不動産投資を始めるにあたって、どのくらいの元手が必要だと思いますか?
不動産投資はしっかりと計画を立てて実行すれば利益の出るビジネスです。しかし、不動産投資には不動産や建築に関するさまざまな専門知識が必要となるため、敷居の高いイメージがあります。
さらにハードルの高さを感じる点が、ある程度の手持ち資金が必要になるという点です。
そこで、今回は不動産投資を始めるにあたって、どれくらいの自己資金、元手を用意すればいいのか、その目安や資金調達の方法について不動産投資に関する情報発信を行う当メディア「不動産投資の教科書」が解説していきます。
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元手として必要となる資金は、物件価格の10%から30%という場合がほとんどです。不動産購入にかかる資金は、銀行などの金融機関からの融資で調達できます。
1、元手は最低どれくらい必要?
(1)物件価格の10~30%と言われるが…
不動産投資は基本的に、自己資金だけを元手に投資活動を始めるものではありません。不動産購入にかかる資金は、銀行などの金融機関からの融資で調達します。これが株式投資やFXといった他の投資活動と大きく異なる点です。
元手として必要となる資金は、物件価格の10%から30%という場合がほとんど。元手となる自己資金については多ければ多いほど選択肢が増えることも事実ですが、この割合は必ずしも絶対的な目安ではなく、投資案件や資金調達の手法、投資家の社会的信用度などによっても違ってきます。ただ、どんな場合でも、金融機関の提示する融資額と物件価格との差額を埋められるだけの資金は必要になる、という点は押さえておいた方がいいでしょう。
自己資金がある程度必要だという前提に立ったとして、元手が少なければ不動産投資ができないかというと、そうではないところが不動産投資の面白いところです。少額の元手から不動産投資の手法も数多くあり、そこから徐々に資金を増やして成功している投資家も数多く存在します。成功のためのポイントとなるのは多額の自己資金を準備するということよりも、優良な投資先を見つけることにあるといえるのです。
(2)物件価格と融資限度額の差額
自己資金が少なくても参入できる余地あるといっても、さすがに金融機関からの融資無しに投資を始めることは難しいです。ほとんどのケースでは、まずは金融機関に対する融資の申し込みをすることから投資活動を始めることになります。
そこで問題となるのは、金融機関側から求められる一定額の頭金の差し入れです。この頭金の金額は、金融機関の提示する融資限度額と物件の購入価格との差額で決まります。融資限度額は自己資金力や社会的信用、物件の担保価値によって上下するので、やはりここでも投資家自身の経済事情や資産の有無によって、頭金の額がかなり違ってくるということです。
頭金の差し入れ額がいくらになるかは、投資を始めるにあたって準備すべき資金の1つの目安となるでしょう。
2、フルレバレッジ(フルローン)という方法
元手資金が少なくても始めることのできる不動産投資の方法が、フルレバレッジ(フルローン)とオーバーローンという手法です。
フルローンとは不動産購入にあたって必要となる諸経費、例えば登記費用や仲介手数料、といった費用以外の「不動産物件価格」のすべてを、金融機関からの融資ローンで資金調達するという方法。オーバーローンは諸経費も含めて必要となる資金をまるごと借り入れする方法です。
この2つの方法によって、自己資金がほとんどない投資家でも投資を始めることが可能になります。また、自己資金のある程度ある投資家にとっては、手元資金を残しつつ投資活動を展開できるという点が大きなメリットです。不動産投資の投資活動としての強みは、レバレッジをかけてそれを最大化できることにあります。フルローンとオーバーローンは少ない元手を大きくするという点では、不動産投資の強みを活かした手法の最たるものといえるでしょう。
(1)メリット
①元手が少額でも始められる
フルローンのメリットは、自己資金ほぼ0の人でも融資が下りれば不動産投資を始められる、という点です。オーバーローンにいたっては、不動産取得費用以外にかかる諸経費なども含めて融資対象となるため、資金なしでも投資を開始することができます。
最低限の諸経費を準備する必要があるフルローンでも、最初に必要となる資金は数十万程度で済む場合がほとんど。もちろん、ローンが実行されるためにはしっかりとした返済計画や安定した収入が必要になりますが、手元資金がなくても投資を始められる選択肢があるということは大きなメリットです。
②投資効率が良い
不動産投資は数ある投資の中でも「自己資本利回り(Cash On Cash Return)」が良いとされる投資です。フルローンやオーバーローンではこの指標を最大限に高めることができます。
自己資本利回りとは何かというと、自己資金の拠出額に対していくらの利益が出たのかを割合で示した指標。この指標が良い投資というのは、自己資金を効率よく運用して利益を生み出せている、ということを示します。要するに、自己資金額が少なくてもうまく運用すれば大きな利益を生み出すことができるということです。
このことによる大きなメリットが、手元に資金を残しておけるということ。手元の預金残高がある程度ある状態であれば、それを元手に2件目、3件目と新たな投資を繰り返すことが可能になります。不動産投資はどんどんレバレッジをかけて資産規模を大きくすることで収益を上げていく投資ですから、自己資本利回りのよい投資を繰り返すことが成功には不可欠です。
③手元に資金を残しておける
フルローンでは自己資金を手元に多く残すことができるので、投資効率を高める意味では非常に有利です。ただ、そのメリットはこれだけではありません。不動産投資ではしばしば緊急のリフォームや設備の修理など、思わぬ出費が生じることがあります。こういった事態は空室率などにも影響するため、スピード感を持って対応すること必要です。
さらに投資初期には賃貸収入がまだ安定しない時期もあり、そうした不安定を乗り越えるための自己資金も必要となります。ある程度ローン返済をまかなえる自己資金があれば、自己破産のリスクを回避することができるので、手元に資金を残しながら投資経営を継続することは非常に大切です。
(2)リスク
①金融機関の審査は厳しい
フルローン、オーバーローンのような融資は、銀行側にとってはリスクのある融資です。そのため、基本的に融資審査のハードルは高いと考えておきましょう。
さらには2018年に発覚した、「かぼちゃの馬車事件」の影響が影を落としています。この事件は、女性用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社「スマートデイズ」が、オーナーへの賃料を払えなくなったというトラブルから発覚した事件でした。営業ノルマを優先するあまり、いい加減な審査を通していたスルガ銀行の審査実態が社会的な大問題となったのです。
この事件の影響で、自己資金をほぼ必要としないフルローンなどでの融資審査はよりいっそう厳しくなる傾向にあるため、投資家自身の信用度を高めることや収益性の高い物件を見つけることが必須といえるでしょう。
②キャッシュフローは少なくなる
フルローンではローン返済に自己資金を投入しないため、総返済額自体は増えてしまいます。そのため、自己資金を入れるパターンと比べて月々の返済額は大きく、キャッシュフローが少なくなることは避けられません。場合によっては毎月持ち出しが発生する恐れもあります。
③金利上昇リスク
現在は日銀の超低金利政策の影響で、不動産投資に対する融資はかなり低金利です。とはいえ、一般の住宅ローンと比べると、不動産投資ローンの金利は高めに設定されています。固定金利、変動金利を度外視してざっと比べてみても、住宅ローンの金利は0.5~2%台なのに対し、不動産投資ローンの金利は1.5%~4.5%台といったところです。
さらに、フルローンやオーバーローンのような自己資金なしのローンでは、不動産の購入価格の全てをローンで調達するので、金利が少しでも上昇するとキャッシュフローがすぐに逼迫するリスクがあります。
3、元手が少なくてもできる投資方法
自己資金ほぼナシでも始められるフルローンを活用するには投資家自身の信用度が高いことや、投資効率の良い物件を見つけてくることだけでなく、全体的に不動産投資のノウハウに通じていることも求められているといえます。
全くの初心者が手を出すのは少しハードルが高いため、現実的には少ないながらも自己資金を準備したうえで、少額から始められる投資を選んでいくことになるでしょう。
では、元手が少ないながらも始められる投資手法にはどんなものがあるのか、ここでは代表的な方法を4つほど挙げてみました。なかには中上級者向けの方法もありますが、不動産投資を始めるのであれば検討の余地はあるでしょう。
(1)中古区分マンション
少額で始めることのできる不動産投資の代表例が、中古物件への投資です。なかでも中古の区分所有マンション(ワンルームマンション)は、都心などの人気エリアにも価格の安い物件が存在します。
人気エリアであればインカムゲインを目的とした投資にも向きますし、安く購入しタイミングを見て転売する、という手法も狙えます。
ただ、中古物件全般に言えることとして、築年数が経過するほど資産評価が下がる、という点が難点です。良い物件でも物件評価額の7割程度を上限とする融資が多く、全体的に金利も高め。
古い物件だと多額の修繕費がかかることもあるので、ある程度の自己資金を準備しておく方が有利でしょう。
(2)中古戸建て賃貸
中古の戸建て物件を賃貸して収益を上げる方法も、少額からの不動産投資としてはおすすめです。中古の戸建て物件は築古であれば500万円以下で手に入ることもありますから、現金買いでも十分可能な金額といえます。
さらに戸建ての賃貸は需要自体が少ないため、客付けがしやすいというメリットもあります。いったん入居者が見つかると比較的長期間、家賃収入が発生するので、投資物件としては安定している点も魅力です。
ただし、中古の戸建ては予想以上に修繕の必要が生じることもあり、また中古マンションと同様、金融機関の融資は渋めの評価となります。さらに、一件につき家賃収入は1つにもかかわらず、それほど大きな収入にはなりません。
短期的にレバレッジをかけて投資規模を拡大したい人にはあまり向かない投資といえます。
(3)地方の物件
中古の不動産物件のうち狙い目となるのが地方の物件です。鉄道沿線にある地方都市などは安定した需要がありますし、大学や工場が近い地域など、一般の投資家にあまり知られていない穴場エリアもかなり存在します。
こうしたエリアで中古アパート1棟などを安く購入できれば、利回りのよい投資物件となる傾向があるのです。
ただ、地方物件に投資する場合は、地元での人の動きや立地に関する歴史など、現地ならではの情報が必須。もともとよく知っているエリアへ投資する、あるいは地元の不動産会社と仲良くなって情報を仕入れる、といったリサーチが欠かせません。
銀行の融資も下りないことが多いので、地元の信用金庫などを活用するなどの戦略が求められます。
(4)競売物件
定期的に公告される競売物件は、立地の相場に対して破格の価格で物件を手に入れられるチャンスです。敷居は高そうに見えますが、誰でも参加機会はあるので、意外と参入できる余地あります。
しかし、実際にはプロの業者や不動産投資の上級者がすでに積極的に参入しているのが実情です。
また、競売には「ローン特約」(予定していたローンが不成立になった場合、契約を解除して売買契約を白紙に戻すことができる特約)のような制度はありません。法的な手続きの一環として、落札した際には期限までに代金を納付する必要があります。
融資が下りていようがいまいがまとまった現金が必要となるので、ある程度の資金を準備した段階で参加する方がよいでしょう。
さらに、競売の場合は元の所有者が立ち退かないという、通常の投資物件にはない大きなリスクがあります。立ち退きにはさらなる法的手続きや手間、時間がかかってしまうおそれがあるので、初心者にはハードルの高い投資案件といえるかもしれません。
4、現物不動産以外の投資方法
自己資金がない、あるいは初期投資金額が少ないといった場合でも不動産投資を始める方法はありますが、かなり例外的な事例といえます。現実問題として、融資なしに現物不動産への投資をすることは難しいです。
そこで今度は、融資が受けられないといった事情があっても可能とされる、現物不動産以外のかたちでの投資方法についてもいくつか紹介していきます。
(1)J-REIT
1つめは「J-REIT」、いわゆる不動産投資信託です。これは複数の投資家が少額で不動産投資法人に資金を預け、それを投資運用してもらうという仕組みの投資手法になります。その投資で得た利益を分配金として配当するというかたちです。運用する不動産は証券化されて市場で売買取引されるので、値動きが通常の不動産投資よりも大きく、流動性も高いという点が特徴です。一口当たり4万円台から60万円台という資金でスタートできます。
このREITのメリットは、不動産投資のプロに投資自体をまかせられるという点。投資法人は規模の大きな不動産に対して投資することもできますから、個人レベルでは難しい投資案件からの利益を得ることも可能です。
(2)不動産小口化商品
不動産投資信託と似たような仕組みに「不動産小口化商品」と呼ばれる手法があります。不動産投資信託は投資する不動産を証券化することで、金融商品として資産価値の売買を行う方法です。これに対し、不動産小口化商品は特定の不動産を複数のオーナーでシェアし、その管理運用を運営会社に任せる、といった形式を取ります。
どちらも少額ではじめられる不動産投資というかたちには変わりませんが、不動産小口化商品は「不動産特定共同事業法」に基いた組合事業の形式を取るため、投資家にとっては信託事業と比べると透明性が高いという点で、注目されています。投資先は証券化された金融商品ではなく、あくまでも不動産そのものになりますので、出資するお金は100万円単位から、という案件がほとんどです。
(3)クラウドファンディング
複数の投資家から資金を集めて、それを運営会社が不動産運用によって利益を還元する、という形式のうち、もっとも少額(それこそ1万円レベル)から始められるビジネスモデルとしても注目されているのが「クラウドファンディング」です。
資金のない個人事業主が不特定多数から資金を集める方法として注目されていますが、不動産投資の世界でもこの手法が広がりつつあります。事業者は「不動産特定共同事業法」という法律に基づいた許可を得た会社でないと運用できないので、素人が勝手に事業を展開することはできません。
個人投資家にとっては非常に簡単に不動産投資を始められる方法の1つで、おこづかいレベルの金額から始められるうえに、ネット上の手続きだけで投資に参加できる手軽さがあります。
まとめ
今回は敷居の高そうな不動産投資について、実は元手があまりなくても始められる方法はいくつかある、ということについて説明しました。どの方法も一長一短ですし、基本的には資金力がある方が事業展開のスピードは速いです。
しかし、今回紹介した方法によって増やし元手を大きくすることができれば、よりレバレッジをかけられる投資へと展開できます。不動産投資に興味があるのであれば、元手がないとあきらめずに様々な方法を検討してみましょう。