「あのバークシャー・ハザウェイが、なぜGoogle(アルファベット)を買ったのか」——長年ハイテク株を避けてきたことで知られる同社の方針転換は、2026年の市場でもっとも注目された出来事の一つです。
結論からお伝えします。理由は①AI・クラウドの「本命」だと評価した ②設備投資への懸念で株価が相対的に見過ごされていた ③かつて「見送った過ち」を修正した——この3点に集約されます。そして見落とされがちですが、この投資はある日突然決まったものではなく、2025年から段階的に積み上げられてきたものです。
また「バフェット氏の判断か、後継のアベルCEOの判断か」で報道が割れていますが、時系列で見ると両方が正しいことが分かります。本記事では、この点も含めて事実ベースで整理します。
📌 この記事の結論
- 保有は2025年7-9月期に開始(約1,800万株)→ 2026年1-3月期に約4,000万株を追加 → 2026年6月に100億ドルの私募と段階的に拡大。
- 2026年8月初旬時点で保有額は約290億ドルとされ、上位5銘柄の一角に。
- 買った理由は①AI・クラウドの本命 ②設備投資懸念で見過ごされた価値 ③「見送った過ち」の修正。
- リスクは2026年に1,950〜2,050億ドルという巨額の設備投資と、フリーキャッシュフローが史上初のマイナスに転じたこと。
目次
1. 何が起きたのか|段階的に積み上げられた保有
「バークシャーがGoogleを買った」というニュースは2026年8月に大きく報じられましたが、実際には1年近くかけて段階的に積み増されてきたものです。
| 時期 | 動き |
|---|---|
| 2025年7-9月期 | アルファベット株の保有が初めて判明(約1,800万株) |
| 2026年1-3月期 | 約4,000万株を追加取得し、保有を大幅に拡大 |
| 2026年6月 | 100億ドルの私募に参加(クラスA 50億ドル+クラスC 50億ドル) |
| 2026年8月初旬 | 保有額は約290億ドルに達し、上位5銘柄の一角へ |
特に注目すべきは2026年6月の「私募(プライベート・プレースメント)」です。これは市場で買い集めたのではなく、アルファベットが発行する株式を直接引き受けた形になります。つまりバークシャーは、アルファベットのインフラ投資を資金面で支えながら、その成長の一部を自ら保有するという構図をつくったことになります。
この四半期の買い越し転換の全体像はバークシャーが14四半期ぶり買い越し|米経済・日本株・不動産への影響で解説しています。
2. なぜ買ったのか|3つの理由
理由①:AI・クラウドの「本命」だと評価した
最大の理由は、アルファベットがAIを一気通貫で持つ企業だという点です。
- クラウド:2026年1-3月期時点で、世界のクラウドインフラ市場でシェア約14%の第3位
- 半導体:自社で使うチップを設計するだけでなく、Appleやアンソロピックといった外部にも供給
- AIモデルから検索・広告まで:技術・インフラ・収益源を自前で揃えている
つまり「AIブームに乗る」のではなく、AIの基盤そのものを持つ側という評価です。バークシャーにとって、アルファベットはAIへの最も重要なエクスポージャーになったといえます。
理由②:設備投資への懸念で、価値が見過ごされていた
アルファベットは2026年に1,950〜2,050億ドルという巨額の設備投資を計画しています。市場では「これだけ投じて本当に回収できるのか」という警戒が強まり、株価の重しになっていました。
バークシャーはここに「見過ごされた価値」を見出したと考えられます。営業利益が高い伸びを示し、クラウド部門の収益性も改善するなかで、成長企業としては過大とはいえない水準と判断した——これは同社が伝統的に得意としてきた「悲観のなかで買う」という手法そのものです。
加えて、バークシャーが重視してきた①潤沢なキャッシュフロー ②収益の予測可能性 ③強固な競争優位(モート)という3条件を、アルファベットは満たしていると見られます。
理由③:かつて「見送った過ち」の修正
バフェット氏は以前から、Googleへの早期投資を逃したことを「過ち」だったと公に認めてきました。
象徴的なのは、バークシャー傘下の自動車保険会社GEICOが、Googleに多額の広告費を支払っていたという事実です。自社グループが顧客としてその強さを実感していたにもかかわらず、投資しなかった——バフェット氏はこれを悔やんでいると語ってきました。
今回の投資は、その長年の宿題に決着をつけたという側面を持ちます。
3.【論点】これは誰の判断だったのか|報道が割れている
この投資を巡っては、報道が二つに分かれています。
- 「アベル新CEOの判断」説:バフェット氏は2025年末にCEOを退任。大規模な買い増しはアベル体制下で行われた
- 「バフェット氏が主導」説:バフェット氏自身が「私が始めた」と述べ、責任を認めたと報じられている
時系列で見ると、両方が正しい
この一見矛盾する報道は、時系列を並べると整合します。
最初の保有が判明したのは2025年7-9月期——これはバフェット氏がまだCEOだった時期です。そして保有を一気に拡大した2026年1-3月期以降はアベル体制にあたります。
つまり、「始めたのはバフェット時代、大きく育てたのはアベル体制」と理解するのが最も正確です。「世代交代で方針が変わった」という単純な図式ではなく、前体制で芽が出た判断を、新体制が確信を持って拡大したという連続性のある動きだったといえます。
4. リスク|巨額の設備投資と、初のフリーキャッシュフロー赤字
好材料ばかりではありません。バークシャーの投資判断が正しかったかは、これから検証されます。
- 設備投資が2026年に1,950〜2,050億ドル規模:AI・データセンター投資の競争は激化しており、支出を止めれば競争から脱落しかねない構造
- フリーキャッシュフローが史上初のマイナスに:これまで潤沢な現金創出力が魅力だった同社が、初めて「出ていくお金のほうが多い」状態に
- 回収の不確実性:投じた資金がいつ、どれだけの利益として戻るかは、まだ誰にも分からない
バフェット氏自身も、「バークシャーが保有する他の事業のほうが好きだ」という趣旨の発言をしていると報じられており、無条件の絶賛ではない点は押さえておくべきです。
5. 個人投資家が学べる3つのこと
学び①:「悲観で買う」は今も生きている
市場が設備投資の重さを嫌っている局面で買う——これはバークシャーが一貫してきた手法です。人気の絶頂ではなく、懸念が語られているときに動くという原則は変わっていません。
学び②:過ちを認めて修正できるか
「Googleを見送ったのは過ちだった」と認め、実際に行動で修正する——自分の判断ミスを認めて修正する姿勢は、個人投資家にとっても最も学ぶべき点かもしれません。
学び③:理解できる範囲が広がることはある
かつて「ハイテクは理解できない」としていた同社が、時間をかけて理解を深め、投資対象に加えたという事実は示唆的です。ただしそれは「流行だから買う」とは正反対で、自分が納得できるまで待った結果でもあります。
💡 株式に加えて不動産投資もポートフォリオに組み込むことを検討している方は、金利環境をふまえて「今始めるべきか」を中立の第三者に相談する方法もあります。物件を売らない立場でのセカンドオピニオンなら、営業トークに左右されずに判断できます(不動産投資を検討する場合のみご参考に)。
6. よくある質問(FAQ)
Q. バークシャーはなぜアルファベット(Google)を買ったのですか?
主な理由は3つです。①AI・クラウドの本命と評価した(クラウド世界3位・自社チップ設計)②巨額の設備投資への懸念で価値が見過ごされていた ③かつてGoogleへの投資を見送った「過ち」の修正です。
Q. バフェットとアベル、どちらの判断ですか?
時系列で見ると両方が関わっています。最初の保有が判明したのはバフェット氏がCEOだった2025年7-9月期で、大幅な買い増しは2026年のアベル体制下で行われました。「始めたのはバフェット時代、育てたのはアベル体制」と理解するのが正確です。
Q. バークシャーはハイテク株を買わないのでは?
かつては避けていましたが、Apple以降は変化しています。ただし「流行だから買う」のではなく、キャッシュフロー・予測可能性・競争優位という従来の判断基準で評価している点は一貫しています。
Q. この投資のリスクは何ですか?
アルファベットの2026年の設備投資が1,950〜2,050億ドル規模に達し、フリーキャッシュフローが史上初のマイナスに転じたことです。投資が利益として回収できるかは、これから検証されます。
7. まとめ
バークシャーがアルファベットを買った理由は、AI・クラウドの本命という評価、設備投資懸念で見過ごされた価値、そして過去に見送った過ちの修正——この3つでした。
そして重要なのは、これが2025年から段階的に積み上げられてきた判断であり、バフェット時代に始まりアベル体制で拡大した連続性のある動きだという点です。
同時に、巨額の設備投資とフリーキャッシュフローの赤字転落というリスクも現実にあります。「あのバークシャーが買ったから安心」ではなく、なぜ買ったのか・何がリスクなのかを自分の言葉で説明できるか——それが、この一件から得られる最も実用的な学びではないでしょうか。
※本記事は2026年8月時点の各種報道・公開情報にもとづく解説であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。保有株数・金額・株価は変動します。投資判断は自己責任でお願いします。
✍️ この記事を書いた人
山本 尚宏(やまもと なおひろ)
株式会社WonderSpace 代表取締役/「不動産投資の教科書」編集長
メディア運営12年|「不動産投資の教科書」を2014年に創設し、12年にわたり運営。
著書|『不動産投資は、「物件」で選ぶと、99%失敗する』
株式・不動産を横断|資産形成の判断軸を、中立の立場から発信。
本記事は公開情報にもとづき執筆しています。個別の投資判断はご自身の責任でお願いします。



