東南アジアをはじめとした新興国はまだまだ伸びる可能性を秘めたマーケットとして、注目している方も居るのではないでしょうか。
しかし当たれば大きく膨らみますが、様々な面でハイリスクな所も否めません。
また、先進国の投資も見落としがちなリスクが隠されている事もあるので、それぞれの注意点を見ていきましょう。
・新興国の「賃料5年保証」のワナ
新興国は不動産の売買、賃貸・管理していくといった国内不動産マーケットが、極めて小さいのが実情です。
新興国の不動産デベロッパーは、マーケットの小さい新興国において売買のときだけテナントを意図的に入居させ、架空の利回りを作り出して不動産を購入をさせることがあります。
そしてそのテナントが退去した後ははるかに低い賃料でしか貸せなくなってしまうことがあります。低い賃料から、収益還元法で売却価格を計算したとしても買った金額までに届かないということもあるのです。
また、「賃料を5年間保証しますよ」などと、うたっている業者がありますが、安定した賃貸マーケットがない国で一定期間の賃料を保証するというのはかなり無理があることだと思った方が良いでしょう。
ではこの謳い文句は一体どのような内容かと言うと、実は5年分の賃料もそもそもの価格に含ませたものを値付けしている仕組みになっているのです。
そうなると5年後はその賃料で貸し続けられるのは不可能なことが分かるのではないでしょうか。
不動産を購入した際、想定された利回りに応じた賃料を払えるテナントは新興国のマーケットに存在する可能性が低いと言えるため、物件を購入したが5年後には賃料が下がってしまい、売却価格が購入価格を下回ってしまうということになります。
・先進国不動産購入における失敗
先進国不動産では、減価償却に期待しすぎるという失敗があります。
アメリカやドイツなど不動産価格における建物比率が平均して高いとされる国では、減価償却を利用した節税の為に、物件を購入する方が多くいます。
減価償却は耐用年数に応じて、建物価格を均等に経費化していくことが出来るというものです。
ただし減価償却は課税の繰り延べでしかなく、単年で納税額を下げることが出来たとしても、売却時にすべての減価償却での経費分が、上乗せして課税されてしまうということです。
そのため税率が一定である法人や、売却時にかかる分離課税率が各年の所得税率より低い個人の場合、減価償却によって節税することは出来ません。
そこをあまり理解しないまま「経費になるから!」と言って購入する投資家が後悔をするケースがあります。
他のトラブル事例としては「建物土地比率で建物が80%」と言う売り文句に期待して不動産を購入したものの、実は建物比率が60%弱しかなかったというトラブルがあります。
これは売却時に売り主側が周辺事例などから「これぐらいだろう」という想定で売却していることが多く、その時点では詳しく調査することが出来ないケースです。
海外不動産で減価償却をするには、該当の国で確定申告を行う必要がありますが、その際に現地の税理士が詳しく調べていくとそこまで建物比率が高いわけではないと分かる場合もあります。
そして売主側も、建物比率まで保証して売買をしているわけではありませんので受け入れるしかありません。
また海外不動産での減価償却に関する法律や税制が変わる可能性もあり、節税をメインにおいた海外不動産購入はリスクがあることを理解しておくと良いでしょう。
・海外不動産の注意点は利回りだけではない
海外不動産は、良いタイミングで買うことが出来れば大きなリターンが見込めます。
しかし利回りの高さや賃料保証だけで判断するのでなく、その国の成長性・不動産マーケット・カントリーリスクなどを見定めていくことが重要となるでしょう。
また言葉の壁、詐欺まがいなデベロッパーの存在など、気を付けるべき点が多くありますが、失敗事例を通じて、より良い海外不動産に出会えることを願っています。