• 不動産コラム
  • 2024/2/22

家族信託で不動産相続の不安を回避できる!信託不動産の売買と活用法

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不動産を所有されている方で将来相続が発生する見込みの方にとって、相続に関するお悩みは尽きないと思います。

最近よく聞かれるのが、「今は元気だが、もし認知症になったら不動産の管理や相続はどうなるのだろう?」という不安です。

自分が思い描いている相続を進めようにも、判断能力をなくしてしまうとそれができなくなります。

それに加えて、認知症になってしまったら財産の管理ができなくなってしまい、詐欺に遭って財産を騙し取られてしまうような事態も考えられます。

それ以前に、財産の管理ができなくなると認知症になった後の自分の生活を守ることはできるのか?といったように、考え始めるとキリがありません。

そんな不安を解消してくれる制度として、家族信託があります。

信頼できる家族や親戚に財産を信託しておくと、もし自分が判断能力を失っても信託を受けた人(受託者といいます)が信託をした時の意向通りに財産を管理してくれて、自分の生活に必要なお金もそこから出してもらえるように、段取りを組んでおくことができます。

将来相続が発生するような不動産をお持ちの方で、認知症になってしまった後の管理が不安な方、さらにそうなってしまった時に相続問題が起きないようにしておきたい方には、家族信託という方法があるのです。

今回は、

  • 不動産をお持ちなら「認知症対策」「相続トラブル」に家族信託が効く
  • 家族信託制度について概要をおさらい
  • 不動産の相続を控えている人に家族信託が適している3つの理由

など、家族信託についての基本を解説します。

また、すでに家族信託を利用している方の中には、「信託されている不動産を売買できるか」という疑問をお持ちの方もおられると思います。

そんな方々を含めて、家族信託と不動産の関係について解説していきたいと思います。








1、不動産をお持ちなら「認知症対策」「相続トラブル」に家族信託が効く

不動産をお持ちの方にとって、認知症対策や相続トラブル対策として、なぜ家族信託が良いのでしょうか。それを理解するための重要なポイントを解説します。

(1)家族信託なら認知症になっても不動産を管理できる

家族信託の大きなポイントは、不動産など財産を持っている人の状態に関係なく財産の管理ができることです。家族信託の仕組みについての詳細は「家族信託まとめ|基本からメリット&デメリット、具体的な手続き方法など」に詳しい解説がありますのでそちらをお読みいただくとして、ここでは「家族信託を利用すれば、自分が認知症など財産を管理できない状態になっても適切に管理することができる」とご理解いただければOKです。

(2)家族信託なら不動産を孫の代まで守っていける

親から子など直接のつながりがある親族への相続のことを、一次相続といいます。そして次に、相続財産を受け取った子が自分の子へ相続をすることを、二次相続といいます。このように1回目の相続を一次相続、2回目の相続と二次相続といいます。

二次相続はこれ以外にも、1回目が妻と子、2回目が孫というパターンもよくあります。

民法で規定された法的な相続や遺言書では、一次相続までしか意向を反映させることはできませんが、家族信託だと本人が亡くなった後も受託者が管理をするため、その人に二次相続の道筋を託すこともできます。

財産を子が相続した後で、その子がちゃんと財産を守ってくれるのか不安があるという場合は、家族信託によって相続をした子が勝手に財産を処分できないように信託をしておくことが可能です。

不動産は一度処分してしまうと、再び同じものを買い戻すことが困難です。特に不動産を子だけでなく孫の代まで承継していきたいという場合に、家族信託は有効です。

(3)家族信託なら不動産相続の問題を回避できる

遺産分割協議の結果によっては、相続人同士の共有名義で不動産を所有することもあります。不動産は分割が難しい資産なので、このようにやむを得ず共有名義になったというケースは多いと思いますが、共有名義だとその不動産を処分する際に全員の同意が必要になります。

この状態だと不動産を絶好のタイミングで売却しようとしても、同意が揃わなければ不可能です。せっかくのチャンスを逸してしまう可能性もありますが、家族信託にしておけば受託者の権限で売却が可能なので、より機動的な財産の管理が可能になります。

(4)しかし、家族信託されている不動産は売買しにくい?

受託者の判断で良いタイミングがあれば信託された不動産を売却できると前項では述べましたが、それには一定の条件が揃っている必要があります。家族信託は委託者(財産の所有者で管理を任せる人)の意向を反映するためのものなので、信託契約の内容によっては信託財産を勝手に売却することはできないことがあります。

家族信託されている不動産の売買事情については、「4、家族信託されている不動産は売買できるか」で詳しく解説します。

2、家族信託制度について概要をおさらい

この記事をお読みの方は、家族信託制度について何となくご存じだという方が多いと思います。それを踏まえて、簡単に家族信託制度の概要をおさらいしておきたいと思います。

(1)家族信託制度とは

家族信託とは、財産を所有している人が委託者となり、信頼できる家族を受託者として指定して、受託者に財産の管理を委託する制度のことです。この制度にのっとって家族信託契約を結べば、その契約内容が法的な効力を持ちます。

なお、家族信託には委託者と受託者の他に、受益者という当事者がいます。受益者とは信託財産による金銭的な利益を得る権利を持っている人のことです。

委託者が特定の受託者に不動産など財産の管理を任せたとすると、他の法定相続人から不満が出ることがあるかも知れません。しかし、家族信託では受託者以外の相続人も受益者として相続財産からの利益を得ることはできるため、権利が侵害されないようになっています。

(2)家族信託制度が設けられた社会的背景

家族信託制度が設けられた背景には、高齢化の進行によって認知症を発症する人が増えていることがあります。財産を持っている人が認知症になると、さまざまなリスクが生じます。

  • 判断能力がないために詐欺被害に遭って財産を取られてしまう可能性
  • 遺言を作成することもできなくなるため相続問題を自力で解決できない
  • 配偶者がすでに認知症、または唯一の相続人である子が障がい者で判断能力がない
  • 認知症になった後の自分の生活がどうなるのか心配

家族信託には、このような不安やリスクを解決する力があります。まだそれほど知られていない制度ではありますが、不動産など相続が発生するような財産をお持ちの方にはとても利用価値の高い制度だと言えます。

(3)家族信託のメリット

家族信託のメリットを整理すると、主に4つです。他にも派生的なメリットがありますが、特に財産のうち不動産の比率が高い方は、以下のメリットが問題解決に役立ちます。

  • 認知症対策になる
  • 委託者の権利保護(委託者が同時に受益者になることで判断能力を失っても生活が守られる)
  • 二次相続以降の財産承継に意向を反映できる
  • 受託者の権限で柔軟な財産の管理ができる

(4)家族信託のデメリット

次に、家族信託のデメリットもチェックしておきたいと思います。

  • 受託者を誰にするかで揉める恐れがある
  • 成年後見人と違って身辺の保護をする権限はない
  • 信託契約をした時と状況が変わっても信託の内容を変更できない

特に3つ目のデメリットが気になるところです。家族信託を発効させた時は本人(委託者)も元気なので、「万が一の時のため」というニュアンスが強いと思います。

しかし、委託者がすでに亡くなって次の二次相続を意識するような時期になると、家族信託を発効させた時とは状況が変わっている可能性もあります。そうなったとしても委託者はすでに故人となっているため、信託契約の内容を変えることができず、逆に足かせになってしまう恐れがあります。

(5)不動産をお持ちの方で、こんな人は家族信託を利用するべき

メリットとデメリットを踏まえて、不動産をお持ちの方の中で以下のような条件に合致する方が家族信託を利用するべきだと考えます。

“家族信託を利用したほうがいい?!”

①所有者が元気なうちはいいが、認知症などになった後の不動産管理が心配

②相続予定の不動産が相続人共有になる見込みで、それが原因で揉めそう

③不動産を相続予定の人がすでに認知症や障がいで判断能力がない

④孫の代まで不動産を売却せず守ってほしい

4番目の条件については、相続人である子が遠方に住んでいるなど疎遠になっているような場合を想定しています。不動産を相続してもすぐに売却して現金化する可能性があると考えられる時に、孫の代まで不動産の形で相続させるための信託契約をしておけば、子の代で勝手に売却してしまう不安を解消できます。

3、不動産の相続を控えている人に家族信託が適している3つの理由

特に不動産の相続を控えている人にこそ家族信託が役立つという理由を、3つのポイントで整理してみましょう。所有されている財産の大半が不動産という方は、いずれも必見です。

(1)不動産の形を変えず孫の代まで財産承継できる

すでに家族信託のメリットとして二次相続まで意向を委託することができるという解説をしてきました。このメリットはやはり、財産の大半が不動産であり、不動産のまま代々財産を受け継いでいってほしいと考えている人にとって意義があります。

不動産は一度売却してしまうと、同じ形で再び手に入れるのは極めて困難な資産です。そのため先祖代々受け継いできた土地などの不動産を安易に売ってしまうことに抵抗を感じる不動産オーナーはたくさんいます。

法律にのっとった相続だと不動産は遺産分割の対象となり、相続人の中にそれを売却してしまう人がいたとしても、それを止めることはできません。

その点、家族信託であれば不動産の形で承継していくことを受託者との信託契約で託しておけば、不動産の形でその次の世代まで引き継いでいくことができます。

遺言書を作成しても二世代先の相続(二次相続)までは意向を及ぼすことができないので、家族信託は不動産をお持ちの方のためにとても役立つ制度なのです。

(2)相続人同士で共有名義の不動産であっても柔軟に組み替え、処分ができる

不動産は簡単に分割することができない資産なので、所有している不動産の形状や状態によっては、相続人同士の共有名義で分割相続される可能性もあります。これだとそれぞれの相続人の権利が守られるため揉めにくいのですが、問題はその不動産を組み替えたり売却したりしたいということになった時です。

共有名義になっている不動産は名義人全員の同意がなければ何も手を加えることができません。相続人同士の関係が良好で、不動産の取り扱いについての意志が統一されていれば良いのですが、なかなかうまくいかないのも現実です。

そのような可能性がある場合には、最初から家族信託で不動産の管理を任せる人を受託者として決めておけば、その人が名義人となって不動産の組み換えや処分をすることができます。

ただし、これだと他の相続人にとっては受託者に財産の独り占めをされているような感覚になり不満が噴出しますが、他の相続人は受益者となるため、相続財産から得られる経済的メリットを受け取る権利があります。家族信託といえどもそれを侵害することはできないので、受託者と受益者を分けることで分割しにくい不動産の管理を一元化できるのです。

(3)所有者に判断能力がなくなっても自分の生活と不動産を守ることができる

不動産の所有者にとってのお悩みは亡くなった後にやってくる相続だけではなくなってきています。それというのも、存命のうちに認知症や病気などによって判断能力を喪失してしまうリスクが以前よりも高まっているからです。

判断能力を喪失すると、自分の意思表示も難しくなります。そんな時、自分の生活をちゃんと守ってくれるのか?という不安は必ず一度は脳裏をよぎることと思います。

家族信託で受託者に自分の生活を守ってもらうように信託契約をしておけば、自らが委託者であり同時に受益者となることで、判断能力や意思表示をする能力を失ってしまっても、受託者が自分の生活を守ってくれるので、こうした不安を解消できます。

4、家族信託されている不動産は売買できるか

すでに家族信託によって信託財産となっている不動産の取り扱いについて、「信託されている不動産を売買できるか?」という疑問にもお答えしておきたいと思います。

(1)信託内容に売買が含まれている場合

家族信託契約を発効させるのにあたって、信託契約書を作成します。その契約書にはどの財産を受託者に任せるのかという内訳が必ず記載されています。この内訳の中に該当する不動産が含まれている場合は、受託者の権限によってその不動産を売買することができます。

なぜなら、受託者は信託法上においてその不動産の所有者だからです。

(2)信託内容に売買が含まれていない場合

では、家族信託契約を結んだ時の契約書に該当の不動産が含まれていない場合はどうなるのでしょうか。この場合、信託財産になっていないので受託者であっても勝手に売ることはできません。

信託財産に該当の不動産が含まれていないということは、それも委託者の意思によるものと思われるので、受託者の判断で売買してほしくはないという意思表示の表れだと思います。

(3)信託内容に売買が含まれていない場合の不動産売買方法

前項のように信託契約書に含まれていない不動産を売買したい場合は、そのままでは売買ができません。では、その不動産をどうしても売買したいという場合はどうすれば良いのでしょうか。

その場合、取りうる方法は3つです。

①委託者と受託者の合意によって信託契約内容を変更して「売買」を追加する

②信託契約を終了させて旧委託者が自分の意思で売買する

③信託受益権を売買する

①と②については、いずれも現在の信託契約を変更もしくは終了させることで不動産の売買を可能にするという方法です。

③については、信託受益権という耳慣れない言葉が出てきました。信託受益権というのは、信託財産から得られる経済的なメリットを受け取ることができる権利のことです。信託財産の受益者に与えられる権利ですが、この権利は売買することができます。

つまり、不動産の売買ができなくてもその不動産から得られる収入の権利は売買できるということです。不動産の名義を変更することはできませんが、実質上その不動産に所有権を持っていることに近くなるので、どうしても必要が生じた場合は取りうる選択肢です。

ただし、信託受益権を取引するには当事者に「第二種金融商品取引業」の免許が必要になります。一般的な不動産業者が持っている資格ではないので、やはりかなりのレアケースであると考えたほうが良いでしょう。

まとめ

認知症対策や相続対策としての有用性が注目されている家族信託について、特に不動産をお持ちの方にとってのメリットや活用法を解説してきました。最後にはすでに家族信託を利用している方や関係者の方向けに、家族信託と不動産売買の関係についても解説しました。

家族信託と不動産の関係について2つの角度からの疑問にお答えできたと思いますので、ぜひ参考にしてください。

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