相続税対策として不動産を購入した方がいいという話を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2015年1月1日より、相続税の基礎控除額が縮小され、増税されることになったので、相続税対策はこれまでにも増して非常に重要となっています。
しかし、具体的どのような対策を採ると一番得をするかを知らない方も少なくないでしょう。
そこで今回は、
- 相続税の基礎控除額の計算方法
- なぜ不動産は相続税対策として有効?不動産の相続税の仕組みについて
- 不動産で相続した場合の相続税評価額のシミュレーション
などについて書いていきますので、相続税対策でお悩みの方の参考になれば幸いです。
【税理士が教える】相続税を節税するには?やっておきたい「4つの生前対策」
目次
1、不動産は相続税対策としていい?
不動産は、相続税の計算基準となる評価額は現金の評価額より低く評価されます。
具体的には、同じく投資商品として有価証券に投資した場合、有価証券の評価額は時価で評価されるに対し、不動産は時価の約3割程度で評価されることになります。
そのため、相続税が少なく抑えることができ、相続税対策として購入することにメリットがあるといえるでしょう。
2、相続税の計算方法
(1)相続税の計算方法
「相続税額=(全ての財産額—基礎控除額)×相続税率」
(2)基礎控除額の計算方法は?
① そもそも基礎控除額とは
そもそも基礎控除とはどのようなものでしょうか。
財産を相続したから相続税がかかるだと思っている方は多くいらっしゃるようですが、実は、相続税は相続した財産が一定額を超えた場合に初めて発生します。
つまり、一定額以内であれば発生しないとのことです。
基礎控除額とは、その一定額のことを言います。
例えば、相続する財産の全額が1億円の場合、相続税がかかるのは1億円全額ではなく、「1億円—基礎控除額」の金額になります。
つまり、基礎控除額が大きければ課税される金額も少なくなります。
② 税制改正前の相続税の基礎控除額の計算方法
では、基礎控除額はどのように計算されるでしょう。
まず、2014年12月31日まで、税制改正前の相続税の基礎控除額を見てみましょう。
以下の計算式にて計算することができます。
「5,000万円+1,000万円×相続人数」
なお、最高税率は「50%」となります。
③ 税制改正後の相続税の基礎控除額の計算方法
一方、2015年1月1日以後、つまり税制改正後の相続税の基礎控除額は縮小され、以下の計算式にて計算することになります。
「3,000万円+600万円×相続人数」
なお、最高税率もアップされ「55%」となります。
④ 基礎控除額のシミュレーション
例えば、同じく相続財産は1億円で、相続人が1人の場合
■ 税制改正前に相続税がかかる金額
「1億円—(5,000万円+1,000万円×1)=4,000万円
■ 税制改正後に相続税がかかる金額
「1億円—(3,000万円+600万円×1)=6,400万円
なんと、税制改正によって相続税がかかる金額は「2,400万円」も多くなります。
(3)相続税のシミュレーション
① 税制改正前に支払う相続税額
4,000万円×20%—200万円=600万円
② 税制改正後に支払う相続税額
6,400万円×30%—700万円=1,220万円
③ 結果
税制改正前よりなんと「620万円」ほぼ2倍の相続税を支払うことになります。
3、なぜ不動産は相続税対策として有効?不動産の相続税の仕組みについて
財産を現金や有価証券で相続する場合は、時価に対して課税対象であるため金額も高くなります。
しかし、不動産を相続する場合、時価ではなく、「固定資産台帳や路線価」などから算出した評価に対して課税となりますので、納める相続税額が少なくなる傾向があるので、他の資産よりも相続税の節税対策になるとされています。
(1)土地の評価額
土地は一般的には国税庁が定めた路線価に基いて、路線価の80%程度の評価額となります。
例えば、路線価の評価が1,000万円の土地の場合、相続税での評価額は「1,000万円×0.8=800万円」になります。
(2)建物の評価額
建物の評価額は一般的には固定資産課税台帳に記載している固定資産税評価額に基いて評価します。大体建築費用の50〜60%で評価されることが多いです。
例えば建築費用が2,000万円の建物の場合、相続税での評価額は「2,000万円×50%=1,000万円」になります。
(3)賃貸による借家権割合で建物の評価額は更に減額
不動産が投資不動産として第三者に賃貸することで、建物の評価額が更に30%控除されることになります。
例えば、上記②の建物の評価額は更に30%控除を受けることが可能なので、評価額は「1,000万円×70%=700万円」になります。
(4)小規模宅地の特例により、土地の相続税評価額がさらに減額
小規模宅地の特例というのは、敷地の種類によって限度面積の部分に対して、評価額が減額されるとのことです。
例えば、事業用の敷地が200㎡の場合、相続評価額は200㎡まで5割評価となるため、時価が1億円であれば、評価額は5,000万円となります。
なお、相続税の改正により限度面積の改正もありますので、詳しくは国税庁の「小規模宅地等の特例」をご参照ください。
4、不動産で相続した場合の相続税評価額のシミュレーション
同じく1億円を現金と投資不動産で相続した場合の評価額を見てみましょう。
(1)現金1億円を相続した場合
相続税の評価額:1億円
(2)時価1億円で、評価額が4,000万円の投資マンションを相続した場合
- 建物評価額:2,000万円
- 土地評価額:2,000万円
相続税の評価額:2,200万円
<計算方法>
—建物—
2,000万円×0.7=1,400万円
—土地—
2.000万円×0.8×0.5(小規模宅地の評価減)=800万円
—評価額合計—
1,400万円+800万円=2,200万円
(3)結果
結果として、現金で1億円で相続した場合の評価額は不動産で相続するより「7,800万円」も多くなるということになります。
従って、不動産は相続税対策として有効的と言えるでしょう。
5、相続税対策として有効性の高い不動産物件は?
不動産による相続税対策の中でも、タワーマンションを活用した節税対策は効果がより大きいとして人気があるようです。
(1)タワーマンションが節税対策として効果的な理由
では、なぜタワーマンションが効果的なのでしょう。
タワーマンションが効果的なのは、部屋の個数が多いため、地積が小さい、つまり土地の持ち分が少なくなることから、結果として土地の評価額が少なく計算されるからです。
例として、時価の5分の一程度の評価額となることもあるようです。
もっとも、注意点として、平成29年度税制改正により以前よりもタワーマンション節税の効果は薄れたといえます。
詳しくは『平成29年度税制改正の4大ポイントを、「不動産投資の教科書」が徹底解説』の記事をご参照下さい。
(2)タワーマンションのデメリット
タワーマンションを活用することによって、節税効果が高い反面、以下のようなデメリットも注意する必要があります。
- ① 人気のため購入価格が高い傾向がある
- ② 賃貸の場合空室リスクが比較的に高い
など。
従って、相続税対策としてタワーマンションの購入を検討する場合、購入する前に一度税理士に相談してみるといいでしょう。
なお、具体的に不動産投資を検討している方詳しくは「不動産投資|安定した不労所得を得るために知っておきたい全知識」をご参照下さい。
まとめ
今回は不動産による相続税対策について書きましたが、いかがでしたでしょうか。参考にしていただけたら幸いです。