株式投資をしていくにあたって、投資先としてキャッシュリッチ企業のことが気になりますか?
最近、キャッシュリッチ企業という言葉を見聞きすることが多くなったように思います。
それはつまり、キャッシュリッチであることが企業としての魅力に直結しているからだと思います。
キャッシュリッチ企業という言葉のニュアンスから、「キャッシュ=現金が潤沢にある企業」というイメージをお持ちの方は多いと思います。
それ自体は間違いではないのですが、その先がよく分からないという方が多いのではないでしょうか。
例えば・・・
- キャッシュリッチ企業は何が優れているのか
- キャッシュリッチ企業は投資対象としてアリなのか
- どんな企業がキャッシュリッチなのか
- キャッシュリッチ企業はどうやって見つけるのか
といった疑問に即答できるかというと、何となく言葉に詰まってしまうのではないでしょうか。
そこで、月間20万人の方々が訪れる投資家のためのメディア「不動産投資の教科書」では、気になるキャッシュリッチ企業について、上記の疑問にお答えしたいと思います。
この記事を読み終えた時にはキャッシュリッチ企業のことが理解できて、投資先として検討できるようになりますので、どうぞ最後までお付き合いください。
目次
1、キャッシュリッチ企業投資が推奨されている3つの理由
キャッシュリッチ企業は、いったいなぜこんなに持て囃されているのでしょうか。その理由を3つのポイントで解説します。
(1)株価が下がりにくい
キャッシュリッチ企業の強みは、何と言っても現金が潤沢にあることです。企業経営において現金は血液のようなものなので、それが潤沢であるということは経営の安定性につながります。
株価は大なり小なり、企業の倒産リスクによる影響を受けます。キャッシュリッチ企業は資金ショートによる倒産のリスクが極めて低いということで、株価が下がりにくいという特徴があります。
株価が下がりにくいというのは投資家にとって非常に魅力的なことで、投資の安心感がまるで違います。
(2)倒産リスクが低い
企業の倒産によって持っている株券が紙切れになってしまうことは、投資家によって最大のリスクです。企業の倒産は資金ショートによって起きることも多く、キャッシュリッチであることはそのリスクを遠ざけてくれます。
前項では株価が下がりにくいという表現を使いましたが、それと同時にキャッシュリッチ企業は株券が紙切れになるリスクが低く、長期保有にも耐えうる能力があると考えられます。
(3)株主還元が期待できる
株主が最も喜ぶ還元といえば、配当や優待です。キャッシュリッチ企業にはその原資があり、自社株の魅力をアップさせるために配当や優待の形で株主還元に積極的な企業が多くあります。
さらにキャッシュリッチであることを武器に、自社株買いをする企業もあります。自社株買いをすることで経営の基盤を固めることが狙いですが、投資家にとっては株数が減るため1株当たりの利益が高くなる(=株価上昇につながる)ため、こちらも投資家にとって魅力的です。
株主還元をしたいと思っても保有資産の現金比率が低ければ、絵に描いた餅です。それを実行できるのがキャッシュリッチ企業なのです。
2、株式投資家が知っておくべきキャッシュリッチ企業の基本
キャッシュリッチ企業とはどういう企業のことなのか?キャッシュリッチだと何が良いのか?といった疑問に答える基本情報です。
(1)キャッシュリッチ企業とは
キャッシュリッチとは、直訳すると「現金が潤沢」という意味です。この直訳通り、キャッシュリッチ企業は現金の資産を潤沢に持っている企業のことです。
「ネットキャッシュ」という言葉があります。現金と有価証券を足したものから有利子負債を差し引いた数値のことですが、このネットキャッシュが多い企業のことが一般的にキャッシュリッチ企業と定義されています。
(2)キャッシュリッチ企業は何が優れているのか
キャッシュリッチ企業が、そうでない企業と比べて優れているのは「現金が潤沢」であることです。企業経営で最も怖いのは資金ショートによる黒字倒産です。キャッシュリッチであるということはそのリスクが低く、その豊富な資金を活用して新しい事業に参入していくこともできます。
現金が潤沢であるということは、企業にとってそれだけ価値があるということなのです。
(3)キャッシュリッチ企業に死角はあるか
キャッシュリッチであることは何にも勝るというニュアンスで解説をしてきましたが、それではキャッシュリッチ企業に死角はないのかというと、そうとも言い切れない部分があります。
キャッシュリッチ企業だからといって、その潤沢なキャッシュが株主還元に回されるかどうかは、経営判断次第です。キャッシュリッチ=株主還元もリッチであるとは限らないので、その点は注意が必要です。
また、キャッシュリッチ企業は解散価値が高く、敵対的買収の標的になりやすいというリスクもあります。
もうひとつ、キャッシュリッチ企業には「モノ言う株主」からのプレッシャーがかかりやすいという共通点があります。それだけ豊富なキャッシュがあるのに、新規事業を始めるわけでも、積極的な投資をするわけでも、はたまた株主還元をするわけでもないのはけしからん、というわけです。
敵対的買収とまではいかなくても、外国人株主に代表されるような「モノ言う株主」によって経営が影響を受ける可能性があります。
(4)株式投資家にとってのキャッシュリッチ企業
ここまでの解説を総合して、株式投資家にとってのキャッシュリッチ企業とはどんな存在なのかをまとめました。
①配当や優待に回す予算を確保しやすい
株主還元といえば配当や優待ですが、こうした還元をするにも先立つものが必要です。キャッシュリッチ企業はその予算を確保しやすく、株主からの期待値も総じて高いという共通点があります。
それゆえに外国人投資家など「モノ言う株主」が株を買うことも多く、こうした投資家の発言によって配当が多くなることもあります。
②財務体質が良好で経営が安定している
企業経営においてキャッシュは血液のようなものです。それが潤沢にあるということは資金ショートの可能性が低く、またキャッシュリッチであるということは借金の必要もないため有利子負債などが経営を圧迫することもありません。
とても良好な財務体質で経営が安定しているのは投資家にとって大きな安心材料です。
③株価が下がりにくい
株主還元が期待できる、財務体質が良好であるという事実は、いずれも株を買いやすい材料です。安心感から長期的に株を保有する投資家も多くなるため、キャッシュリッチ企業は株価が下がりにくいという特徴があります。
仮に一時的に下げたとしてもキャッシュリッチ企業であるという魅力に変わりがなければ値頃感から買いが入りやすく、日々の株価変動で一喜一憂せずに済みます。
④自社株買いができる
自社株買いは既発行株式の価値を高めるため、投資家から歓迎されます。企業は経営基盤の安定化を意図して自社株買いをすることがありますが、それができるのもキャッシュリッチ企業ならではです。
当然ながら自社株買いの報道があるとその銘柄には株価上昇バイアスがかかるため、投資家にとって魅力的です。
⑤投資による成長力がある
新規事業への投資や参入は、企業の成長力そのものです。2018年にはプロ野球への新規参入意欲を示した、「ZOZOタウン」で知られるスタートトゥデイ(3092)社長である前澤氏の発言が大きな話題となりました。
それと同時期にスーパーの西友の親会社である米国ウォルマートが西友事業を手放すのではないかと報道されると、その売却先として楽天や中国のアリババなどの名前が挙がりました。
これらの企業に共通しているのは、いずれも業績が好調なベンチャー企業であるだけでなく、すべてキャッシュリッチ企業であることです。
キャッシュリッチだからこそ大胆な投資や新規参入ができるわけで、こうした成長力を投資家は好意的に見なしています。
3、狙い目のキャッシュリッチ企業の探し方
キャッシュリッチ企業に投資してみたいとお考えの方のために、狙い目のキャッシュリッチ企業の探し方を解説します。
(1)「みんなの株式」でスクリーニングする方法
まずは、最も簡単なスクリーニング方法からご紹介しましょう。株式情報サイトで知られる「みんなの株式」には、スクリーニングの条件として「体力に自信の企業」というカテゴリーがあります。
厳密には自己資本比率が90%以上で有利子負債がないという条件で、この条件に合致するのはキャッシュリッチ企業である可能性大です。
- 体力に自信の企業(みんなの株式)
出典:https://minkabu.jp/screening/fundamental/high_ca_ratio/1/1/1/desc
とても直感的なスクリーニング方法で、なおかつ上記のリンクをクリックするだけ見ることができますので、ぜひ一度見てみてください。
(2)キャッシュリッチ企業を探すスクリーニング条件
前項よりもう少し踏み込んで、「不動産投資の教科書」編集部としてはキャッシュリッチ企業をスクリーニングするために、以下の条件を提案したいと思います。
- 自己資本比率70%以上
- ROE8%未満
- PER15倍未満
- 今期経常利益変化率+10%以上
自己資本比率の高さは財務体質の健全性、ROEとPERでは企業価値、そして4つ目の条件では業績好調でキャッシュが蓄積されやすい経営環境であることを条件としました。
証券会社の口座をお持ちの方は、この条件でスクリーニングしてみてください。もし証券会社のスクリーニングツールに「ネットキャッシュ」の項目があるのであれば、それが高い銘柄を絞り込んでください。
(3)「株マップ.com」でスクリーニングする方法
無料で利用できる株のスクリーニングツール「株マップ.com」を使って、キャッシュリッチ企業をスクリーニングしてみたいと思います。
- 簡易スクリーニング(株マップ.com)
出典:http://jp.kabumap.com/servlets/kabumap/Action?SRC=easyScrn/base&KEEP=ON
スクリーニング条件は、以下の通りです。
- 自己資本比率70%以上
- ROE8%未満
- PER15倍未満
前項で挙げた4つ目の項目はないので、ここでは上から3つの条件を設定してみました。初心者の方にも取り組みやすい銘柄に絞り込みたいので、投資金額は50万円以内としました。
結果は、以下の通りです。
実際にやってみるとお分かりになると思いますが、80社もの銘柄がヒットしました。数が多いので上の画像では、そのうちの1ページ目のみ掲載しています。
やはり無料のスクリーニングツールなので、絞り込むといってもまだまだ80社もあります。
(4)SBI証券の口座機能でスクリーニングする方法(口座保有者のみ)
先ほどの無料ツールに続いて、次は証券会社の口座を持っている方が使用できる本格的なツールを使ってキャッシュリッチ企業をスクリーニングしてみましょう。使用するのはSBI証券のツールです。
ここで設定する条件は、以下の通りとしました。
- 自己資本比率70%以上
- ROE8%未満
- PER15倍未満
- 今期経常利益変化率+10%以上
- 財務健全性スコアが9、10
上から3つ目までは、前項の条件と同じですが、こちらでは4つ目の項目もスクリーニングすることが出来ます。、また、財務健全性スコアも条件に入れることが出来るので追加し、投資金額は前項と同じ50万円としました。
それでは、どんな結果になるのでしょうか。
出典:https://www.kabumap.com/servlets/Query?SRC=SBISEC/new/scrnPwA2
こちらでは、27社に絞り込まれました。スクリーニングの結果としては上々で、厳選された銘柄だと考えて良いでしょう。いわゆるキャッシュリッチ企業としておなじみの銘柄が見当たらないのは、投資金額を50万円以下にしたため小型株が中心になっているからです。
(4)定期的に発表されるネットキャッシュランキングで調べる
ここまで解説した方法は自力でスクリーニングをする方法ですが、それ以外にもキャッシュリッチ企業を知る方法があります。「会社四季報ONLINE」や「日本経済新聞」、「東洋経済ONLINE」などの経済ニュースメディアでは定期的にキャッシュリッチ企業のランキングを発表しているので、そちらを定期的にチェックするのも有効です。
【参考】
- 最新!キャッシュリッチ企業トップ300社(東洋経済ONLINE)
出典:https://toyokeizai.net/articles/-/152373
- 現金潤沢!キャッシュリッチ企業ランキング(会社四季報ONLINE)
出典:https://shikiho.jp/tk/news/articles/0/81351/3
- マーケットニュース 主な好財務体質、キャッシュリッチ企業(ちばぎん証券)
出典:https://www.chibagin-sec.co.jp
4、編集部が選んだ有力キャッシュリッチ企業7選
「不動産投資の教科書」編集部が厳選した、有力キャッシュリッチ企業7選をコメントつきでご紹介します。
(1)任天堂(7974)
数々のゲーム機で世界を席巻してきたゲーム界の雄、任天堂。同社は本業のゲーム事業だけでなく、潤沢なネットキャッシュによる安定的な経営という特徴も併せ持っています。
株価チャートを見ても、その安定ぶりが窺えます。
出典:https://minkabu.jp/stock/7974/chart
(2)ファナック(6954)
本業の好調が続き、蓄積されたキャッシュの多さがネガティブな捉え方をされたことで有名になった銘柄です。キャッシュリッチであるにもかかわらず株主に還元されていないとして外部からの圧力が強まり、それを受けて株主還元に力を入れるようになりました。
出典:https://minkabu.jp/stock/6954/chart
(3)キーエンス(6861)
ロボット市場の拡大により「ロボット銘柄」としての注目度も高いキーエンス。同社は従業員の給料が高いことでも知られ、採用市場でも人気の企業です。国際的な知名度も高く業績も好調で、キャッシュリッチであるがゆえにさらなる成長余地も期待できます。
出典:https://minkabu.jp/stock/6861/chart
(4)信越化学工業(4063)
前年比で7倍近くネットキャッシュを増大させたことで、2017年にはキャッシュリッチ企業として1位に躍り出たのが信越化学工業です。各種化学製品が先端分野で引っ張りだことなっており、本業の堅調は今後も続くでしょう。キャッシュリッチ企業となったことでM&Aにも積極姿勢を見せていることから、今後さらなる飛躍余地があります。
出典:https://minkabu.jp/stock/4063/chart
(5)京セラ(6971)
2017年にはネットキャッシュを前年比で30倍近く積み増したことで、一躍キャッシュリッチ企業の仲間入りを果たしました。従来から本業の堅調が続いており経営環境は良好なので、ここに来てキャッシュリッチ企業となったことは大きな追い風です。
出典:https://minkabu.jp/stock/6971/chart
(6)ヒロセ電機(6806)
スマートフォン向けの部品提供が好調であることと、1,600億円ほどのネットキャッシュを計上したことが相まって注目されたのがヒロセ電機です。時価総額の半分近くにあたる巨額のネットキャッシュを、株主還元に回すのではないかという期待値が買い材料となっています。
出典:https://minkabu.jp/stock/6806/chart
(7)東北新社(2329)
ここまでご紹介してきたキャッシュリッチ銘柄は機械メーカーなどが多い中で、CM映像や広告の制作を手がける東北新社をご紹介したいと思います。2017年段階で保有資産のうち現金比率が73%にも上っており、潤沢な資金を持つキャッシュリッチ企業である点が注目されました。
出典:https://minkabu.jp/stock/2329/chart
まとめ
キャッシュリッチ企業とは何か、何が優れているのかという基本から、キャッシュリッチ企業を探す方法、最後には編集部オススメのキャッシュリッチ銘柄をご紹介してきました。
記事を読む前と読んだ後とでは、キャッシュリッチ企業に対する知識や認識が大きく変わったのではないでしょうか。株価が下がりにくいという安心感もあるので、初心者の方もぜひ検討していただきたいカテゴリーです。