「ETFと投資信託、名前は似ているけれど何が違うの?」「新NISAで買うならどっちがいいの?」——証券会社の口座を開いたところで、ここで手が止まる方はとても多いです。
「不動産投資の教科書」編集長の山本尚宏です。2014年の創設から12年、累計数百件の資産運用のご相談を受けてきました。
最初に結論をお伝えします。ETFと投資信託は、どちらも「投資信託」という同じ仕組みの商品です。違いは「証券取引所に上場しているかどうか」の1点で、そこから売買の方法・コスト・分配金の扱いの差が生まれます。
そして、よく言われる「ETFのほうがコストが安い」は、今は必ずしも正しくありません。この記事では、同じ全世界株式(オルカン)の実際の商品を並べて、この点を数字で確かめます。
⚖️ 先に結論
① 仕組みは同じ。ETFは「上場投資信託」。違いは取引所で売買できるかどうか。
② コストはETFが安いとは限らない。同じオルカンなら、投資信託(0.05775%)がETF(0.0858%)より低い。
③ 毎月コツコツ積み立てるなら投資信託が手間なく向いている。
④ NISAでETFを買う人は「株式数比例配分方式」を必ず確認。選んでいないと分配金に20.315%課税される。
目次
ETFと投資信託は同じもの?|仕組みは同じ、違いは「上場」だけ
ETFはExchange Traded Fund(上場投資信託)の略です。名前のとおり、ETFも投資信託の一種です。
どちらも、多くの投資家から集めたお金をひとまとめにして、運用会社が株式や債券に投資する仕組みです。日経平均株価やS&P500、全世界株式といった「指数」に連動する商品が多い点も共通しています。
決定的な違いは「どこで、どうやって売買するか」です。
投資信託(一般的な投資信託)
証券会社や銀行を通じて運用会社から直接買います。価格(基準価額)は1日1回だけ決まり、注文した時点ではいくらで買えるか確定しません。
ETF(上場投資信託)
株式と同じように証券取引所で売買します。取引時間中は価格がリアルタイムで動き、指値注文や成行注文で自分の買いたい価格を指定できます。
つまり「中身の運用は投資信託、買い方は株式」というのがETFです。この違いが、次の7項目の差になって表れます。
ETFと投資信託の違い|7項目の比較表
| 比較項目 | 投資信託 | ETF(上場投資信託) |
|---|---|---|
| ① 買う場所 | 証券会社・銀行など | 証券取引所(証券会社経由) |
| ② 価格の決まり方 | 1日1回の基準価額 | 取引時間中にリアルタイムで変動 |
| ③ 注文方法 | 金額または口数で申し込み (価格は注文後に確定) |
指値・成行で注文 (株式と同じ) |
| ④ 最低投資額 | 100円から買える証券会社が多い | 1口単位など決められた単位×市場価格 |
| ⑤ 保有中のコスト | 信託報酬 | 信託報酬 |
| ⑥ 売買時のコスト | 購入時手数料が無料(ノーロード)の商品が多い | 売買手数料(無料の証券会社もある)+売値と買値の差(スプレッド) |
| ⑦ 分配金 | 無分配型を選べば、ファンド内で自動的に再投資される | 多くが定期的に分配。再投資は自分で行う |
このうち、実際の損得に効くのは⑤⑥⑦のコストと分配金です。ここを具体的な商品で比べます。
同じ「オルカン」で比べると?|投資信託とETFを実際の数字で比較
まず、よくある誤解を解いておきます。「オルカン」は、三菱UFJアセットマネジメントの投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の愛称です。つまりオルカンはETFではなく投資信託です。
ただし同じ運用会社が、全世界株式に投資するETF「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信(証券コード2559)」も出しています。投資先がほぼ同じなので、投資信託とETFの違いを比べるのにうってつけです。
| 項目 | eMAXIS Slim 全世界株式 (オール・カントリー) =投資信託 |
MAXIS全世界株式 (オール・カントリー)上場投信 =ETF(2559) |
|---|---|---|
| 信託報酬(税込・年) | 🟢 0.05775% | 🟠 0.0858% |
| 購入時の手数料 | 🟢 なし | 証券会社の売買手数料(無料の会社もある)+スプレッド |
| 分配金 | 🟢 無分配(ファンド内で再投資) | 🟠 年2回(6月・12月) |
| 積立のしやすさ | 🟢 100円から自動積立できる証券会社が多い | 🟠 口数単位。定期買付に対応する証券会社は限られる |
※信託報酬は各社公表値。eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は2026年9月11日基準。最新の数値は各運用会社のサイトでご確認ください。
この比較で分かることは2つです。
第一に、信託報酬は投資信託のほうが低いことです。「ETFは投資信託よりコストが安い」と言われていたのは、低コストの投資信託が少なかった頃の話です。今は、同じ指数なら投資信託のほうが安いケースが珍しくありません。
第二に、分配金の扱いの差です。ETFは分配金が出るたびに、課税口座(特定口座など)では20.315%の税金が差し引かれてから受け取ります。受け取ったお金を再投資しない限り、その分は運用から外れます。無分配型の投資信託は、税金を払わずにファンドの中で運用を続けられるため、長期では複利の効き方に差が出ます。
「ETFはコストが安い」は本当か|見落としがちな3つのコスト
ETFのコストを考えるときは、信託報酬だけを見ると判断を誤ります。次の3つを合わせて考えてください。
① 売買手数料
ETFは株式と同じく、売買のたびに証券会社の手数料がかかる場合があります。国内ETFの売買手数料を無料にしている証券会社もあるので、自分の口座の条件を確認してください。
② スプレッド(売値と買値の差)
取引所では、買いたい人の価格と売りたい人の価格に差があります。取引量が少ないETFほどこの差が広がり、買った瞬間に実質的なコストが発生します。信託報酬には表れない、見えにくいコストです。
③ 市場価格と基準価額のずれ(乖離)
ETFの市場価格は、需要と供給で動きます。そのため中身の本来の価値(基準価額)より高い価格で買ってしまうことがあります。特に取引が少ない銘柄や、相場が急変した場面で起こりやすくなります。
取引量が多く、純資産総額が大きいETFを選ぶことで、②と③のリスクは抑えられます。
NISAで買うときの注意点|ETF派が必ず確認すべき3つ
① つみたて投資枠で買えるETFはごく一部
新NISAのつみたて投資枠は、金融庁の基準を満たした商品しか買えません。対象になっているETFはごく一部で、ほとんどのETFは成長投資枠での購入になります。
一方、つみたて投資枠の対象商品の大半は投資信託です。「毎月の積立はつみたて投資枠で」と考えている方にとっては、投資信託のほうが選択肢が圧倒的に多いのが現実です。
② 【最重要】分配金を非課税にするには「株式数比例配分方式」が必要
ここがETFをNISAで買う人の最大の落とし穴です。
NISA口座でETFを持っていても、分配金の受け取り方を「株式数比例配分方式」(証券会社の口座で受け取る方式)にしていないと、分配金に20.315%の税金がかかります。銀行口座で受け取る方式や、郵便局で配当金領収証を使って受け取る方式では、NISAなのに非課税になりません。
⚠️ 今すぐ確認してください
この受取方式は、株式・ETF・REITなど上場している商品すべてに共通の設定です。NISA口座でETFを保有している方は、証券会社の口座設定で「株式数比例配分方式」になっているかを確認してください。なお、証券取引所に上場していない一般的な投資信託の分配金は、この設定がなくてもNISA口座では非課税です。
③ 分配金を再投資すると、その分の投資枠を使う
ETFの分配金を受け取って、それで再びETFを買うと、その買付はNISAの新しい投資として非課税枠を消費します。
無分配型の投資信託であれば、利益はファンドの中で再投資され続けるため、枠を消費しません。限られた非課税枠を効率よく使いたい方にとって、ここは見逃せない差です。
あなたはどっち向き?|タイプ別の判断表
| 🟢 投資信託が向いている人 | 🔵 ETFが向いている人 |
|---|---|
| 毎月決まった額を自動で積み立てたい | 相場を見ながら指値で買う価格を指定したい |
| 100円など少額から始めたい | 分配金を定期的に受け取りたい |
| 一度設定したらほったらかしにしたい | 投資信託では扱いのない指数や資産(商品・特定テーマ等)に投資したい |
| NISAのつみたて投資枠を中心に使う | まとまった資金を一度に、取引時間中に機動的に動かしたい |
| 分配金による課税や再投資の手間を避けたい | 売買手数料やスプレッドを自分で管理できる |
資産形成の目的で、これから長期の積立を始める方の多くは、投資信託から始めるのが合理的です。ETFは、取引に慣れてきて「投資信託では買えない対象に投資したい」「分配金を生活資金にしたい」といった明確な目的ができたときに、選択肢に加える形で十分間に合います。
よくある質問
Q. ETFと投資信託は同じですか?
仕組みは同じです。ETFは「上場投資信託」で、投資信託の一種です。違いは証券取引所に上場しているかどうかで、上場しているETFは株式と同じように取引時間中にリアルタイムの価格で売買できます。
Q. 投資信託とETF、どっちが得ですか?
商品と使い方次第です。同じ全世界株式で比べると、信託報酬は投資信託(eMAXIS Slim 全世界株式:0.05775%)のほうがETF(2559:0.0858%)より低くなっています。さらにETFは売買手数料やスプレッド、分配金への課税も考える必要があります。「ETFだから安い」とは限らないので、信託報酬以外のコストも含めて比較してください。
Q. オルカンはETFですか?
いいえ、投資信託です。「オルカン」は投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の愛称です。同じ運用会社から、全世界株式に投資するETF「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信(2559)」が別の商品として出ています。
Q. ETFのデメリットは何ですか?
主に4つです。①自動積立に対応する証券会社が限られる、②売買手数料やスプレッドなど信託報酬以外のコストがかかる、③分配金が出るたびに課税され(課税口座の場合)、再投資は自分で行う必要がある、④取引量が少ない銘柄は市場価格が本来の価値からずれることがある、の4点です。
Q. 初心者はどちらから始めるべきですか?
長期の資産形成が目的なら、投資信託から始めるのがおすすめです。少額から自動で積み立てられ、無分配型を選べば分配金の課税や再投資の手間もかかりません。NISAのつみたて投資枠で選べる商品も投資信託が中心です。
まとめ|「上場しているかどうか」の違いを、自分の使い方に当てはめる
ETFと投資信託は、同じ「投資信託」という仕組みの商品です。違いは証券取引所に上場しているかどうかで、そこから売買方法・コスト・分配金の扱いに差が生まれます。
そして「ETFのほうがコストが安い」は、今は必ずしも正しくありません。同じ全世界株式なら、投資信託の信託報酬のほうが低く、分配金の課税も発生しません。
毎月コツコツ積み立てるなら投資信託、取引を自分でコントロールしたい・分配金を受け取りたいならETF。そしてNISAでETFを持つ方は、「株式数比例配分方式」の設定だけは今日中に確認してください。
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