ワンルームマンション投資を勧めるセミナーでは、不動産投資は貯金と違って将来のインフレが起こった場合には資産の目減りを防ぐことができ、老後の年金代わりにもなり、そして現役時代にもし何かあった場合には保険代わりになると説明する事が多いのではないでしょうか。
それがすべて本当なら不動産投資は物価変動にヘッジする年金や保険の性質も兼ね備えたスーパー金融商品となるわけですが、なかなかそうもいかないのが実情です。
貯蓄や年金などのすべての項目を検証するのはなかなか大変なので、今回は「果たして不動産投資は保険になるか?」という点に絞り、その意味するところや内容、そして付き合い方などを考えて行きましょう。(田井能久・不動産鑑定士、ロングステイアドバイザー、タイ・バリュエーション・サービシーズ代表取締役)
・不動産投資と保険の関係
不動産投資では自己資金で行う人もいますが、一般的にはレバレッジをかけるため、何割かの頭金を出して、それ以外の資金は銀行で借りるためローンを利用する方が多いでしょう。
そして不動産を運用していき少しずつローンを返済していくわけですが、長い返済期間中には万が一のことが起こる可能性ももちろんあります。
そこでローン契約者が返済中に死亡などによって返済が出来なくなった場合本人に変わってローン残債を肩代わりしてくれるものが通称「団信」こと、団体信用生命保険です。
不動産投資はローンを利用することが一般的なため、不動産投資をする→ローンには保険がついている→不動産投資は保険代わりになる、という理論です。
・保険代わりとしての不動産投資のメリットは?
団信のメリットとしては、「団体」と名がつくようにローンを提供する金融機関が一括で申し込みを受け付けて加入させるものなので割安に設定されています。
また一般の生命保険と異なり加入者の年齢関わらず同じ保険料で加入できます。
そして最近は生命保険を中心としながらも三大疾病と呼ばれるガン、心筋梗塞、脳卒中や他の生活習慣病も加えた七大疾病もカバーする保険も商品化され、死亡しなくても例えばガンにかかった時点で残債が全額返済されるものまで出てきているのです。
そのため死亡や病気になってもその時点でローンは清算され家族に負担をかけることがなく、一方で資産はそのまま家族が運用すれば、生活の支えになる点で死亡や病気に対する優れたリスクカバー商品であるといえるでしょう。
・団信のデメリットや注意点について
しかしデメリットや注意点もいくつか考えられます。
団信はローン契約者が返済するローンの中から保険料を払うものであるので、保険料の受取人はお金を貸している金融機関であります。
そのため死亡等で給付されるお金は不動産投資の残債のみに使用されるもので、残された家族が他のお金に利用しようと思ってもできません。
また割安といっても、すでにほかの保険に加入していて団信の内容と加入しているその生命保険の内容が重なっていれば重複して保険料を払っていることとなり、保険料の無駄遣いになることも考えられるでしょう。
団信は原則として、住宅ローンの残債がゼロにする設計はされていますが、入院費用や休業費用までも補償される特約が付いていないのが通常のため一般の生命保険などに比べて、その補償内容や適用範囲が狭い可能性が高いです。
さらに相続時対策でアパート投資などをした場合、せっかく借り入れをしてマイナスの資産を作ったとしても、死亡時に団信によってローン残高が無くなればその効果が無くなり、相続税に影響が出る可能性にも注意する必要があるでしょう。
・不動産投資と保険は切り分けることが大事
団信はローン契約者の死亡時などにローンが残ってしまうリスクをカバーするものであるけれど、その効果はそれぞれの他の保険の加入状況や資産状況によっても違うことが分かったのではないでしょうか。
一部は重なるものの、「不動産投資は不動産投資、保険は保険」と切り分けて考えて自分にあった効果を冷静に見分けることが必要なのかもしれません。
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