人生の3大資金は「住宅資金」「教育資金」「老後資金」と言われています。
このうち「住宅資金」は住宅ローンを組むことで、団体信用生命保険に加入でき、所得税額控除の制度があるなど、現役世代がマネープランを立てる上でとても重要です。
住宅ローンを利用してマイホームを購入して数年たち、貯金に余裕ができたという場合、ローンの一部を繰り上げ返済することを検討される方が多いのではないでしょうか。
そこで気になるのが、せっかくの貯金を有効に使えるよう、繰り上げ返済でどのくらい得をするのか? ということです。
繰り上げ返済をするにあたって、返済タイミングなどに注意しないと逆に損をしてしまう可能性があります。
そこで今回は、繰り上げ返済をお得にするための3つのポイントとして
- 繰り上げ返済のタイミング
- 貯金を使うなら、繰り上げ返済?それとも投資? どちらがいいか
- 住宅ローン繰り上げ返済は2種類 どちらが得かシミュレーションで比較
などについて書いていきますので、参考にして頂けると幸いです。
1、住宅ローン繰り上げ返済とは
(1)住宅ローンの繰り上げ返済とは
住宅ローン繰り上げ返済とは、住宅を買う際に金融機関から借りたローンを、月々の返済額とは別にまとまった金額を金融機関に支払うことで、ローンの一部を繰り上げて返済をすることです。
住宅ローンの一部繰り上げ返済とも言います。
(2)繰り上げ返済の効果は?
繰上げ返済には、前倒しで返済することでその分発生する利息を支払う必要がなくなるので、結果として金融機関に支払う総返済額が減るという効果があります。
詳しくみていきましょう。
2、貯金? 繰り上げ返済?どちらがいい?
(1)繰り上げ返済のタイミング
①繰り上げ返済は早い方が総返済額が減る
原則としては、繰り上げ返済はローンを借りてから早いうちの方が短縮される返済期間が長く、利息の軽減効果も高いと言われています。
ですので、基本的には早く繰り上げ返済した方がメリットが大きいです。
しかし、住宅ローン税額控除(住宅借入金等特別控除)適用期間中(借入後10年〜15年)に積極的に繰り上げ返済をしてしまうと、逆に受けられる控除額が少なくなるというデメリットがあります。
例えば、200万円を繰り上げ返済すると、控除率1%に対して、控除額が2万円少なくなるということになります。
②繰り上げ返済と住宅ローン税額控除
住宅ローンを借りて最長10年間(2019年10月以降は最長13年間)は住宅ローン税額控除を受けることができます。
住宅ローン税額控除は以下の計算式にて計算することができます。
「住宅ローン税額控除=住宅ローンの年末残高×1%」
また、控除額の上限が決まっています。
住宅取得時期によって上限は異なりますが、現行制度だと「40万円まで」となっています。
例えば、住宅ローンの年末残高が2,000万円の場合、まるまる20万円の住宅ローン控除を受けることができます。
ただ、年末残高が4,500万円の場合、1%だと45万円ですが、控除額は上限の「40万円」までになります。
住宅ローン税額控除の適用期間中に繰り上げ返済をする場合は、この上限を超える分についておこなうのがよいでしょう。
さらに、住宅ローン税額控除は毎年12月時点のローン残高に対して計算されます。
この制度を最大限お得に利用するためには、
12月時点のローン残高はなるべく多くしておく
ことになります。
そのために繰り上げ返済をするタイミングは、1月など年初に行うのが良いでしょう。
年末の住宅ローン残高の1%を目安に所得税が還付されるというこの制度を、最大限利用できるように返済プランを立てましょう。
なお、住宅ローン税額控除については、詳しくは国税庁の「住宅借入金等特別控除」をご参照下さい。
(2)繰り上げ返済の注意点
繰り上げ返済をする際に、「計画性が必要」という注意点が挙げられます。
積極的に繰上げ返済をするのはいいのですが、中には繰り上げ返済を頑張りすぎてしまう方もいらっしゃいます。
繰上げ返済をした直後は、手元にある現金が少なくなるので、急な出費などが発生した場合は使えるお金がないという事態にもなりかねません。
従って、繰上げ返済はある程度手元にお金を残して計画的にする必要があると言えるでしょう。
①貯金はどのくらい確保しておけばいい?
一般的には、いざというときのお金200万円程度のほか、子供の教育費なども貯金として確保しておくことが重要です。
年間に貯金できる額の半分を繰り上げ返済用の資金にし、残りの半分をいざというときの貯金にする、
などの方法で貯金額を増やしていくことがいいでしょう。
②繰り上げ返済するよりもそのお金を投資に回した方がいい?
住宅ローンの繰り上げ返済をするよりも、貯金を投資商品に投資して金額を増やしたほうが有効的ではないかと考えている人もいるでしょう。
しかし、今ある投資金融商品の中で、ノーリスクで、住宅ローンの金利よりも高い金利が得られる、という固定金利商品はありません。
ある程度のまとまった貯金は繰り上げ返済にあて、ローン利息という出費を確実におさえることを優先しましょう。
(3)繰り上げ返済のシミュレーションをして返済計画を立てる
計画的に繰上げ返済を利用するには、事前にシミュレーションをするといいでしょう。
以下無料で使える繰上げ返済シミュレーションのツールをピックアップしましたので、ぜひ利用してみてください。
無料繰り上げ返済シミュレーションツール(日本住宅ローン株式会社)
3、住宅ローン繰り上げ返済は2種類!どっちが得?
住宅ローンの繰上げ返済には、大きく以下の2種類があります。
- (1)返済期間を短縮し、利息を効果的にカットすることができる「期間短縮型」
- (2)月々の返済額を減らし、負担を軽減することができる「返済額軽減型」
では、それぞれについて見てみましょう。また、その後にどちらの方が得かについて書いていきます。
(1)期間短縮型
① 期間短縮型とは
期間短縮型とは、手元にまとまった金額があった際に繰上げ返済をし、ローンの「返済期間を短縮」する方法です。
② 適している方
返済額を効率よく早期返済したい方に適している返済方法です。
(2)返済額軽減型
① 返済額軽減型とは
返済額軽減型とは、繰上げ返済をすることによって、返済期間は変わらず、「月々の返済額が軽減」される方法です。
② 適している方
将来に向けて、
- 収入が減少する可能性がある
- 教育費など月々の出費が増える可能性がある
方に適している返済方法です。
なお、夫婦別々でローンを借りている場合、一般的には、
- 金利が高い
- 借入期間が長い
方から繰り上げ返済をしますが、変動金利と固定金利で繰り上げ返済手数料が異なる(固定金利の方が高いなど)というようなことがありますので、事前にきちんとシミュレーションをすることが大切です。
(3)どっちが得?シミュレーションで比較
どちらの返済方法が得でしょう。
以下の条件にて、期間短縮型と返済額軽減型の繰上げ返済方法を利用した場合のシミュレーションを比較して見てみましょう。
【借入条件】
借入れ金額 | 4,000万円 |
ボーナス返済分 | 0円 |
借入れ期間 | 35年 |
金利(変動) | 年2% |
想定金利 | 10年目以後に3%になると想定 |
返済方式 | 元利均等 |
繰上返済時期 | 5年後 |
繰上返済金額 | 100万円 |
【期間短縮型のシミュレーション結果】
繰上返済しなかった場合 | 繰上返済した場合 | |
繰上後の毎月返済額 | 132,505円 | 132,505円 |
繰上返済後ボーナス月返済額 | 132,505円 | 132,505円 |
繰上後の年間返済額 | 1,590,060円 | 1,590,060円 |
総返済額 | 60,374,700円 | 59,469,926円 |
返済方式 | 元利均等 | 元利均等 |
残存返済期間 | 30年 | 28年10ヶ月 |
【返済額軽減型のシミュレーション結果】
繰上返済しなかった場合 | 繰上返済した場合 | |
繰上後の毎月返済額 | 132,505円 | 128,888円 |
繰上返済後ボーナス月返済額 | 132,505円 | 128,888円 |
繰上後の年間返済額 | 1,590,060円 | 1,546,656円 |
総返済額 | 60,374,700円 | 60,265,824円 |
返済方式 | 元利均等 | 元利均等 |
残存返済期間 | 30年 | 30年 |
【結果】
5年後に返済額軽減型を利用して、100万円の繰上げ返済をすることによって、
—期間短縮型—
- 返済期間が「1年2ヶ月」短縮
- 総返済額は「1,276,508円」少なく
—返済額軽減型—
- 月々の返済額が「3,617円」軽減
- 総返済額は「480,610円」少なく
することができました。
上記シミュレーションにてお分かりと思いますが、期間短縮型繰り上げ返済の利息支払い軽減効果は大きいです。
一方、返済額軽減型の場合、毎月の返済額を減らすにはさらに多くの金額を繰上げ返済することが必要になります。
繰り上げ返済をお得にするなら、期間短縮型をおすすめします。
4、繰り上げ返済の方法
次に、繰り上げ返済の方法について見てみましょう。
金融機関によって違いますが、大きく以下のような返済方法があります。
- インターネットバンキング
- テレフォンバンキング
- テレビ窓口
- 窓口
インターネットバンキングは繰り上げ返済手数料が無料であることがほとんどなので、有効活用しましょう。
また、フラット35の住宅ローンをご利用の場合、1ヶ月前までに繰り上げ返済の希望を取り扱い金融機関に連絡することが必要になります。
5、その他の繰り上げ返済の注意点は?
住宅ローンの繰り上げ返済は、金利タイプ、返済金額や返済方法によって手数料がかかる場合があること注意しましょう。
フラット35のように、繰り上げ返済の手数料はとらないという住宅ローン商品もあります。
繰上げ返済の手数料も金融機関によって異なりますので、返済をする前に、必ず金融機関に確認してください。
また、「1回100万円以上」や「100万円ごと」「1万円ごと」など繰り上げ返済ができる金額の下限や単位が定められていることがあり、金融機関により異なります。
手数料とあわせて確認すると良いでしょう。
なお、中には自分から繰り上げ返済の手続きをしなくても、住宅ローン返済用口座にあらかじめ指定する金額のみを残して、残りを毎月自動的に無料で繰上げ返済をしてくれる、という金融機関もあります。
現在ご利用中の金融機関にそういった制度がないか確認し、上手に利用すると良いでしょう。
まとめ
今回は住宅ローンの繰り上げ返済について書いてきましたがいかがでしたでしょうか?
- 住宅ローン税額控除(住宅借入金等特別控除)適用期間中の繰り上げ返済は要注意
- 金融機関に支払う利息をおさえ、総返済額を減らす効果が高いのは「期間短縮型」
- ウェブ上の無料ツールを使っていくらお得になるかシミュレーションできる
この記事が、マネープランのご参考になれば幸いです。
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