人口減少や過疎化問題が注目されていますが、都心などの限られた地域以外では不動産投資のチャンスは全く無いのでしょうか?
平成31年の地価公示では、昨年に引き続き全国の全用途が上昇するという結果となり半年後さえ定かではないものの、現段階においては地価の上昇傾向が維持されているようです。
そこで今回では特筆すべき地価の動向をみせたエリアを紹介し、その理由を探るとともに、不動産投資でどう生かすべきかを考えて行きましょう。(田井能久・不動産鑑定士、ロングステイアドバイザー、タイ・バリュエーション・サービシーズ代表取締役)
・地方で注目すべき3つのエリア(1):ニセコ
ニセコを有する倶知安町の地価は商業地と住宅地の両方のポイントが全国で1番となり、住宅地は1年で50%、商業地は58.8%の地点が現れました。
この変動率が正しいのなら、過去とは全く異なる新しい基準で土地の価値が判断されていると考えたほうが良さそうです。
もしニセコがリゾートしての品等を維持し続けることが出来るなら、比較するべきは過去の近隣の取引価格でなく、スイスやカナダなどの世界的スキーリゾートの将来動向でしょう。
ニセコに限らず、安定的なインバウンド需要による地価の上昇が認められる場合には、今後は日本円で考えるのではなく豪ドル建てとか米ドル建てで、かつ為替の変動も考慮したうえで価格変動も頭に入れておくと良さそうです。
・地方で注目すべき3つのエリア(2):秋田
秋田県については人口減少や高齢化の影響により、県内の全用途の平均変動率はマイナス1.3%と全国で最下位に位置しています。
その下落幅は縮小傾向を示してはいますが、21年間連続記録の下落で、今後反転して上昇する可能性は極めて低いと考えられています。
しかし秋田県内にあり、しかも27年間も下落していたのが、今年になって1.8%も上昇した地点があります。
それは秋田駅前(秋田市中通2-9-1)に位置するフォンテAKITAという商業ビルです。
このフォンテAKITAは2011年に現在の名称でグランドオープンしていますが、元々イトーヨーカドーを核テナントに1980年にオープンしているようで特に新しいものではありません。
しかし上昇要因として国土交通省は「周辺の再開発の効果に加え、秋田犬、なまはげ、金足農業の活躍で話題性が高まり回遊人口が増加して」と分析しています。
再開発は理解できるものの秋田犬や金足農業はどうなの?という感は否めませんが、交通機関や利便施設の増加が見込めない地方にとっては、SNSなどの話題作りのおかげでその地価が決まるというは理解できるでしょう。
・地方で注目すべき3つのエリア(3)商業地内の住宅地
全国でトップの上昇を示した住宅の地点には前述の倶知安町以外に、那覇市や名古屋市内がランクインしています。
那覇市や名古屋市の変動ポイントの特徴的なのは「住宅」のカテゴリーでありながら、沖縄は第1種と第2種の中高層専用地域であり、名古屋市はほとんどが商業地域”、両市ともマンションが林立する地域内にある地点であることでしょう。
地価公示の用途区分にマンション地域という区分がないので判断が難しいですが、倶知安など特別の事情があるところを除き、「住宅地」でありながら、地価上昇が著しいのは郊外の「戸建住宅地域」ではなく、都心に近い「マンション地域」です。
そして、その傾向は那覇や沖縄に限ったことではありません。
これほどネットショッピングの発展により、既存の商業店舗が苦戦している中で「商業地」の価値が高まるというのも不思議です。
実はかつてはモノを売っていた好立地の商業地に人が住み、そのマンション用地の価格が商業地の地価をあげているのではないでしょうか?
従って、地方であっても発展性が見込めるのは、商業地内にありながら次々とマンションが建てられ住宅地化していくエリアと考えられます。
・投資家としてデータをどう見るかが重要
秋田の件はとくに、これからの不動産投資は地方の魅力を探せるかどうか、それをソーシャルメディアで多くの人に伝えられるかどうか、にかかってくることを象徴している事例といえるでしょう。
地価公示などすべての国民に等しく発表されるデーターをどう分析し、どう活用するかは、その人次第であり、今回の内容についても異なる見方もあるかも知れません。
大切なのは、ただ単に情報を得るだけでなくその背景なり理由なりを調べて、ご自身の投資判断に活かすことではないでしょうか。
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