不動産投資を考える時、自宅購入とは全く違った数字の視点が必要になります。
それは購入金額に対する利回りや維持管理にかかる費用、実質的な家賃収入といったように、投資用不動産を購入する前に、経営期間中のお金の流れも考える視点です。
ここでは購入する際に最初に見るべき5つの数字についてお伝えして行きましょう。(小山智子・不動産コンサルティングマスター、ファイナンシャルプランナー)
(1)表面利回り
不動産投資物件の広告で最初に見る「利回り」の多くは表面利回り(グロス利回り)です。
表面利回りとは、年間の家賃収入を不動産の購入価格で割ったもので、自分でも簡単に計算をすることができます。
表面利回り(%)=年間の家賃収入÷不動産の購入価格×100
ただしこの計算は、不動産投資にかかる税金や維持管理、諸経費等が考慮されていません。
満室の家賃収入のみを想定した計算結果で「必ずこの利益が得られる」ことを示す数字ではありませんので、注意しましょう。
(2)実質利回り
より不動産経営の現実に即した数字を知るために必要なのが実質利回りです。
実質利回りには固定資産税や管理費、保険料や修繕積立金など不動産運用にかかる諸経費が加味されます。不動産経営後の実質的な収入や物件を比較する際は実質利回りのチェックが必須となります。
実質利回り(%)=(年間収入―年間経費)÷物件価格×100
実質利回り計算には注意点は、空室が出た場合は家賃収入がなくなる、建物の経年劣化によって維持費が上がっていくことなどのリスクが加味されていないことです。
不動産経営をする上でかかる経費は毎年異なるため、正確な算出が難しいといるでしょう。
(3)レントロール
レントロールとは、テナントの賃貸借契約の状況を一覧表にまとめたもので、家賃明細表といわれる場合もあります。
入居者ごとの賃貸契約状況はそれぞれの部屋について賃貸借契約書で契約の内容を詳しく読み込まなければなりませんが、購入検討の段階では契約書が開示されることはあまりないでしょう。
そこで、賃貸借契約の概要を知ることができるレントロールが役に立ちますので、アパートやマンションの1棟買いを希望している場合はレントロールの内容確認をしましょう。
記載内容でチェックしたいポイントは3つです。
- 物件内の賃料のばらつき
- 入退去履歴のチェック
- 入居
ただし、レントロールは決まった書式がなく記載されている項目などは、オーナー(所有者)によって様々なので注意が必要です。
(4)キャッシュフロー(家賃―経費+返済額)
超初心者の段階ではキャッシュフローを重視した投資法を勧めることになります。
不動産投資のキャッシュフロー=家賃 ― 経費 ― 返済
まずはキャッシュフローを作成し、借入を毎月の収入から確実に返していく予想を立てます。
いくら資産性が高い物件でも、キャッシュフローがマイナスになると、その分を手持ちの資金で補うことになります。
また、不動産経営中も、融資を受けて物件購入する場合、帳簿上は経費や減価償却費などにより利益が赤字となっていても、キャッシュフローは黒字という状況が起こることがあります。
実際の手残り額の把握するためにはキャッシュフローを確認する必要が出てくるのです。
(5)出口戦略
不動産経営中の家賃収入以外に売却時に利益が出るのかどうか、といったところも見るべき数字の重要なポイントです。
出口戦略の数字でよく聞く言葉として、インカムゲインとキャピタルゲインの2つがあります。インカムゲインとは運用益のことで、不動産投資では家賃収入がそれにあたります。
また、キャピタルゲインとは不動産を売却することで得る利益(売却益)のことをといいます。
例えば、区分マンション一室の不動産投資の出口戦略は次の事項が考えられます。
- 購入者が見つかるか
- 売却時期
- 売却価格
- 定期収入源としてずっと持ち続ける
- 自宅にする
一方、一棟アパートなどの場合はリノベーションや建て替え、更地にして売却または自宅を建てるなどの出口戦略も考えられますので、これらを検証して所有期間を考えていくことが必要でしょう。
・不動産投資の数字に慣れるとこからはじめよう
不動産投資を開始したら物件をほったらかしにしないことが不動産投資成功の秘訣といえるでしょう。
物件の購入前・所有期間中・売却タイミング、などのタイミングを数字から読み取ることができます。
そのためには、5つの数字に慣れることからはじめ、安定した不動産経営を目指していきましょう。