前回は、魅力的な不動産投資先としてのカリフォルニア州についてお話ししました。
今回取り上げる南中部のテキサス州は、物件価格が高騰したカリフォルニアとは違い、比較的お手頃な価格の住宅が豊富に存在し、経済や人口もまだまだ伸びると期待されるエリアです。
現地では「テキサスで住宅1軒を購入するお金で、テネシー州メンフィスでは2軒購入出来る」などと言われるようですが、全米規模で見れば、「カリフォルニアで住宅1軒を購入するお金で、テキサスでは2軒購入出来る」ということになります。
面積が全米第2位の大きさ(日本の国土の約1.8倍)のテキサス州が経済面でどんな州なのか、なぜ投資先として優れているのかを見ていきましょう。
・力強い人口と経済の成長
人口が増加を続ける地域は不動産投資の対象として有望と言えるでしょう。
州人口が2019年に約2900万人に(参考URL:http://worldpopulationreview.com/states/texas-population/)達し、現在のところ全米第2位のテキサスは、2045年にカリフォルニアを抜き去って全米で最も人口の多い州になると予測されています。(参考URL:https://www.nextbigfuture.com/2018/07/texas-could-have-a-higher-population-than-california-in-2045.html)
また、2010年から2018年だけで、350万人の増加が報告され、主な産業としては原油や天然ガスを中心とするエネルギー、観光業、農業、鉱業、そして新興分野としてテクノロジー、金融、ヘルスケアが急速に成長しています。
国としてみた場合のテキサス州の国内総生産(GDP)は世界第10位の1兆6450億ドル(2017年)です。
一方、雇用の伸びは全米平均の2倍である毎年約4%であり、人口増の大半を他州からの流入組が占めていることも注目でしょう。
仕事が豊富で州所得税がなく、有力な教育機関を多数抱え、家も安いテキサスは、全米から人々を引き付ける経済の磁石のようです。
近年ではシェール革命の本拠地のひとつとして、エネルギーやテクノロジー分野の雇用の伸びを背景に、米国内で最も速いペースで人口が増加している15都市のうち7都市がテキサスに集中しています。
増大する大都市間の交通需要に対応するためJR東海の支援でダラス・ヒューストン間の高速鉄道(米国版新幹線)が計画されており、着工は2019年末から2020年初頭が予定されています。(参考URL:https://www.houstonchronicle.com/neighborhood/spring/news/article/Houston-Dallas-high-speed-rail-construction-may-13620560.php)
加えて、企業優遇税制によりダラス郊外のプレイノ市へ、カリフォルニア州トーランス市から米国本土に移した日本のトヨタ自動車など、大企業の本社が続々とテキサスに進出していることも見逃せません。(参考URL:https://www.upcounsel.com/texas-corporate-income-tax)
米『フォーチュン』誌が毎年発表する国際企業番付「フォーチュン500」に入る企業の約1割である50社以上が同州に拠点を構えています。
そんなテキサスの中間住宅売却価格は2018年に前年から4.4%上げて23万2900ドルとなりました。しかし、カリフォルニアの約55万ドルと比較して、まだまだ手が出やすい環境であることがわかります。(参考URL:https://www.texasrealestate.com/about-us/newsroom/news-releases/texas-housing-market-breaks-record-for-home-sales-median-price-in-2018/)
・テキサスでおすすめの地域は?
そんなテキサスにおいて、日本での不動産投資に適した都市はどこでしょうか。
州内で最も速いペースで雇用が伸びているダラス市と近隣のフォートワース市は全米第4の都市圏であり、2017年だけで10万の新たな雇用が創出されました。
ダラスはシカゴやアトランタのような企業城下町であり、ダウンタウンでの再開発が進む活気のある都市です。中間住宅売却価格は45万ドルと少々お高いですが、前年比価格上昇率は10%と、投資に適しています。
一方、フォートワースには世界最大の航空会社であるアメリカン航空、インテリア大手のピア1インポーツ、天然ガス大手XTOエナジーなどが本社を置き、米『フォーブス』誌の「全米で最もビジネスやキャリアアップに適した都市」のひとつに選ばれるほどです。

フォートワースの中間住宅売却価格はダラスよりお手頃な約25万5000ドルで、前年比価格上昇率は4.6%でした。同市の人口は2010年から2018年の間に6%増加しています。
特筆されるのは、大学街であることから賃貸市場が大きいことでしょう。
たとえば、テキサスクリスチャン大学近くの郵便番号が76109地域の中間家賃月額は2874ドル(Zillow調べ)と、高めです。
一方、世界中から投資が集まる州最大の都市ヒューストン大都市圏の人口は約700万人で、エネルギー、宇宙、ヘルスケア、運輸などが主な産業です。「フォーチュン500」に入る企業の内、26社が本社を構えています。
しかし、2017年8月の大洪水により同都市圏の住宅市場は大打撃を受けました。
将来も洪水の恐れがあるため、住民の40%が賃貸住宅に住んでいます。このように災害リスクや機会を天秤にかけて投資の判断を行うべきでしょう。
一方、大規模なシェール埋蔵量で知られるイーグルフォード油田から最も近い港町のコーパス・クリスティは州内第8位の都市であり、大きな経済・人口成長が見込まれています。
不動産としては港湾の眺めが良いウォーターフロント物件が豊富にありますし、中間住宅売却価格は16万1500ドルと、お手頃です。
売却に要する平均日数は140日と前年に比べて長期化しており、流動性は必ずしも高くないことに注意が必要ですが、住宅価格上昇は続く見込みです。
コーパス・クリスティから内陸に入った州内人口第2位の規模を誇るサンアントニオは年率3%以上の人口の成長が続き、雇用も増え続けており、公共交通機関の整備が行き届いた同市の住宅価格は年率8%伸びており、有望な投資先です。
州都オースティンは開放的な文化で知られ、毎年3月に開催される音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルであるサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)でおなじみです。
2015年から2018年に人口が9%増加した人気都市であることから、中間住宅売却価格は高めの33万5000ドルとなっていて、安定の投資先と言えるかも知れません。
・デメリットは「自然災害」と「固定資産税」
このように魅力的な投資先が多いテキサスの不動産ですが、固定資産税が高めであるところは注意しましょう。
また、近年の地球温暖化に伴う自然災害の影響を受けやすい港湾都市も多く、リスクや洪水保険の吟味が必要でしょう。竜巻や雹、落雷や地盤沈下などがないか、エージェントに確かめることも大事です。
一方で、投資に有利であるのは、経済と人口の力強い発展に加えて、賃貸物件における家主の権利の保護が手厚いことでしょう。入居者の権利が強く、家主が苦労することが多いカリフォルニアなどと比較すると、問題に対する対処が容易です。
次回は、「こんなに魅力的なご当地不動産」のシリーズ3回目として、「個性的すぎる」物件がたくさん見つかる自然の雄大なオレゴン州を見て行きましょう。