「減価償却って何?」
「どんなものが対象になるの?」
確定申告を控え、投資や個人経営をしている方の中には、減価償却について調べている方も多いのではないでしょうか。
減価償却は、備品などを経費として計上できるため、節税につながります。
そこで今回は、不動産投資に関する様々な情報を発信するメディア「不動産投資の教科書」が
- 減価償却とは何か
- 減価償却のメリット
- 減価償却の対象になる資産について
- 減価償却の計算ポイント
- 3つの注意点
などについてまとめました。
これから確定申告を控えて、減価償却に疑問を抱いている方のご参考になれば幸いです。
不動産投資の減価償却については、こちらの記事も参考にしていただけると幸いです。
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目次
1、減価償却とは?
ここでは、減価償却の定義や、目的について解説します。
(1)減価償却の定義
減価償却とは、「資産は時間が経つにつれて、価値が減っていく」という考え方で、減価償却の対象となる資産を、減価償却資産といいます。
減価償却資産とは、購入価格が1つあたり10万円以上の固定資産のことです。
事業で使用するもののみとされており、例えばパソコン、車、建物や建物の付帯設備、備品、機械などが減価償却資産にあたります。
また、月日が経過することで価値が落ちる固定資産が対象なので、土地については減価償却資産になりません。
減価償却の対象になる資産は、長期間継続的に使用できるものなので、法令で定められた耐用年数に応じ経費として計上できます。
(2)減価償却の目的
減価償却の目的は、企業や事業者の利益を正確に表すためです。
例えば、40万円でパソコンを購入し減価償却せずに、毎年40万円経費計上したとしましょう。
年月が経つにつれ性能が悪くなるパソコンであるにも関わらず、40万円の価値として経費計上し続けては、利益と経費のバランスを正しく表すことができません。
本当は黒字なのに経費が膨大になり赤字になってしまうなど、企業や事業者の正確な利益が表せなくなるのです。
したがって、パソコンや車などの資産購入時の費用は、全額をその年に経費計上するのではなく、耐用年数に応じて配分していきます。
2、減価償却のメリット
ここでは、減価償却のメリットを紹介します。
(1)節税効果がある
資産によって年数に違いはありますが、減価償却費を経費として計上できるので、数年間にわたり利益を抑えられます。
利益を抑えた分、税額も抑えられるため節税効果があります。
(2)会社の経営状態が見える
減価償却は、固定資産の購入費用をその年に経費計上せず、複数年にわたって計上します。
例えば、購入年度に購入にかかった全額を経費計上すると、その年の利益が大きく圧迫されるので、正確な利益を把握することができません。
減価償却をすれば、購入費用を数年間に分けて計上するので、それぞれの年の経費と売上の経営損益が正しく反映されるのです。
3、減価償却できる資産とできない資産
事業に使用する資産であっても、減価償却として計上できないものもあります。
ここでは、減価償却できる資産とできない資産について説明しましょう。
(1)減価償却できる資産
減価償却できる資産は、購入価格が10万円以上の有形、無形固定資産として業務に使用しているものです。
そして、年月の経過によって消耗しても使用可能な状態の間は、売れるなど財産としての価値があるものが対象です。
例えば、以下のようなもので、10万円以上のものが減価償却の対象になります。
- 建物
- 建物の付帯設備(暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機など)
- 構造物
- 機械及び装置
- 車
- パソコン
- 工具、器具及び備品
- ソフトウエア
- 特許権
- 商標権
- 意匠権
など
ソフトウエアや権利系などの無形固定資産も、財産としての価値があれば減価償却の対象となります。
(2)減価償却できない資産
減価償却できない資産は、事業に使用していない固定資産、年月の経過によって劣化し価値が減少しない固定資産などです。
例えば、以下のようなものが減価償却として計上できません。
- 土地
- 借地権など
- 電話加入権
- 書画
- 骨董品など
- 稼働休止中の資産
など
土地や借地権は年月の経過によって劣化することがないため、対象になりません。また、稼働を休止している資産も、業務に使っているとはいえないので減価償却の対象外です。
4、減価償却するための計算ポイント
減価償却は、取得価額や耐用年数などにより計算します。
ここでは、減価償却するための計算ポイントを説明し、計算例なども紹介するので参考にしてみてください。
(1)取得価額
取得価額とは、資産の取得または製造にかかった費用のことです。資産を購入した場合は、購入代価に付随費用などを加算した金額になります。
例えば車を買った場合なら、車両本体、カーナビなど、オプション品の購入代価に、運搬費、自賠責保険、仲介手数料、税金類、保管料、購入事務手数料など付随費用を加算します。
そのため、資産を購入する際は、付随費用についても把握できるようにしておきましょう。
(2)耐用年数
減価償却の対象となる固定資産は、資産ごとに細かく耐用年数が決められていて、自分で勝手に決めることはできません。
耐用年数が細かく設定されている理由は、固定資産の取得価額をできるだけ収益化できるように、期間を分割して計上できるようにしているためです。
例えば、事務所を構える際のおもな固定資産には、以下の耐用年数が定められています。
事務所用の建物
木造、合成樹脂造のもの:24年
木骨モルタル造のもの:22年
鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造のもの:50年
事務所内の備品
冷房用、暖房用機器:6年
事務机、事務いす、キャビネット:15年
接客用の応接セット:5年
冷蔵庫やガス機器:6年
電話設備やデジタル通信機器:6年
パソコンなどの機器
サーバーとして使用しているパソコン:5年
それ以外のパソコン:4年
複合機コピー機:5年
自動車
普通の乗用車:6年
軽自動車、ダンプ式のトラック:4年
ダンプ式以外のトラック:5年
上記の耐用年数は、一部の減価償却資産の耐用年数です。
ほかにも、多くの固定資産耐用年数が定められています。国税庁のHP「耐用年数表」に記載されているので、確認しておきましょう。
(3)一括償却資産の特例
減価償却は、年月の経過による資産価値の低下(耐用年数)に合わせて、資産の取得価額を期ごとに経費として配分します。
しかし、一括償却資産では、10万円以上20万円未満の減価償却資産を3年で均等償却できるのです。
この特例は、国税でのみ適用されます。地方税においては、国税で一括償却資産として処理した資産は、固定資産税の対象にならないので注意しましょう。
また、従業員数が1,000人以下の個人事業主や中小企業(資本金1億円以下)には、少額減価償却資産の特例という制度があります。
青色申告をしている必要はありますが、取得価額が30万円未満の減価償却資産を、一括で減価償却費として計上できる特例です。
5、減価償却の2つの計算方法|定額法と定率法
減価償却を計算するには定額法と定率法があり、選ぶ方法によって毎期の減価償却額が変わります。
税法では、個人事業主は定額法、法人は定率法、と定められていますが届出することで選択は可能です。
(1)定額法
「定額法」は、減価償却資産の購入代金を単純に耐用年数の期間で分割して、減価償却する計算方法です。
耐用年数期間の減価償却額が毎回同じなので、もっともわかりやすい計算方法になります。
例えば、耐用年数が6年の固定資産を150万円で取得した場合、単純に購入価格の150万円を耐用年数で割るだけです。
150万円 ÷ 6年 = 25万円
となります。よって、この固定資産は1期ごとに25万円を6年間、減価償却するというわけです。
(2)定率法
一方「定率法」は、未償却部分から毎期一定割合の金額を減価償却していく方法です。
定率法は、最初の年に多く売却し、徐々に減価償却の計上額が減っていく計算方法になります。
例えば、耐用年数が6年の固定資産を150万円で取得したとしましょう。
まずこの場合、*償却保証額は、耐用年数6年で0.09911に定められています。150万円の0.09911なので、償却保証額は148,665円になります。
※償却保証額とは、計算したあと減価償却額が下回った年でも、償却保証額を計上できる納税者の事務負担を考慮したもの。
また、耐用年数6年の場合、償却率は0.333と定められています。これは耐用期間中、固定資産の金額の0.333を掛けた数字が償却金額になるということです。
次章で、実際に計算例を紹介しますが、流れとしては以下のようになります。
1年目:固定資産の取得価額 × 0.333 = 1年目の減価償却費
2年目:(固定資産の取得価額 − 1年目の減価償却費) × 0.333 = 2年目の減価償却費
上記のような流れで、3年目は固定資産の購入価格から1と2年目の減価償却費を引いて、0.333を掛けて減価償却費を求めていきます。
6年目まで計算していくと途中で償却保証額の148,665円を下回るはずです。その場合は、この148,665円を償却費として計上できるというわけです。
耐用年数による償却保証率と償却率は、国税庁発行の「減価償却資産の償却率等表」を参照してください。
また、減価償却の計算法を変更したい場合は、変更する年の3月15日までに管轄税務署長へ申請する必要があります。
※2016年4月以降に取得した建物、建物付属設備、構築物については、個人法人問わず「定額法」での償却となる
6、減価償却の計算例を紹介
ここでは、減価償却費を求める計算例を紹介していきます。
(1)計算例1:個人事業主が40万円のパソコンを購入した
以下の条件で減価償却費を計算してみましょう。
計算方法:定額法
固定資産:パソコン
取得価額:40万円
耐用年数:4年
前述したように、定額法では単純に取得価額を耐用年数で分割するだけです。減価償却費として計上できる4期間は、以下のような計算になります。
計算式:取得価額 ÷ 耐用年数 = 1回の減価償却費
1年目:40万円 ÷ 4年 = 10万円
2年目:40万円 ÷ 4年 = 10万円
3年目:40万円 ÷ 4年 = 10万円
4年目:40万円 ÷ 4年 = 10万円
となり、毎期ごと「10万円」が減価償却費となります。
(2)計算例2:法人企業が新車を100万円で購入した
以下の条件で減価償却費を計算してみましょう。
計算方法:定率法
固定資産:車
取得価額:100万円
耐用年数:4年
前述したように、最初の年に多く売却し徐々に減価償却の計上額が減っていく方法です。計算前に、償却保証額と償却率を確認します。
耐用年数が4年なので、償却保証率0.12499で保証額は124,990円、償却率は0.5になります。
減価償却費として計上できる4期間は、以下のような計算になります。
1年目:100万円 × 0.5 = 「50万円」
2年目:(100万円 − 50万円)× 0.5 = 「25万円」
3年目:(100万円 − 50万円 − 25万円) × 0.5 = 「12.5万円」
4年目:(100万円 − 50万円 − 25万円 − 12.5万円) × 0.5 = 「6.25万円」
4年目に償却保証額124,990円を下回ってしまうため、4年目は償却保証額124,990円が減価償却費になります。
耐用年数による償却保証率と償却率は、国税庁発行の「減価償却資産の償却率等表」を参照ください。
7、減価償却の3つの注意点
ここでは、減価償却の3つの注意点を紹介します。
誤った計算をすると税務署に指摘されてしまうので、しっかりと確認しましょう。
(1)耐用年数を確認する
前述したように、固定資産には細かく耐用年数が決められています。
例えば、事務所の建物も建材によって違いますし、パソコンもサーバー用なのかそうではないのかで耐用年数が異なるので、国税庁のHP「耐用年数表」で調べるようにしましょう。
(2)中古品の場合
固定資産が中古品の場合でも、取得価額の決め方は同じです。
しかし、資産価値は低下しているのが当たり前なので耐用年数は短くなります。
定率法で減価償却する場合、耐用年数2年の中古品なら全額を1年で償却できるなど、早い年数で計上できるケースもあるので、しっかりと調べましょう。
(参照:No.5404 中古資産の耐用年数)
(3)資産を処分したら
耐用期間で減価償却している途中の固定資産を処分した場合、発生した損失を「固定資産除却損」として計上する必要があります。
除却処理をしないと、処分した固定資産に償却資産税がかかり続けることになるので注意しましょう。
まとめ
減価償却は、事業に利用するさまざまな固定資産を購入したときの費用を、耐用年数に応じて経費計上できる会計処理方法です。
減価償却を正しく理解し、しっかりと計上すれば節税効果も期待できるので忘れずに処理しましょう!