「サブリース契約を解約したいのに、業者が応じてくれない」「家賃を一方的に減額された」——こうした悩みを抱えるオーナーの方は少なくありません。
結論からお伝えします。サブリース契約は、オーナー側からの解約が法律上きわめて難しい仕組みになっています。理由は、サブリース会社が「借主」の立場となり、借地借家法によって強く保護されるためです。「30年一括借り上げ」という安心感のある言葉の裏側で、実はオーナーのほうが不利な立場に置かれている——これがサブリースの本質的な構造です。
不動産投資の教科書を2014年から12年運営し、累計数百件の相談に対応してきた経験から、なぜ解約できないのか、そしてそれでも解約するための3つの方法を、物件を売らない完全中立の立場で解説します。
📌 この記事の結論
- サブリース契約ではサブリース会社が「借主」となり、借地借家法で保護される。そのためオーナーからの解約には「正当事由」が必要で、簡単には解約できない。
- 「30年家賃保証」でも家賃は減額されうる(借地借家法32条の借賃減額請求)。契約書に「減額しない」と書いても無効とされる場合がある。
- 解約の現実的な方法は①合意解約 ②契約期間満了時の更新拒絶 ③物件売却の3つ。いずれも条件と準備が必要。
- 2020年施行のサブリース新法で、不当な勧誘や誇大広告は禁止された。契約時の説明に問題があれば交渉材料になり得る。
目次
1. なぜサブリースは解約できないのか|法的な理由
多くのオーナーが誤解しているのが、「自分は物件の持ち主だから、いつでも契約を終わらせられる」という点です。実際は逆です。
サブリース会社は「借主」として法律に守られている
サブリース(一括借り上げ)は、オーナーが物件をサブリース会社に賃貸する契約です。つまり法律上、オーナー=貸主、サブリース会社=借主という関係になります。
日本の借地借家法は、立場の弱い借主を保護する法律です。その結果、借主であるサブリース会社が手厚く保護され、貸主であるオーナーからの解約が制限されるという、直感に反する構造が生まれます。
解約には「正当事由」が必要
借地借家法では、貸主から契約を終わらせる(更新を拒絶する・解約を申し入れる)には「正当事由」が必要と定められています。単に「収益性に納得できない」「他社に切り替えたい」といった理由では、正当事由として認められにくいのが実情です。
「30年家賃保証」でも家賃は減額されうる
もう一つの重要な点が、借地借家法32条の「借賃減額請求権」です。借主(サブリース会社)は、経済状況の変化などを理由に家賃の減額を請求できます。
過去の裁判例では、契約書に「家賃を減額しない」旨の特約があっても、その特約が無効と判断されたケースがあります。つまり「30年家賃保証」は「30年間ずっと同じ金額が保証される」という意味ではないのです。ここを誤解したまま契約し、後から減額を迫られて初めて気づくオーナーが後を絶ちません。
2. それでも解約する3つの方法
難しいとはいえ、解約が不可能なわけではありません。現実的な選択肢は次の3つです。
方法①:合意解約(最も現実的)
サブリース会社と話し合い、双方の合意で契約を終了する方法です。正当事由の議論を避けられるため、最も現実的な道です。
- メリット:裁判等のコストをかけずに済む/期間満了を待たなくてよい
- デメリット:違約金や立退料を求められることが多い(数か月分の賃料相当など、契約により異なる)
- ポイント:まず契約書の解約条項を確認し、違約金の有無・金額・通知期間を把握してから交渉に入ること
方法②:契約期間満了時に更新を拒絶する
契約期間の満了に合わせて更新しない意思を通知する方法です。ただし前述のとおり、更新拒絶にも「正当事由」が必要で、通知の時期(期間満了の6か月〜1年前など)も法律・契約で定められています。
正当事由が認められるかはケースバイケースで、立退料の支払いによって正当事由が補完されると判断される場合もあります。この方法を検討するなら、弁護士への相談が事実上必須です。
方法③:物件を売却する
解約交渉が難航する場合、物件そのものを売却して手を引くという選択肢もあります。ただし注意点があります。
- サブリース契約は買主に引き継がれるのが原則(契約付きでの売却になる)
- そのため売却価格が下がりやすい/買い手が限定されやすい
- 「サブリース付き物件」を専門に扱う買主を探す必要がある場合も
売却は出口戦略そのものに関わるため、収支と残債を踏まえた冷静な判断が欠かせません。
サブリースの解約・減額でお困りではありませんか?
サブリースの問題は、契約書の条項と物件の収支を合わせて見ないと判断できません。不動産投資の教科書では、物件を一切販売しない完全中立の立場で、代表・山本尚宏が累計数百件の相談実績をもとに、「解約すべきか・保有を続けるべきか・売却すべきか」を無料でアドバイスしています。
完全無料・オンライン全国対応/年収500万円以上の会社員・公務員が対象
3. 家賃を減額されたときの対応
「解約」以前に、多くのオーナーが直面するのが家賃減額の通告です。次の手順で冷静に対応しましょう。
- 契約書の家賃改定条項を確認する:何年ごとに改定協議があるか、減額の条件はどう書かれているか
- 減額の根拠を書面で求める:周辺相場の資料など、根拠の提示を求める
- 周辺相場を自分でも調べる:提示された金額が妥当かを客観的に検証する
- 即断しない:その場で合意せず、専門家に相談してから回答する
減額請求は法律上認められた権利であるため「不当だ」と一蹴はできませんが、金額の妥当性は交渉の余地があります。
4. 2020年「サブリース新法」で何が変わったか
サブリースを巡るトラブルの多発を受け、2020年に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(通称:サブリース新法)が施行されました。主なポイントは次の通りです。
- 誇大広告の禁止:「必ず儲かる」「家賃は下がりません」といった誤解を招く広告の禁止
- 不当な勧誘の禁止:家賃減額のリスクなど、不利な事実を告げずに勧誘する行為の禁止
- 重要事項説明の義務化:契約前に、家賃減額の可能性や契約解除の条件などを書面で説明する義務
そのため、契約時にリスク説明が不十分だった場合、交渉や法的手続きの材料になり得ます。当時の資料や説明内容の記録は保管しておきましょう。
5. サブリースを解約する前に確認すべき5項目
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| ① 契約期間と更新時期 | 次の満了日はいつか/更新拒絶の通知期限は何か月前か |
| ② 解約条項 | 中途解約は可能か/違約金の有無と金額 |
| ③ 家賃改定条項 | 改定の頻度・条件/過去に減額があったか |
| ④ 解約後の収支 | 自主管理や別会社に切り替えた場合、収支は改善するか |
| ⑤ 出口の選択肢 | 保有継続・売却それぞれのシミュレーション |
特に④は見落とされがちです。「サブリースをやめれば収益が増える」と思っていても、空室リスクや管理の手間を負うことになります。解約後の姿まで描いてから動くことが重要です。
6. よくある質問(FAQ)
Q. サブリースはオーナーから解約できないのですか?
できないわけではありませんが、法律上きわめて難しいのが実情です。サブリース会社は借地借家法上「借主」として保護されるため、オーナーからの解約・更新拒絶には「正当事由」が必要です。現実的には合意解約(違約金を伴うことが多い)が最も多い解決方法です。
Q. 「30年家賃保証」なのに家賃を下げられました。契約違反では?
残念ながら、多くの場合は契約違反になりません。借地借家法32条により借主には家賃の減額を請求する権利があり、過去には「減額しない」旨の特約が無効と判断された裁判例もあります。「保証」は金額の固定を意味しないと理解しておく必要があります。
Q. 解約に違約金はかかりますか?
契約内容によりますが、合意解約では違約金や立退料を求められるケースが一般的です。金額は契約により異なるため、まず契約書の解約条項を確認してください。
Q. サブリース付きのまま売却できますか?
可能ですが、サブリース契約は原則として買主に引き継がれます。そのため買い手が限定され、売却価格が下がりやすい点に注意が必要です。
Q. まず誰に相談すればいいですか?
訴訟や法的手続きが視野に入るなら弁護士が適任です。一方、「そもそも解約すべきか、保有か売却か」という投資判断から整理したい場合は、物件を売らない中立の第三者に相談するのが有効です。不動産投資の相談先5つの比較もご覧ください。
7. まとめ:解約は「法的な壁」を理解してから動く
サブリースの解約が難しいのは、サブリース会社が借地借家法で保護される「借主」だからです。この構造を理解しないまま「持ち主なんだから解約できるはず」と交渉しても、話は前に進みません。
現実的な選択肢は①合意解約 ②更新拒絶 ③物件売却の3つ。いずれも、まず契約書の条項確認と解約後の収支シミュレーションが出発点です。
そして最も大切なのは、一人で抱え込まないこと。法的な争点は弁護士へ、投資判断は物件を売らない中立の第三者へ——役割を分けて相談すれば、選択肢は必ず見えてきます。
なお、これから新たにサブリース契約を検討している方は、サブリース契約で損しないために知っておくべき6つのことで契約前のチェックポイントを確認してください。
※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。借地借家法の適用や個別の契約解釈は事案により異なります。実際の解約・交渉にあたっては弁護士等の専門家にご相談ください。
✍️ この記事を書いた人
山本 尚宏(やまもと なおひろ)
株式会社WonderSpace 代表取締役/「不動産投資の教科書」編集長
メディア運営12年|「不動産投資の教科書」を2014年に創設し、12年にわたり運営。
著書|『不動産投資は、「物件」で選ぶと、99%失敗する』
相談実績 累計数百件|サブリースや収支の悩みに代表自らが対応。
完全中立|当社は不動産の売買・仲介を一切行っていません。売る立場ではないため、「解約せず保有すべき」という結論もそのままお伝えします。
本記事は実務経験と公開情報にもとづき執筆しています。法的判断については弁護士にご相談ください。
🔗 あわせて読みたい:不動産投資自体をやめたい方へ|売却か継続かの判断基準



