁護士法人 村岡総合法律事務所
(3)不動産の調査・査定をしてもらう
売却依頼先に不動産の調査や査定をしてもらい、自分の不動産の市場価値を把握しましょう。
(4)売却依頼先が決まったら、専任媒介契約を締結する
不動産の売却依頼先が決まりましたら、売却の依頼をするということで依頼先と専任媒介契約を締結します。
任意売却の場合、一般の不動産取引のように何社も同時に売却依頼することができないため、契約形態は「専任媒介契約」のみになります。
なお、一般の不動産取引で売却依頼をした際に締結できる契約形態については、「不動産を売りたい方必見!高額で不動産売買する方法」をご参照下さい。
(5)債権者などに任意売却の報告をする
専任媒介契約が締結されましたら、売却依頼先(専門不動産会社や弁護士・司法書士などの専門家)から債権者や連帯保証人などに対して任意売却の依頼を受けたことについて報告を行います。
また、不動産の売り出し価格についての交渉も行います。
(6)債権者などの同意があったら、正式に販売活動を開始する
債権者や連帯保証人などから任意売却の許可が出来たら、正式に販売活動が開始となります。
(7)購入申し込みがあったら債権者などと交渉する
購入希望者から購入申し込みがあれば、売買希望価格を元に債権者への返済配当契約書を作成して、交渉を行います。
返済配当契約書には、
- 売買価格
- 仲介手数料
- 引っ越し費用
などの金額を細かく記載しています。
(8)売買契約を締結する
債権者などから同意が得られれば、買主と売買契約を締結します。
その際、一般の不動産取引では、売主は買主から売買価格の1割前後の手付金をもらうことになりますが、任意売却の場合、その手付金も借金返済の費用になりますので、仲介業者が預かる形になります。
(9)決済
決済する場所は買主が融資を受ける金融機関の最寄りの支店で行います。
決済の際に、債権者や連帯債務者なども出席することになります。
8、任意売却をしても残債(借金)が残ったら?
任意売却にて不動産を売却しても残債(借金)が残ってしまうことも考えられます。
その場合、債務者の現在の収入や生活状況に応じて、無理のない範囲内で債権者と分割返済することを協議することができ、必ずしも自己破産する必要はありません。
分割返済が認められる場合、一般的には毎月5,000〜30,000円前後の返済額になることが多いようです。
一方、競売の後に残債が残ってしまった場合、一括返済のみになりますので、返済ができず自己破産せざるを得なくなる方が多いようです。
まとめ
今回は任意売却にて売却する場合の依頼先や流れなどについて書いていきましたがいかがでしたでしょうか。任意売却を成功させるため参考になれば幸いです。