「1000万円で土地を売却したら、どのような税金がかかる?」
「1000万円で土地を売却した時にかかる税金はいくら?」
土地売却にかかる税金に対して、上記のような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
土地売却の際に発生する税金は、
- 利益が出た場合にのみ納めれば良い税金
- 利益が出なくても納める必要がある税金
の2種類に分けられます。
税金の計算方法に関しては、
- 土地を保有する期間
- 特例を適用できるかどうか
によって税率が大きく異なるので、きちんと知識を身に付けておかなければなりません。
そこで本記事では、
- 1000万円で土地を売却する際に発生する税金の種類
- 1000万円で土地を売却したら、いくら税金がかかるかのシミュレーション
- 土地売却にかかる税金の計算方法
- 土地売却にかかる税金を計算する上でよく出る質問
について詳しく解説します。
「不動産の売却全般について」「土地売却の際にかかる税金について」の記事も併せてご参照ください。
1000万円の土地売却でかかる税金は、所得税、住民税、印紙税、登録免許税の4種類です。税額は、利益の有無や土地の保有期間、特例を利用できるかどうかで変わります。
1、土地の売却で発生する税金は4種類
土地をはじめとする不動産の売却の際には、
- 所得税
- 住民税
- 印紙税
- 登録免許税
の4つの税金がかかります。
本章では、上記4種類の税金についてそれぞれ解説します。
(1)土地売却の際に発生した譲渡所得に対して課税される「所得税」
所得税は、土地売却にかかる税金の中で最も納税金額が大きくなる税金です。土地売却の際に発生した利益(譲渡所得)額に応じて、納税額が決まるという仕組みになっています。
税率は所有期間によって大きく異なります。所得税の税率については「2、(3)所有期間に応じた税率を譲渡所得に掛けて税額を求める」にて詳しく解説します。
(2)土地売却の翌年に課税される「住民税」
住民税は、前年の所得に対して課税されるもので、1月1日時点で住民票がある市区町村から徴収されます。
住民税も所得税と同様、所有期間によって税率が異なります。住民税の税率についても、後述の「2、(3)所有期間に応じた税率を譲渡所得に掛けて税額を求める」にて詳しく解説します。
(3)売買契約の締結時に払う「印紙税」
印紙税は、証書や契約書などの作成時に課税される税金で、土地売却の場合は「売買契約書」に対して印紙税を納める必要があります。
印紙税額は、契約金額に応じて以下のように定められています。なお、書面に記載された契約金額が10万円を越える場合、令和6年3月31日まで軽減措置が適用されます。
書面に記載された契約金額 | 本則税率 | 軽減税率(~2024年3月) |
500万~1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万~5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万~1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円~5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
印紙税は、収入印紙を購入し、契約書に貼付することで納税が完了します。
例えば、2,000万円の土地の売買契約書を締結する時には、1万円の収入印紙を購入して契約書に貼り付けます。
収入印紙は、
- コンビニ
- 郵便局
- 法務局
などで購入可能です。
(4)抵当権抹消登記にかかる「登録免許税」
売却する土地について、住宅ローンを組んでいた場合には、金融機関によって「抵当権」が設定されています。
土地売却にあたって抵当権抹消登記が必要となり、その際に納税するのが登録免許税です。
抵当権抹消登記を行う不動産1つにつき1,000円になるので、売却する土地が1つの場合、かかる登録免許税は1,000円となります。
2、土地売却にかかる税金の計算方法【3ステップで解説】
前章で、土地売却にかかる税金は
- 所得税
- 住民税
- 印紙税
- 登録免許税
の4種類であることを説明しました。
その中でも、所得税と住民税については、計算がやや複雑です。
また、特例を利用することで、納税額が大幅に減額されることがあります。
本章では、所得税と住民税の計算方法について、
- 譲渡所得を求める
- 適用できる特例(特別控除)がないか確認する
- 所有期間に応じた税率を譲渡所得に掛けて税額を求める
の3ステップに分けて解説します。
(1)譲渡所得を求める
土地売却の譲渡所得税(所得税・住民税)は、土地売却で発生した利益に対して課税されます。この利益の部分を「譲渡所得」といいます。
譲渡所得を求める計算式は以下の通りです。
譲渡所得の算出方法
譲渡所得 = 収入金額 -(取得費用+譲渡費用)- 特別控除
譲渡所得は、収入金額(土地が売れた金額)から、取得費用(土地を購入した価格、購入の際にかかった経費)と、譲渡費用(売却の際にかかった経費)を引いて、特別控除を適用できる場合は特別控除額を引くことで求められます。
(2)適用できる特例(特別控除)がないか確認する
特例を適用することで、譲渡所得を減額できます。譲渡所得が減額されれば、それに伴って納税額も安くなります。
土地売却の際に適用されることが多い特例は下記の通りです。
- 居住用財産の3000万円特別控除
- 相続空き家の3000万円特別控除
- 10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
上記3つの特例について解説します。
①居住用財産の3000万円特別控除
居住用財産の3000万円特別控除は、名の通り、居住用財産の売却益にかかる税金を控除できるというものです。自分が住んでいた土地の売却であれば、譲渡所得から3,000万円を控除できます。
この特例が適用されれば、3,000万円以下の譲渡所得には税金がかかりません。
②相続空き家の3000万円特別控除
相続空き家の3000万円特別控除は、相続した空き家とその空き家が建っている敷地を売却する場合に適用される特例です。
この特例も、適用条件を満たせば譲渡所得から3,000万円を控除できます。
③10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例は、3,000万円特例と重ねて適用できる特例です。土地の所有期間が10年を超える場合、税率が軽減されます。
(3)所有期間に応じた税率を譲渡所得に掛けて税額を求める
以上の要領で、課税される譲渡所得金額を求められたら、譲渡所得に所定の税率を掛けて納税額を算出しましょう。
税率は、譲渡した土地の所有期間が「5年以下 or 5年超」のいずれかによって大きく変わります。
所有期間が
- 5年以下なら短期譲渡所得
- 5年超であれば長期譲渡所得
に分けられます。それぞれの所得税率と住民税率は以下の表の通りです。
短期譲渡所得(5年以下) | 長期譲渡所得(5年超) | |
所得税率 | 30% | 15% |
住民税率 | 9% | 5% |
合計 | 39% | 20% |
※短期・長期ともに2037年までは所得税に対して2.1%の復興特別所得税が加わります。
所有期間に関して注意点が1点あります。長期譲渡所得、あるいは短期譲渡所得のどちらに該当するかの基準は、「土地の所有期間が5年以下 or 5年超」であると先述しました。
譲渡所得の計算のための不動産の所有期間は、
- 土地取得日から譲渡した年の1月1日までの年数
でカウントされます。譲渡した日までの期間ではないことに注意してください。
3、土地を1000万円で売却した際にかかる税金のシミュレーション
前章までで、土地売却にかかる税金の計算方法について解説しました。
本章では、土地を1000万円で売却したと仮定して、課税金額はいくらになるのか、以下の仮定の下で、シミュレーションしてみましょう。
- 売却価格:1,000万円
- 取得時諸費用:400万円
- 譲渡時諸費用:100万円
今回シミュレーションするケースは以下の3パターンです。
- 特例(特別控除)を利用しない場合
- 居住用財産の3000万円特別控除を利用する場合
- 売却した土地の取得費が分からない場合
それでは解説していきます。
(1)特例(特別控除)を利用しない場合
譲渡所得の算出方法は
譲渡所得 = 収入金額 -(取得費用+譲渡費用)- 特別控除
となるため、上記条件で土地売却をした場合の譲渡所得は、以下の通りです。
【計算方法】
1,000万円 - (400万円 + 100万円)= 譲渡所得 500万円
①土地の所有期間が3年の場合
土地の所有期間が5年以内なので、短期譲渡所得に該当します。
短期譲渡所得の場合は、譲渡所得500万円に対して、所得税30%、復興特別所得税2.1%、住民税9%の税率が課されるため、各税金とその合計は次のようになります。
- 所得税:1,500,00円
- 復興特別所得税:31,500円
- 住民税:450,000円
- 合計:1,981,500円
上記金額に加え、
- 登録免許税:1,000円(抵当権抹消登記を行う場合)
- 印紙税:10,000円(本則税率適用、契約書を売主分・買主分の2通作成し、双方が負担する場合)
がかかるので、これらを合わせると税金は1,992,500円です。
②土地の所有期間が7年の場合
土地の所有期間が5年超なので、長期譲渡所得に該当します。
長期譲渡所得の場合は、譲渡所得500万円に対して、所得税15%、住民税5%の税率が課されるため、各税金とその合計は次のようになります。
- 所得税:750,000円
- 復興特別所得税:15,750円
- 住民税:250,000円
- 合計:1,015,750円
上記金額に加え、
- 登録免許税:1,000円(抵当権抹消登記を行う場合)
- 印紙税:10,000円(本則税率適用、契約書を売主分・買主分の2通作成し、双方が負担する場合)
がかかるので、これらを合わせると税金は1,026,750円です。
(2)居住用財産の3000万円特別控除を利用する場合
【計算方法】
1,000万円 - (400万円 + 100万円)- 3,000万円 = 譲渡所得 -2,500万円
このケースでは、譲渡所得がマイナスになるため、所得税や住民税はかかりません。
しかし、譲渡所得がマイナスの場合でも、
- 登録免許税:1,000円(抵当権抹消登記を行う場合)
- 印紙税:10,000円(本則税率適用、契約書を売主分・買主分の2通作成し、双方が負担する場合)
がかかることに注意しましょう。
(3)売却した土地の取得費が分からない場合
売却した土地の取得費(購入した金額)が分からない場合は、売却金額の5%相当額を取得費とすることができます。
【計算方法】
1,000万円 - (1,000万円 × 5% + 100万円)= 譲渡所得 850万円
仮に、土地の所有期間を8年とすると、長期譲渡所得に該当します。
長期譲渡所得の場合は、譲渡所得850万円に対して、所得税15.315%、住民税5%の税率が課されるため、各税金とその合計は次のようになります。
- 所得税:1,301,775円
- 住民税:425,000円
- 合計:1,726,775円
上記金額に加え、
- 登録免許税:1,000円(抵当権抹消登記を行う場合)
- 印紙税:10,000円(本則税率適用、契約書を売主分・買主分の2通作成し、双方が負担する場合)
がかかるので、これらを合わせると税金は1,737,775円です。
4、土地売却にかかる税金を計算する上でよく出る4つの質問
前章までで、土地売却にかかる税金の計算方法とシミュレーションについて解説しました。
納税額の計算は、やや複雑だと感じる方も多いのではないでしょうか?
土地売却にかかる税金計算についての理解をより深めていただくために、本章では、土地売却にかかる税金を計算する上でよく出る質問と、その回答についてまとめました。
本章で解説する内容は以下の4点です。
- 土地売却の際、税金がかからないこともある?
- 相続した土地を売却する際、税金の計算はどうなる?
- 不動産売却時に消費税はかかる?
- 取得費が分からない場合はどうなる?
それでは解説していきます。
(1)土地売却の際、税金がかからないこともある?
- 利益が出ていない場合
- 特別控除が適用でき、譲渡所得金額がゼロになる場合
上記の場合は、所得税・住民税はかかりません。
ただし、所得税・住民税がかからない場合でも、
- 登録免許税
- 印紙税
がかかる可能性があることに注意しましょう。
(2)相続した土地を売却する際、税金の計算はどうなる?
相続した不動産の所有期間は「被相続人が所有していた期間」です。
そのため、相続してからの所有期間が5年以下だったとしても、被相続人が5年以上所有していれば、長期譲渡所得が適用されます。
(3)不動産売却時に消費税はかかる?
基本的に、保有している土地の売却について、個人間売買の場合は、土地・建物ともに消費税はかかりません。
ただし、不動産会社に仲介を依頼する際の仲介手数料には、消費税が課税されることを覚えておくと良いでしょう。
(4)取得費が分からない場合はどうなる?
取得費が分からない場合は、土地の売却価額の5%相当額を取得費とすることが可能です。
ただし、売却価額の5%を取得費とすると、取得費が本来の金額より低くなる傾向があります。
結果として譲渡所得が高くなってしまい、それに伴って、課税額も高くなるでしょう。
上記のような事態を避けるためにも、購入時の売買契約書・資料などは、大切に保存しておくことが重要です。
まとめ
本記事では、
- 土地の売却で発生する税金の種類
- 土地売却にかかる税金の計算方法
- 土地売却にかかる税金のシミュレーション
- 土地を1000万円で売却すると、いくら税金がかかるか
などについて解説しました。
土地売却によって発生する税金の中でも、特に金額が大きくなるのが、所得税と住民税です。「土地の保有期間が5年以下か、5年超か」という基準によって、税率が大きく異なる点に注意してください。
また、特例を適用できれば、課税額が大幅に減額されます。特例を利用して、節税対策を行うと良いでしょう。
本記事が、土地売却をお考えの方の参考になれば幸いです。