2019年10月下旬、中国の賃貸物件プラットフォーム「蛋穀公寓」が米国SECにIPO目論見書を提出しました。
11月上旬にはオンライン不動産取引プラットフォーム「房多多」が米国ナスダック市場へ上場を果たし、中国においては不動産テックの進化が表立って来ているように感じます。
そのような中、11月11日は双11(独身の日)セールが開催され取引額の最高記録を更新したのは記憶に新しいのではないでしょうか。
ネット通販の最大のお祭りである独身の日セールで不動産テック業界はどう関わったのか、中国不動産業界のオンライン化の進展について考察してみましょう。
・オンライン不動産企業のナスダック上場
「蛋穀公寓」は2015年、北京で設立されたO2O(Online to Offline)の賃貸プラットフォームです。
2018年までの年平均成長率は360%、2019年9月末の取り扱い物件数は2015年比166倍という高度成長企業で、高品質の賃貸生活を続けたいユーザーのために資産管理とサービスを提供している企業です。
家主に寄り添うことをモットーとして順調に成長し、世界ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場ベンチャー)ランキング(胡潤研究院)224位に入っています。
また「房多多」も2011年10月に深圳で設立された不動産売買仲介プラットフォームです。
こちらは当初からインターネット+アルファを目指し、中小不動産業へのソリューション提供を重視してきました。
研究開発に力を入れたことで「産業SaaS、最初の上場企業と称されています。赤字のまま上場する中国ベンチャー企業もある中でこちらは黒字となっており、蛋穀公寓と同じく世界のユニコーン企業ランキング264位に入っています。
・今年の双11(11月11日独身の日セール)はどうなっていたか
先日行われた2019年の双11独身の日セールにおいて、仕掛け人である中国ネット通販首位・アリババの売上は、2684億元(4兆1000億円)、前年比、25.7%の高い伸びを記録しました。車や不動産など高額商品も毎年販売を伸ばしています。
恒大、碧桂園、融創、保利などの大手不動産会社は、双11に合わせて値引き販売を強化しました(外部リンクに飛びます)。ネットメディアはこれについて「風に押されたから」と表現しています。
はたしてどのような風だったのか、メディアは次の3つを挙げています。
まず1つ目は、今年に入って不動産市場の寒冷化が進み「金九銀十(9月10月の繁忙期)」の盛り上がりも欠き、不動産企業は資金流動(回収)需要が高まっていたことが挙げられました。
2つ目はネット通販のツートップであるアリババと京東が「特価房」を打ち出し、身を削るほどの大特価が話題を呼んだため不動産企業も目玉商品が必要となりました。
3つ目の理由として、ディスカウントによる販促が特定の地区や特定の商品に限られていました。経済力の乏しい地区では、もともと値下げ以外の販促手段には乏しいとも言えるでしょう。
さらに今年に入って408社の不動産企業が破産しています。そのため破産してしまう前に双11の機会をとらえて売ってしまえ、と考えるに至ったも無理はありません。
・中国不動産のオンライン化は世界最先端へ
この他にも大手ネット通販と提携する動きもあります。
恒大は、蘇寧集団(オンライン、オフライン共に強い小売大手)のネット通販に旗艦店を出店し動画で物件を紹介し、11月1日から毎日100戸を特売しました。最後の11月11日には111戸、合計1111戸を特価販売にかけ、最高値引き額は100万元(1540万円)を超えました。
全国に1万店ある実体店「蘇寧易購門店」とコンビニ「蘇寧小店」も販促に協力し、新しい販売ルートを開拓する試みです。ちなみにこの1111戸は「秒殺で完売」したようです。
双11セールにおいて、アリババは1万戸、京東は200の不動産業者から6000戸を、通販サイトに特価房としてアップしました。
こうした傾向からネットメディアは2019年をオンライン不動産販売発火の年、と位置付けています。
有力なオンライン不動産企業の上場や双11セールでのオンライン特価販売を通じて、中国不動産業界のオンライン化はさらに進化し、世界の最先端へ向かっていると言えるでしょう。