相続税の納税や節税などの対策の一つに生命保険を利用する方法があります。
しかし、加入方法の勘違いによって自分が予想していた相続対策にはなっていなかったために、渡したい人へ相続財産が渡らない、遺言と違っていたというケース起きる場合があります。
実際の具体的な事例をもとに、間違った相続対策ケースについてお伝えしましょう。(小山智子・不動産コンサルティングマスター、ファイナンシャルプランナー)
・孫へのお金を渡す対策に「養老保険」はNG
相続対策の一つにとして、「祖母が少しでも孫へお金を渡したいと考えて養老保険で対策をした」という話を聞いた娘さんより、これで本当にいいのか不安になったというご相談がありました。
【加入保険】養老保険
【内 容】
契約者:祖母
被保険者:孫
満期受取人:祖母
まず、養老保険とはなにかをおさらいしましょう。
養老保険は、保険期間は一定でその間に死亡したときには死亡保険金が、満期時に生存していたときには満期保険金が受け取れるものです。死亡保険金と満期保険金は同額の保険です。
祖母は保険担当者へ「孫のために保険をかけたい」と話し養老保険を進められました。しかし「孫へ少しでもお金を渡したい」気持ちが伝わっていなかったため、ここで勘違いが起こったことが考えられます。
ここでの間違いは、まず祖母が満期まで生存していた場合は祖母が満期保険金を受け取るため、お孫さんに現金はわたりません。
また養老保険の満期前に契約者である祖父母が亡くなったときには、孫が保険金を受け取ることはできません。
また契約者が死亡した時点で「生命保険契約に関する権利」として評価された金額が相続税の課税対象となってしまいます。
・孫に資産を移動する正しい方法は?
では、祖父母が健在の間にお孫さんへ資産を渡したい場合はどうしたらいいのでしょうか?
それは、贈与制度を利用する方法です。
「暦年贈与制度」を利用することで、毎年110万円の基礎控除が利用できますし、そのほかに非課税措置のある贈与としては、住宅取得資金の贈与、教育資金の一活贈与、結婚・子育て資金の一括贈与があります。
2019年度の税制改正で期間が2021年3月31日まで延長されることになった教育資金の一括贈与は、受贈者ごとに1500万円まで非課税です。(受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には特例措置の対象外)
教育資金とは具体的には入学金や授業料、その他学校教育に伴って必要な費用などがあります。
また、結婚・子育て資金の一括贈与の活用範囲も、教育資金の一括贈与と同様に2年間延長が決まりました。
この一括贈与は、受贈者ごとに1000万円まで非課税です(受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には特例措置の対象外)
このような贈与制度を利用することで、孫へのお金は少しでも多く残すことができるでしょう。
・相続対策の前にやるべきこと
ムダな税金は1円でも少なくして、少しでも多くの資産を子供や孫へ渡したいという気持ちは多かれ少なかれ、どなたにでもあると思います。
良かれと思ってしたことが、気持ちが反映されていなかったり、手間が複雑になってしまったり、要らぬ争いの種になってしまった、などといったことが実際にあります。
争いのない安心した資産の受け渡しを計画的に実行していくための情報を自力で調べるには限界もあるため、税理士・ファイナンシャルプランナーなどお金の専門家に相談する方法も検討すると良いでしょう。
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