不動産投資信託(REIT)ってよく聞くけれど、そんなに儲かるの?
不動産投資ほどまとまった資金がなくても始められるって本当?
不動産投資信託について、そんな印象をお持ちではないですか?さらに「安全に儲かるのなら、始めてみたい」とお考えの方もおられると思います。
マイナス金利時代において、普通預金はもちろんのこと定期預金であってもゼロに近い金利しか望めません。それならもっと利回りの良い投資を、というわけで不動産投資信託が良さそうだと感じている方はとても多くなっています。
そこで、「不動産投資の教科書」としては不動産投資と関わりの深い不動産投資信託について、その仕組みや実際のところについて徹底的に解説してみたいと思います。
すべての人にとって最終的な目的である「より安全に、より多くの収入を」を満たしてくれる投資商品でもあるので、今すぐ始められる資産形成、そして豊かな人生の実現のためにもぜひ最後までお読みください。
1、平均利回り4%超え!不動産投資信託(REIT)で安定収入を
(1)7%超えの利回りも可能な不動産投資信託(REIT)
バブル期ならともかく、マイナス金利のご時世では2~3%を超える利回りが見込めて、比較的リスクの少ない金融商品はそれほどありません。それを踏まえて、こちらをご覧ください。
出典:http://www.japan-reit.com/list/rimawari/
これはJ-REITといって日本の不動産投資信託の利回り一覧です。そのうち利回りで上位にランクインしているものをピックアップしました。
1位の「さくら総合リート投資法人」は7.45%、2位の「インヴィンシブル投資法人」も7.01%で、2位までは7%を超えています。
全商品の平均を見ても4.14%となっており、堂々の4%超えです。他の投資商品で、これだけの安全性を確保しながらこの利回りが得られるかというと、選択肢はかなり狭くなるでしょう。
「平均で4%超え、中には7%超えもある」というのが、不動産投資信託の魅力なのです。
(2)投資をしたら放ったらかしで分配金収入
不動産投資信託は、名前に「信託」とあるように自分で運用をするのではなく、プロのファンドマネージャーに運用を任せる投資商品です。どの不動産に投資をするのかという戦略立案から実際の売買、そして物件の管理にいたるまで投資家は何もすることがありません。「不動産投資信託を買う」ことと最終的に「売る」こと以外放ったらかしで分配金の収入が得られるので、不労所得であることも見逃せないメリットです。
本業を持っている方や、その本業で兼業や副業が禁止されている方の場合、不労所得だからこそ投資ができるということもあると思います。
何もせず持っておくだけで年間3%~7%程度の収入が入るのは、不動産投資信託を検討する上で大きなポイントです。
(3)地味ながらも実は大きな不動産投資信託の魅力
堅実でありながら高い利回りが見込める不動産投資信託には、少々地味ではありますが、「個人向け国債の利回りを下回ったことがない」という事実があります。これは市場が開設されて以来続いていることなので、「国債に投資するなら不動産投資信託の方が有利」と十分判断できる材料です。
それを受けて、不動産投資信託市場は確実に成長を続けており、2016年の時点ですでに時価総額が11兆円を超える規模となっています。
投資対象の安心感、安定感という意味でも不動産投資信託はとても現実味があります。
2、不動産投資信託(REIT)の基本
(1)不動産投資信託(REIT)とは?
不動産投資信託は、REITとも呼ばれています。日本の不動産投資信託がJ-REITと名付けられていることを考えると、むしろこちらの方が一般的な名称かも知れません。ちなみにREITとはReal Estate Investment Trustの略で、これを直訳すると「不動産投資信託」となります。
運用されている不動産投資信託を投資家が購入することで、その費用が不動産の購入など運用に回され、そこで発生した収益を投資家に分配するのが基本的な形です。
(2)不動産投資信託(REIT)の仕組み
不動産投資信託の事業主体は、不動産投資法人です。投資家は不動産投資法人に対して投資をして、不動産投資法人は投資家に対して証券を発行します。不動産投資を証券という形で小分けにするため、投資家は好きな規模で不動産投資に参加することができ、投じた資金の分だけ分配金が多くなる仕組みになっています。
このように投資家からの資金を使って不動産投資をして、投資家には証券という形で投資分の権利を保証する仕組みのことを、不動産の証券化といいます。不動産の証券化は不動産投資のあり方大きく変えたビジネスモデルなので、さらに詳しく知りたい方は「5分で不動産証券化を理解して投資家が利益を上げるための方法」も併せてお読みください。
(3)不動産投資信託(REIT)のメリット5つ
不動産投資信託には実に多くのメリットがあります。そこから投資家にとって大きな意味を持つメリットを5つピックアップしました。
①少額からでも投資可能
不動産投資というと収益物件の購入を伴うので、どんなに安くても数百万円から、標準的な物件でも数千万円規模の投資になります。その投資規模ゆえに躊躇する方も多いと思いますし、足りない資金はローンが利用できるといっても誰もが審査に通るわけではありません。
不動産投資信託であれば銘柄によって10万円未満でも購入可能なので、投資初心者の方や手持ち資金が少ない方であっても参入できます。
出典:http://www.japan-reit.com/list/rimawari/
ご覧のように、安いものから順に並べると9銘柄が10万円未満で購入可能であることが分かります。
②プロが運用するため安心で手間いらず
不動産投資信託の運用はプロのファンドマネージャーが行います。不動産はとかく経験や知識が必要になることが多い投資ですが、プロに任せておくだけで分配金が得られるのは安全性という意味でも魅力的です。
③分散投資となるためリスクが軽減
投資信託全般にいえることですが、投資信託に資金を預けるということは自動的にさまざまな運用対象に投資をするため、分散投資によるリスク軽減効果が得られます。
特定の不動産を購入して運用している場合だとその物件に空室率上昇や災害などのリスクが顕在化すると投資家に影響が直撃しますが、不動産投資信託だとその影響を最小限に抑えることができます。
④手軽に購入できて参入のハードルが低い
不動産投資信託は証券会社で購入可能です(方法は後述します)。また、J-REITは証券会社に上場しているため、株と全く同じ感覚で売買ができます。この手軽さは現物不動産投資と比べ物にならないので、個人投資家にとって参入のハードルが大きく下がります。
⑤税制上、配当が高い
J-REITの場合、不動産運用で発生した利益のうち9割以上を配当すると法人税が実質上ゼロになるため、その分投資家への配当が加算されます。これは投資法人にとって税制上のメリットとなるため、間接的に投資家へも配当性向が高くなります。
(4)不動産投資信託(REIT)のデメリット3つ
投資商品である以上、不動産投資信託にもリスクやデメリットがあります。
①価格下落、分配金下落のリスクがある
投資法人が運用している不動産の状況や、経済情勢によって不動産の価値が下落すると分配金も下落します。それに伴って投資信託の価格が下落する可能性が高くなるので、分配金が思惑通り入ってこないことと売却時に差損が生じる可能性があります。
②投資法人の倒産リスクがある
投資法人の経営状態が悪化して倒産してしまうと、その投資信託は無価値になってしまいます。
③実物を所有することはできない
現物不動産への投資であれば物件を所有することになるので、万が一投資がうまくいかなかった時は「自分が住む」という選択肢が残ります。不動産投資信託の場合は証券化された権利を所有しているだけで不動産への所有権はなく、現物不動産のような対処ができません。
(5)不動産投資信託(REIT)の種類
不動産投資信託には、投資対象別に大きく分けて7つの種類があります。その分類は、以下の通りとなっています。
- オフィスビル
- 住居
- 商業施設
- 物流施設(倉庫など)
- ホテル、旅館
- 工場、研究施設
- ヘルスケア
いずれも用途は異なりますが、社会や産業に欠かせないものばかりです。最も高いウェイトを占めているのはオフィスビルで、商業施設や物流、工場などと同様に景気動向の影響を受けやすいと言われています。
それに対して、住居については欠かすことができないもので安定性が高いと言われています。ヘルスケアについては高齢者施設などこれから市場が成長すると見込まれる分野の不動産投資なので今後の成長余地を見越した投資が可能ですが、事業として確立されていない部分もあるため不確定要素が多いとも言われています。
3、始めよう、不動産投資信託
(1)資金はいくら必要?
小額から始められるのが不動産投資信託のメリットです。「2、(3)①少額からでも投資可能」では、J-REITの中で安いものだと4万円台からあることをご紹介しました。これが最低価格帯で、高いもので60万円台となります。
これらは1口の価格なので、さらに資金を用意できる方は2口、3口と購入することで投資効果をより大きくすることができます。
というわけで、4万円台から60万円台までが最低投資金額です。
(2)証券会社で口座を開設する
不動産投資信託の売買は証券会社の口座から行うので、すでに口座をお持ちでない方は証券会社で口座開設の手続きをします。
上場されている不動産投資信託についてはどの証券会社でも取り扱いがありますが、それ以外のものは証券会社によって取扱本数が異なります。本数の多さや情報の豊富さなど、不動産投資信託(REIT)取引に力を入れている証券会社の口座を利用したいものです。
「不動産投資の教科書」では、その観点から以下の証券会社をオススメしています。
楽天証券
https://www.rakuten-sec.co.jp/
SBI証券
https://www.sbisec.co.jp/ETGate
マネックス証券
(3)投資するREITを選ぶ
証券会社に口座を開いたら、いよいよ不動産投資信託の購入です。たくさんある銘柄からどれを購入すれば良いのか迷ってしまうところですが、注目するべきポイントはいくつかに絞られます。
- 現在の価格
- 今後の価格見通し
- 利回り
- 信託報酬
- NAVによる価格適正
- 運用物件の内訳、テナントなど
こうしたポイントで投資信託の銘柄を選ぶ方法については、「4、オイシイ不動産投資信託の選び方」で詳しく解説します。
(4)分配金か、値上がり益か
不動産投資信託(REIT)は、保有している投資家に対して運用益の分配があります。基本的な投資スタンスは中長期的な視野で保有をした上で、「購入時よりも値上がりをして天井だと判断をしたら売り」です。
定期的に支払われる分配金を受け取りつつそれを次の投資のためにプールしておき、価格が値上がりをして十分な差益が得られる(しかもその後は値下がりが見込まれる)のであれば、売却してそこでも利益を得るのが有効です。それまでにプールしておいた分配金と差益を合わせて、次の投資信託購入ではより選択の幅が広くなるので、それを繰り返して資産を形成していくのが不動産投資信託の成功パターンです。
4、オイシイ不動産投資信託の選び方
(1)分配金利回り5.5%以上が目安
不動産投資信託を選ぶ上で最も注目したいのは、分配金の利回りです。マイナス金利政策の影響で全体的に金利は低くなりがちですが、少なくとも5%以上をマークしている銘柄を選びたいところです。
J-REIT全体を見ると2017年9月現在で20銘柄が5%を超えています。この時点で59銘柄があって20銘柄が5%超えなので、半数近くは目安をクリアしています。
(2)運用タイプ別 注目しておくべきポイント
どんな不動産運用をしているのかは、それぞれの投資法人が公開している情報で簡単に知ることができます。そこから得られる情報の中で、運用タイプ別に注目したい点をピックアップしました。
J-REIT銘柄の投資法人情報は、こちらから調べることができます。それぞれの投資法人をクリックして、その先にある情報を参照してください。
日本取引所REIT銘柄一覧
http://www.jpx.co.jp/equities/products/reits/issues/
オフィスビル型
オフィス需要が集中している地区に投資をしていることが必須です。首都圏であれば東京都の中心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、品川区)での運用数が多いと安定した収益が見込めます。
有名なビルが含まれていることも好材料です。
住居型
大都市圏の物件保有率が高く(目安は7割以上)、築年数が10年以内のワンルーム物件を多く運用しているものが望ましいでしょう。
商業施設型
大都市圏の郊外にある大型商業施設などの運用がメインとなります。
物流施設型、工場・研究施設型
広い物流施設を運用していること、大手物流会社がテナントとして入居していることが安定した収益につながります。
ホテル、旅館型
訪日外国人需要によって成長分野でもあるため、首都圏、関西圏を中心にインバウンド需要が見込める地域に宿泊施設を保有していること。もうひとつは安定した需要のあるビジネスホテルの保有物件数が多いことが目安です。
ヘルスケア型
成長分野ではあるものの現状では価格が高いことやサービス自体の態勢が確立されていない部分があるため、ヘルスケア型への投資はまだ時期尚早かも知れません。
(3)NAVで価格適性をチェックする
不動産投資信託選びには、NAVという物差しが有効です。NAVとはNet Asset Valueの略で、投資信託を運用している投資法人の純資産のことです。現在その投資法人が保有している不動産物件をすべて売却して借入金も清算したとしたら、いくら手元に残るかを示す数値と言い換えることもできます。
つまり、NAVを見ると取引価格がその銘柄の実力を反映しているのか、過大評価なのか、もしくは過小評価なのかを知ることができます。ちょうど1.0であれば実力を反映していることになりますが、1.0を超えているのは過大評価、1.0を下回っているのは過小評価です。
値ごろ感で見るのであれば過小評価されている銘柄が狙い目です。ただし、著しくNAVが低い場合は、なぜそのように過小評価されているのかという理由を精査する必要があるでしょう。
なお、J-REIT銘柄のNAVは以下のサイトでチェックすることができます。
不動産投信情報ポータル 利回り一覧
http://www.japan-reit.com/list/rimawari/
(4)初心者向けなのは総合型と複合型
ここまでオフィスビル型や住居型など、それぞれ特定の不動産分野に絞った投資をしている不動産投資信託について解説してきましたが、これらのカテゴリーをまたいで分散投資をしている投資法人もあります。
2つのカテゴリーにまたがっているものを複合型、3つ以上の場合は総合型と呼ばれ、いずれも分散効果が高いため急激な値上がりが見込めない一方で急激な値下がりもないので初心者向けの安全な銘柄と言えます。
こちらのREIT情報サイトで、「複合型」「総合型」と分類されているものをチェックしてみてください。「プレミア投資法人」「産業ファンド投資法人」が複合型、「インヴィンシブル投資法人」「トーセイ・リート投資法人」などが総合型となっています。
まとめ
不動産投資信託(REIT)という投資形態は、これまで不動産投資に興味があるものの初期投資の大きさゆえになかなか一歩を踏み出せなかった人にとって、とても有望な選択肢となりました。現物不動産を購入できるだけの資産を保有していても、不動産投資信託への投資をメインにしているという投資家は多いので、それだけメリットが大きい投資商品であることが窺えます。
この記事でも解説した通り、安いものだと10万円以下で購入可能です。いきなりそれが紙切れ同然になってしまったり期待通りの利回りとならないということはあまりないので、まずは手持ちの資金で少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。