「毎月の持ち出しが続いている」「そろそろ手放したほうがいいのか」——保有している投資用ワンルームマンションを売るかどうか迷って、この記事にたどり着いた方が多いと思います。
「不動産投資の教科書」編集長の山本尚宏です。2014年の創設から12年、累計数百件のご相談を受けてきました。
最初にお伝えしたいのは、「ワンルームマンション 売却」で上位に出てくる記事のほとんどは、売却の仲介や買取をする会社が書いているということです。どれも「売る」ことが前提になっています。
この記事では、物件を売らない第三者の立場から、そもそも今売るべきか、持ち続けるべきかの判断基準から整理します。売ると決めた場合の税金・費用・手順もまとめています。
⚖️ 先に結論
① 判断は「3つの数字」で決まります。残債と売却見込み額の差、毎月の手残り、売却時の税金と費用です。「なんとなく不安」で売ると損をしやすくなります。
② 税率は「5年」を境に約半分になります。売った年の1月1日時点で所有期間が5年以下なら39.63%、5年超なら20.315%です。数か月待つだけで税額が大きく変わることがあります。
③ 投資用ワンルームの価格は「利回り」で決まります。買い手は投資家なので、家賃と期待利回りから価格が逆算されます。
④ 売却額が残債を下回ると、差額を用意しないと売れません。この場合は、売るより持ち続けるほうが合理的なこともあります。
目次
投資用ワンルームの売却価格はどう決まるのか
自宅のマンションと違い、投資用ワンルームは入居者が住んだまま売る「オーナーチェンジ物件」として取引されるのが一般的です。買い手は住む人ではなく投資家なので、「この家賃なら、いくらで買えば何%の利回りになるか」で価格を判断します。
考え方の目安は次のとおりです。
売却価格の目安 = 年間家賃 ÷ 買い手が求める表面利回り
たとえば家賃が月8万円(年96万円)の物件なら、買い手が求める利回りによって価格はこれだけ変わります。
| 買い手が求める表面利回り | 売却価格の目安 |
|---|---|
| 4.5% | 約2,133万円 |
| 5.0% | 約1,920万円 |
| 5.5% | 約1,745万円 |
| 6.0% | 約1,600万円 |
※計算例です。実際の価格はエリア・築年数・管理状態・その時の金利環境で変わります。一般に、都心の築浅物件ほど求められる利回りは低く(=価格は高く)、郊外や築年数の古い物件ほど高く(=価格は低く)なります。
ここから分かるのは、家賃が下がると売却価格も下がるということです。月8万円の家賃が7万5,000円に下がると、利回り5%で計算した価格は約120万円下がります。家賃の推移は、売り時を判断する重要な材料です。
売るべき人・持ち続けるべき人
売るかどうかは、物件の状況とあなたの家計の両方で決まります。代表的なパターンを整理します。
| 🔴 売却を検討したほうがいいサイン | 🟢 持ち続ける選択肢が合うケース |
|---|---|
| 毎月の手残りがマイナスで、家賃下落や修繕積立金の値上げで今後も改善の見込みがない | 毎月の手残りがプラス、または小さなマイナスでもローン残債が順調に減っている |
| 売却見込み額が残債を上回っていて、今売れば手元にお金が残る | 売却見込み額が残債を下回り、売ると自己資金の持ち出しが必要になる |
| 築年数が進み、大規模修繕や設備の交換が近い | 所有期間が5年以下で、売ると高い税率(短期譲渡)がかかる |
| 住宅購入や教育費など、資金や借入枠が必要なライフイベントが近い | 賃貸需要の強い立地で、空室のリスクが低い |
| 所有期間が5年を超え、税率が下がった | 金利や家賃が安定していて、長期保有の前提が崩れていない |
左右の両方に当てはまることも珍しくありません。その場合に頼りになるのが、次の3つの数字です。
売る前に確認すべき3つの数字
数字①:残債と売却見込み額の差
ローンの返済予定表で今の残債を確認し、売却見込み額と比べます。売却見込み額から残債と売却費用を引いた額が、売ったときに手元に残るお金(またはマイナスなら不足額)です。これがマイナスだと、差額を自己資金で用意しないと売却できません。
数字②:毎月の手残り
家賃から、ローン返済・管理費・修繕積立金・賃貸管理の委託料・固定資産税(月割り)を引いた額です。マイナスなら、持ち続ける限り毎月その額を払い続けることになります。ただしローン返済のうち元金部分は資産として積み上がっているので、手残りがマイナスでも「元金の減り」と比べて判断します。
数字③:売却時の税金と費用
利益が出れば譲渡所得税がかかり、仲介手数料などの費用もかかります。税率は所有期間で約2倍違うので、売る時期によって手取りが大きく変わります。次の章で詳しく説明します。
3つの数字がそろえば、「今売る」「数か月待って売る」「持ち続ける」のどれが得かを比べられます。
売却にかかる税金|5年を境に税率が約半分に
不動産を売って利益(譲渡所得)が出ると、税金がかかります。計算の考え方は次のとおりです。
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
税率は所有期間で決まります。
| 区分 | 所有期間 | 税率(合計) | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 売った年の1月1日時点で5年以下 | 39.63% | 所得税30%・復興特別所得税0.63%・住民税9% |
| 長期譲渡所得 | 売った年の1月1日時点で5年超 | 20.315% | 所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5% |
注意したいのは、所有期間が「売った日」ではなく「売った年の1月1日時点」で判定されることです。たとえば2021年4月に購入した物件なら、2026年中に売ると1月1日時点で4年9か月なので短期、2027年1月1日以降に売れば長期になります。
投資用ワンルームで見落としやすい3つの点
① 減価償却で「取得費」が小さくなっています。取得費は購入価格から建物部分の減価償却費の累計を差し引いて計算します。毎年の確定申告で経費にしてきた減価償却の分だけ取得費が下がるので、買った値段より安く売っても、税金上は利益が出ることがあります。
② マイホームの「3,000万円特別控除」は使えません。居住用の特例なので、投資用物件には適用されません。
③ 売却で損が出ても、給与所得とは相殺できません。投資用不動産の譲渡損失は、給与などの所得と損益通算できません。
売却した翌年には確定申告が必要です。減価償却の計算や特例の適用は個別の事情で変わるので、具体的な税額は税理士に確認してください。
売却にかかる費用
| 費用 | 目安 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 上限は売買価格×3%+6万円+消費税(売買価格400万円超の場合)。買取業者に直接売る場合はかかりません。※物件価格800万円以下は別の特例があります |
| 印紙税 | 売買契約書に貼る印紙。契約金額1,000万円超5,000万円以下で1万円(軽減措置適用時) |
| 抵当権抹消の費用 | 登録免許税(不動産1個につき1,000円)と司法書士の報酬 |
| ローンの一括返済手数料 | 金融機関によって異なります。事前に確認しましょう |
| 譲渡所得税 | 利益が出た場合のみ(前章参照) |
仲介と買取の違い|どちらで売るべきか
| 仲介 | 買取 | |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場で買い手を探すので高くなりやすい | 業者が直接買うため、仲介より低くなるのが一般的 |
| 売れるまでの期間 | 買い手が見つかるまで数週間〜数か月 | 早ければ数日〜数週間 |
| 仲介手数料 | かかる | かからない |
| 向いている人 | 価格を優先したい人 | 早く確実に現金化したい人 |
査定は、仲介と買取の両方で複数社に依頼して比べるのが基本です。このとき注意したいのが、相場より明らかに高い査定額です。売却の依頼(媒介契約)を取るために高めの金額を提示し、あとから値下げを求めるケースがあります。査定額だけでなく、「その価格の根拠」を必ず聞いてください。
サブリース(家賃保証)契約中の物件は要注意
サブリース契約には借地借家法が適用されるため、契約内容によってはオーナー側から解約するのに正当な理由が必要とされる場合があります。売却前に、契約書の解約条項・違約金・通知期間を確認してください。サブリースを付けたまま売るか、解約してから売るかで、買い手の層と価格が変わります。
売却額が残債を下回る場合(オーバーローン)
新築で購入した投資用ワンルームでは、売却見込み額がローン残債を下回ることが珍しくありません。この場合、差額を自己資金で用意しないと抵当権を抹消できず、売却できません。
選択肢は主に3つです。
- 差額を自己資金で補って売る:毎月の持ち出しを止められる代わりに、まとまった資金が必要です
- 持ち続けて残債を減らす:残債が売却見込み額を下回るまで待つ方法です。毎月の手残りと比べて判断します
- 借り換えで毎月の負担を下げる:金利や返済期間を見直して、持ち続けやすくする方法です
どれが有利かは、毎月の手残りと残債の減り方によって変わります。焦って売る前に、3つの選択肢を数字で比べることをおすすめします。
売却の流れ
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1. 残債の確認 | ローンの返済予定表で、今の残高と一括返済の条件を確認します |
| 2. 査定の依頼 | 仲介と買取の両方で複数社に依頼し、価格とその根拠を比べます |
| 3. 媒介契約 | 仲介で売る場合、不動産会社と契約します(一般・専任・専属専任の3種類) |
| 4. 売買契約 | 買い手と契約し、手付金を受け取ります |
| 5. 決済・引き渡し | 残代金を受け取り、ローンを一括返済して抵当権を抹消します |
| 6. 確定申告 | 売却した翌年に、譲渡所得の申告をします |
よくある質問
Q. ワンルームマンションを5年で売却するとどうなりますか?
所有期間は売った年の1月1日時点で判定します。そこで5年以下なら短期譲渡所得(税率39.63%)、5年を超えていれば長期譲渡所得(税率20.315%)です。購入からちょうど5年で売っても、多くの場合は短期扱いになります。購入後6回目の1月1日を迎えてから売るのが目安です。
Q. ワンルームマンションの売却相場はいくらですか?
投資用ワンルームは家賃と利回りから価格が決まるので、まず年間家賃 ÷ 周辺の取引利回りで目安を出します。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では実際の取引価格を調べられます。最終的には、複数社の査定額とその根拠を比べて判断します。
Q. 売却するときの注意点は?
①残債と売却見込み額の差を先に確認する、②所有期間(5年)による税率の違いを確認する、③高すぎる査定額に飛びつかない、④サブリース契約の解約条件を確認する、の4つです。
Q. ワンルーム投資は「やめとけ」と言われるのはなぜですか?
毎月の手残りが小さいこと、新築は購入直後に価格が下がりやすいこと、そのため売りたいときに売却額が残債を下回りやすいことが主な理由です。具体例は「ワンルーム投資の失敗事例10選|回避策と判定10問を著者が解説」で解説しています。
まとめ|売る前に、売らない第三者に数字を見てもらう
投資用ワンルームマンションを売るかどうかは、残債と売却見込み額の差・毎月の手残り・税金と費用の3つの数字で判断します。不安な気持ちだけで売ると、税率の高い時期に売ってしまったり、自己資金の持ち出しが大きくなったりしがちです。
売却の査定をするのは、売却で手数料を得る会社です。「そもそも今売るべきか」という判断は、物件を売らない第三者に確認するのが確実です。保有中の物件の見直しのご相談も受け付けています。
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