前回「【vol.4】教育(1)学校の成績が価格に直結」では、アメリカの不動産投資において、学区がいかに投資価値の判断に重要かをお話ししました。
標準テスト成績が元来の教育目的を超えて、不動産価格の指標になっており、優良学区にある物件は価格上昇率や高く、売却時にも条件が有利なのです。
ですからアメリカ不動産投資の初心者にとっては、よい学区にある住宅を購入することが、確実なリターンの可能性を高めることになります。
とはいえアメリカに居住していないのに、どのようにして優良学区を見つけ出すことができるのでしょうか。(岩田太郎・在米ジャーナリスト)
・最も重要なのは「高校のランキング」
家を買うということは、単に建築物や庭を購入するのではなく、「地域を買う」ということでもあります。
アメリカ不動産への投資をお考えのみなさんも、「投資するなら、この都市がいい」「前に訪ねたことがある、あの地域がすばらしい」などのアイデアをお持ちではないでしょうか。
投資の家探しも多くの場合は気に入った都市名を不動産ポータルに入力することから始まります。そうして表示された物件の写真や動画を見て、「びびっときた」住宅があれば、詳細情報をチェックします。
・大手不動産サイトでの具体的なシュミレーション方法
それでは具体的に、大手Zillow(ジロー)のポータルを例に取って見ていきましょう。
まず、住宅の価格や築年、間取り、トイレの数、面積、駐車スペースの数、固定資産税の推移など、基本的な情報が出てきます。それらを頭に入れながらもっと下に進むと、学区情報が次のように現れます。

上から順に、住宅のある地域の小学校、中学校、高校になります。
それぞれの学校までの距離とともに、標準テストの平均成績を中心とした総合評価が10段階で表示されており、1が最低で10が最高の評価となっています。
この評価が中間の「5」以上であれば、安全な投資対象と考えてよいでしょう。そして高校の評価にはさらに大学進学適性試験SATの平均成績、卒業率なども加味されます。
・アメリカ不動産投資で重要なのは「高校」
ここで最も重要なのは小学校や中学校ではなく、高校です。
なぜなら、成績のよい高校からはよい大学への進学率が高く、親たちはそのような高校に子弟を入学させるため、「よい高校の学区」で家を探すからです。
そのような学区には比較的裕福な住民が居住し、住環境やショッピング環境も好ましく、住宅価格も上がりやすいという「好循環」が生まれます。
例に挙げた高校は立派な公立大学の近くにあり、全米ランキングで500位、州内で5位という優秀校で、最高ランキングの「10」に分類されています。

事実、ポータルの情報をさらに見ると、「この地域は売り手市場」との分析がつけられており、過去12か月の地域の住宅価格の平均上昇率は7.1%に達しています。そして、この先12か月に価格がさらに8.5%上がるとの予想がつけられています。
よい高校=よい学区=よい投資先なのです。
・投資を行う前に予行練習を繰り返す事が大切
上の例でもわかるように、優良学区と住宅価格の間には強い相関があります。
投資を行う前に、ポータルでまず高校を中心に家を探す予行練習を繰り返すことで、有望な投資先を見極める選別眼が養われるでしょう。
フロリダ州では全米ランキングに加えて、州独自の学校ランキングを導入しました。
米『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙によると、新しい評価の仕組みが導入された後、最高の「A」ランキングの地域の平均住宅価格と、その他のランキングの地域での差がさらに拡大し、現在では5万ドルから30万ドルもの違いがあるということです。
このように、優良学区の物件はよい投資先である反面、価格も高いために手が出にくいというジレンマもあります。
しかし、米ポータルのRealtor.comは、「今でも優良学区内にありながら、30万ドル未満の予算で住宅を購入できる地域は残っている」と指摘しています。
例えば、アリゾナ州のマリコパ郡のあるピオリア学区では、上位「8」の評価がついていますが、住宅の中間価格は28万3000ドルと、お手頃です。
ポータルで好みの地域の優良学区を、ぜひ探してみてください。
次回は、アメリカの中古不動産市場についてお話しましょう。日本と違い、「立派に熟成した物件」が好まれる理由や、中古物件の価格が高い理由を探ります。