不動産を売却する際には、複数の書類を用意する必要があります。これらの書類は売主と買主が不動産取引を安全に行うためのものです。
必要書類を事前に用意することで、不動産売却をスムーズに進められます。
スムーズな不動産の売却は、機会損失を防ぎ、早期で高額な売却を期待できるでしょう。
売却が有利になるなら、必要書類を事前にしっかり揃えない手はありません。
- 本格査定(訪問査定)までに必要な書類
- 不動産売買契約時までに必要な書類
以上2つのタイミングごとに、不動産売却で必要な書類について、徹底解説します。
不動産売却の必要書類チェックリストも掲載していますので、ぜひご活用ください。
目次
1、不動産売却の必要書類①|本格査定(訪問査定)までに必要な書類
不動産売却を考えた場合、まずは売りたい不動産の市場価格がどれくらいか査定してもらいます。
はじめに一括査定サイトなどを利用して簡易査定をしてもらい、次に不動産会社を選び本格査定(訪問査定)をしてもらうという流れが一般的です。
不動産の訪問査定において必要な書類は、次のとおりです。
(1)登記簿謄本(登記事項証明書)
登記簿謄本(登記事項証明書)は、登記簿(登記所に保管されている帳簿)の写しのことで、不動産の所有権移転など登記事項を証明する書類です。
不動産登記簿には、土地についての情報を記録する「土地登記簿」と、建物についての情報を記録する「建物登記簿」があります。
登記簿謄本は、全国の法務局でどなたでも閲覧・取得できます。インターネットでの閲覧・取得も可能です。取得・閲覧にはどちらの方法でも手数料がかかります。
登記簿謄本(登記事項証明書)取得の際には、不動産の住所ではなく「所在・地番」が必要となりますので注意しましょう。
ご自身で用意する時間がない場合には、不動産会社の担当者などに取得を依頼したり、インターネットでの請求を利用しましょう。
(2)土地測量図・境界確認書
土地測量図・境界確認書は、土地の面積や境界線の位置などが記載されている書類です。
戸建てや土地を売却する際に必要な書類となります。
土地測量図・境界確認書は、土地を取得した際に受け取っていることが一般的です。
紛失した場合などには、法務局で取得できます。
戸建てや土地の売却において、境界線が明確でないと、隣接地の所有者とトラブルに発展してしまうおそれがあります。
土地測量図・境界確認書が作成されていない場合には、隣接地の所有者と話し合い、土地家屋調査士に依頼して測量図を作成しましょう。
なお、土地売却に関する詳細については、「土地売却の流れと速く高値で売るための3つのコツ」もご覧ください。
(3)物件間取り図
物件間取り図は、戸建てやマンション購入時に受け取っていることが一般的です。
人気のある設備がある場合、販売図面に記載することによって、物件の売りポイントにもなりますので、必ず提示するようにしましょう。
万が一、手元になければ不動産会社が作成してくれるので問い合わせましょう。
(4)売買契約書
売りたい物件を購入したときに、以前の所有者との間でかわした売買契約書を用意しましょう。
売買契約書には、以下のような情報が記載されています。
- 契約日
- 引渡し日
- 売買代金
- 手付金の金額
- 物件の状況
- 付帯する特約
万が一、売買契約書が手元にない場合には、不動産購入時の不動産会社へ問い合わせましょう。
(5)重要事項説明書
重要事項説明書は、売買契約書と同様に、以前の所有者と売買契約を締結した際に作成される書類です。
主に、以下のような売買契約に必要な情報が記載されています。
- 物件の内容
- 取引条件
- 告知事項
万が一、重要事項説明書がない場合には、不動産購入時の不動産会社へ問い合わせましょう。
(6)管理規約・維持費等の書類・管理委託契約書
次のような書類は、マンションの売却においてのみ必要な書類です。
マンション購入時に受け取っていることが一般的です。
- 管理規約
- 維持費等の書類
- 管理委託契約書
万が一、手元にない場合には、マンションを購入した不動産会社やマンション管理組合などに問い合わせましょう。
①管理規約
「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)によって、マンションの管理を維持するために、個々のマンションによってルールを定められるとしています。
例えば、「ペットの飼育ができるか」「管理会社にどの部分まで委託しているか」といったマンション管理の詳細な情報を規定することができます。以上のように、マンションごとに定められたルールのまとめが「管理規約」です。
②維持費等の書類
マンションの管理費や修繕積立金などの維持費を確認できる書面を用意しましょう。
固定資産税と同じように、マンションの管理費や修繕積立金も決済日を基準に精算することになります。
③管理委託契約書
マンションの管理を管理会社に委託する場合にかわされる契約書です。
(7)地番調査報告書・耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書等
戸建てや土地の売却の場合には、以下の書類を用意できるとよいでしょう。
- 地盤調査報告書
- 耐震診断報告書
- アスベスト使用調査報告書等
地盤の強度や耐震、アスベストに関する調査をした報告書です。
これらの書類が見当たらない場合には、購入時の建築会社へ問い合わせてください。
(8)住宅性能評価書
住宅性能評価書は、国土交通大臣に登録した第三者評価機関が、国が規定した基準に沿って住宅の性能を公平な立場で評価した書面です。
戸建ての売却時にあるとよい書類となります。
もし、在宅性能評価書が手元にない場合には、購入時の建築会社へ問い合わせましょう。
(9)建築確認済証・建築検査済証・建築設計図書
建築確認済証や検査済証は、一戸建ての売却に必要な書類です。
売却する不動産が、建築基準法を満たした物件であることを証明する書類となります。
売却しようとしている不動産を購入した際に、受け取っていることが一般的です。
建築基準法に則って建設されたかどうかについては、購入希望者の付きやすさや売却価格に大きく影響するため、不動産会社に提出しましょう。
手元にない場合は、最寄りの役所の建築課(もしくは建築関連の業務を行っている係)の窓口にて、「建築台帳記載事項証明書」という同じ効力を持った書類を発行してくれます。
建築設計図書は、将来物件をリフォームする際にも必要になることがあります。
(10)物件のパンフレット
物件の設備に関する説明書や物件購入時のパンフレットなどの資料があれば、物件について具体的にイメージしやすくなるため、買主へ提示するようにしましょう。
2、不動産売却の必要書類②|不動産売買契約時までに必要な書類
晴れて不動産売却が決定したあと、不動産売買契約を締結するまでに必要な書類について、以下2つに分類して説明します。
- 売主に関連する書類
- 不動産に関連する書類
(1)売主に関連する書類
不動産売買契約を締結するまでに準備する必要のある売主本人に関連する書類は、次のとおりです。
- 身分証明書
- 印鑑証明書(実印)
- 住民票
- ローン残高証明書
以上の書類のなかで、用意するにあたって注意すべき書類について補足します。
①身分証明書
売主の本人確認のために提示する書類です。
身分証明書として、運転免許証やパスポート、健康保険証などを用意しましょう。
②印鑑登録証明書
印鑑証明書は、3ヶ月以内に発行されたものを提出しましょう。
お住まいの地域の役所で取得できます。郵送での請求も可能です。
万が一、印鑑登録をしていない場合には、お住まいの地域の役所で登録しましょう。
印鑑登録の申請から印鑑登録証明書の発行までには時間がかかることもあるのでご注意ください。
③住民票
住民票は、売却する不動産の登記の所在地と売主の現住所が異なる場合、司法書士に所有者の移転登記をしてもらうために必要となる書類です。
過去に売却予定の不動産に住んでおり、その後に1回引越した場合は、前の住所も記載される住民票の写しを用意します。
住民票の写しには、現住所に移る直前の住所しか記載されません。
複数回引越しをしている場合には、すべての住所履歴が掲載されている戸籍附票が必要となるため、注意が必要です。
住民票も、印鑑証明と同様に3ヶ月以内に発行されたものを提出しましょう。
お住まいの地域の役所で取得できます。郵送での請求も可能です。
郵送による住民票取得には多少時間がかかることもあるのでご注意ください。
マイナンバーカードを所有している場合には、コンビニなどの複合機にて入手可能です。
④ローン残高証明書
住宅ローンを利用している場合には、ローン残高証明書が必要です。
もし、ローン残高証明書が手元にない場合には、ローンで利用していた銀行などへ問い合わせて再発行しましょう。
(2)不動産に関連する書類
不動産売買契約時までに必要な売却する不動産に関する書類は次のとおりです。
- 登記済権利証(登記識別情報)
- 売買契約書
- 重要事項説明書
- 固定資産税納税通知書
①登記済権利証(登記識別情報)
登記済権利証は、不動産の所有権取得登記が完了すると法務局から発行され、「権利証」とも呼ばれます。
不動産売却において売主が物件の所有者であるかどうかを証明する書類です。
不動産会社との媒介契約締結時および、売買契約締結時に買主に提示します。
登記済権利証は、不動産を購入した際に法務局から取得する書類です。
なお、平成17年の不動産登記法改正によって、登記済権利証に代わって「登記識別情報」が導入されました。
登記識別情報とは、登記名義人に通知書にて通知される12桁の文字列です。
登記識別情報があれば、所有関係の確認が可能です。書面ではなく符号を提示するだけで済むというメリットがあります。
法改正が行われたのは平成17年ですが、実際には平成18年から平成20年にかけて段階的に登記識別情報に変更していったのが実情です。
平成17年以降に取得した不動産の場合は、権利証ではなく登記識別情報に変更されている可能性があります。
― 登記済権利証・登記識別情報を紛失した場合
登記済権利証は、紙でできた書類なので長期間保管していると紛失することもあるでしょう。
登記識別情報についても、通知書を紛失してしまう可能性もあります。
万が一、権利証や登記識別情報を紛失してしまった場合には、次の2つの方法から本人確認をしましょう。
- 本人確認情報
- 事前通知制度
本人確認情報は、登記を代行する司法書士が「権利証などを紛失したものの正規の所有者である」ことを確認し、司法書士の名前で証明する方法です。
本人確認情報により、不動産の移転登記が可能になるため、売却も可能になります。
事前通知制度は、法務局を使った確認方法です。
法務局から届いた事前通知に返送をすることで、登記申請が本人からのものであると確認できます。
事前通知制度は、司法書士の手を煩わせることがないため、費用がかかりません。
しかし、事前通知に返送をしなかったら登記申請が却下となってしまい、売却そのものができなくなるため、高リスクです。
権利証や登記識別情報を紛失した場合、一般的には司法書士による本人確認情報を用います。
②売買契約書
売買契約書は、媒介契約を締結した不動産会社が作成してくれます。
物件の範囲や売買代金、手付金額などの記載内容に漏れや誤りがないか、しっかりチェックしましょう。
③重要事項説明書
重要事項説明書についても、売買契約書と同様に媒介契約を締結した不動産会社が作成してくれます。
物件の重要な事項を説明する書類ですので、売主としても内容をしっかりチェックしましょう。
④固定資産税・都市計画税納税通知書
固定資産税・都市計画税納税通知書は、不動産に関する固定資産税と都市計画税の費用を知るために必要な書類です。
固定資産税と都市計画税の金額は、毎年1月1日時点の不動産所有者に対して、毎年4~5月頃に役所から通知書が郵送されます。
不動産売却時には、不動産の引渡し時期を基準に税額を精算することが一般的です。
売主と買主それぞれの税金負担額を算出してもらうために、納税通知書を不動産会社へ提出します。
算出した負担額は、重要事項説明書に記載する必要があるため、早めに提出しましょう。
3、不動産売却の必要書類チェックリスト
ここまで、不動産売却に必要な書類を紹介しました。
当メディア「不動産投資の教科書」では、不動産売却に必要な書類チェックリストを用意しました。
書類名 | 取得方法 | マンション | 戸建 | 土地 |
登記全部事項証明 | 法務局 | ○ | ○ | ○ |
土地測量図・境界確認書 | 法務局 | ○ | ○ | |
物件間取り図 | 手元になければ法務局 | ○ | ○ | |
購入時の売買契約書 | 手元になければ不動産会社 | ○ | ○ | ○ |
購入時の重要事項説明書 | 手元になければ不動産会社 | ○ | ○ | ○ |
物件パンフレットなど | 手元になければ不動産会社 | △ | △ | |
マンションの管理規約 | 手元になければ管理組合 | ○ | ||
マンションの維持費等の書類 | 手元になければ管理組合 | ○ | ||
マンションの管理委託契約書 | 手元になければ管理組合 | ○ | ||
地盤調査報告書 | 手元になければ建築会社 | △ | △ | |
耐震診断報告書 | 手元になければ建築会社 | △ | △ | |
アスベスト使用調査報告書等 | 手元になければ建築会社 | △ | △ | |
住宅性能評価書 | 手元になければ建築会社 | △ | △ | |
登記済権利書または登記識別情報 | 手元になければ法務局 | ○ | ○ | ○ |
建築確認済証 | 手元になければ建築会社 | △ | ○ | |
検査済証 | 手元になければ建築会社 | △ | ○ | |
建築設計図書 | 手元になければ建築会社 | ○ | ||
売買契約書 | 売却するときの仲介会社が作成 | ○ | ○ | ○ |
重要事項説明書 | 売却するときの仲介会社が作成 | ○ | ○ | ○ |
身分証明書 | ー | ○ | ○ | ○ |
銀行口座がわかるもの | ー | ○ | ○ | ○ |
印鑑証明書(3ヶ月以内発行のもの) | 役所 | ○ | ○ | ○ |
住民票(3ヶ月以内発行のもの) | 役所 | ○ | ○ | ○ |
固定資産税・都市計画税納税通知書 | 手元になければ役所 | ○ | ○ | ○ |
(住宅ローンあれば)ローン残高証明書 | 手元になければ金融機関 | ○ | ○ |
売却する不動産が、マンション・戸建て・土地の場合に、それぞれ必要な書類は○、「あれば良い」という書類は△として見やすくした表形式のチェックリストです。
Excel版とPDF版がありますので、ぜひダウンロードいただき、不動産売却の必要書類に抜けや漏れがないようご活用ください。
4、不動産売却に必要な書類を揃えるポイント
不動産売却において必要な書類をすべてしっかり揃えるために、次のポイントを意識しましょう。
- 計画的に揃える
- 購入希望者が「購入したい!」と思えるように心がける
(1)計画的に書類を揃える
ここまでで説明したように、不動産売却に必要な書類は非常に多くの種類があります。
直前になってすべての書類を一気に準備しようとすると、「あると思っていたのにない!」「役所から取り寄せるのに時間がかかって間に合わない!」などの思わぬアクシデントが起こりかねません。
不動産売却を検討した当初から、書類を少しずつ揃えることを意識しましょう。
計画的に書類を揃えることで、万が一必要書類が足りないという場合でも、時間的余裕があれば対処できます。
(2)購入希望者が「購入したい!」と思えるように心がける
不動産売買において、売主の希望に沿った条件で売買を成約させるためには、不動産会社や購入希望者への不動産の情報を開示することが重要です。
不動産購入時に取得した物件に関する資料などは、不動産売買においては必ずしもなくてはいけないものではありません。
しかし、購入希望者が不動産のイメージをしやすくなるという点では、このような資料も揃えて購入希望者へ提示することがおすすめです。
物件に関する資料が手元にない場合には、不動産を購入した不動産会社などへ問い合わせ、再度取得するとよいでしょう。
不動産売却に必要な書類についてよくあるQ&A
Q1: 書類が必要になるタイミングは?
大きく分けて、価格査定時に必要な書類と売買契約までに必要な書類の2パターンがあります。
Q2: 売却価格査定時に必要な書類は?
基本的には、不動産を購入した際の書類一式が必要になります。
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
- 土地測量図・境界確認書
- 物件間取り図
- 物件のパンフレットなど
- 購入時の売買契約書
- 購入時の重要事項説明書
- 建築確認済証・建築検査済証・建築設計図書
- 管理規約・維持費等の書類・管理委託契約書
- 地番調査報告書・耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書等
- 住宅性能評価書
Q3: 売買契約までに必要な書類は?
不動産を売却する人が準備する書類は主に以下の6点です。
- 現住所の身分証明書
- 印鑑証明書
- 住民票
- ローン残高証明書
- 固定資産税納税通知書
- 登記済権利証(登記識別情報)
売却にあたっての売買契約書・重要事項説明書は不動産会社(仲介業者)が準備します。
まとめ
いかがでしょうか。
今回は、不動産売却で必要な書類について解説しました。不動産の売却には、非常に多くの書類が必要ということがご理解いただけたかと思います。
書類によっては、売却したい不動産を購入したときから、売却時まで長期間保管していなければならず、スムーズに揃えられないというケースも。
いざ不動産会社と媒介契約を結んでから書類をすべて揃えようとしても、時間がなくすべて揃えられないということも考えられます。
不動産売却の書類収集で慌てないよう、この記事を参考に、確実に必要書類を揃えて理想の条件で不動産売却を目指しましょう。
なお、より手間なく高く売却したいのであれば不動産売却査定サイトの活用がオススメです。
様々な売却査定サイトがありますが、その中でも不動産投資の教科書がオススメするのは、以下の大手6社が参画している「すまいValue」です。
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