「不動産は販売したらおしまい」 情報格差の激しい不動産業界、特に収益用不動産を取り扱う不動産投資業界ではいまだにそのような姿勢の会社が多いと聞く。元来、不動産投資は、キャピタルゲイン(値上がり益)や節税目的の「うまい儲け話」ではない。長期的に、そして安定的なインカムゲイン(家賃収入)を得ることが最大の目的である。昨今、不動産投資業界でも大きな話題となった、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」へのスルガ銀行の不正融資問題(融資に関する書類の改竄等)は記憶に新しい。「かぼちゃの馬車」では、投資家にとっての頼みの綱である、家賃収入がそもそも入ってこないという事態が発生した。
今回は、中古マンションを都内の城南・城西エリアを中心に販売している、株式会社クレドの小松圭太代表取締役に、不動産投資を始めたい初心者が会社選びで注意をするポイントと中古マンションではじめる不動産投資のメリット、長期投資にふさわしい物件の選び方などについて聞いた。
(聞き手:不動産投資の教科書 代表取締役 山本尚宏、編集部 依田泰典)
目次
・投資家として気づきにくいトラブルの芽にどのように対応するか
――「かぼちゃの馬車事件」に端を発したスルガ銀行の不正融資問題、アパート販売のTATERUと西京銀行、西武信用金庫の不正融資問題など、不動産投資業界が揺れた大問題がいくつも勃発しました。以前編集部に、オススメだと言われて購入した物件の売却相談があったのですが、「なかなか進んでいない」という投資家の方がご相談に来られたことがあります。提案時にとにかく急かされて物件を購入されたようです。販売手法そのものにも問題があったと思われますがいかがですか。
小松圭太代表取締役(以下、敬称略):
そうでしたか…。当社にも物件を購入した後にトラブルを抱えた投資家の方から新規のご相談もかなり寄せられるのですが、お話を伺う限り、「投資家のことをまったく考えていない」、「販売後の管理もいい加減」、という事例がいまだに後を絶たない印象です。販売会社によっては、アフターフォローの体制が完備しておらず、立地が良いワンルームマンションでも空室が長く続いてしまっている事例もあります。不動産投資で継続して安定的に家賃収入を得るためには、賃貸管理がとても重要になります。後ほど詳しくお話しますが、賃貸管理で最も重要なのは入居者の募集です。当然のことながら、空室が続いてしまえば想定している収入を得ることはできません。
昨日、面会した投資家の方も、「(他社で購入した物件が)売却したいのになかなか売れない」、とおっしゃっていました。これは、物件が所在するエリアの空室率を把握していなかったり、相場賃料と実際の賃料の乖離があるケースであったりします。失敗事例の中には、表面利回りが高いことのみに着目して物件を購入してしまったものもありました。金融機関が評価する金額かそれ以上の販売価格にしてしまうことで、販売会社の利益にはなるのですが、その割を投資家の方が喰らってしまう(売るに売れない)、業界内には依然としてこのような構図があるのです。
――それは、酷い話ですね…。不動産投資を始めたいと考えている初心者の方が、このようなトラブルに巻き込まれないようにするためには、どのような視点で会社選びをすれば良いでしょうか?
小松:
当社では、投資家様お一人お一人の諸条件を様々な角度から検証し、ローン金額を完済するまでのプランニングを立て、しっかりとご説明して提案をしています。いわゆるコンサルティング型の営業ですね。トラブルに巻き込まれないようにするためには、コンサルティングがしっかりできるか、ということが重要です。言うのは簡単ですが、通常これがなかなかできません。当社の社名(クレド=約束)にもなっているのですが、当社の企業理念、拠り所となる価値観は「すべてはお客様の未来のために。」から来ているものです。私が新卒時、物件を販売する一営業マンであったときからの想いで、今もぶれていません。
私は以前、ワンルームマンションを販売するデベロッパーで新築マンションを販売していました。実は、当時その会社で勤務している営業マン自身が、自分達が販売している物件を良いと思っていなかった。「売ったら客にはもう会わなくていい。その暇があれば、新規の客を見つけるために電話をしろ」という風潮でした。この営業の仕方が本当に肌に合わなくて、営業をするのがとても嫌でした。友人にも胸を張って自分の仕事のことを話せないですし。「(追加で)購入することが出来ない客には会いに行かなくていい」と上司に指示されたときに大いに疑問を感じ、自分達が誇りを持って仕事をしたいと考え、起業を決意しました。
投資家の方に、自分が購入する物件が一体どのようなものかをきちんと知ってもらって、正々堂々と販売をして、投資家の方々と豊かになれるWin-Winの関係になりたい、そう思いました。新卒の一営業マンの時には、売れることだけを目標にがむしゃらに頑張っていましたが、物件を販売していく過程で顧客に感謝されることが自分達のモチベーションにつながる、と心から思ったのです。
――不動産投資にも一棟アパート等があります。また、金融商品含めて、そもそも様々な投資対象がありますが、そのような中でワンルームマンション投資の位置付けをどのように考えていますか?
小松:
私は、不動産投資はあくまでも目的を達成する一手段に過ぎないと考えています。当社では、「この人のために、自分達は一体何が出来るのか?」という視点で見ていますので、不動産投資以外の投資が合っていると思えば、不動産投資を無理に勧めることはありません。したがって、経営理念にも「不動産」というキーワードをあえて入れていないのです。近い将来、投資家にとって、もっと良い投資手法があるかもしれない。会社として柔軟に対応することができるよう、常に変化していけるように考えています。
また、おっしゃるとおり、不動産投資には一棟アパートをはじめとして、様々なカテゴリーがあります。私は、大前提として、一棟ものが悪いとは思っていませんし、現に成功している投資家様も沢山いらっしゃいます。「北海道で良い物件が出た!」、となればすぐに現地を確認して(億の物件を)その場で即決するようなプロ投資家もいます。しかし、本業があるサラリーマンの方が将来の資産形成のために不動産投資を選択する場合、大きなリスクを取ることはまずできません。一棟アパートは、拠出する自己資金の金額(3割以上になることもあります)や融資自体のハードルが高く、価格もそれなりに高いので、着実に守りの資産形成をしたい方には向いていません。高額のアパートローンを抱えていると、今後金利情勢が変わった場合、当然ながら毎月の返済金額も大きく変わることになります。
そのような中で、サラリーマンの方にオススメなのが中古のワンルームマンション投資なのです。私は学生時代にHipHop(ヒップホップ)が大好きでクラブイベントを主催したりしていました。イベント実行チームは100名を超えるスタッフがいて、その代表も務めさせてもらった経験があります。まわりの人に恵まれていたおかげで、実はそのご縁で今もお仕事につながっていることも多くあります。私が発信をしているSNSを通じて、20年ぶりに連絡をくれた旧友がいたりして、それをきっかけに大きくご紹介の輪が広がったこともあります。私は現在42歳ですが、このように40代で「自身の仕事は安定してきたけれども、将来に不安が残る」方もいらっしゃり、ご縁で中古ワンルームマンション投資のご紹介をすることが多くなってきています。
最近では、20~30代のサラリーマンの方が本当に増えてきました。昨日、ご相談に来られた投資家様は、「自分が今の会社にいつまでいられるか分からない、勤めている間に信用力を使って物件を増やしていきたい」と言われていました。自分の将来は自分で作っていく、という目的意識を持った若い方がどんどん増えてきていますね。
・投資家目線にこだわりプラス収支の物件を提案。長期運用に耐える独自の仕入れ基準とは?
――販売されている物件のマイソク(リーフレット)を拝見しましたが、リーズナブルな気がします(笑) 貴社はどのような基準で物件を選定して販売されているのでしょうか?
小松:
当社の物件価格はお安いと思います。会社としての利益幅は小さくなっていますが(笑)、物件の仕入れに力を入れていますので、その分を投資家様に還元するというスタイルを取っています。これは、投資家様が「勝つ」ためにはどのくらいの販売価格が妥当なのかを、当社独自の判定基準で見極めているからこそできる手法です。物件の仕入基準は100近い項目数があり、当社の厳しい規定を超えたものでなければ仕入れることはありません。業界では、物件の販売価格は金融機関が判断しており、金融機関の決めた金額目一杯、もしくはそれ以上の金額で販売しようという会社もある中、当社では、投資家目線で価格を決定しています。
原則として、当社は投資家様に、①東京都内のうち14~15区、②最寄り駅から徒歩8分以内、③築後10~15年程度の物件をご紹介しています。また、ご紹介するのは基本プラス収支になる物件となります。ワンルームマンション投資における立地が良いエリアは、ファミリー物件とは違います。家族で住みたい街と1人で住む街というのは選定基準が変わってくるということです。コンビニエンスストアやスーパーマーケットが近くにあることに始まり、飲食店やファーストフード店がたくさんある街は活気がありますよね。また、上記に加えて、新宿や渋谷、池袋、東京駅等の主要なターミナル駅に電車で15分以内にアクセスできるエリアをご紹介するようにしています。このようなエリアは、オフィスや商業施設も多くあり、賃貸需要もとても高いです。
――なるほど。物件を選定するポイントで、これは特に抑えておいた方が良いというものはありますでしょうか?
小松:
はい、当社の強みの一つに投資家様の視点に立ったコンサルティングがあるのですが、「相場家賃の把握」はこれから投資をしようとしている物件を選定するうえで、とても重要であると考えています。紹介された物件の家賃が、「現在たまたま(入居者が)付いているものなのか」、「将来は大きく下がるものなのか」など調べてみる必要があります。調査方法として、物件が所在する駅前の地元の不動産会社に連絡をしてみて、物件のおおよその家賃の相場感をヒアリングしてみると良いでしょう。
これから購入しようと検討している物件のマイソクの家賃が適正かどうか分からない場合には、当社の営業担当が一緒に確認することも可能です。また、当社のマイソクには備考欄に現在入居が付いている家賃とは別に、「想定賃料」を記載しています。巷には、相場よりも高い家賃設定で表面利回りの見栄えを良くした物件も出回っています。投資家様自身で調査をする、もしくは経験豊富な当社の営業担当がコンサルティングをすることで、ご理解いただいたうえで不動産投資を始めることをオススメしています。
・物件を購入した後こそ大事。小回りの利く管理で家賃アップと資産価値の維持向上を目指す!
――不動産投資では、継続的に安定した家賃収入を得るために、購入した後が大事であると思っています。貴社の賃貸管理はどのような特徴がありますでしょうか?
小松:
はい、おっしゃるとおり、賃貸管理は重要です。その中でも、特に入居者募集は最重要であると考えています。当然のことながら、空室が続いてしまえば、収支計画は大きく狂ってしまいます。販売会社は、入居者募集に強みを持つ不動産会社に任せることが必須です。ワンルームマンションを販売する会社の中には、「物件を販売したらおしまい」と考えている会社がいまだに多く、自分達の利益しか考えていない結果、不動産投資が早々に行き詰まるケースがあります。
また、見過ごしやすい視点ですが、ブランド力がある、知名度が高い、東証に上場している企業等であっても、アフターサービスが充実していない不動産会社は実際に数多く存在します。大企業であるからといって安心はまったく出来ません。当社の賃貸管理の特徴をいくつかお伝えしますと、当社は集金代行契約に力を入れています。もちろん、家賃保証契約(サブリース契約)もメニューとして用意していますが、当社の集金代行契約は、毎月の管理手数料を3,500円と定額にしています。投資家様の立場に立ってみますと、将来の長期保有を前提とした資産であるからこそ、管理に関係する費用はなるべく抑えたいというニーズがあります。特に入居者の入退去の際には、様々な費用が発生しますので、できれば定額である方が投資家様の収支の見通しが立てやすいです。長期的なスパンで考えますと、この管理報酬の違いで将来数十万円の違いがでることにもなり得ます。
また、当社では、原則として退去予告を2か月前予告としています。賃貸借契約の契約条項にこの項目を入れておくことで、入居者が突発的な事情により退去をする場合であっても、退去予告がかなり早いので入居者募集を早めに始めることが可能となります。このくらいの期間があれば、現在の入居者の賃料が発生している間に、次の入居者の募集賃料を反響確認しながら、家賃アップさせることも可能となります。
・不動産投資を始めるのは今!?早い方が良いという理由
――なるほど、2か月前の退去予告はとても良いですね! ところで、最近東京オリンピックが来年に延期となりました。オリンピックが終了した後、不動産価格が下がるのではないか、という声も多いようです。実際に不動産投資を始めた方が良い時期というものはあるのでしょうか?
小松:
不動産をこれから始めたいと考えている初心者の方は不安になりますよね。私は、不動産投資を始めるタイミングは、個人個人のライフスタイルによる、と考えています。どの投資商品であっても始めるタイミングに早すぎる、ということはないと思いますが、特に不動産投資は早ければ早いほど投資家様にとって有利になると考えます。投資家様には早い段階でローンを完済するシミュレーションを提案しています。
ここで重要なことは、相場価格よりも高く物件を購入してしまったら意味がない、ということです。仮に高い物件を購入してしまった場合のリスクとして、いざ売却をしたいと思ったときにスムーズに売却できないということがあります。不動産投資では、売却してキャピタルゲインを獲得することが目的ではなく、持ち続けることでインカムゲインを長く獲得することこそ大事です。
・不動産投資は企業理念「すべてはお客様の未来のために。」を実現する手段。クレドの想いとは?
――貴社のコンサルティングの特徴を教えていただけますでしょうか?
小松:
当社では投資家様の将来の目標を伺い、お一人お一人に合わせたコンサルティングをしています。不動産投資にはコツがあり、物件をただ所有しているだけでは物件本来の実力を発揮することはあり得ません。当社では、投資家様の将来像をしっかりと伺い、「将来の目標」、「実現するためのスキーム」、「方向性」をアドバイスしております。投資家様の属性(年収や金融資産、年齢など)や考え方は人によって異なりますので、当社の営業担当がコンサルティングをした後に投資計画を作成してご提案します。具体的には、今後の目標保有戸数や繰上返済、生命保険の見直し、節税対策や確定申告のサポート(税理士と連携)、売却相談にいたるまで、投資家様のライフステージに合わせて、資産運用全般をサポートしているのが特徴です。
投資家様が不動産投資に失敗してしまう事例として、CF(キャッシュフロー)を優先して物件を購入してしまうことがあります。誰しも最初に購入する1戸目は慎重になるものですが、その後に表面利回りやCFのみ確認して、営業マンの言いなりで複数戸を購入してしまうケースもあります。
プロの不動産会社ならではの視点で物件のアドバイスをすることも可能です。実は、不動産投資を対象としたワンルームマンションにも様々な「ブランド」があります。例えば、TFDコーポレーション社が分譲している「ルーブル」シリーズや、トーシンパートナーズ社が分譲している「フェニックス」シリーズ等です。城南・城西エリアを中心に毎年安定した戸数を分譲しており、建物管理がしっかりしているオススメのブランドです。当社のコンサルティングでは、このようにブランドごとに長所を把握して、投資家様にご提案もしています。
また、当社のコンサルティングでは、具体的なエリアに関するご相談にものることが可能です。当社は城南・城西エリアを中心に物件のご紹介をしていますが、急に人気が出たエリアは慎重に検討するように投資家様にアドバイスをしています。
例えば、リクルートの「SUUMO住みたい街ランキング2019 その他(穴場だと思う街、住みたい沿線)のランキング」では穴場スポットとして、北千住駅(東京メトロ日比谷線)を1位に挙げたことがあります。北千住は、ここ数年で街のイメージが大きく変わりました。「おじさんの飲み屋街の聖地」というイメージから、「文教地区」のイメージとして様変わりしています。これには、東京電機大学が駅前に移転したことや、最近ではおしゃれな飲食店も開業していることなどに起因しています。北千住は確かにファミリー層には良いかもしれませんし、エリア的にもとても面白い街であると認識しています。しかし、急に人気が出たエリアでの物件選定には注意が必要です。今後、少子高齢化が進み、万一大学の機能が移転することになったりすれば街の雰囲気は以前に戻るかもしれません。
急に変貌した街は不確定要素が大きく、投資対象としない方が無難と言えるでしょう。当社では、常にエリアマーケティングをしており、投資家様に最適な投資物件をコンサルティングしながらご紹介することができます。
――それはとても心強いです。最後に、読者の方へ一言お願いします。
小松:
当社の企業理念は、「すべてはお客様の未来のために。」です。この理念が記載されたカードを全社員が携帯しています。
不動産投資のメリット・デメリット、物件自体の特徴や注意をするべきポイント等を愚直なまでに真摯にお伝えすることで、投資家様が納得して満足してもらうことを第一に考えています。例えば、物件購入にあたり認識しておいた方が良いポイントを会社が把握しておきながら、投資家様に伝えないことは出来るでしょう。
しかし、不誠実な販売の仕方や不動産会社のみ利益が上がること、投資家様が不安に思うことを曖昧なままで終わらせるなどの対応をすれば、将来必ず信頼を失います。投資家様の将来のために、良い物件を適正な価格で販売して、信頼いただける存在になる、そして投資家様が安心できる将来のために資産をずっと守り続け、良きパートナーになる。これからも、この理念を実現するためにできること全てを全社一丸となって実施していく所存です。