日本人には元々リスクを嫌う国民性があり、他国と比べると資産を投資ではなく貯蓄に回す傾向が強いと言われています。そして近年ではその傾向がより顕著となっています。
このような状況を踏まえて国は、2000年前半頃から「貯蓄から投資へ」をスローガンとして掲げました。投資へ回る資産を増やすことでベンチャー企業や新分野の企業などの成長を促進させ、経済を活性化させることを目的としています。
一方で、投資することによってお金を一定以上の利回りで運用することで、お金を増やし、老後に備えたり子育て費用に充てたりできるというメリットがあります。
これらを実現するため、平成26年1月からNISA(ニーサ)という個人投資家のための「税制優遇制度」がスタートしました。
今回は、
- そもそもNISAとは?おさえておきたい6つのポイント
- 賢く利用するには?NISAのメリットとデメリット
- NISA口座どこで開設する?口座選びのポイント
- NISA口座を開設するには?
- ジュニアNISAとは?
などについて書いて説明していきます。NISAの活用を検討している方のご参考になれば幸いです。
目次
1、そもそもNISAとは?おさえておきたい6つのポイント
(1)そもそもNISAとは?
NISAとは、平成26年1月からスタートした個人投資家のための「少額投資非課税制度」のことを言います。投資をして利益が発生したら(儲かったら)、その利益には基本的には税金がかかります。それゆえに、「もし儲かっても税金でお金を取られてしまう・・・」と思う人が多く、投資に消極的になってしまう傾向がありました。
そこで、国としては投資を促進することを目的とするため、NISAという制度を作り、一定の金額の範囲内の投資であれば税金がかからないとすることとしました。
具体的には、NISA口座というものを作り、その口座で行われた投資については一定の条件付きでたとえ投資で利益が出たとしても税金がかかりません。
(2)おさえておきたい6つのポイント
NISAには細かいルールたくさんありますが、まずは大きく以下の6つのポイントをおえておきましょう。
- ①非課税期間:最長5年間
- ②非課税投資額:最大600万円
- ③非課税投資商品:上場株式・投資信託から得られる譲渡益と配当金など
- ④口座数:一人一口座
- ⑤利用対象:日本に住む20歳以上の方
- ⑥口座開設可能期間:10年間
では、それぞれについてみてみましょう。
①非課税期間:最長5年間
NISA制度を利用した場合、最長5年間非課税となります(税金がかかりません)。
例えば、平成26年から利用した場合、平成26年1月1日〜平成31年12月31日の5年間は非課税になります。
なお、5年満期後売却をしない場合
- 新たな非課税枠へ移行
- 一般口座・特定口座へ移行
と選択することができます。
②非課税投資額:最大600万円
NISA制度は平成26年1月からスタートし、平成28年1月から
- 年間非課税額「100万円」 ⇛ 年間非課税額「120万円」
へと増額し、「120万円/年☓5年」と最大「600万円」の投資額から得られた利益に対して非課税となります。
③非課税投資商品:上場株式・投資信託から得られる譲渡益と配当金など
NISA制度で取り扱えるのは、上場株式・投資信託から得られる譲渡益と配当金などに限られています。
また、口座開設した金融機関によって取り扱える商品も異なりますので、事前に投資したい商品があるかどうかを確認するようにしましょう。
④口座数:一人一口座
取引ができるNISAの口座は原則一人一口座となっています。なお、金融機関を変更した場合、再度新規で開設することができます。
しかし、複数の銀行で複数のNISA口座を開設したとしても、
- 1年に1つのNISA口座でしか取引ができない
- NISA口座内に保有している商品を他の金融機関へ移管ができない
などの制限がありますので、注意しましょう。
⑤利用対象:日本に住む20歳以上の方
NISA口座を開設できるのは、口座を開設する年の1月1日現在において日本に住む20歳以上の方になります。
なお、0歳〜19歳の子供の場合、平成28年1月からジュニアNISA口座を開設できるようになりましたので、仕組みなどについて詳しく「5、ジュニアNISAとは?」をご参照下さい。
⑥口座開設可能期間:10年間
NISA口座開設可能期間は、平成26年〜平成35年の10年間となっています。
(3)利用イメージ
NISA口座を利用して運用する場合のイメージを貼付します。参考にしてみてください。
出典:政府広報オンライン
2、賢く利用するには?NISAのメリットとデメリット
NISA口座を賢く利用して投資には、事前にNISA制度のメリットとデメリットをきちんと把握しておく必要があります。
以下にてNISAのメリットとデメリットについて書いていきますので、参考にしてみてください。
(1)NISA制度のメリット
まず、NISAのメリットについてみてみましょう。
NISAのメリットはなんといっても年間120万円の投資額に対して、利益、配当金や分配金などが非課税になることです。
仮に、特定口座・一般口座で株式や投資信託を投資して利益が得られた場合は、所得税・復興特別所得税・住民税と合せて「20.315%」が課税されます。この分が非課税となるのはメリットとして大きいでしょう。
参考までに以下にてシミュレーションを記載します。
例えば、株式を120万円で購入して、200万円で売却した場合
①NISA口座の場合
譲渡益:200万円ー120万円=80万円
非課税のため、「80万円」の譲渡益は全部もらえることができます。
②特定口座・一般口座の場合
譲渡益:(200万円ー120万円)☓(100−20.315%)=63万7,480円
譲渡益の80万円に対して課税されますので、「63万7,480円」が手取り金額になります。
③結果
80万円ー63万7,480円=16万2,520円
結果として、NISA口座を利用した場合「16万2,520円」も手取り金額を多くもらうことができました。
(2)NISAのデメリット
続いて、NISAのデメリットについてみてみましょう。
大きく以下のようなデメリットが挙げられます。
- ①他の口座と損益通算することができない
- ②3年間の損失繰越ができない
- ③配当の受取方法は「株式数比例配分方式」に限る
- ④代用有価証券にできない
では、それぞれについてみてみましょう。
①他の口座と損益通算することができない
特定口座や一般口座で投資して万が一損失が出た場合、他の口座と損益通算をすることができるに対して、NISA口座の場合、たとえ損失が出たにしても、他の口座と損益通算はできません。
例えば、
- A社の株式は100万円の利益
- B社の株式は60万円の損失
ー特定口座(A)と一般口座(B)の場合ー
税金=(100万円ー60万円)☓20.315%=81,260円
ー通常の口座(A)とNISA口座(B)の場合ー
税金=100万円☓20.315%=20万3,150円
ー結果ー
20万3,150円ー81,260円=12万1,890円
NISA口座の損失は利益が出た口座との損益通算が出来ないため、損失を負った上に税金「12万1,890円」を多く支払うことになります。
②3年間の損失繰越ができない
通常の口座の場合、確定申告をすることによってその年の投資の損失を翌年から3年間を繰越ができます。
例えば、2014年に100万円の損失を出して、翌年50万円の利益が出た場合、2014年の100万円の損失を繰越するができ、「−100万円+50万円=−50万円」となるため、2015年は本来利益が出たにも関わらず税金はかかりません。
一方、NISA口座では損失の繰越が出来ないので、注意する必要があります。
③配当の受取方法は「株式数比例配分方式」に限る
株式の配当金を受け取るには、
- 郵便局にて直接に受取る「配当金領収書方式」
- 銀行振込みで受取る「受取配当金受領口座方式」/「個別銘柄指定方式」
- 証券口座に入金で受取る「株式数比例配分方式」
などの方法から選ぶことができます。
NISA口座の非課税メリットを受けるには「株式数比例配分方式」を選ばないといけません。
たとえNISA口座でも、「株式数比例配分方式」以外を選んでしまうと課税されてしまいますので、くれぐれも注意してください。
④代用有価証券にできない
一般的には、証券会社では保有している株式などの有価証券の8割の価値を信用取引の保証金として利用することができます。
しかし、NISA口座で保有している株式などは代用有価証券として利用することはできません。有価証券を信用取引の保証金として利用される方は注意する必要があります。
3、NISA口座はどこで開設する?口座選びのポイント
NISA口座は一年に一度しか変更ができないので、どこで開設するかを慎重に選ぶ必要があります。
以下にて口座選びのポイントを挙げてみましたので、参考にしてみてください。
- (1)投資したい商品を扱っているか
- (2)情報をきちんと提供しているか
- (3)スマホなどのアプリで利用できるか
- (4)取引手数料が安いか
- (5)IPO(新規公開株)銘柄を扱っているか
では、順番にみていきましょう。
(1)投資したい商品を扱っているか
自分が投資したい商品を扱っているか否かは最も大切なポイントと言えます。
一般的に、銀行などの金融機関のNISA口座で取り扱えるのは投資信託の商品がメインとなっていて、証券会社の方が幅広く投資商品を取り扱っています。
事前に確認するようにしましょう。
(2)情報をきちんと提供しているか
株式投資は当然のように情報は欠かせません。
従って、口座開設先を選ぶ際に、
- 毎日のニュース
- 銘柄ごとの分析レポート
- マーケット市況
- 適時開示情報
などきちんと情報提供してもらえるかを確認するようにしましょう。
(3)スマホなどのアプリで利用できるか
PCの他にスマホなどのアプリを利用する方も少なくないではないでしょうか。
スマホなどのアプリからでも、
- レートをリアルタイムに確認ができる
- 売買の取引ができる
などいつでもどこでも対応ができるかを確認しておきましょう。
また、証券会社によってスマホの使い勝手も異なりますので、いろいろと試してみるといいでしょう。
(4)取引手数料が安いか
取引手数料という確実にかかるコストは、できるだけ安くおさえておきたいところです。
売買代金によって手数料が変わりますので、
- 売買銘柄
- 投資金額
- 株数
などの条件で比較されるといいでしょう。
(5)IPO(新規公開株)銘柄を扱っているか
IPO(新規公開株)とは、新規で上場する企業の株式を公開価格で購入することを言います。
一般的には新規公開株の公開価格は市場の適正価格より安く設定されている上、比較的に株価が上がりやすくなっていますので、大変人気があります。購入するには抽選となることがほとんどです。
総合証券会社よりも競争倍率が低いネット証券会社を選ばれた方が当選確率が高いと言われていますので、IPOで利益を上げたい方は、ネット証券会社を選ばれるといいでしょう。
4、NISA口座を開設するには?
では、実際にNISA口座を開設する方法についてみてみましょう。
(1)口座開設時に必要な書類
新規でNISA口座を開設するには以下の書類が必要になります。
- ①住民票の原本(発行から6ヶ月以内)
- ②非課税適用確認書交付申請書 兼 非課税口座開設届出書
- ③マイナンバー通知届出書のコピー
(2)口座開設の手順
NISA口座は大きく以下の手順にて開設することができます。
- ①NISA口座開設の申込み
- ②必要な書類を提出する
- ③税務署にてNISA口座が重複していないかをチェック
- ④NISA口座が開設される
など。
5、ジュニアNISAとは?NISAとの違いは?
(1)そもそもジュニアNISAとは?
ジュニアNISAとは、平成28年1月から、日本に住む0歳〜19歳の子どもに向けた資産運用の制度です。親権者が代理で資産運用をすることできます。
(2)NISAとの違いは?
ジュニアNISAについてご理解頂くために、NISAとの大きな違いを表にまとめてみましたので、参考にしてみてください。
まとめ
今回はNISAについて説明していきましたがいかがでしたでしょうか?NISAのご利用を検討されている方にご参考になれば幸いです。
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